5スレ>>131

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もうすぐ来るかな? まだまだ先かな?  わくわく、どきどき。 今日には来るかな? 明日なら来るかな? わくわく、どきどき。 ともしび山の山頂から山裾を見下ろしながら、今か今かと胸を弾ませる。 その様子は、恋人を待つ女性というより仲良しの友達を待つ子供そのもの。 勿論、来るという確約などないし、可能性なら来ないことの方が大いにある。 そんなことは無論彼女も承知しているし、そのことでいちいち怒ったりなどしない。 来ないこともあると理解しているうえで、待ち焦がれているのだ。 来るか来ないか、今日来るか明日来るか。彼女は、待つということを既に楽しんでいる。 彼女にとって、それは永遠に変わることのない唯一の娯楽。 飽きることなく待ち続ける。 果たされるという確約の何処にも無い、かつて交わした約束の果たされる日を。    彼、覚えててくれてるかなぁ?…ううん、絶対覚えてるよね!たった十年前の約束だもん!   カントーに名を残す伝説の鳥萌えもんのうちで、彼女のみは他の二人とは異なる言い伝えが別に残っている。 曰く、不死鳥伝説。 彼女自身が不死の存在であり、気の遠くなるような長い周期ごとに炎で自らを清め生まれ変わる。 彼女に気に入られ、その生き血を口にすることが出来たものは、彼女と同じく永遠の命が得られる。 そういった伝説というものはえてして伝わるうちに歪むものであり、この不死鳥伝説にしてもそれは変わらない。 別段自ら炎に飛び込んで生まれ変わりはしないし、彼女の生き血を啜ったところで永遠の命など得られはしない。 だが、伝説の全てが嘘偽りというわけではない。 唯一つ、彼女が永遠を生きる存在であること。それだけは、確かな真実であった。 人には──寿命を持つ身には想像も付かぬ年月、大地すら姿を変えてゆくほどの時を、彼女は生きている。 そして、終わりのない生を生きるものの宿命として、彼女の周りに暮らすものは皆、彼女を置き去りに旅立って逝く。 星の数ほどの出会いと、星の数ほどの別れを繰り返して、今の彼女は其処に在る。 萌えもんだけに限らず、多くの人間もまた、彼女と出会い、送られて逝った。 彼女を取り巻く環境の全ては、彼女を残して移ろいゆく。 だが、彼女は己の終わらぬ命を憎むことも、恨むことも無い。 永遠の命を理由に自らに閉じこもることはしない、そう彼女は誓っているから。 別れは誰でもが経験すること、自分の場合は常に見送る側であるというだけ、そう捉えていた。 彼女にとっては、生きること、未来を想うことはいつまでも胸躍ること。 満ち足りた日々、過ぎ去った思い出を振り返ることもまた、彼女の生を満たすもの。 人が、大好きな少女である。 出会うことが楽しくて。 約束を残して一度は別れ、再び会う日を待つことが楽しくて。 その後に、その相手の一生を共に過ごすことが楽しくて。 相手の最期を見送ってから、ふとしたときにその思い出を拾い上げるのも楽しくて。 最期の別れが寂しくないわけでも、辛くないわけでもない。それらを味わうことを覚悟してなお、人の下に姿を現す。 新たな出会いを経ても、彼女の中でかつて共に過ごした者の面影が薄れることは無い。 誰一人として軽いものなどない、彼女の心に住むのは彼女の愛した者ばかりだから。暖かく美しい想い出は、ただ増える一方。 彼女がパートナーとして選ぶことに、基準はほとんど無い。あげるとするなら、出来るだけ歳若いこと、そして彼女が心惹かれること。 男でも女でも構わない、惹かれさえしたならば。 そうして惹かれる相手に出会ったら、相手の歳にあわせた姿をとり、ひと時を共に過ごしてみる。 その段階で気に入ったなら、己の素性を明かし、いくらかの年月ののちに再会を約束する。 その約束が果たされたとき、初めて彼女はその相手の元へ下り、一生を共に過ごし、終わりを看取るのだ。 今回の相手は、出合った時に九つかそこらの少年。 