5スレ>>258

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『こちら上空偵察班。現在ヤマブキは完全に封鎖状態にある。ターゲットにより完全に支配された模様。 管制からの指令を待つ。地上班は各ゲート前にて待機。繰り返す。地上班は各ゲート前にて待機……』 ヤマブキの茜色の上空には巨大な鳥の影が幾つかあった。絶えず鳴り響くプロペラとモータの音。 事態はついに大きな局面へと、向かおうとしている―― 「……えー現在私はヤマブキの高度七百メートル上空にいます!こちらからも見て取れるように… 中央交差点の様子をご覧ください。車一台たりとも走っていません。人の流れも現在殆どありません。 代わりに、黒ずくめの服を着た集団が…あたりを見張っているのでしょうか?あちらこちらに姿を確認できます。 一体街中で何が起こったのでしょうか!?一角の小規模な爆発から早くも四時間が経過しようとしています。」 陽が沈もうとしている――そんな中、様々な時間が入り乱れては一つの未来へと収束しようとしていた。 -+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+- 【萌えっ娘もんすたぁ Another Reason】 第一部 08 ヤマブキ大封鎖線 ~止水に投じた石は~ -+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+- 『……んざ……も……!…ざ…ている…い…でざ……ざざざ………!ざざーー……も……で……ざざ…』 「だめだな。…電波塔がやられているのか。」 外の状況はどうなっているのか。それを把握する手立ては途絶えた。 機械も油がなければただの鉄くず、電波がなければツールギア(※1)もただの腕輪である。 「くそ……エリカや師匠にも連絡が取れないのか……。」 事実上、外部との干渉を断たれたに等しい。 最初から戦力を分散させる作戦だったのか、しかしそれにしては用意がよすぎる気がする。 かといって何故これほどにも彼らロケット団員の姿が見当たらないのか…その点も気になる。 …結局色々思考を張り巡らせても、少年の疑問に答えられる、あるいは答える者はいない。 「……。」 何段の階段を駆け上がってきただろうか。既に息も上がり始め、呼吸は肩を上下させている。 そろそろ指針を見失いそうだ、と少年は思う。一体このビルに何があるというのだろうか。 『来て…。』 ……すべてはこの声に踊らされている。少年の頭に直接語りかけるような、そんな声。 一体何が目的なのか。彼らを騙しているのか。それとも助け舟のつもりだろうか。 「…誰だよ。」 少年の出口のない迷路を彷徨う思考は、ついに苛立ちとなって彼を満たしてゆく。 「あんた誰だよ!何が目的だっ!…何故俺に…いや、何処から話しかけている…!」 静寂に向かい叫ぶ少年。その声は虚空に吸い込まれ掻き消えていった。 再び襲い掛かる沈黙。誰もいないフロアの一角で、窓から差し掛かる陽炎だけが少年を照らし影を落とす。 「……っ!」 どれだけ握った拳に力を入れても、その問に答える者は、いない。 ………。 長い長い時間をかけて帰ってきた声は、進展を促すに十分な声であった。 『真っ直ぐ…、来て…。』 眠れる姫は待っている。 救世主を……王子様を……即ち、彼を。 コンクリートで固められた冷たい壁。そこに無造作に刻まれた傷。鋭利な刃物で一閃された様なその一つ一つからは 激戦の痕跡が伺える。……倒れているのはゴルバットやコラッタ…ベトベターからアーボ…死屍累々という言葉が相応しいか。 壁に埋もれて意識を失っているビリリダマや床に突っ伏しているコイル。 デルビルやスリープなどは身体を震わせながらその動きを止めて横たわっていた。 この集団ざっと数えたら三十は指折り数えられる程だが、それを見下ろしながらエントランスの中央に佇む者が一人。 