5スレ>>488


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―――   ―――   ―――

   ―狐(Capri)Side 3―

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 『何を言い出すかと思えば』。
狐はまずその一言が脳裏によぎった、とんこつ主義? 全力で否定したい、そしてその存在には異を唱えたい。


   『あっさりとしたコクを求めるなら味噌でいい。

         刺激と旨味の両立を求めるなら辛味噌でいい。

            濃厚さとこってりな味わいを求めるなら合わせ味噌でいい。』


元来その思考で支配された狐にとってとんこつと胡椒による『アクとにごりと刺激の合唱』は不協和音にしか感じられない。
かくも激しい怒りに支配されあちらからも宣戦布告がなされた今、加減など必要ない。
そう踏んだ狐はそっとオニドリルの肩へ手を伸ばした、あたかも休戦を申し込む紳士的な使節団のような表情で。

「ドリルちゃん、貴女の言い分は確かにそれを好むものにとっては正しいと思えるように聞こえない事もないわ。」

優しく囁くかの如き言動、子どもへ諭すかの如き声色、しかし己の意思は崩さぬと示す肩の上の手の握力。
刺激物を劇薬の様相を呈すまでに使い込んだあの麺の惨状、その上でとんこつ主義を掲げた彼女に対し、リミットがぶっ壊れた状態。
狐にはとんこつそのものが刺激物であり、如何様に取り繕うとも口にする事はありえないのだ。

「しかし、考えてもみなさい、とんこつは強烈なアク、そして臭み。それらを同時に内包したものなのよ?」

傍から見ればギリギリ、仲のいいもの同士が肩を組んでいるように見えるのだろうか?
優しく引き寄せ、甘く耳元で囁き、しかしながら肩への握力は加減がつかずミシリ、と音が聞こえてもおかしくない所にまで来ている、が、狐は気付かない。
怪訝な外野の視線すら最初から目に入っていないのだから、心頭極まった現在、相手への加減が判るはずもないのだ。

「どうやったらあんなものから旨味やコクが感じられるのか私には理解らないわ、この味噌こそ真実この国に生まれた者が愛すべき味だと思うのよ。」

狐は何故だか、すっ……と走る背筋の悪寒を禁じえなかった。
理由は判断らない、“理解りたくない”。
その肩に手を置いた存在が見た目通り大人しい『オニドリル』に見えなくなっていたなどと、齢六百余年を数える彼女には信じたくない事実なのだから。

手を掴まれた、肩を掴んだその力を上回る握力で掴まれている、薄く開いたその瞳から、うつむくその昏い顔からは、表情を読み取る事など出来ない。

「…言いたい事はそれだけですか?」

無機質な、しかし強い何かが込められた静かな迫力のある一言、まさにこれがオニドリルにとって反撃の狼煙であった。

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―オニドリル(嫁ドリル)Side 3―

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相手の主義を否定するつもりはなかった。
ただ、自分のような人もいるのだと分かってほしかった。
理詰めを物事を考えてきた彼女にとって、相手の感情的なやり口はあまりに驚嘆すべき事であり、また理解もできなかった。
ただ1つ分かるとすれば、自分とこの人は一生分かり合えないのだという悲しき事実と落胆のみ―――。

「…あなたがそのつもりなら、もう遠慮は要りませんね」

とんこつを全力で以て否定される事が、彼女の今後の人生にとってどれほどの重要性を持つのかは甚だ疑問ではある。
だが少なくとも今、この場ではもはや理屈は不要であった。
まるで自分という人格が全否定されたかのような錯覚に陥り、冷静な思考など出来ようはずもない。

「…ふ、ふふふhh」

およそ理性というものを持った生き物が、ここまで暗く、不気味な笑みを浮かべる事が出来るのだろうか。
生きてきた時間、経験してきた事象、話す言葉の説得力、何もかも相手のほうが上のはずだ。
だが、今の彼女の表情は文字通り相手を圧倒し、威圧感さえ漂う。まさに「鬼ドリル」と言えよう。