同じ年頃の少女として出会い、一緒にくたびれはてるまで遊び、そして約束を交わした。 ───今日は、楽しかったね! ───そうだね! ───また、逢えるかな? ───会えるよ、絶対! ───あたしは人じゃない。萌えもんだけど、それでも逢いに来てくれる? ───もちろん、絶対会いに行くよ!どこにすんでるの? ───ここから遠い遠い、山の頂上よ。火山なの。 ───なんて名前の山? ───ともしび山。いい?忘れないでね。ともしび山よ。 ───うん、分かった!いつ行ったらいいの? ───いつでもいいの。でもね、今のキミには遠すぎる場所なの。    そうね、十年。あと十年経って、キミが大人になったら、迎えに来て? ───十年?長いなぁ。忘れちゃったりしないかな? ───忘れちゃったら、それでもいいの。でも、忘れて欲しくないわ。絶対迎えに来てね。    絶対よ? ───…わかった、十年たったらともしび山の頂上まで迎えにいくんだね。    絶対忘れない。絶対会いに行く!指切りして約束しよう! ───うん!絶対、また逢おうね! ──────ゆびきりげんまん うそついたらはりせんぼんのーますっ ゆびきったっ ────── 「ふぅ、やっとついた。ここが、ともしび山か」 眼前にそびえ立つのはナナシマ諸島唯一の火山。温泉があることでも有名で、多くのトレーナーが修行地に選ぶ場所でもある。 そして、カントー全域にのこる伝説の一つと、かかわりの深い山でもある。 「ご主人様、ここを上るんですか?」 「そうだよ」 「でも、伝説の萌えもんなんて、ほんとに伝説でしかないかもですよ?」 「いや…彼女はいるよ、ここに」 「へ?」 「いや、なんでもない。行こう、皆」 手持ちの萌えもんたちに号令をかけ、一歩一歩上ってゆく 遠い日の、幼い約束を果たすために。     彼女は、覚えていてくれているだろうか?もう、十年も昔の約束だけれども。
あれから、一ヶ月。 今日はあの人が訪れる日。 時間は…もうそろそろかしら。 いつもは括っている髪も、今日は彼の好みに合わせて下ろしておく。 あぁ、待ち遠しいわ。 早くこないかしら。 今日は月に一度の発電機の点検日。 イワヤマセンターそばの川を下り、無人発電所へ赴く。 かれこれ何年になるか、通いなれた道だ。特に指示せずとも迷うことは無い。 …もっとも、ほぼ一本道ということもあるが。 「着いたよ、マスター」 「おつかれさん、ランターン」 水タイプと蓄電の特性を兼ね備えるランターンは無人発電所行きに最適だ。 始めのうちは良く襲われていたものだ、ランターンのお陰で手持ちの誰も傷一つなく済んでいたからだ。 まぁ今となっては襲い掛かってはこない。慣れた、というわけだけではないだろうが。 「さ、中に入ろう」 「はーい、マスター」 ランターンと連れ立って、発電所に踏み入っていく。 入り口そばを見張っていたコイルが報告に来た。 あの人がいつものようにやってきた。相棒のランターンも一緒。 本当ならおもてなししたいのだけれど、生憎出せそうなものは何も無い。 人間の通貨も持ち合わせないから用意だって出来ないわ。 彼は気にしないと言ってくれるけれど… でも、どうにも出来ないことを嘆いても仕方が無いわ。 今はただ、あの人がここまで来るのを心待ちにしていましょう。 いけない、せめて身だしなみくらいは気をつかわないと…… 相変わらず人がいないせいで埃っぽい…というわけでもない。 最近はどうやら俺が来る日が近づくとコイルやビリリダマ、ピカチュウやエレブーが掃除するらしい。 おかげでわりと快適に進んでゆける。 すっかり顔なじみになったレアコイルたちとかに挨拶しつつ、奥へ奥へ。 お目当ての発電機は最奥にある。 そして、そこには、あの子も。 いつも聞きなれた子達のものとは違う足音が聞こえる気がする。 そんなに音が響く建物ではないから、勿論それは気のせいなのだけれど、 それでも心は弾んでゆく。 早く、早く。お話したいな。 この角を曲がって、その先を道なりに行けば発電機。 彼女は待ちくたびれているだろうか。 