「他愛ないですね…数の暴力を持ってしてもこの程度ですか。」 ばさり…とその優雅な翼をはためかせながら誰に言うまでもなく、呟く。 「これではマスターをわざわざこの街まで出向かせるまでも無かった。」 肩透かしを喰らったと、彼女は無愛想な表情を見せる。 「………。」 あたりを見回す。エントランスには受付のテーブル… その上には意識を失ったベトベターが四肢をぶら下げうつ伏せ状態で倒れている。 しかし彼女の視線はそんなものを気にも留めなかった。 「……いるじゃないですか。」 彼女が睨みつけたのは、その奥。 「隠れているおつもりですか?めんどいんでさっさと出てきてください。」 誰もいないはずの空間に向かい話しかける。 反応は……あった。 「ふふ……随分と気丈なオニドリルさんだ。」 その言葉が紡がれた直後だった。 どごぉんんんん…… 爆音と共に壁が崩れ落ちる。舞い上がる土煙。砕かれた壁は瓦礫の山を築いてゆく。 「……。」 煙の演出と共に、空いた穴の先から登場したのは…二つの影。 「我々の部下どもが失礼したね。」 彼女の前に現れたのは背の高い青い髪の男……髭面で褐色の肌。そして、それに彼の前を守るようにして立ちはだかる、 巨大な萌えもん。目まで覆い隠すような角兜を装備しているが、伺えるのは見たものに戦慄を覚えさせるであろう鋭き眼光。 「…はじめまして。すずと申します。」 …が、彼女はその眼光に臆することもなく毅然とした態度で、端的に言い放った。 「ふむ…社交に関しては合格だ。…私の名はラセン。こいつはトウテツと言う。」 にやりと口角を吊り上げて顎鬚を右手で撫でながら、ラセンと名乗る男はすずに向かい自己紹介をした。 先ほどとはまた何か違う…見えない威圧感が場を、支配した――。 そのフロアは水浸しになっていた。床に臥せた萌えもん達は水を被ったまま気絶している。 戦場に立ち尽くすのは二人の少女。互いに目を向けたまま逸らさずに距離を置いて静止していた。 「ふぅん……ついに親玉登場ってわけ。」 今までの敵との格の違いを感じながらも、余裕の表情は崩さずに一方の少女は言った。 「私のステラに敵う相手なのかしら?…これで弱かったら肩透かしもいいところだわ。」 「油断しないでカスミ。」 彼女の挑発に水を差したのは勿論彼女の相棒、ステラ。釣り合いが取れているようで実のところよく似た二人。 衝突も多いお転婆同志であるからこそ大事な局面では互いを制し合うベストパートナー。 「相手も水使い…彼はニョロボンね。格闘も得意だから近接距離では不利よ…。」 冷静な分析をカスミに伝えるステラ。それ以前に…いろんな意味で『やばい』相手なのは直に伝わってくるわけだが…。 「くふふふふふふふふふふふふふ…。」 怪しげな笑いを口元から漏らす、カスミに対峙する少女。歳は…あいつくらいか、とカスミ。少年のことだろう。 「ヘンな人ぉ。どうしてミシャ達のケイカクをジャマしようとするんだろーかなぁー?くふふー…死ぬだけなのに。」 ピッピの人形を腕に抱く少女…自称ではミシャと言っていたが、随分と歳に相応しくない言動であることが伺える。 一見無邪気にも見えるが…その中に隠されている狂気は今にも彼女の身体を突き抜けて飛び出してきそうだった。 「ミシャ様、いかがいたしますか?早々にでも始末は可能かと思われますが。」 それを制御しているかのように杓子定規な態度を見せるニョロボン。 「うーん。殺しちゃうとめんどくさいからぁー…遊んであげてー。」 「畏まりました。」 ヘッドドレスに、ゴシックなドレスを着た少女、ミシャは彼女の忠実な駒に命令を下す。 瞬時に警戒を強化する様は、彼の構えから見ても伺える。 隙がない。カスミ及びステラが心の中で各々漏らした感想は同一のものであった。 これはいよいよ余裕の仮面も脱がざるを得ないのか、カスミの表情も険しくなった。 「暑苦しいが私にはそんくらいのほうが似合ってるってことかな。」 