5スレ>>224

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-+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+- 春。それは出会いの季節。今年もまた、この門をくぐり彼らはやってくるのだろう。 即ち、それは新たな桃色の吐息。日向に咲く太陽。薄紅色の桜。氷雪の下に眠る吹。四季を新たに感じる時、 たった三度の儚き輪廻を見て彼らは去る。咲いた笑顔は幾星霜、金銀財宝には到底適わない永劫の幸の理。 それを、妾に教えてくれたのは――見下ろしたグラウンドに立つ……彼の愛しき姿。 朝も早くから、集い猛者たちはただ一つの球を追いかけ、一丸となった願いを込めて剛毅を誓う。 傘の下に集まる春風は、見えない渦を巻いて妾の体を優しく揺らす。何度見た光景、しかし何度見ても 飽きぬその光景は、彼の打ち飛ばした球が陽の上がり始めた空に舞った時、妾の目はその行方を何度も追いかける。 振り返らない。 勝負の席に立ったとき、そこにどれほどかわいい女の子がいようが、好きな女の子がいようが、 大切な彼女がいようが、俺はただ真っ直ぐ丘の上の相手を見つめる。 きっと今日も見ているんだろう。 ――それでも、だ。俺は握ったバットを持ち直し、肩の無駄な力を抜き、足を軽く開いて構える。 放たれた球を逃すものかと、両目を見開いて敵を視る。 ピッチャーはおおきく振り被った。 グローブに隠された右手が、勝負を分かつその土にまみれて色がしみこんだ球を放つ瞬間―― 向かい来る剛球に合わせ、天まで届けと無我夢中で両の腕を振るい、バットを横に薙ぐ。 重い、確かな衝撃は剛毅を伝い、俺の下に届いた。 ぶつかり合う互いの全てが、俺の描いた脚本通りに宙を舞う――。 -+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+-         萌えもん学園 ショートストーリー                             傘 ~beginning from rainy~ -+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+--+-+-+-           - 1 - 俺が彼女の姿を始めて見たのは一年の頃だった。 私立萌えもん学園――ガキの頃から遊んでいた近くの公園から目と鼻の先にあるこの門を まさか俺がくぐる日がこようとは思ってもいなかった。…まぁ、憧れはあったんだけどな。 俺の母親も、近所のいつも実家から送られてきたフエンせんべいをお裾分けしてくれるお姉さんも、 みんなこの学園の出身だ。それに…ウツボット先生もここの学園の教師だという。昔よく遊んでくれたっけ。 (あぁ…今日から俺も高校生かァ。) 中学のときの俺の成績なんて、自慢できるものではなかった。正直此処に入れるかどうかさえ怪しかった。 そんな俺だって、やればできるのだと、証明されたのだ。 示された道は二つあった。一つは勉学に励むこと。…もう一つは、俺の取り柄でもある野球を極めること。 …俺の選んだ道は、その真ん中だった。 結局どちらも棄てられない道なんだ。やることは後悔しない内にやっておきたいしな。 まぁ努力することは増えたけど、そのお陰で此処に推薦で入れたんだ。気分は一新。 眼前に広がる桃色の風景は、まるで俺を迎え入れるかのようであった。 そう…俺が求めるスクールライフ、それは桃色の生活風景―― 単純に家からの距離と男女比で進学する高校を即決した俺を、神は見捨てなかったと云うことだ! 生徒の流れに溶け込み、俺も感慨深いその門をくぐった、その時だった―― 不意に吹き荒れる突風に、俺の視界が遮られた―― 左右を見失うほどの桜吹雪に――俺は思わず顔を腕で庇った。 辺りは桃色の世界に閉じ込められたが、その時間もわずかであっただろう。