「味噌なんて、味噌なんて…。表層的な味しかないクセに。数度口に含めば早くも飽きがくる。しかも特有の舌触りがずっと残って他を寄せ付けない排他的なベース。そんなものが至高であるなどと…」

先程まで惚けた顔で己が主人の事を考えていた彼女はどこへ行ったというのか。
恐らくこのような表情は金輪際しないかもしれない。だがそれ故に、今の彼女の心境が理解できよう。
既に食堂内の人々は対峙する2人に釘付けになっている。
ラーメンのスープ程度で争う2人を嘲笑する声も最初こそあったが、今やざわめきは消え、さながら決闘直前といった様相を見せていた。

「表層的なんて事ないわ。異なる味噌を組み合わせる事で更に深い味が生まれ、幾層もの味の階層が楽しめるのよ」
「味噌同士で馴れ合うしかできないベースに限界がある事も知らずに、よくそんな事が言えたものですね」

相手側も負けじと自身の主義の絶対性をアピールするものの、彼女にとっては反撃の言質を取る手段にしか見えていない。

「とんこつはそれ単体でも、幾層もの味が段階的に訪れる繊細なベースです。更に他の調味料との組み合わせという可能性を排除せず、全てを内包する大らかな一面も持つのです。己自身で全てを染め上げてしまう味噌こそ、私には良きものとは取れません!」

言い切った。自分の言いたい事は全て。
自分は何故こんな事で争っているのか。お互いに持っている疑問だろう。
だがその答えは至極簡単な事であった。「引けない」だけなのである。
味覚は人それぞれであり、絶対的な答えなどない。端から見れば、どちらの主張も正しいし、どちらも間違っている。
争いというものは正義と悪がぶつかり合うから生じるのではない。お互いの正義がぶつかり合う時こそ、争いは勃発するのである。
そう、お互いが自身の事を「正義」だと信じているが故に―――。


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   ―狐?(Capri)Side 4―

―――   ―――   ―――

 夢を、夢を見ていました。

 夢の中の私達は己の思想、理念、趣向を語り合い、議論し、誰一人として信念を曲げる事をしませんでした。

 そしてその夢の中では、語り合う事でお互いを認め合い、『劣るから、及ばないから』と自らの考えを相手に伝えぬ事はなく――

―――

 殴打音が一回、擦過音一回、ガラスの割れる音が一回、そして爆音が一回。
狐は今頃、草むらの中で目を回している事だろう、騒ぎなど起こすからいけない。

「……なんだ?」

騒ぎの張本人の片割れ、オニドリルがこちらを見て硬直している、そのマスターである男も。
何かおかしな事をしただろうか、後頭部を殴打し、背負い投げ、窓の外に投げ飛ばし、草むらに着地しただけだろう?
――狐のうわごとが聞こえる、夢を見て……? 今まさに見ているはずだが。

「…随分激しい愛情表現でございませんでありましょうか。」

――日本語がおかしいな、このオニドリルはどうかしてしまったのか?
その主人も硬直したまま動かない、オニドリルの肩に手をかけた姿勢のまま。

「……ただの挨拶じゃないか?」

果たして、観衆は静まり返る事の理由がどこにあったかなど、この男には判断できるはずも無い。
本当にこの程度は、『この主人』にしては軽い方なのだから。

ゆくゆくはカントーの頂点に立つ男、しかし己の慢心から崩れ行く男。
そんなものの思考などは一般人には理解し辛く、またお互いに強固であるが故のスキンシップなど普通の人間には何事にも判断し得ない、萌えもんにすらも。

寝言を呟きながら擦り傷ひとつ無く気を失うキュウコン、自分のやった事が一般とはズレている事に気付いていないマスター。
振り向かせてデコピンで終わらせるはずだったレッドには余りにも衝撃的であったのだろう、こちらもうわ言を何がしか呟いている。