熱気を放っていた。その一室で繰り広げられている戦いは、堪え難い熱さに満ちていた。 絶えず放たれる火の玉。それに立ち向かうはしなやかに脚を振り回す格闘家。 「師範。ここは某に任せて貴方は先に――」 「だめよ。私はサワムラのマスターだからね。…上はあいつに任せましょ。」 「無駄なおしゃべりをしている暇があると思って?」 その瞬間、今までよりもずっと大きな火の玉がサワムラめがけて飛んできた。 「っ!!」 その一撃を全身で受け止めるサワムラ――もとい、回避が間に合わなかったのか。 「ぬぅぅぅぅぅっ!」 地を踏みしめた両足が徐々に火の玉のベクトルの延直線状にスライドバックしていく。 ニ、三メートル後ろに吹き飛ばされただろうか、ようやく火の玉はサワムラーの身体から拡散していった。 「……ふぅーっ…!」 衣服のあちこちが焦げているその様子からその攻撃の威力が物語られている。 甘んじて受け止めたサワムラの顔色にも余裕はない。決定打とまではいかないが、それでも確実なダメージであった。 「やるわね。あたしのノヴァの一撃、耐えられるとはね。防御の心得も会得している。雑魚相手なら一発で消し飛ばせるもの。」 熱気で歪んだ空間の向こう側から、女の声。 「……あんた、フレアとか言ったっけ?」 サワムラの様子を心配しながら、シズクは対峙する女に対して話しかける。 「街を丸ごと混乱に貶めておいて…何が目的なのかしら?」 その言葉には憤りが篭められている。表情こそ変わらないものの、その声からはむき出しの怒りが伝わる。 「フフ……。」 怒りの矛を向けられた女…フレアは、真っ赤なツインテールを揺らしながら笑みを漏らす。 「そんなことも知らずに…わたしらに盾突いているわけぇ?」 人を小馬鹿にしたような態度でそう言うのは、フレアの手前に立ちはだかる一人の萌えもん。 黒髪の左右から角を生やした狼のような萌えもん…ヘルガーのノヴァ。 すらりと長く伸びた足、括れた腹を隠さず露出しているその姿は…悪魔のような容姿と言うのが言葉としては適切か。 「……。」 確かに、敵の勢力など推し量ってもいなかった。…一体彼女らは何者なのだろうか? 『そこです……。そこに…私はいます……。』 その扉は重厚な雰囲気を放つ一室にあった。 薄暗いフロアの中黄昏の夕陽を反射する、金属の光沢を放っている大きな扉。 その上には、その先の部屋の名前が刻まれたプレートがあった。 【神秘波動生体実験室】 …とてもいい趣味とは言えない名称である。 『開いて…そして……私に会いに来て…ずっと…ずっと、待ち焦がれていました。』 「……わかった。」 一歩、二歩、少年は扉に近づく。そして三歩。扉の前に立つ。 『この時を……ずっと……。』 そして目の鼻の先にある扉に手をかけて、ゆっくり体重を掛けてゆく。 『あなたに会いたかった――。』 「どうやら貴方のような幹部クラスの人間が四、五人…ここにいるようね。」 不意にそんな憶測を並べて口にする。しかしそれは憶測であって憶測ではない。 「…やはりただの超能力者ではないようですね。人智を越えた神の能力、ともとれる…さすがはヤマブキのジムリーダー。」 会話をしているのはそれぞれの手持ちを展開している二人の女。…フーディンとモルフォン、それぞれ既に臨戦態勢である。 「自己紹介は不要のようね。フーカ、くれぐれも油断はしないように。」 「はいはい、無茶しない程度にがんばりますよぉ。」 両手で持つ大きなスプーンを頭上で振り回しながら答えるフーカ。 「私は、ミント。ロケット団嘱託組織『ライトニング』の幹部が一人。 …メイヒ、我々の実力を見せ付けてあげなさい。」 「はい。…ふふ、では行きますよ。」 メイヒと呼ばれたモルフォンの身体から、無数の蟲が湧いて現れたのが合図、戦の火花は爆ぜて舞い散る。 「ロケット団嘱託組織・秘密営利機関ライトニング――なるほど小耳に挟んだことはあります。」 キレイハナを従えた女は、対峙する男の言葉を飲み込んでからそんな言葉を漏らした。 