5スレ>>412

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『2回戦、シングルバトル―――クリム選手のライチュウ 対 四天王カンナのイノムーの対戦となります!  両者、すでにフィールドの中央で向かい合ってかまえています。フィールドは岩場!  睨みつけるライチュウ、どこを見ているのかよく分からないイノムー!  この試合はいったいどのような展開を繰り広げるのでしょうか!?』 …相手の萌えもんは、カントーでは見かけない。どんな能力を持っているか分からないが、 少なくとも氷タイプである事は間違いないだろう。 比較的背が高く、長い前髪が顔まで垂れ下がっている。…その表情は見えない。 だが、機動力でならおそらくライチュウの方が勝っているはず。 「ライチュウ、分かってるな?」 「うん!」 『萌えもん、ファイトォッ―――!!』 ライチュウの武器は機動性と攻撃力・瞬発力。弱点は耐久力と持久力のなさだ。だから、おのずと戦略も限られてくる。 すなわち、敵を攪乱して攻撃をかわし、素早く決着をつける! 「行け、ライチュウ!10万ボルトっ!!」 「おりゃあああぁぁっーー!!」 そして、そのスピードは先制攻撃に特化している。即座に放たれた雷撃がイノム―に直撃! だが…これで終わったとは思えない。追撃の指示を出す。 「ライチュウ、追撃だ!」 「おっけー!」 指示を受けて、ライチュウはフィールドの石柱を蹴ってその上へ飛ぶ。 そこで一度呼吸を整え、さらに空中へと躍り出た。―― やる気か、いつものアレを。 「行くよ、必殺!イナズマ…キーック!!」 空中で一回転したライチュウの右脚が輝きだした。 原理はよく分からないが、ライチュウの能力を生かした超加速の飛び蹴りと雷撃が奔る!! ライチュウ渾身の一撃が敵に直撃した瞬間、あたりは一瞬、稲妻の光に包まれた。 空中で回転し、離れた位置に着地するライチュウ。 だが俺の目には、光の中にいる影がはっきりと映っていた。 「…!?ライチュウ、避けろ!」 「えっ?」 粉塵の中から飛びだすイノムーの突進を、ぎりぎりのところでかわすライチュウ。 「このぉぉっ!!」 頬袋から放った10万ボルトの雷撃がイノムーを直撃するが…効果がないかのように、再度突進をしかけてくる。 雷撃が…効いてないのか!? 「……………!!」 「うぁぁっ!」 今度は突進をまともに食らい、壁際に転がるライチュウ。 相手はおそらくパワータイプ、電撃もきかない。まずいな…圧倒的にこっちが不利だ。 「ライチュウ、やれるか!?」 「もちろん!」 元気に答えてはいるが、ダメージは浅くないだろう。 だが状況は依然不利。そもそも、電撃が効かないならライチュウの攻撃の大半は無効化される。 「どうする…!?」 奴に勝つ方法は二つ。 すなわち、電撃を使わず勝つか、電撃を効くようにして勝つか。 …現時点で有効なのはまず間違いなく前者だろう。というよりも、後者の前提条件がほぼ不可能だ。 だがそれは、ライチュウの戦闘における決定力を放棄するに等しい。 まだ子供な事もあって、ライチュウは仲間たちと比べると小柄だ。つまり、格闘に重要な『重さ』がない。 イナズマキックも、雷撃によって威力と速度を増加させているだけだ。 (確実なのは、ヒットアンドアウェイでダメージを積んでいく作戦だが…  ライチュウの体力は、それが出来るほど豊富じゃない…くそ、八方塞がりか!?) だが、諦めるわけにもいかない。 「ライチュウ、捕まったら次がない!スピードならこっちが上だ、動き続けろ!」 「りょーかい!」 ライチュウが自分の判断で「こうそくいどう」を発動、イノムーの周囲を移動する。 俺は遠くから、それを見守っているだけ――      * * * 真横に跳躍、まっすぐに走って正面にあった柱に飛び、それを蹴って別の方向へ。 走り続けながら、ライチュウは何かを思い返していた。 (オツキミ山で戦った時も、こんな感じだったっけ…) その時の相手は複数のズバットだったか。ロケット団と野生の萌えもん相手の三つ巴となった時。 フシギダネを野生のイワークの撃退、バタフリーをロケット団の足止めに当てた主人は、自分にズバットの群れとの戦闘を命じた。 そのころはまだ、自分の親友を奪った(まぁその親友に誘われてついていったんだけど)人間に、不信感を抱いていた。 