5スレ>>336

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【独白シリーズその1 -邂逅-】 思えば、俺が萌えもんという存在と触れ合いだしたのは、まだ物心もつかない3、4歳ぐらいの時。 兄弟もおらず、田舎に住んでいるため友達の数も限られていた俺は、それはもう酷い人見知りをする奴だった。 父は仕事の関係でめったに会えず、母だけが心を許せる唯一の人。 そんな状況の中で、数少ない友人との間にも壁を作るようになり、いつしか皆は離れていった。 ある日の事。 そんな俺を危惧してか、母は俺に2つの小さなボールをプレゼントしてくれた。 その時の母の言葉。 「新しい家族が出来たわよ」 当時の俺は理解できず困惑していたが、母はニコニコとボールを開けるよう促していた。 正直、少し怖かったのは確かだ。 見たこともない球体に手を触れる恐怖心もあったが、何より新しい家族という言葉が腑に落ちなかったから。 だが、母が微笑みながらボールを開けるのを待っているのを見て、俺はそっとボールに手をかけた。 言われたとおり、中心にあるスイッチを押す。 するとボールが勢い良く開かれ、それから溢れる光が部屋をまばゆく照らした。 思わず目を覆ったが、数秒経つとその光も収まった。 ゆっくりと…本当にゆっくりと目を開く。 そこには2つの見慣れない影。 何が何やら分からず、俺は咄嗟に母の後ろに隠れた。 だが母は俺を軽々と持ち上げると、再びその2つの影の前に俺を置いた。 幼い子供ならば誰だって、知らない物の前で放置されれば恐怖する。 それを分かっているくせに、母は敢えてこの様な事をしたのか、と。 「何て事するんだ」という気持ちが沸いた。 だがこのまま逃げ出しても、どうせ後で同様の事態が再来するのは明らかだった。 子供ながらにも、俺はある程度は母の性質を理解していたらしい。 仕方なく、俺はその2つの影に歩み寄った。影を凝視せず、母の方をチラチラとうかがいながら。 2つの影、いや、この時はもう視認していたので「姿」というのが正しいだろう。 それは不揃いで、1つは俺より少し小さいぐらいだが、もう1つは母と同じかそれ以上あろうかという姿だった。 その姿は人間と似て非なるもの。所々に人間とは異なる特徴があり、それが俺の恐怖心を増幅させた。 小さい方が真っ直ぐこちらに駆け寄ってくる。それがまた怖かった。 だが母の後ろを行こうとしても、肝心の母がそれを許してくれない。 相変わらずニコニコしながら、嫌がる俺を前に押し出した。 生き物であろう事ぐらいは確認したものの、それ以上は分からなかったし、知りたくもなかった。 今思えば、あの時の俺は本当に親以外の存在を認めていなかったのだと思う。 排他的な空間の中で、ただひたすら親にすがりながら生きる事は、幼子なら当然の事ではある。 だが恐らく、俺はその傾向が極端だったのだろう。 全く知らない物に対して好奇心を働かせる事よりも、触れる事を一切拒否する事で、自己保身を図っていたのだろう。 だがその小さな生き物は、まるで嬉しがっているかのように、俺を追い回した。 そのスピードは俺のそれを軽く凌駕しており、すぐに追いつかれてしまった。 後ろから勢い良く飛び掛るその姿に、俺は我が身の終わりにも似た絶望を感じ、泣き出してしまったのだった。 それからしばらく時間が経った。 俺は母の胸に抱かれて泣いていたが、相変わらずその小さな生き物は、母の足元をうろうろして離れない。 ただ先程とは違って、そのスピードは幾分緩慢で、追い回すというよりは待っているという感じだった。 そして大きい方はと言うと、何やら呆れ返ったような表情で、黙って小さな生き物の方を見つめていた。 やがて、俺を何とかなだめる事に成功した母は、そっと俺の体を足元に降ろした。 これがどんなに怖かった事か。俺からすれば、またあの生き物に追い回される事になると感じたのだ。 だが俺に拒否権は無く、その小さな生き物は俺が床に降ろされるのを、じっと待っている。 「男の子なら覚悟を決めなさい」 その言葉を理不尽に受け止めながらも、もはやどうする事も出来ないと悟り、黙って床に足をつけた。 小さな生き物は俺の前でピタッと静止し、「ごめんなさい」の一言とともに、深々と頭を下げた。 その表情をよく見てみると、何だかとても悲しそうで、今にも泣き出してしまいそうだった。 俺が嫌がるから悲しくなったんだ。 そう直感的に思った俺は、無意識のうちのその生き物の頭を撫でていた。 「ごめんね」という言葉を添えて。 すると、その生き物の表情がパァーッと明るくなっていくのが分かった。 それがつい嬉しくて、俺も表情をほころばせる。 その時、既に俺の中では、この生き物が怖い存在ではないと理解できていた。 そのまましばらくいると、大きな方の生き物が、俺をそっと抱き上げた。 小さな方は俺と体格も近かったし、先程の事で親近感を覚えていたから、まだ大丈夫だった。 だが大きな方は、まずその体付きからして異質であった。 自分より大きな生き物は親しか見たことがない俺にすれば、それは未知の存在で、同時にとても怖いものだった。 だが先程のように怖がっていては、また悲しい顔をさせてしまうかもしれない。 そう思った俺は、その時作ることのできる精一杯の笑顔で対面した。 「お、偉いね~」 そう言って撫でてもらった時、不思議と恐怖心や不信感も消えていった。 母と似た柔らかな笑み、包まれる事による安心感が直に感じられ、すぐに自然な笑顔を作ることができた。 それから更に幾ばくかの時間が過ぎ、俺は母とその2人と共に食事をしながら話をしていた。 この2人が萌えもんと呼ばれる生き物である事、人間が持たない特殊な力を持っている事、 そしてそれでも、人間と同じように喜怒哀楽を持つ事を、母から教わった。 人語を解し、人と同じように笑い、泣き、優しい表情もできる生き物だと。 小さい方は俺の妹、大きな方は俺の姉ということになったらしい。 俺もそれを自然と受け入れられた。 妹は屈託のない笑顔でじゃれ付いてきてくれるし、大きい方は相変わらず柔和な笑みで見つめてくれていたから。 この日、俺は初めて萌えもんと出会った。 そして、初めて母以外に心を許せる存在が出来た。 今なら分かる。 人見知りの激しい俺に、敢えて新しい家族をあてがってくれた、母が優しい意図が。 こいつらが居なければ、今頃俺は、部屋で塞ぎこむ情けない男になっていただろうから。 【あとがき】 (´・ω・`)新シリーズの第1弾。幾分早く終わりそうなシリーズです。文章自体も今後は短いもので纏めていこうと 考えていますし、数もそんなに多く出す予定はありません。その分、期間を開けて少しずつ書いていこうかと。基本 的に主人公レッド君の昔話ですが、後の本編の複線もいくつか絡めていければ良いなと考えています。

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