5スレ>>257

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『君の実力がその程度とは、私の見込み違いだったな。』  最後のジムリーダー、大地のサカキの言葉を背に受けながら、 若き萌えもんトレーナーは瀕死の萌えもん達の入ったボールを抱えて萌えもんセンターに走った。  天候は雨。奇しくも、彼がサカキに負けたと同時に振りだし、吹き荒れる砂嵐をも洗い流す程の『涙雨』となった。    雨のあがった次の日に~On the next day when the rain stopped~前編 「……ってええええっ!!」  全身が引き裂かれる様な痛みに、カイリキーは絶叫しながら飛び起きた。もっとも、折れた腕が邪魔になり、上半身だけを起こす形となったが。 「起きたか……、それと叫ぶな、傷に障る。」  横のベッドで寝かされていたストライクが淡々と喋る。 「……ここはっ……!あたい達……っ」 「見ての通り、萌えもんセンターだ。我々は、あの男に負けた。ジョーイによれば、マスターがずぶぬれになりながら私達を運んできたらしい。」  その言葉の先を読み、ストライクが状況を説明する。 「パルシェンとリザードンは未だ集中治療室から出てこない。ギャラドスとエビワラーは別室で寝ているが、それでも私達よりは軽傷だ。」  嫌な音を立てて軋む身体をねじ曲げて見ると、ストライク自慢の両手の鎌にはぐるぐると包帯が巻かれていた。  自分とは違い折れたりしている場所は無いようだが、それでもじしんの直撃が相当答えたらしく、全身には痛々しい程の治療の痕が見られる。 「……マスターは?」 「別室で治療と……萌えもんリーグの委員から事情聴取を受けている。萌えもんバトルの最中に、お前をかばった事について、でだ。」  その言葉に、カイリキーは思わず天井を見上げた。あの時、トドメに放たれたいわなだれは、間違い無く自分を飲み込んだ。 あの技は下手をすれば死んでいたかも知れない、それほどの威力があった。その濁流に、マスターは飛び込んだ。自分を助ける為に。  だが、萌えもんジムバトルの公式ルールでは、指示と薬の使用以外の対戦トレーナーの介入を禁止している。 それは、誰もが知っているルールだ。一般同士での対戦ですら、萌えもんバトルにトレーナーが直接的に介入する事は無い。  公式ルールを破ればどうなるか、彼も、そして彼の持ち萌えもん達とてよく知っている。 厳重注意、罰金にはじまり、下手をすれば全てのジムバッジ没収。最悪の場合、萌えもんリーグ参加権の永久剥奪。  勿論それらは、よほどの悪事でなければ下されない処分だ。悪意ある萌えもんトレーナーを横行させないでもある。 だが、萌えもんバトル中に自分の萌えもんを庇うというのは、前例がなかった。  つまり、どのような処分を下されるのかが、まるで分からないのだ。 「あたいの…せいで…。」  折れていない腕に力が篭る。悔しかった。自分の力不足の所為でマスターを苦しめた上に、 今まさにマスターの夢が閉ざされようとしている時に、のうのうと寝ていたくなかった。 「……案ずるな、あの時、あの場にいた審判がその委員だ。萌えもんバトルにおける過度の攻撃は禁止されている事もルールにあるし、 証明もされている。お前が不安なのも分かるが……おい、待て!」  迷っていられなかった。悲鳴を上げる身体を叱咤して起き上がり、ストライクが止めるのも聞かず、彼女は病室を抜けだした。  すれ違うジョーイや職員達を何とかやり過ごし、カイリキーは萌えもん病棟から一般病棟へ移動した。 見つかれば、また一からやり直しだ。  大柄な彼女にはとても辛い事だが、一つの使命に向けて全ての細胞が行動しているという感じがあった。 周囲を気にしつつ病室の扉一つ一つに聞き耳を立てるという地味な作業を繰り返し、それでも見つからず、途方にくれてある部屋の前を通った時だった。 「……では、君はカイリキーを助けるために飛び込んだと言うのかい?」 「そうです。」 (マスターの声!)  聞き覚えのない声とある声に、すばやく扉に張り付いて聞き耳を立てる。すぐそばを通りかかった職員が驚いているが、マスターのためには気にして入られない。 「成る程……。」  感心したのか、呆れたのか分からない声と共に、何かを書く音。声しか聞こえないのがもどかしい。 何を聞いたのか、何を話したのか、何を書いたのか。叶うならば、今すぐ部屋に入ってそれを知り、自分の口で弁護したい。 「…以上で、事情聴取は終わりだ。お疲れ様。処分は後日伝えるから、しばらくこの街にとどまってて。その間に、身体と萌えもんをゆっくり回復させなさい。」 「はい。」  後日。彼女が嫌いな言葉だ。はっきりしない事を、彼女は(と言うより彼女等は)何よりも嫌った。 マスターもそれを理解していて、彼女等に何かを教える時、相談する時は全員車座でじっくりと話し合った。  マスターも、委員もそれ以上話そうとせず、何かを片付ける音が聞こえる。どうやら本当に終わったらしい。 結局殆ど情報を得る事は出来なかった。それ所か、なまじ中途半端に聞いたせいで余計にイライラが募る結果となってしまった。 (とにかくばれないうちにここから立ち去らないと……!)  彼女は気付いていなかったが、勿論しっかりばれていた。突如肩をつかまれ、高々と担ぎ上げられる。持ち上げたのは、センターで警備員をしているサイドンだ。 「な、何するんだよっ!?」 「それはこちらの台詞ですっ!!」  その答えは、別の所から飛んできた。腰に手を当て、眉を怒りの形にしているのは、このセンター名物、怒らせると怖い事で有名なジョーイであった。 「あなたはもともと絶対安静の体なんですよ!そんな体で無茶してきて、今すぐ病室に戻ってもらいます!」 「うるさい!マスターの夢の危機なんだ、ほっといてくれ!!」 「お だ ま り っ !!」  萌えもん並みのかいりきで首根っこをつかまれ、こわいかおで睨み付けられてカイリキーは震え上がった。 (ほ、本気で怒った時のマスターと同じぐらいこええっ…!) 「とにかく、あなたは病室に戻ってもらいますっ! サイドン、この子を病棟まで運んで。」 「分かりました、マスター。」  自信たっぷりに頷いたサイドンは、カイリキー軽々と病棟まで運んでいく。 「離せー!降ろせー!」  何とか逃れようとじたばたを繰り出すも、防御も鉄壁のサイドンに効果は全く見られなかった。 「あれは、君の萌えもんかい?」 「そ、そうです。。。」  丁度部屋から出てきた委員とマスターがその珍騒動を見送っていた。 「あれほどの怪我を負ってるのに、君を心配してここまで来るなんて献身的じゃないか。 大切にしなさい。」 「は、はぁ……。」  笑顔を浮かべる委員に対し、マスターは顔を真っ赤にして俯いていた。                                          続く  次回、マスターの告白にパーティに衝撃が走る!!

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