――それでも俺は… その瞬間が永遠の時を刻むのだろうと思ってしまったんだ。 腕を下ろし、目を開いたその時の光景は俺の脳内のネガに永久に保存されるだろう。 心臓を動かすことすら忘れた頭が、その姿を捉えたのだから―― 桜の緞帳が開かれた先にあったのは、まだあどけない少女の姿――歳は同じくらいだろう。 …まぁそんなことはどうでもいいんだ。問題なのはその外見にあった。 清流を形容したかのような、風に流れる水色の髪…左右に結った二つの河川。幼さが若干残った、 それでいて僅かに女を漂わせた目元、口元。そして吸い込まれるような、深海を髣髴とさせる深い青の瞳。 まるで一枚の絵画の様だった。桜の森を分かつように流れる川のような、そんな情景がそこにあったかのような、錯覚。 その刹那が、俺の人生を狂わせたのかもしれない。あるいは迎え入れられた運命なのかもしれない。 そんな思考を今の俺に巡らせられるわけも無かった。まるで鏃に胸のど真ん中を貫かれたような―― まるで脳天を槌で叩き割られたかのような――まるで髄を落雷に駆け巡られたかのような―― そんな……そんな衝動に駆られたのは――生まれて初めてでこれが最後だろう。 とにかく…この世に神がいるとするなら…今はそいつに心からの感謝と一発の拳をお見舞いしたいぜ。 俺の学園生活は……たった今始まったんだ。 桜花絢爛、儚き因果の途切れ、繋ぎを司る境に妾を迎えるは厳格にして永き時を刻んで久しい煉瓦の門。 それを見て思うは妾を迎えるものは如何なる定めか。新たな歩みの門出に是、胸の高鳴り故に浮つく足に 制止を掛けられる若人もいるはず無かろうに。妾もその真理に外れた瀬に立つものではなく、期待に不安、 様々な思いに酔っているのかも知れぬ。 春風が吹く空の下、桜の花に包まれ揺れる傘に身体を連れ去られそうになったが、突風は僅かな時を 駆け抜け去った。桜のカーテンは開かれ妾の目は風景を取り戻す。 ふと振り返ったときに、そこにいたのが彼であった。……今思えば腑抜けた顔である。 妾を見ているのかそれともその遠くを見ているのか、その時はわからなかったが妾の姿に心奪われていたとは、 妾が思うはずも無く……。 たかが一瞬のことであるとはいえ、目を合わせたまま幾刻過ぎただろうかと錯覚させるほど永い時を感じた。 「今日も豪快だったのぅ。」 そろそろ予鈴がなり始めるであろう頃に野球部の朝練はグラウンドの整備に入る。一年生はトンボを持って 整地に勤しむ中、校庭を後にしようとした時に、彼はその声に足を止めた。 「やっぱり今日も見ていたのか。」 左右に束ねた髪を揺らしながら、彼女はそこに立っていた。その声、その姿、全てを迎え入れるかのように はにかむ彼は、朝早くからご苦労様だなと、嬉しさ反面呆れ反面といったところか。 「すごい当たりだったな。あれが『ほんるいだ』というやつか。」 いつの時からかは不明だが、彼女は今野球にご執心のようで、一生懸命野球用語を覚えているようだ。 彼にその覚えた知識を披露して仕方が無いようだ。 「確かにいい当たりだったんだけど、あれはファールなんだ。」 「むぅ…また知らぬ言葉が出てきたぞ!ふぁーるとは何ぞ!」 …最近はこうして彼の練習を見ることが多い。そしてその後は、新しい野球の言葉を一つは覚えていく彼女。 そしてそれをひとつひとつ教授していく彼。…しかしこれが二人の日常の全容だとは思ってはいけない。 このような光景、一日の内の刹那に過ぎない風景なのだから。 「…なんじゃ、あれは点に入らぬのか。ちゃんとばっくすくりーんに飛んでいったというのに。」 不服そうに物を申す。 「あら~ん。朝からおあついわねぇおふたりさん♪」 背後から妖艶な声。振り返るまでも無くその人物は把握できたが、彼女に"誰"はなく、そのスイッチは切り替わる。 「うっ…ウツボット先生…!」 振り返った彼が発した第一声には、動揺が含まれていた。 「はぁ~いモジャンボ君。今日も朝錬かしら~?がんばるわねぇ。」 