いや、いつものように静かだけどうれしそうな顔で、お待ちしてました、なんて言うんだろうな。 変わらないペースで足を運び、顔をだす。 「やぁ、一月ぶりだね。調子はどうかな?」 幻聴なんかじゃない、本当にあの人の足音。 聞こえるということは、そばまで来ているということ。 どうしよう、なんだか顔が熱いわ。赤くなってるかも知れない。 急いで手鏡で顔をチェック。うん、おかしなところはない。 ついでに髪型とかも見直しておく。ちなみにこの手鏡は彼からの贈り物。 よし、問題ないわ。深呼吸ひとつ、彼の来るほうへ振り向く。 ほどなくして。 「やぁ、一月ぶりだね。調子はどうかな?」 ─────────────────────────────────────────────────── 点灯確認、異常なし。 漏電の恐れのある箇所もまだ見られないな。 「この分なら、きっと今回も整備というか点検だけで終わりそうだ」 「それなら早く終わりますね」 慣れっこの作業をこなしていく俺とランターン、それを見守るサンダー。 「いつもはサンダーが見ててくれるもんな。そうそう何かあるはずないか」 「だよねぇ。そばで僕らの作業を見てるから、もうちょっとした異常なんて直せちゃうんじゃない?」 「そんな、見てるだけですから…」 仮にも電撃をつかさどる伝説の萌えもんだ、むしろ発電機の代わりすら勤まるだろう。 だが、彼女の控えめな性格が、彼女を謙遜させずにおかないらしい。 品があるのは別にしても、そのおとなしすぎる立ち居振る舞いからは伝説の萌えもんであるという威厳のようなものは出ていない。 だが、後ろ髪に黒の混ざる美しい濃い金髪がさらりと揺れる様子など、清純な色気というやつには事欠かない子だ。 その気品に満ち溢れた美しさ、という点では間違いなく伝説に残るだけはある、と勝手に俺は思っている。 長すぎず、短すぎずという絶妙なセミロングの髪も確実に彼女の美しさの一角を担っているだろう。 「そういえば、前は髪括ってたんじゃなかったっけ?」 「え、え、あの……これは…」 「これは?」 「あ、あなたが、この方が好みだと、おっしゃっていたので…」 「へぇ…わざわざ俺の好みのために?」 「はい…」 「前の髪型も活発そうでかわいかったけど、こっちの髪型も性格にあってていいよな」 サンダーの髪に触れる。 「あ…」 顔を赤くして慌てて身を引くサンダー。 「っと、悪い、驚かせたか?無神経ですまん」 「いえ、すみません。嫌だったわけではなくて…その…」 妙な沈黙。 「…触りたいのでしたら、どうぞ…」 そういって、ますます赤くなりながらも頭を差し出してくるサンダー。 「…えーと。それじゃ…」 改めてサンダーの頭をなでる。うわ、すげぇさらさらしてるな。 何で洗ってるんだろう? 「髪、さらさらだな」 「え、あ、ありがとうございます…」 「なんだか思いっきりお邪魔みたいですね、僕」 …すまんランターン。ついうっかり忘れてた。 慌てて二人して飛びのく。 「今度からマスター一人でここまで来たらどう?邪魔、入らないよ」 「分かっててそういうこと言うなよお前…波乗り無しにここには来れないんだから・・・」 「なら到着してすぐにボールに引っ込んでいようか?」 「発電機の点検のときどの道お前にふた開けた中を照らしてもらうんだから同じだって」 あーだこーだと思わずその場で言い合いがはじまる。 それを中断させたのは、クスクスというサンダーの上品な笑い声。 「…えーと」 「…あー。その、まぁ、なんだ。…うん、正直すまんかった」 見苦しいところを見せたと二人して頭を下げる。 「相変わらず、仲良しなんですね」 まだ笑いが収まりきらないサンダー。手で口元を覆って笑う辺り、お嬢様風な外見にぴったりだ。 「仲良しってか…まぁ長年の相棒だしなぁ」 「旅の始まりからついてきてるしねぇ」 「ランターンくんがうらやましいわ…いつでも一緒なんですもの」 ぽつり、サンダーの一言。 仮にも伝説の一角たる萌えもん、人と一緒に居るところが見つかれば大騒ぎになる。 集まってくるのが普通のトレーナーだけならまだいい。 