食堂であろうともまったく気にせず煙草に火をつけるそのマスターに、やっとのことで正気を取り戻したオニドリルはある事を思い出し、その紫煙燻らす者へある提案を持ちかけていった。
当然、自分の主人がまだ『あっち側』から戻ってきていないのを確認した上で……。

―――   ―――   ―――

―オニドリル(嫁ドリル)Side 4―

―――   ―――   ―――

 己の理解の範疇を超える事象、型破りな性格、スキンシップと言うにはあまりに荒々しいその所業。
 ああ、改めて認識しました。
 私は今のマスターに付いて行くのが、一番幸せなのだと。

―――

ほんの一瞬の出来事だった。
誰が思うだろうか。自分と激論を繰り広げている相手が刹那で姿を消し、次の瞬間には窓の外でのびているなどと。
先程までその相手がいた位置には、自分の相棒であろう女性に一本背負いをかましたとは思えないほど落ち着き払った、長身の男性が立っていた。
いかにも気だるげで、まるでこれがいつもの事だと言わんばかりの様相に、戸惑わずにいられようか。

「お、おい。どうなってんだこりゃ」

その脇から聞こえてくるのは、もはや聞きなれた優しいあの人の声。
何があったのかと問い詰める事もせず、ただ呆然と破砕された窓のほうを眺めている。
無理もない。当事者である私ですら、この状況には全く付いていけないのだから。

「…おい、そこのオニドリル」

不意に声をかけられ、思わず背筋を伸ばしてしまう。
マスター以外の男性と話した事はほとんど無いけれど、恥ずかしがっていられない。
今度は自分が、窓の外でお星様を見る事になるかもしれないんだから。

「…うちのが迷惑かけたみたいだな。気にしないでくれると助かる」

……拍子抜けした。
どうやら他のトレーナーも萌えもんに手を下すほど、常識外れではないらしい。
だがおかげで、こちらも冷静になる時間が幾分早くなった。
本来ならばうちのマスターから後でみっちりお説教されるんだろうけど、当人は未だトリップしたまま帰って来ない。

「…いえ、こちらこそ」

そうだ。マスターに見られてない間に、確かめないといけない事があった。
煙草の煙をくゆらせ、こちらを見下ろすその目に若干の恐怖を覚えながらも、私は勇気を出して問うた。

「…あの、狐さんが言ってた料理上手の人、ですよね?」
「…ん、あいつが言うならそうなんだろう」

疑問が確信に変わった時、今しかないと思い立つのに時間は要らない。
間髪居れず、私はその男性にある請願を投げかけた。

「…あの、お暇な時で良いので、料理を教えてくださいませんか?」

この流れでどうやってこんなお願いが出来るのかと、我ながら苦笑しそうになる。
だがそんなヘンテコなお願いも、この男性は快く了承してくれた。
返事そのものは相変わらず気だるそうだったけど…。

「…まぁ狐が何て言うか分からんが。だがいいのか? そこの坊主の許可を得なくて」
「…はい。他の誰でもない、この人のためですから」

いつかマスターの生涯のパートナーとなる事を夢見て、今私はこの人に付いていっている。
だからこそ、将来のためになる事なら、なりふり構っていられない。
待っててねマスター。いつか絶対、あなたの舌を唸らせるようなもの、作ってあげるからね。

―――

その後、気が付いた狐さんと私は食堂のおばちゃんにこっぴどく怒られた。
そして狐さんはあの男性に首根っこを掴まれて連れて行かれ、私はというと…

「…うぅ。痛いです」
「当然だ。最大出力のデコピン2発だからな」

あちら側と比べれば格段に緩めのお仕置きを受けながら、これまたお説教の嵐に呑まれていたのでした。




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  あとがき~CapriSide~

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 その日、とあるキュウコンは返り血を舐めながら自宅へ戻ってきた。

