5スレ>>248

「5スレ>>248」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

5スレ>>248」(2008/02/28 (木) 16:52:36) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

俺はジュペッタの気持ちを、表情と彼女の身振り手振りで理解している。 いや、それが果たして正しいのかどうかは分からないから、理解した「つもり」になるのだろうか。 ジュペッタと会話をすることが彼女の気持ちを正確に知る一番の方法なのだろうけど、 それだとジュペッタの命を削ることになってしまうから却下だ。自分の都合で彼女に迷惑をかけるわけにはいかない。 「……よし」 洗面所で一人、俺は呟く。 超心理学、オカルト、都市伝説……etc。 そういうものは微塵も信じない俺だが、今回はこれに望みを賭けてみる事にした。 超心理学の一種、言語を使用せずに精神を使って相手に自分の意思を伝える能力、 テレパシーである。 - episode 2 以心伝心 - 「……分からん」 仕事の帰り。 俺は市街地の本屋に訪れていた。 ここの本屋は他の本屋よりも群を抜いて品揃えが良い。 ハッキリ言って市街地などには足を踏み入れたくないし、存在自体認めたくないのだが、 ここの本屋「だけ」は認めざるを得ないと思っている。 俺が手にしたのは、超能力の謎を解き明かす、というテーマの本だ。 多少でもテレパシーがどのようにして伝わるか等が分かれば良いと思ったが、 いざページを開いてみると訳の分からない単語ばかり並んでいるので、すぐに本を元に戻した。 他に本は無いか探そうとしたが、どうせ同じ結果に終わるだろうと踏んだ俺は、さっさと家に帰ることにした。 今年は初雪が遅かったせいか、二月の下旬に入ってから急に雪が降ってくるようになった。 地面は雪で覆われ、灰色のコンクリートは隠れてしまっている。 それでも人の多さ、車の多さは変わる事は無かった。 既に日は沈み、月が顔を出しているにも関わらず、市街地は無数のライトが街をこれでもかと照らしている。 ここにいる人たちはこんな所に居続けて昼と夜の区別が付かなくならないのだろうか。 少なくとも俺はここにいただけで頭がどうにかなりそうになる。 結局、ここにいる人と俺は永遠に分かり合えることは無いのだろうと、ちょっと残念な気持ちを溜息に乗せて吐き出す。 暖かく、白い息が空気へ飛び出したのは一瞬。あっという間に溜息は周りの空気に溶け込んでしまった。 ちょっと身を縮めて、俺は家路を急いだ。 コートに付いた雪を払って、靴を脱ぐ。 家の中は暖房が効いているお陰か、暖かい。 冷え切った手に血が流れ、暖めてくれるのが分かる。 荷物を自分の部屋に置くと俺はキッチンへと向かった。 「ただいま、ジュペッタ」 既にジュペッタは夕飯の準備をしてくれていた。 彼女は俺に気づくと笑顔になり、俺に向かって一目散に飛んできて―― ぼふっ。 ――俺の胸に飛び込んだ。 「悪い、ちょっと待たせたか?」 そう言って俺はジュペッタの頭を撫でる。 あの時――ジュペッタと恐らく最初で最後になるだろう会話を交わした時からというものの、 ジュペッタはこうやって俺に甘えてくることが多くなった。 彼女の行動に、二十年余りの人生をあまり女性と関わらずに生きてきた俺はドキドキされっぱなしである。 最近になってかろうじて抗体が出来るようになったが。 というか、こんな所、端から見れば恋人同士にしか…… 「っと、何言ってんだ俺」 危うく妄想の世界に旅立とうとしていた自分を引き戻して、それとジュペッタにそろそろ離れるように言って、 俺は席に座った。 今日もトースト。それとミルクが付いている。 夕飯としてはきっと簡素なものだと思うが気にしない。少食の俺にとってはこれ位がちょうどいいのだ。 ちょっと温かったが、それでも十分な美味しさ。 焼き加減とか、バターの量だとか、俺好みに仕上がっている。 「ジュペッタ、お前最近、俺の好みが分かるようになったじゃないか」 俺にそう言われたジュペッタは照れくさそうに頬を掻いた。 その仕草に俺は笑う。ジュペッタも笑った。 食事の時間は十分弱。 皿とマグカップを片付けた俺は、ジュペッタを呼ぶと、彼女を席に座らせた。 理由は他でもない、テレパシーの実践である。 「ジュペッタ、いいか……」 俺はジュペッタを真っ直ぐと見据えて語る。 ジュペッタはこれから何をするのか分からない、という風に首を傾げていた。 「俺の目を見てくれ」 俺はそう言うと、頭の中にイメージを浮かべ、それをジュペッタに届くようにと、心で念じる。 俺のいつもと違う雰囲気を感じたのか、ジュペッタは真剣になって俺を見つめた。 端から見れば互いに見詰め合っているようにしか見えないのだが。 俺が頭に浮かんだのはどこまでの続く道路と草原、青い空、それと気球。 これがジュペッタに伝わってくれればテレパシー成功なのだけれど…… 「ジュペッタ……何か伝わってこないか?」 俺の問いかけにジュペッタは首を振った。 それを聞いた俺は更に念じてみる。 もっとも、俺はエスパーではないので、思いの念じ方など全く分からないのだが、とにかく心で願えば伝わる……と思う。 さっきからずっとジュペッタを見つめて俺の目がおかしくなっているのか、ジュペッタの頬が赤くなっているように見える。 