5スレ>>442

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男は、夢を見ました。 まっさらで、静かな、小さな場所。 赤い髪の少女が一人、ポツンと立っていました。 男もまたポツン、と立っていました。 ―男に向けられた少女の眼は、ピクリとも動きません。 瞬きすら、ないのです。 それが、ずっと、ずっと、ずうっと・・・・ 少女はやっぱり、瞬きもしないで男を見つめているのです― ―時間の感覚が消え去る頃に、少女は口を小さく、でも始めて、開きました。 「また、会いましょうね。今度は、そっちで・・・」 少女は優しく、小さく、微笑みました。 そこで始めて男は、自分の体が足元から薄くなっているのを知ったのです。 おしまい。 もう、夜でもシャツ一枚で普通に出歩ける季節になった。 小さな月が夜空にぽつねんと浮かび、下界を煌々と青白く、淡く浮かび上がらせる。 一点の曇りもない空は、月とその取り巻きの小さな星星をハッキリと映し出し、 森羅万象の元である宇宙をダイレクトに見せてくれる。 ま、そんな、俺にとっちゃちと壮大過ぎる宇宙に思いを馳せながら、取りあえず歩いてる。 要は、散歩だ。ジャージの裾を、サンダルの裏を擦らせながらの散歩。 だらしないことこの上ないな。 田舎だから、家よりも田圃の方が多い。眺めを阻害するものなど、何一つない。 俺一人で悠々と、月を眺めながらブラリと家の周りを歩く。 "普段"なら。 「・・・綺麗、ですね」 ―ああ― そう、"コイツ"が居る。 ジャージの裾を引き摺りながら歩く俺とは対照的に、小さな歩幅で、しっかり、ゆっくり歩を進めるコイツが。 俺の身長の半分だから、歩幅も半分。当然、俺はコイツの歩幅に合わせなきゃならない。 それが、どうにもじれったい。ついでにこの微妙すぎる雰囲気も。 歩幅は我慢すればまだなんとかなる。 しかしこの空気はなんだ?このフワフワとした落ち着かない空気は。 普段なら、もっと静かで落ち着いた、冷たい空気が肺を満たしてるっていうのに。 ・・・・・ 良い年頃の男女2人が、月の在る夜とぼとぼ歩く。 どこぞのギャルゲーじゃあるめぇし。つかギャルゲーなんじゃね?俺の"夢"の中での。 まぁ・・・そんなわけない。これはれっきとした現実だ。 「・・・あの・・・寒く、ないんですか?」 唐突に話かけられて、思わずビクリと体が反応する。 上半身は、黒いタンクトップ一枚でブカっと覆われているだけ。 傍から見れば、そう見えても可笑しくないのかもしれない。 ―別に、寒くはねぇよ― そんな風に、ぶっきらぼうにしか返せない自分が、我ながら馬鹿らしい。 それから、またトボトボ歩く。 時々ポツン、ブツンと、ブツ切りにしたような会話をして、俺が適当に返事をして、終わり。 俺も困ったけど、あっちはもっと困ってるだろうな、なんて考えた。 でも、スルーした。 "めんどい"から。 唐突に、足音が一つになった。 ん?と思って振り返れば、ソイツは少し俯き加減で、俺を見ていた。 ―どうした?疲れたのか?― 「・・・夢、覚えてますか?」 ―夢?― 「そう、夢です。  ・・・また、会いましょうね。今度は、そっちで」 胸に手を当てて、静かに、言った。 刹那、全身の血液が沸騰して噴き出すのかと思うほど、体が熱くなった。 俺の眼が、コイツの眼から離せない。別に合したくもないし、合わせたくないわけでもないのに。ただ、動かせない。 ああ、覚えてる。 なんでだ?なんで夢の中の出来事なのに、こいつはここに存在している? これは夢じゃない。現実なんだ。他のなんでもない。 そもそも、俺はコイツといつ、どこで、何時から知り合っていた? 夢の中で? 「貴方が、望んだことだから・・・」 ―・・・え?― 「私は貴方に望まれてここにいるんです。マスター」 んな馬鹿な。 俺はそんなこと一つも考えちゃいない。望んだ気もない。 ―何かの間違いじゃぁないのか?俺は・・・― じゃぁ、と、穏やかな、しっかりとした声で遮られた。 「じゃぁ・・・私を呼んでください。  私の名前を」 ―名前・・・?― さっきから鳴りっ放しの心臓が一段高く鳴り、俺の胸を突き上げる。 周囲には静かで穏やかな、夜の普通の数秒が流れた。 俺の中では混沌とした、熱く、ゆっくりとした数秒が流れていた。 ―・・・・リザード― なんか、よく分からないけど、そんな単語が俺の口から漏れだす。 俺の心の奥の奥の底、無意識の領域から。 一瞬、周りがパッ、と明るく光った気がした。優しい光だった。 "リザード"が、満面の笑みを浮かべて、俺を見つめている。 俺にはまったくサッパリ訳が分からない。なんでリザード、なんて言えたのかも、そもそも状況事態、しっかり読みこめていない。 でも、そんな困惑は俺の感情の極一部に過ぎない。 その時の俺の心は何より、"リザード"が見せてくれたその笑顔に、ただ驚き、そして"何か"を感じていた。 心が、ポッと優しい熱で暖められるような、そんな気持ち。 ゆっくり、リザードが近寄って来る。 「さ、行きましょう・・・・マスター♪」 何で、そんなに自分の名前を呼ばれることが嬉しいんだろう。 分かってくれたことが、嬉しいんだろう。 俺には相変わらず、サッパリキッパリスッパリ分からなかった。 正に、疑問符百連打。 でも、それでも心は、不安にも悩みにも、その他一切のマイナスの感情に支配されず、俺の中で優しく火照っている。 ―・・・良いとこ、教えてやる― うん、まぁ、いいんじゃないか。 「どこですか?」 ―・・・俺らが歩って来た道と、これから歩く道― 長い付き合いになりそうだし・・・ リザードと。

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