隙あらば奪取して金儲けその他、己の欲を満たそうとする輩も必ずいるだろう。 きっとお互いの、むしろサンダーにとっていい結果にならない。 俺がサンダーをボールに入れない、己の萌えもんとして捕まえない理由だった。 それはサンダーもわかっている。だから、わがままをいうことはない。 おもむろにランターンが口を開いた… 「じゃあさ、マスター。今の仕事とっとと引退して、ここに住んじゃえば?」 …かと思えば唐突の爆弾発言。 「住んじゃえば?て、お前…」 「だって、今までで十分稼いでるんでしょ?  もう一生遊んで暮らせるぐらいたまったーって、言ってたし」 「いやそりゃ貯まっちゃあいるが…今俺達が引退したら皆が困るんだよ」 「いいじゃん、周りなんてほっといてさ。  僕らに挑戦どころか、最近ワタルまで暇そうにしてるんだよ?」 「することないならやめちゃえーってわけにはいかねーんだよ。  俺らを打ち負かす挑戦者出るまではこのまま!」 「それより先に寿命がくるんじゃ?」 「お前が手加減したらあっという間じゃね?」 「やだよ、わざと負けるのなんて」 また始まった、毎度恒例のやりとり。 来るたびにここに住めとランターンが言い、俺がチャンピオンの座の放棄はまずいと諭す。 そこから始まる最早パターン化した言い合いを、困ったような顔で、でも楽しそうにサンダーが見守っている。 「なんだか今度もあっという間だったなぁ。  もう少しゆっくりできたらよかったが…」 結局ランターンとの言い合いが終わってから、外での出来事を取りとめも無く語っていると、もう辺りは夜の気配を漂わせていた。 「次に会えるのは、また来月になりますね」 「そうだなぁ。もうちょい気軽に席を外せたら、もっと逢えるんだがなぁ」 以前は周りの目を盗んでそうしていたのだが、ある日キクコに見つかってワタルとカンナに絞られて以来はそれも出来ない。 「でも、来月には必ず来てくださるんでしょう?」 茜の空の色を映して、ますます照り映える黄金の髪を揺らし。 サンダーが、柔らかい微笑を浮かべ、尋ねてくる。 「…そりゃ、勿論。点検という立派な名目があるわけだし」 束の間、見とれてしまい。慌てて言葉を足しておく。 「早くしないと日が沈みますよー。まぁ沈んでも僕には何の問題も無いけど」 暗くなっても自前のランタンで照らせるからな。 別れ際のこのやりとりも、やっぱり恒例のもの。 あとは簡単にお別れを言って、ランターンの元へ向かえば完璧にいつもどおり。 だから。 「サンダー」 正面に立って、眼を合わせて。 「え…?」 少し様子の変わった俺に、戸惑うサンダー。 その両肩をやさしくつかみ、なけなしの勇気を奮い、柄でもないと笑う内なる自分を張り倒し。 「いつか、一緒に暮らそうな」 言った。……死ぬかというほど恥ずかしかったが。 きっと顔も真っ赤だったことだろう。夕焼けのせいにできる時間で助かった。 言葉を聞き取ったサンダーの、彼女自身が操る雷光と同じ色の瞳が揺れ動き。 「…はい。その日を、心よりお待ちしております」 いつもよりも小さな、だがはっきりした言葉で。返事が返ってきた。 その、夕陽の移りこんだ涙を浮かべた瞳に、我慢ならなくなり。 俺はその肩を引き寄せ─── 辺りを茜に染め上げる夕陽を背に、二人の影が重なった。 「やれやれ、ようやく面と向かって宣言したみたいだね。  あんだけ何度も振ってるのに流すんだもん、その気が無いのかと思ってたよ」 その様子を眺めて独りごちるランターン。 憎まれ口を叩くその顔は、それでも幸せそうな二人を前にして、穏やかな笑みが浮かんでいた。 ※雰囲気が壊れると思ったので注釈つけたくは無かったんですが今回はあったほうがいいかと判断しまして…  今回出てきたサンダーさんの髪型はピジョンの髪型みたいな感じになります。アレで背中の真ん中に足りないくらいの長さ。  色合いが、基本金髪で後ろ髪の黒がまざって一部が縞っぽく見える感じ。……伝わるかなぁ。

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