それでもテレパシーを成功させるために、俺はジュペッタのことを見つめ続けていた。 「……」 沈黙。 時計の秒針を刻む音だけが聞こえる。 そして、互いの沈黙を打ち破ったのは―― 「……////」 頬を真っ赤にして、慌ててキッチンを立ち去ったジュペッタだった。 「あ、ちょ、ジュペッタ!?」 あまりに唐突なジュペッタの行動に、ただ俺は彼女を見送ることしか出来なかった。 「なんだろ、いきなり……」 先程まで張り巡らせていた神経をふっと解き、俺は椅子にもたれかかった。 と同時に頭に冷水を喰らったかのように、思考が急速に冷静になった。 「……つか、テレパシーとか、何信じてんだろうな、俺」 昨日の夜、なんとかしてジュペッタの気持ちが正確に分かることが出来ないものかと考えに考えた結果、 テレパシーという自然法則に合致しない、そもそも実際にあるのか、もしあったとしたらそのような類の力を持った人間しか出来ないような技に、 望みを賭けた俺が馬鹿らしく思えた。 会話も駄目、テレパシーも駄目……。 他にジュペッタの気持ちを知ることが出来る方法は無いものだろうか? 俺が自力でジュペッタの気持ちを理解するしか方法はないのだろうか? きっと何か他に方法があるはずだ、と頭の中で必死に考えるも、どうも肝心な部分が霧の中に隠れていて思いつくことが出来ない。 その歯がゆさが俺を苛立たせ、むしゃくしゃして俺は頭を掻いた。 そして、腕組みをして再び考え込む。 ――時計はいつの間にか十時を回っていた。 あれから小一時間ほど考え込んでいたとは思わなかった。 「もう、寝るか……」 考えるのに疲れ、全身がちょっとだるい。 こういうときは風呂に入ってすぐ寝るのが一番だ。 考えるのはここで止めにして席を立った、その時だった。 トントン。 肩を叩かれて振り向くと、ジュペッタが心配そうに俺の事を見ていた。 「ああ……もしかしてずっと見てたのか?」 遠慮がちにジュペッタは頷いた。 考えていることに集中していたせいか、ジュペッタの気配に全く気づかなかった。 「ちょっと迷惑掛けたな。驚くのも無理なかった。ごめん」 ジュペッタは首を振る。 そして俺にそっと、ミルクの入ったマグカップを手渡してくれた。 「これで元気出せ、と……ありがとな」 ジュペッタから受け取ったミルクは、とても温かくて、体の芯まで温まっていくのが良く分かる。 しかしちょっと熱いので、時折息を吹きかけて冷ましつつ飲む。 「……ジュペッタ」 俺はマグカップをテーブルに置いて、ジュペッタの方を見た。 「俺さ、エスパーでも何でもないから、お前の表情とか身振りとかでしかお前の気持ち、分からないけどさ、 もし……それで俺がお前の気持ちを変な方向に解釈したときは、遠慮なく言ってくれ。 俺もお前の気持ち、ちゃんと理解できるように、努力するから」 あれから考えに考えて出した答えは、前々から考えていた、何にも頼らない「自力で理解」という方法。 最初は勢い任せに言ったのはいいが、最後は消え入るような細い声になっている、 竜頭蛇尾な自分が情けなく感じた。 俺の話を聞き入れたジュペッタは、俺の胸を指差して、 その指を今度は自分の胸へと向けた。 「……ああ」 ジュペッタが何を言いたいのか、自分でもびっくりするぐらいに一瞬で分かった。 俺の胸――つまり心と、ジュペッタの心。 その二つは見えない何かで結ばれていて…… 「私たちは心で繋がってる。 だから互いに何を思ってるか、口に出さなくても理解できている。 ……そう言いたいのか? で、俺の心配は所詮杞憂、だと」 後半部分は俺の勝手な解釈である。 それに対してジュペッタは頷いた。 これは後半部分全部ひっくるめて正しいと捉えていいのだろうか。 「はいはい、どーせ俺の杞憂でしたよ」 あの時の事といい、今の事といい。 俺はジュペッタに色々と教えられすぎである。 きっとジュペッタ、俺よりか修羅場をくぐってるな。もしかして年の功? 歳がいくつかなのは……知らないが。 意思が互いの心から心へ伝わる――以心伝心という奴か。 なんだかそんなことを言われると嬉しくなる。 不意にほころんでしまった俺の顔を見て、またもやジュペッタは俺の胸に飛び込んできた。 「ちょ、おい、不意打ちは反則……」 しかし、以心伝心とはいいつつも、時折出るジュペッタの唐突な行動の真意が、俺には理解することが出来なかった。 それも、いつか分かるときが来るのだろうか。 とにかくテレパシー云々で相当な気力を使った俺にその結論が出せるはずも無く、 俺は丁度いい具合に冷めたミルクを一気に飲み干した。 間もなく三月に入ろうとしている。だが、春の足音は未だ全く聞こえない。 ――――――――――――――――――――――――――――――― ・>>234が前回のお話。 ・ジュペッタよりも主人公が目立っている件について。 ・主人公が念じたイメージ(道路、草原、青空、気球)は眼科で検診受けるときのアレ……なんて言うんだっけ? ・自分が今まで投下してきたSSと似たような表現が一杯なのは自分の語彙が少ないから。 ・構成が果たして成り立っているのか分からない自分はもう一度国語のべn(ry ・くそ、毎回毎回卑屈になってる。ちくせう自分のいn(ry ・結局自重してないorz

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。