陽気さの中にどこか隠しきれない妖艶さを纏いながら白衣を揺らし二人に近づく、ウツボット。 「カイオーガさんもおはよう。」 「……ごきげんよう。」 にこやかに挨拶をするウツボットに対して、やや不機嫌になりつつ挨拶を返すカイオーガ。 これが圧倒的な違いである。何がそんなに不満なのだろうかというくらい、不機嫌な空気をさらけ出す。 単純にウツボットが気に入らないのか、それとも……。 「妾は先に行く。ついてきてくれるな。」 「あ、ああ…。」 その行動にモジャンボもいい加減慣れたものであるが、相変わらず動揺は隠せない。 妬いているのだろうと考えるのは単純だろうが的を射ているかもしれない。しかしこの第三者が男性であっても やはりカイオーガは同じ様な反応を見せる。だからこそモジャンボは頭を抱えているのだが。 「相変わらずねぇ~。」 そんな中、陽気な声を漏らすウツボットは、悪く言えば何も考えていないかのような雰囲気がある。 しかしモジャンボは、彼女が全てを見定めているかのように思えて仕方が無かった。 この交際だって、学園の誰にも知らせたことはない秘匿の恋故、尚更不安が残る。 「そういえばッ…ウツボット先生は…こんな時間にまたどうしたんです?」 とにかく何か話題を変えたいモジャンボの苦し紛れな言葉。 「んんー?ただの観察よぉ。」 「観察?…ああ、植物園ですか。」 「正解☆」 生物担当のウツボットであれば庭園の管理も任されていてもおかしくは無い。…しかし校外の植物園まで 管理しているとはこの教師、ただ者ではない。本人曰く「生物学の授業で使う」とのことらしいが。 「ちゃんとお世話しないといじけて枯れちゃう、困った子達だもの~。」 我が子のように愛でているのだろう、会話の端々からはその愛護心が伺える。 「あ~あ~…貴方も一人で勝手に大きくなっちゃうんだもの~。ねぇ?」 そんなことを言い放つウツボットの表情が豹変したのを彼は見逃さなかった。とろんと恍惚の様な表情を 浮かべて見せた。 「私の背中を見て育った子が…いまじゃぁどこぞのお嬢様を手玉に取るなんて…♪」 人聞きの悪い言い回しであった。…示すものに間違いは無い。 十近く歳の離れている彼女の背中を見て育ったのも事実である。そして…どこぞのお嬢様を手玉に取っているのも……。 「で?」 彼は思う。この人には節操というものが無いのだろうかと。 「何百回ヤッちゃったわけ?」 モジャンボはこの時初めて知った。何も口にしていなくても咽る事ができるのだという事を。 「あらあら…隠さなくてもお見通しなのよぉ?」 そんな様子を見て怪しく笑うはウツボット。 「いえ…っごほっごほっ!…そうではなくてですねぇ…。」 学園内でよくそんな不謹慎なことが言えたものだ、と後に続く言葉は飲み込んだモジャンボであった。 「ふぅん……。」 なにやら思うところがあるのだろう。幾重にも含みを込めた笑みを浮かべてウツボットはモジャンボを見る。 「まぁいいわ。…そろそろ授業が始まる頃かしら。準備してこないと。」 呆気に取られているモジャンボを尻目に、彼にすれ違い過ぎ去っていくウツボット。 ふわりとモジャンボの鼻腔を擽る不思議な香り――甘いようでどこか鋭いそれに…彼はなにやら危険な色香を感じた。 「あ、そうそう――」 白衣を翻して腰を捻り、上半身だけ彼のほうに振り返り、彼女は一言余計なお節介とも取れる大切な一言を告げた。 「性病と避妊にはちゃんと気をつけたほうがいいわよ~♪」 僅かな時間に二度も咽込んだモジャンボであった。 「……何用ですか?」 抑揚の無い声で言い放たれたその言葉は、俺の心臓を更にきつく締め付けた。 言葉が出ないとか言う次元ではない。…情けないことに、一目惚れした上に釘付けにされた言い訳すら言えなかった。 「……妾に何用かと聞いておる。」 …その言葉に刹那の違和感を感じた。言葉遣いだ。何故第一声とこれほど印象が違うのかと思ったら――妾って何? 「ふむ…まぁよい。