そんな自分を見て、彼が言った事は今でも覚えている。 「お前はもう俺の萌えもんだ、俺の戦力の一端だ。お前がいなきゃ始まらない、だから――」 バタフリー以外にそんな事を言われたのは初めてだった。 親も知らぬまま育った自分が、知らず知らずのうちに求めていた言葉。 「――俺には、お前が必要だ」 彼と自分の間にあった何かが、崩れていくような感覚。 戦いが終わった後、自分の頭の上に主人の手が乗っていた。――ありがとう、って言われたのも久しぶりだった。 それから、だいぶ長い月日を経て、今ここにいる。 (今のあたしにとって…マスターも、みんなも、必要…ううん、違う) 必要、なんて硬い言葉はきっと似合わない。 自分たちの絆は、もっと優しくて、もっと強いはずだから。 (うん……なんでもいいや!) 言葉は必要ない。ただ、今思えば彼についていった選択は間違いじゃない。 大切な仲間がいる。もう、あたしは1人なんかじゃない。 だから、戦える。何のためかなんて、今はどうだっていい――!      * * *     「…………!?」 相手が速度について行けなくなった瞬間、ライチュウが跳んだ! 「とおおおりゃああああああぁぁあっ!!」 空中で一回転、その勢いで繰り出した右足のかかとがイノムーの頭頂部に叩きつけられた! なるほど、よく考えたものだ。かかと落としなら、落下と回転の力で威力を補える。だが―― 「つか…まえ…た…」 「えっ?」 叩きつけられたライチュウの足を、イノムーの手がしっかりと掴んでいた。 その手を握ったまま体を回転させて、ライチュウの体を振り回し…壁に向けて投げつけた! 「がっ…!!」 「ライチュウ!」 壁から落ち、ライチュウが地面に…倒れた。 『ライチュウ戦闘不能!勝者、イノムー!』 「くそっ…!」 相性の問題があったとはいえ、これは俺の作戦ミスだ。ライチュウをボールに戻す。 若干かすれた声がボールから聞こえてきた。 『ま、ますたー…ご、ごめ、ひっく、ごめんなさい…ごめんなさい、ますたぁぁ…ぅ…』 「ライチュウ?」 『か、かてなかった…がんばったのに…ぅぇっ…ごめんなさい…』 「………」 …泣くな。お前のせいじゃないんだ、お前は充分やってくれたんだ。 「いいから休んでろ。心配するな、お前は泣かなくたっていい…!」 『二回戦は四天王・カンナ選手の勝利でした!さぁ、戦いも中盤!  三回戦はダブルバトルとなります!フィールドは氷上!  一勝一敗の状況で、このフィールドは四天王のホームグラウンド!いったいどのような展開を見せるのか!?』 …思考を切り換える。一勝一敗で残り三戦。この勝負で勝たなくては後がなくなる。 しかし、フィールドは相手に有利…ここで勝つには、策を用いるしかないだろう。 だとすれば、選ぶのはこの二人。 「キュウコン、フシギバナ、頼んだ。フィールドは相手に有利だが、それを逆手にとるぞ。  作戦は――――」 「うん!」 「………はい…!」 『萌えもん、ファイトォ―――ッ!!』 『さぁはじまりました三回戦、ダブルバトル!チャンピオンカンナ選手はジュゴンの双子を繰り出してきました!  一方クリム選手はフシギバナとキュウコンを選択!どちらもこのフィールドとの相性は決してよくないはずですが――!?』 確かに、水と氷のフィールドであるここで、炎タイプと草タイプを繰り出すのは愚かに見えるかもしれない。 だが、それを逆手に取ることで一発逆転を狙える策が俺にはあった。 問題はいくつかあるが、真っ向勝負で勝てる相手でもない。 「行くよ、ジュン!」 「おっけー、ゴン!」 二人のジュゴンが同時に氷を突き破って水中へ飛び込む。だが、それは予想済み! フシギバナとキュウコンは迷うことなくスタジアム端から氷上に降り、中央へ進む。 (あえて不利な相手のフィールドに踏み込むことによって、油断を生じさせる…ここからだ!) 『おぉっと、無謀にもフシギバナとキュウコンがフィールド中央へ出ました!』 と、氷を突き破ってジュゴン達が襲いかかってくる。だが、これも計算通り! 「キュウコン、フシギバナ、迎撃パターンC!」 「了解!」 「…はい…!」 背中あわせになった2人が、はっぱカッターと火炎放射をまき散らす。 迎撃パターンC、すなわち「敵を寄せ付けず、広範囲に攻撃を拡散させる」こと。 