「この世界の闇で活躍するロケット団よりもさらに深淵にて暗躍する組織…噂程度に過ぎないかと思っていましたが…。」 「噂に踊らされるようでは永遠に支配されたままだ。自ら追求してこそ真の器と言うものだ、そう思わないかね?」 若いが威厳を持った立ち振る舞い、台詞。間違いなくリーダー格だと彼女は瞬時に悟った。 「しかし時として人の間を飛び交う流言には真実の断片が含まれている。 それを見逃さない目を持つことが支配への第一歩なのだよ。タマムシシティジムリーダー、エリカ嬢よ。」 そして彼の下に従うのは、黒き刃を右手にもった褐色肌の娘。……見たことない種である、とエリカ。 「さて、少し喋りすぎたようだ。残念だがこのミカゲの姿を見たものは始末しなくてはならない。 しかし貴方ほどの女性を亡き者にしてしまうのは非常に惜しまれる。我々と共に来てはもらえないだろうか?」 急にミカゲと名乗る男が提案したのは、なんとエリカの勧誘であった。何を企んでいるのか判りかねる。 …しかしそのような誘いに乗る考えなど最初から持ち合わせていない。 「謹んでお断りさせていただきますわ。そもそもわたくしがそのようなお誘いを快く受け入れると思っておいでで?」 「ふむ…試させて頂いたのだよ。この私に匹敵するか否か、その意思の強さをね。」 減らず口を叩く紳士である。それに付け加えて自信家か、はたまた傲慢か。 しかしながらそれに伴う人格と実力を持ち合わせているのは間違いない。エリカは警戒を強める。 「で?あなた方の目的は一体何なのですか?」 平然とした態度を崩さずエリカは質問を続ける。 「せっかちだねぇ君も。」 苦笑を漏らすのは頂点に君臨する王者。物事には段取りと言うものがあるのだよと、エリカの問を遮断しているかのようだ。 「その前にまずは私たちと踊っていただこうか。アビス。」 「了解。…ふふ、ではいきますよ。」 黒き刃――刹那を刻むその速さでキリエレに飛び掛かる。 少年は驚いた。かの有名なシルフカンパニーにこのような設備があるとは思わなかったからだ。 人が丸ごと入りそうなカプセルが並ぶその一室の中央に飾られていたのは、一人の萌えもん。 一糸纏わない姿のままで、溶媒に満たされたカプセルの中に漂っている。 左右には羊の角のように巻かれた癖毛が一対、長く伸びた脚、全長は長い。 そして尤も特徴的なのは、額から生えた一本の鋭い角――。 「………!」 次に少年が感じたのは、憤りであった。このような実験装置に押し込まれて生体実験のサンプルにされていたのだろうと 思うと、居た堪れない気持ちが心の奥からこみ上げてきた。何よりも…この施設に既視感を感じたからだ。 そう……あれは、タマムシの地下にあったロケット団のアジトの一角――。 『よく…来てくれました…。』 依然として話しかけてくるのは、かの女性の声。 「…そろそろいいだろう…姿を見せろ。」 少し荒々しい口調で少年はその声に話しかける。空を掴むような気分で正直そろそろ苛立ちが爆発しそうだと感じていた。 『あなたの目の前に…います。』 「冗談もいい加減に……っ!?」 まさかとは思った。しかしそれ以外視認できる相手はいない。 『そう…それが私です…。』 ずっと話しかけていた声の『主』は、目の前のカプセルの中に封じられていた。 08 ヤマブキ大封鎖線 ~止水に投じた石は~ 完 後編に続く ※1 ツールギア…次世代ユビキタスネットワークデバイスのこと。多機能化した携帯電話の俗称を『ツール』と呼ぶ。    形状によってツールの接尾に来る名称が変わる。という設定の【造語】です。 -+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+- 【設定集】 ※休業中 設定集は次回に丸投げ(おい

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