「ただいま~♪」

さも平然とした様子で主人の膝の上に収まり(腕の返り血はそのままに)ごろごろ喉を鳴らしている。

「……その返り血は?」

「作者……Capriとか言う人の体液?」

酷いものだ、ちょっと投げただけでこのしm(えも言えない水を含んだ殴打音)

「今日もよく(血が)飛ぶわねぇ~」

何やらロープを巻き取りながらその先についた血まみれの木製バットを回収しているキュウコン。

「嫁嫁と宣言してる相手からこの仕打ちってのはどうかと思うが……」

呆れ顔の紫煙のおss(何か堅いものが柔らかいものの中で砕けるような音)

「まだ、26のはずだ。」

実は気にしてるのか、このおs(甲高い金属音と共に何かが飛び去る音が過ぎ去っていく)

「とりあえず、クロスオーバーっぽいのか何なのか、対談というより戦争じみているこの作品、こちら側の作者としては面白かったから出来は気にしないようです。」

私の復活速度はひゃk(ちりちりと物が焼ける音と香ばしい香りがあたりに広がる)

「……しかし投げたな、窓の外に。」

(既に物を言う前から、低く鈍いプレス機の駆動音がしている)

「感想やご意見はまた適当に募集するのかしないのか、もう一人の作者さんに残りは全てお任せします。」

少しくらいしゃb(何故か電車の通過音が響き渡った)

「それではまた次の作品でお会いしましょう。」

最後くらいあいさt(爆発音と共にキラーン★というあからさまな音がかすかに残った……。)



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  あとがき~嫁ドリルSide~

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えー、あちら側は相変わらず殴打の嵐が続いているようですが、こちらは穏便にいきましょう。

「…誰?」
「さぁ、メタ的な筋の人じゃないか?」

今回初めて作者側のエゴむき出しの共同作品と相成ったわけですが、そこんとこどうでしょう。

「…別に」
「無理に喧嘩じみた事させないでほしいのが本音だな。コイツ、そういうの好きじゃないんだから」

なんとも悲しいお答え。オニドリルさんに至ってはレッド君に寄りかかりながらダルそうに応じています。

「…でも」

ん? どうしました?

「…最後に、マスターのためになれるフラグがあったのは、感謝してる」
「え? なんだフラグって?」

お、煙草の人にお料理を習う話ですね? あれは相手側からも許可が出たので、機会があれば書きますよー。
それにしても書いている人間すら入り込めませないとは、貴方達は実際どこまで進むんでしょうねー?

「そ、そんな約束してたのか、お前」
「…だって、マスターが満足するもの、食べさせてあげたいし(///)」

あのー、もしもーし。
完全にイチャイチャモードに入っちゃいましたね。まぁこれが私のSSのコンセプトなので良いんですけど。
とりあえずレッド君は後で他の5人にボッコボコにされるので覚悟しといて下さいねー。



(´・ω・`)えー、あとがきの体を成してなくてすいません。Capriさんのボキャブラリーを少しでも奪い取る事に余念の無い嫁ドリルです。
まずは無事に書き上げた事でホッとしています。思いつきの企画にしてはなかなか良かったのではないかと。
他の作者様のキャラを動かす緊張感、難しさを痛感すると共に、それが面白いと感じるようになってからは驚く程早く書きあがっていく快感。
また、自分の設定外のキャラと自分のキャラが触れる事で、普段出来ないような動きを自分のキャラにさせる事ができる楽しさ。
この企画を立ち上げ、実際に書いてみた感想はこんな感じですね。他の作者様の作品を知る良い機会にもなりました。

参加を希望されている後続の作者の皆様、どうぞ気負いせず、この企画を楽しんで下さい。
読者の皆様からのご意見、ご感想もお待ちしております。あまり長文にしてもあれなので、この辺で。

また新作でお会いしましょう。
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