5スレ>>219

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ある深い深い洞窟の話。 それは、封印されし3人のための世界。 外界より隔離されたその世界の中は静寂の天下であり、悠々自適が横行する。 そんな世界の下、3人の宴が今夜も始まる…。 「スチル、私の椅子が壊れた。」 「知りませんそんなことは。それからアイス、大の姉を呼び捨てにしない。」 「困ったな。転ばないでいるのは労力を使うというのに…。」 氷の鎧を纏った少女と、金属の鎧を纏った少女が、静寂をかき乱すかのように話していた。 「おいすー。また掘り出しもんがあったでー。」 そう言いながら小部屋に入ってきたのは、これまた岩の鎧を纏った少女。 地上の萌えもん達とはまた違う、変わった格好の萌えもんが3人。 古代に封印された、レジスチル、レジアイス、レジロックの3人である。 古代、人間の文明が、一度衰える前の頃。彼女達3人は“神”として崇められていた。 創世神と言われた萌えもん、レジギガスの娘達…そのように信じられ、信仰されていたのだ。 しかし時は進み、彼女達への畏敬は畏怖へと変わった。 『神の力の台頭を阻め!人の天下を築くのだ!』 そう唱えた聖人によって、彼女達はこの地下深くの洞窟へ封印されてしまったのだ。 それから数万年。封印は半分緩み、外に出れるようにはなった。が、彼女達は今でもここにいる。 なぜなら彼女達は封印されても悲しくなかったのである。 それは彼女達は“神”ではなかったから。 彼女達は“他とは違う”萌えもんだっただけだから。 人間が勝手に騒いで、勝手に追い出したのは、彼女達にとっては気に留めるまでもなかったのだ。 …と書いてみたものの、こんなことを考えてるのはレジアイスだけだろう。 3人は案外楽天的で、まさに“今を生きている”のだ。過去なんてどうでもいいのである。 「おお、いいところに帰ってきたなロック。私の椅子になれ。」 「アホか。あたいの岩は姉さんの椅子やないねん。そこらの岩でもくりぬいとけや。」 レジロックはそんなことを言いながら、持ってきた変な袋をどっかりと机の上においた。 「また大層なものを拾ってきて…。どこにあったのよこんなもの。」 「グラードンが捨てる言うたもん、貰ってきたんや。ちょっとべたべたするさかい、あまり触らんほうがええで。」 「ふむ、中は…小包か。しかも大量に。どれどれ。」 「あ、あたいが注意した傍から触って…人の話を聞けっ!」 その小包は、あるものは綺麗な包装が、またあるものは綺麗なリボンがつけられている。 レジアイスが次々に小包を開けると、部屋の中に甘いいい匂いが立ち込めた。 「何だこれは。茶色いくせに甘いにおいがする。」 「何かの食材かしら…。ロックの岩とは違うようね、料理に使ったらおもしろそう。」 「あたいの岩は食材なんかいな。…って、昨日のご飯に入ってたの、あれあたいの岩!?」 「うまかったぞ。妹の甘ったるいうまみがな…。」 「そ、そんな怪しい感想を述べんなっ。…ん?」 レジロックはその中で一際派手なものを取った。 「何やこれ、見てみ、古代の文様が書かれとるで。」 「ふむ、確かに…『I Love You』…どこかで見たような文様だ。」 「『あいえるおーぶいいーわいおーゆー』、古代のアンノーン文字ね。どうせ誰かの落書きでしょ。」 レジスチルはくんくんと匂いを確かめている。彼女は食事担当、こういうものには敏感なのだ。 「岩でもない、氷でもない。はたまたアンノーンの匂いとも違うわ。何なのかしら、これ。」 「うへ、スチル姉さん、料理にアンノーンまで入れとるんかいな。残酷やな~。」 「というより、アンノーンに匂いがあるのが驚きだ。…そんなにまじまじ嗅いだのか、いやらしい。」 「そこ、私を変態扱いしない。それから私は平和主義。岩、氷、コケ、そういうものしか調理には使わないわ。」 いろいろ3人で話し合った結果、茶色いそれは毒性物質の可能性が高いと判断された。一番毒に耐性のあるレジスチルがそれを口に含んでみる。 「…ッ!」 「お、どうしたんやスチル姉さん。まさかはがねタイプの姉さんが毒に負けたんか?」 「…いいえ、それは早合点。これに毒はないけど…まるで氷のようにとろけていったわ。しかも甘くて苦い…、そして。」 レジスチルは胸を押さえた。 「ここ…心臓が熱くなるわ。」 「えろいな。」 「どこがよ。」 「まぁいい、心臓系に利く毒物か。」 「それも早合点。これは毒ではないわ。何か不思議な力があるみたいだけど。」 「ふむ…?」 レジアイスがその茶色い食材を口に含む。 「何を言う。とろけるどころかぼそぼそしてるじゃないか。」 そりゃそうだ。