5スレ>>180

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NO.18 ピジョット ――突然だが、俺は整理が致命的に下手だ。 どれくらい下手かというと、毎朝仕事に行く前に30分は何かを探す時間を持たなければならない程度にだ。 と、いうわけで今日もまた、俺は仕事のために部屋の中をうろうろとうろつきまわっている。 「あれ、おかしいな……ピジョットー、アレ知らねぇ?」 「アレ、ですか?」 床に散らばるチラシを蹴散らし、机に置かれた雑多な小物を蹴散らしながら、俺は問う。 その問いに、一瞬の間を置いてから、ピジョットは思いつく限りの候補を挙げた。 「……iPODならPCの隣、携帯でしたら玄関、お財布ならTVのそばの棚の上で見かけましたよ」 「オーケー財布だ、サンキュー」 ピジョットに指摘された場所に目をやれば、確かにそこには目的の代物。 よかったよかったとひとりごちて、俺はすぐさまそれをポケットにしまいこんだ。 そんな一部始終を見届け、ピジョットがふぅと軽いため息を漏らすのもいつものこと。 「まったく……マスターの片付け下手にも困ったものですね」 肩をすくめ、呆れ顔でピジョットは愚痴をこぼす。 悪い悪いと聞き流して、ついでにさっき在り処を教えてもらったブツも回収。 適当に身支度を整え、さぁ出かけようとした矢先。 「マスター、ちょっと待ってください」 「んー?」 声をかけられ、振り返る。 すぐさまピジョットの手が俺の髪に伸び、寝癖ついてます、と髪を整えてくれる。 「身だしなみくらいちゃんとしてくださいよ」 「悪い、つい」 まったくもう、と眉をひそめるピジョットを拝むようにして詫びる。 これもまた毎日欠かさずに行われる、欠かせない儀式のようですらある光景。 「んじゃ、そろそろ行くわ」 「はい、お気をつけて」 そう言って。 ピジョットはそっと目を瞑り。 俺はピジョットの身体を抱き寄せ。 「ん……」 その柔らかい唇に、己の唇を軽く触れさせた。 ……こればっかりは、いつまでも慣れない。 顔が火照っているのが自分でもわかる。 ピジョットのほうはといえば、こちらも少々頬を紅く染めながらも、その顔はうれしそうに笑っている。 ずるい奴だ、そんな顔をされたら、せがまれなくてもしたくなってしまうではないか。 ――さすがに言えないし、言わないが。 「ふふ、それじゃあ――行ってらっしゃい、マスター」 「……ん」 にっこり笑って俺を見上げるピジョットの視線から逃げるようにして、回れ右。 そうでもしないと、今日も仕事に遅れるか、最悪サボるハメになるのは目に見えていた。 「あ、そうだ」 「どした?」 ぽん、と軽く両手を合わせた音に、また振り向く。 ピジョットはまだにこにこしたまま、ふふふ、と含み笑いをして、そっと俺の耳元に口を寄せ。 「――今日は、おいしいご飯作っておきますから、早く帰ってきてくださいね?」 「……了解」 照れを笑いで隠して答え、今度こそ、家を出る。 ……さぁて、今日も頑張ろうか。

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