しかし、水中を自由に移動し、その勢いを利用して空さえも飛びまわるジュゴン達には掠りもせず、氷だけが破壊されていく。 逆にジュゴン達の攻撃をこちらはかわしきれず、少しずつダメージが蓄積されていく。 それをくりかえすうちに、氷面は失われ、気づけば足場は二人の立っている大きな氷塊が一番大きなものになっていた。 ………この勝負、もらった! 「次の攻撃の後、キュウコンは特殊迎撃パターンへ!フシギバナは捕縛B発動と同時に攻撃Dの用意!決めるぞ!」 「うん!キュウコン、よろしく!」 「はい…えんまく、いきます…!」 その瞬間。キュウコンが全身に燻らせていた炎から溢れていた煙が爆発的に増大し、スタジアムを覆い尽くした。 黒いカーテンが全員の視界を塞ぐ。 『絶体絶命のピンチに、キュウコンが煙幕を展開しました!しかし、これではお互いに相手の姿が見えません!』 確かに、この煙幕は敵だけでなく味方にも働くだろう。 だが、目が見えなくても状況を察知する方法などいくらでも存在する! それを証明するかのごとく、フシギバナが動いた。不安定な氷の上に足を踏ん張り、全身の力を集中する。 その周囲から本来生まれるはずのないものが噴き出した。――― 大量の『根』が。 それらは周囲に広がり、煙幕の中に展開していたフシギバナの蔓が絡め取ったジュゴン達に一斉に襲いかかる! まずは煙幕で攻撃を避けると見せかけ、その裏で蔓を伸ばして敵をおびき寄せる。 煙幕は最初からその布石。こちらの策を悟られないようにする、ブラインドと囮の役割を果たして見せたのだ。 『なんと、起死回生の一撃が炸裂ーっ!!煙幕の中に蔓を隠し、ジュゴンがかかった瞬間に引きずりあげて攻撃!  これは予想外でした!まさに策略の勝利!孔明の罠!バトルの妙味!はたしてジュゴン達は――!?』 爆音と、空白。やがて、スタジアムの淵にジュゴン2人が投げ出された。…ともに、戦闘不能。 『…………やった、やりましたっ!!奇想天外な作戦によって、クリム選手が勝利を奪い取りました!  これで勝負は2対1!俄然熱い展開へと戦いが進んでいます!これからどうなっていくのか!  四回戦は再度シングルバトルとなります!双方用意をお願いいたします!』 「フシギバナ、キュウコン、よくやった。大丈夫か?」 「…はい…へいき、です…」 「直撃、ぜんぜんなかったもんね。ボク達頑張ったでしょ?」 「ああ。…次に勝てば上へ行ける。…プテラ、ここで勝負をかけるぞ」 「応。シャワーズには悪いが、今日は我が締めくくってみせる」 プテラのボールを投擲し、スタジアムに呼び出す。 相手は…パルシェンか。氷タイプで防御力が高く、プテラには少々不利だろう。だが、早さと攻撃力ではこちらが上。 決してかなわない相手ではない。 『それでは、萌えもん、ファイ―――ザ、ザザッ――』 「…?」 唐突に、放送が途切れ、雑音になる。 観客や審判、係員達も混乱してあたりを見回し、ざわめいているのがわかった。 しかし、異変はそれだけじゃない。 (…なんだ、この肌を刺すような不快感…!?) ぴりぴりと、自分の体を這いまわる、あせりとも恐怖ともいえぬ感覚。嫌な汗が、頬を伝う。 と、腰のボールからかすれた声が聞こえてきた。 『ま、マスター……』 「フーディン!?」 先ほどまでボールで眠っていたフーディンが、その中から声を出している。 彼女の声は疲労とダメージで掠れていたが、それでもそのなかに焦燥と恐怖が含まれているのは充分に理解できた。 『マスター、来る…奴が…!』 「奴…?………まさか…」 次の瞬間。 「なっ………!?」 轟音とともに、スタジアムが激しく揺れた!? と、フィールドの一方の横方面の端、観客席の下の壁が爆発した。がれきが飛び散り、反射的に飛びのいたパルシェンとプテラの前に落ちる。 ――― そこに、そいつがいた。 病的な何かさえ感じるほどに真白い肌に鈍色の人が作った鎧を纏った何か。 そのバイザーの下に、蒼く爛々と輝く瞳。 『―――――――ッ!!!』  ―― 声にもならぬ狂気の叫びを、その萌えもんが挙げた瞬間に ――― 『さぁ、始めようぜ、『μ2』!俺達の世界を作る一歩目だ!!』  ―― 2度と聞きたくなかった、兄の声が重なってはっきりと俺の耳に届いた ――  つづく

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