妾の立ち振る舞いを堪能するとは不届きな輩だが大目に見てやる。案内せよ。」 ……案内? 「へ…?今何て?」 「だから、妾を教室まで案内しろと言っておる。このように広い建物の中教室を探すのは面倒だと思わぬか?」 ひょっとして…俺ついてる? 今年の女運、よかったもんなぁ…待ち人は来る!…お御籤の結果を信じて待った甲斐があった! 「…わ」 これは天啓だ!ありがとう神様!俺はっ… 「わかりましたっ!」 この任を見事にやり遂げ、彼女の心を掴んでみせる!! 「うむ…わかればよいのだ。」 一歩、二歩、三歩……先ほどまでの束縛感が嘘のように、俺の足は軽々と動いた。 四歩、五歩、六歩……彼女との距離が、どんどん近づいてゆく――そして、七歩―― 「さぁ、行きましょう!」 彼女の何所にでも触れることのできるその距離で、傘を持った右手と対照に暇そうにしていた、右手を掴んだ―― がしっ! 「――――ッ!」 その時だった―― 突如掴んだはずの右手が視界からぶれた。それも一瞬のことだったが、認識できなかったわけでもなかった。 しかし……しかし……どれほど動体視力を鍛えようが、身軽であろうが、かわせないモノがある。 ヒュンッ! 俺の左の頬――風を感じ…… パァァァァァンっ!! その直後に、目を見開いたまま首を真横に捻った俺がいた…ような気がした。 本当のところは酷い耳鳴りとブラックアウトしかけた視界がそこには広がっていた。 ……ここに俺のありがたい体験談を述べておこうか。 この世の見えても避けられないもの――それは女の媚と、平手打ちだ……。よく覚えておけよ……畜生。 「無礼者が……。」 吐き棄てるように放った言葉と共に侮蔑の目線をくれる、目の前に俺の女神。 「妾に触れようなど愚直も愚直。この様な下賤な者までこの学園に蔓延らせようとは堕ちたものよ。 父上が何故この学園を推したのかを信じかねるわ。」 ……幸いなのは、こいつが何を言っているのか半分わからなかったことだ。 この時点で全部聞き通せていたものなら俺の心は砕け散っていたかもしれない。 「………。」 暫くの沈黙が時を止めたかのようだ。かろうじてその流動性を見失わなかったのは、 桜の花弁が絶えず地に落ちては風で舞い上がっていたからに違いない。 遂には周りの生徒達の視線が堪え切れなくなったか、大きな傘を持った海神は 踵を返してそそくさと学園の門を潜って行った。 無礼な…なんと無礼な男か。妾の手をいきなり取るなど無礼千万!ああ、なんという愚かな男。 そして下賤極まりない! …第一印象はそんなところだろうか。それはもう腸の煮えくり返るような気分であった。 ……衝動と言うものは恐ろしいものだ。男の頬に平手を張ったことなどただの一度も無かった。 それなのに妾の思うところとは全く別に体は勝手に勅命を下す。 後悔などという似合わない情に囚われこそしないが、初めて殿方を叩いた動揺で…冷静さを事欠いていた。 そしてそれを取り戻す頃に、再び悩まされることになろうとは……失態である。 「妾の教室は……どこかッ!?」 否――冷静さなど何処にも無かったのかもしれない。 今思うに、元から生徒の流れについてゆけば、それで全ては事足りたのかもしれぬ。 ………。 妾も何を考えていたのか…この時ほど自身の理解が不十分だったことは無いであろう。 来た道を引き返し、赴いたのは、依然として桜散り行く定め見守りし冷厳なる門扉。 …未だに何を呆けているのだろうか。しかしそのようなことは今はどうでもよかった。 「…もう一度機会をやろう。」 その者に向き直り、……ああ、やはりこの回顧だけは今でも堪えられぬ! 「"黙って"妾に一切"触れることなく"、妾の教室まで案内せい……。」 何故妾はこの様な…愚鈍な朴念仁などに…っ。何度も思い返した節の数え切れないこと。 これが馴初めとは……不覚も甚だしい次第である…。 続く

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