5スレ>>372

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「――ただいま」 「おかえりなさい、マスター」 久々の帰宅にも驚かず、ピジョットはいつもと変わらぬ態度で俺を出迎えた。 あまりに平然としているから、一瞬滅茶苦茶怒ってるのかと身構えたが、そういうわけではないらしい。 あくまでも冷静に、ただ主の帰宅を出迎えただけ。 ピジョットは、そういう認識のようだった。 「もうちょっと、大げさなリアクションがあってもいいんじゃないかな?」 苦笑しながら、小さな不平をぽろりと漏らす。 お門違いは承知だが、なにせ数ヶ月ぶりの再会なのだ。 なんというか、少しくらい感動的なシーンがあったって罰は当たるまいと思う。 「大げさ、ですか?」 ころん、と首をかしげるピジョット。 「マスターが帰ってくるのは当たり前のことなのに、大げさに反応してたら疲れちゃいますよ?」 さも当然、といった様子のその答えに、俺は再び苦笑する。 そうじゃないよ、と頭をぐりぐり撫で回し、勝手知ったる久しき我が家をずんずん奥へと進んでいく。 「前みたいに毎日帰ってこれるころならいいけど、今日みたいに何ヶ月ぶりかに帰ってきたときくらい、大げさに喜んでくれたっていいんじゃないってこと」 先行く僕の言葉を聞き、背後でピジョットがああ、と得心がいったとでもいいたげな声をあげる。 「つまり、久しぶりに会ったんだから『お帰りなさいますたー、寂しかったです~!』とか『お帰りなさいませご主人様、ご飯ですか?お風呂ですか?それとも……』とか言って欲しいってことですね?」 「……そこまでは、言わないけどね」 三度目の苦笑いを浮かべてやんわりと否定をすると、言ってほしいくせに、とピジョットは意地悪く笑う。 僕をからかうためにわずかな隙も見逃さない彼女の『鋭い眼』は健在のようだった。 やれやれ、と肩をすくめてリビングのソファにどっと座り込む。 久しぶりの感触に思わずため息を漏らした、そのとき。 ぽすん という音と共に、僕の膝の上に暖かくて柔らかい何かが降ってきた。 「……ピジョット?」 「なんですか?」 僕の呼びかけに、上目遣いで僕を見上げながら、ピジョットが応じる。 その表情に一瞬心が揺らいだけれど、ぐっと抑えて、問いかける。 「――なんで、僕の上に座るのかな?」 「あら、決まってるじゃないですか」 にっこりと、膝の上で満面の笑みを浮かべながら、嬉しそうにピジョットは答えた。 「――大好きなマスターに、めいっぱい甘えるためですよ」 そう言って、嬉しそうに笑うピジョットを、僕は無言で、抱きしめた。

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