レジアイスの口の中は零下200℃、大抵のものは固形化する。 「とろける上に不思議な力入り、こんな岩レアや。グラードン、案外見る目がないんやな。」 「まぁ、山を知り尽くした奴にとっては当たり前の食材なのかもしれん。」 「とにかく、私達には手に入らない品物。しっかり味わえる料理にしなければ…。」 ぶつぶつ言いながらレジスチルは台所に入ってしまった。 その後をレジロックが追ったが、すぐに戻ってきて一言。 「さすがスチル姉さん。オーラが料理人やったわ。」 近づかないほうが身のためのようだ。あいにく、彼女達2人ははがねには弱い。 料理は10分とかからなかった。 「フフフ…できたわ。レジスチル風甘苦シチューよ。」 「まずそうだ…。」「ほんまやな…。」 茶色のシチューは好物の岩石シチュー。だがこれは、岩石シチューに似合わない甘ったるい匂い。 岩石シチューとは全く逆路線なのは明らかだ。 「スチル姉さん、これはあたい…んぐっ!?」 レジロックが何か言おうとしたその口に、レジアイスがシチュー漬けの岩を押し込んだ。 「すまないロック、人柱になってくれ。」 「んぐぐっ…!ううんぐ~!ん~ぐぐ~!」 「この冷血姉、あとで覚悟しろ、ですって。かわらわり確定ね。」 「フン、どうせ私の体温は零下200℃だ!というより、よく訳せるなスチル。」 「はがねタイプの私をなめないことね。それから呼び捨てはやめなさいってば。」 「得意技ドわすれのクセにな、フフ。」 「それはあなたでしょアイス。」 「んぐ…ぷはー。アイス姉さん、何するんや!」 レジロックは半分丸呑み状態でシチュー漬け岩を味わった。 「おお、生きていたかロック。姉さん心配したんだぞ。」 「ここぞと言わんばかりにドわすれ使うんやない。姉さん、あとでかわらわりやで。覚悟しとき。」 「それより味よ。感想はどうなのかしら?味見段階ではかなりいけるはずだけど。」 レジスチルは自信満々に意見を待っている。 「そやな…斬新な味や。悪くはない。だけど岩の味を殺してしもうてるわ。」 「あら、そう。別に良かったと思うんだけど…改良の余地はあるわね。」 レジスチルはそこらへんの岩に刻みをつけてメモしている。 「あ、こら、それは私の椅子だ。」 「あらそう。なら、今からこれは私のメモ帳ね。」 「うう、なんという暴虐ぶり…。仕方ない、ロック、椅子になれ。」 「アイス姉さんも十分暴虐やわ。ところで…あれは残ってるん?」 「それがね。あまりに1個1個が小さいから、一回の料理で全て使ってしまったわ。」 「何、なんともったいない。もったいないムウマが出るぞ。」 「もったいないヤミラミよりましやな。あいつ宝石食うねん。」 「とにかく、そのシチューは今夜限り。1口ごとに味わって食べなさい。」 こうして、1夜限りのスペシャル料理は封印された。 就寝時間前。 「くっ、あのシチューなかなかうまかったではないか。しかも私らしくない、胸がほかほかする…。」 レジアイスの顔は心なしか赤く、息遣いも荒い。 「ロック…、今日は姉さんと寝よう。」 「嫌や。何が好きで実の姉と百合をせなあかん。」 「そこ、変なものを芽生えさせない。…嫌いじゃないk…ゴニョニョ。」 ベッドの上で妙なやり取りをする2人を尻目に、ベッドにもぐりこむレジスチル。 「さ、あなた達。健康のためには就寝。寝ないとメタルクローよ。」 「う、それは健康に響きそうだ。」 「アイスは私のメタルクローが弱点。わかったら寝ること。…まぁ弱みを握るつもりはないけどね。」 「十分握ってるのだが…。」 ぶつくさ言いながら、レジスチルとレジアイスは寝てしまった。 「さすがにドわすれ2人組は寝付き早いな~。さ、あたいも寝よっと。」 ベッドにもぐりこむレジロック。 「…だけど、何か忘れてる気がするんや。何やったかな…まぁええわ。」 そう、レジロックはかわらわりの予告をすっかり忘れていたのである。 結局3人ともドわすれ組だった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ※端書 レジ3人組を見た瞬間、とっさに思いつきました。 いいんです、ギャグを書いてて楽しいからいいんです。うん。 とぅーびーこんてぃにゅーど(マジですか 駄文ながら最後までお付き合いくださってありがとうございます。 ○P.S. 3人の口調チェックのため常用のこっちむいてない版に鹿図鑑パッチ当てました。 ツンデレ口調のヘイガニ(擬人化未対応)は新たな何かを呼びそうでした。忘れよう。 書いた人:蛾 掘り出し物:バレンタインチョコ

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