5スレ>>387

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マスター、私、進化できました!                      おめでとう! テッカニン! はいっ、これからもマスターのために頑張ります!            新化おめでとう~♪     いいなぁ~、アタシも早く進化したぁい~!                            私は進化しないから、成長するというのが羨ましいわ… 『…あの……』 進化したテッカニンを囲む1,2,3……6人の輪。 その輪から外れた場所に1人、宙に浮く萌えもんがいた。 あまりにも長い袖を垂らし、背中には6枚の羽根、頭には2つの鈴と大きなわっか。 『…私に…気付いてください……!』 彼女は必死に声をかける。しかし、誰も気付いてくれない。 気付くどころか、まるで無視するかのように、彼女がここに存在しないかのように、進化を喜びあっているのだ。                        さぁ、疲れただろ、萌えもんセンターに戻ろう! はいっ!            りょ~かいっ♪                          戻ったらおいしいものが食べたいわ…♪ 『ま…ますたー…!』 必死に手を伸ばす。しかしそれは虚しく宙を掴み、彼女達のマスターは、森の入り口へと姿を消してしまった。 『おいて…かない……で……』 彼女はその名の通り、元の体からも、メンバーからも『抜け』てしまった。 『どうして……こんな姿に……なっちゃた……んだろ……』 一人切り株に座る少女。その姿に最早『生』はなかった。 ただずっと下を向き、ただずっと自分を見つめる。 いつしか目からは涙で溢れていた。        ガサガサ…… 揺れる叢の音に再び彼女に『生』が戻る。 「ふぅ…」 出てきたのは、1人の虫取り少年だった。あたりをキョロキョロと見回し、虫を探しているようだった。 『あの……!』 彼女は少年の前に出る。これなら、絶対に気づいてくれるだろうと。 しかし…… 少年はキョロキョロしながら、彼女の体を通り過ぎてしまった。 彼女の顔に絶望の色が浮かぶ。 『すみません…! 気付いて……くださ……』 と、言いかけた時。 「ふぅ…ここらへんは虫さんいないなぁ~」 その言葉は彼女を『死』に追いやるのに十分すぎる言葉だった。 『いない……私は……いない……』 フラフラと切り株に腰を下ろす。 ―― 他人に気付いてもらえない、そんなのどこぞの霊と同じ…    いや、同じなわけじゃない。 自分が霊になってしまったのだ。    私は進化したのではない…  死んだのだ。         ―― 彼女はそう悟った。 光を失った目、止まらない涙、絶望の闇に囲まれた彼女にできることは何一つなかった。 『…神様……何故…私をここに留まらせるの……?』 ―――――――― ―――――― ―――― ―― いくらか日が流れた。 彼女は今日も、切り株に腰を下ろしている。 目は虚ろになり、涙は枯れ果て、体に生が感じられないその姿はまさに地縛霊そのものだった。 周りで音がしても気に留めず。風が体を撫でても感じようとしない。何かが触れてもそれに反応しようとしない。 『………………』 ―――――――― ―――――か? ――――大丈夫か? 『…………え…?』 いつの間にか、声をかけられていた。 いつの間にか、息を感じていた。 いつの間にか、肩を触れられていた。 彼女が視線を上げると、そこには1人の人間がいた。 『…私が………見える……の…?』 「もちろんさ、そんなやつれた顔して……大丈夫かい…?」 『…あ…あぁ…………』 彼女の目に再び光が戻った。 大粒の涙が溢れ、体を小刻みに震わせるその姿に既に『死』は存在しなかった。 「ど、どうしたんだい……?」 「う……うわぁぁぁぁあああんん!!」 彼女は人間に抱きつき、大声で泣き叫んだ。 ―― 私に…気付いてくれた… 今までずっと、気付かれなかったのに…    初めて…初めて……    私は死んだのじゃなかったんだ…  ちゃんと、進化できたんだ…! ―― 「うわっ!? いきなりどうしたんだ…!?」 「ひぐっ…えぐっ…」 泣き声は、しばらく止むことはなかった。 ―― よかった… 私はちゃんと…… 生きてたんだ……!――

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