5スレ>>144(1)

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-ヤミカラスの追憶・前- 「へ? 私と主人の出会い?」  主人をそらをとぶ、で送り届け。野暮用を済ますまでの短い時間。  いつものように公園のベンチでまったりしているところに、そんな質問を浴びせかけられ…。  鳩が豆鉄砲を食らった顔、というようなきょとんとした表情を浮かべるヤミカラス。  視線の先には萌えもんジャーナルの女性記者、どうやらそう言うコーナーがあるとの事。 「そうだね、怪我をしてどうにもならない所を。主人に助けてもらったのがはじまり、だったかな」  割と普通な回答に、僅かに失望したのか女性記者は礼を言い。次のターゲットを探し始める。 (まぁ、律儀だったり惚れっぽい性格の子が。助けてくれた人間をマスターと定める事も最近は珍しくないからね)  ヤミカラスも、そんな女性記者に対しても興味も失せたのか…視線を中央にある噴水へ向ける。 (そういえば、私が主人に拾われてから結構経つんだな)  女性記者からの問いかけ、ソレに対する返答。  この僅かのやり取りの中で、ささくれのように掘り起こされた記憶。 (思い出したくない記憶で、でも絶対に忘れたくない想い出)  ゆっくりと、ソレは彼女の思考を満たし、追憶の光景を呼び起こさせる。  彼女は、出自こそ普通であれど。物心ついた頃には既にロケット団の団員の手駒の一つだった。  そう、『一人』ではなく。『一つ』。  その頃の彼女の記憶は灰色で、強いか弱いかしかなかった。  いや、なかったのではない。認識できなかったのだ。  しかし、その灰色の世界は唐突に終わりを告げる。 「………痛い…」  雨が降りしきる闇の中、濡れた茂みの上で横たわるヤミカラス。  彼女は…主だった、ロケット団の団員に捨てられた。  理由は萌えもんトレーナーとの闘いで敗北した、ただそれだけである。 「…冷たい……」  全身を襲う痛みが、体温を奪う冷たさが原初の恐怖へと彼女を誘う。 「死にたく、ない…」  初めての願いが自然とその口から出る。   もっと幼い頃に流したはずで、それっきりだった雫が両目から溢れる。 「死にたくないよ……」  ソレだけを、願いを口にしながら。ゆっくりと意識が蝕まれていく。  そして、全部が闇に包まれるその間際。  誰かの声と、初めて。暖かいと思うモノに包まれた気がした。 「…ん、大丈夫?」  目が覚めたら知らない萌えもんが目の前にいた。  凄くビックリした、その頃は一度も上げた事ない声を上げて。  思わず耳を覆う目の前の萌えもん、そして程なくして聞こえてくる慌てたような足音。 「な、何かあった?!」  と思ったら部屋の扉が開いて、白衣を着た知らない人間が飛び込んできた。   (…白衣?…部屋?)  状況が飲み込めず、周囲を見回す。  自分…白い、ふかふかしたベッドにいる。    目の前の萌えもん…紅い毛並みで、ピンと立った耳、確かブリーフィングで見たウインディって萌えもん。のはず。  入ってきた人間…黄色いバッジを付けた白衣を着てる、あまり強そうに見えないけど。それでもマスター達とはまた違う雰囲気がする。  部屋…薄い青を貴重とした部屋で、他にもベッドがある。窓からは雨の降る外が……。 「…マスター……雨………」  瞬間、目覚める前の。闇に覆われる瞬間が、マスターからの言葉と暴力が蘇る。 「や、いや……やぁ…」  怖い。  すごく怖い。  どこに行けばいいの? 何をすればいいの? もう……。 「大丈夫、大丈夫だよ」  目の前にいた萌えもん…ウインディが私を抱きしめる。  この暖かさって……? 「ここには、アナタを傷つける人も。モノもないからね」  ただ、ソレだけを言って。ゆっくりとした手付きで私の頭を触る。  身を強張らせるが…何もなく。ただゆっくりと、まるで毛繕いをするかのような穏やかな手付きで。  また、雫が両目にたまってくる。でも今度は怖くない。  でも、雫は止まらない。 「泣いていいんだよ、嬉しくても。安心しても泣いていいんだよ」  私の様子に気付いたのか、穏やかな。声で私を包んでくれるウインディ。  ああ、そうか。コレが…優しさで。  この空間が、優しい場所。なんだ。 「ぁ、ぅ、ぁぁぁぁぁぁあぁあああ……!!」  そう、認識した瞬間。  もう私の両目の雫は止まるどころか、まるで今も振り続ける雨のように。  止まらなかった。 「うん、泣いていっぱい泣いて…そうしたら。少しは悲しい気持ちもなくなるから」  優しい声で私をあやしながら、包み込んでくれるウインディ。  そして、私は気付く。  今、この場所で目覚めた瞬間。  私の世界に色はついて、そして……。  生まれ変わったのだと。 「……ぉーい、ヤミカラスー」  ぺちぺちと、何者かが私の頬に軽く触れる感触で意識が覚醒する。  どうやら私は寝てたらしい。しどけない寝姿を晒すとは、らしくない。 「…泣いてたのか?」 「なんですと?!」  思わずぎょっとする。  いかん、いかんよ。  まさかかつての記憶を夢見ただけで泣いちゃうなんて…、なんという乙女ちっく。  コレじゃカイリューの事笑えないじゃないか。 「……ご主人、頼むから内緒にしてくれたまえ」 「大丈夫、そんな珍しく手合わせて拝まなくても誰にも言わないよ」  いつもの苦笑を浮かべ、ぽふぽふと頭を撫でる主人。  ウインディとは違う撫で方なのだけど、コレはコレで凄く安心する。 「信じたからね」  目元に残っていた雫、涙を拭い不適に笑ってみせる。  ウインディだけじゃない、主人にも。返しても返せないほどの恩はあるし、ソレを忘れるつもりもないし……。 (…なんだ、私も。惚れっぽい子らとなんら変わりないじゃないか)  改めて再認識した事実に思わず我ながら苦笑が漏れる。  不思議そうに振り向く主人に対してなんでもないと言いつつ、空を見上げる。  気が付けば青空だった空は茜色。やがて黒くなるけどまた青くなる。  あれから私の世界は大きく、それどころか一度完全に壊れ。それから産声を上げた。  そんな機会を私にくれたウインディに、そして主人には本当に感謝しているし……うん。そして大好きだ。  だけど…そう簡単には教えない。  さてはともあれ、このままでも何かこうもやもやするし……。 (うん、とりあえず…)  いきなり抱きついて、主人を困らせるとするか。 -あとがき-  長文、読んでいただき誠にありがとうございました。  久しぶりに長文を打ったため、まともな小説になってるか少し不安が残る部分もありますが…今現状で出せる文章力を投入したつもりです。  なお、ひねくれものな彼女が『主人』に対して好意を抱いたきっかけにかんしては、後編にて執筆させていただきます。  もし、楽しみにしていただける方がいらっしゃいましたら。申し訳ありませんが、もうしばらくお時間の方いただけますようお願い申し上げます(ぺこり)

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