5スレ>>584


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 よく晴れた、風の気持ちいい日のことだ。
 トレーナーと萌えもんの二人一組で行われる競技があるようで、私、ふりーざーはすみっこの休憩室で待機することになった。
 部屋の中は洋式で、談話室のようなつくりになっていた。
 四角いセンターテーブルに、それを囲むように椅子が四つ。
 そして、
 ……うぅ……人がいますよぅ。
 そのうちの一つに、炎を思わせる赤。萌えもんが座っていた。
 とてもニガテである。
 長い間ふたごじまに籠っていたせいなのか、人と接するということに恐怖のような感覚を覚える。
 ましてそれが、

「りざーどん……」

 ニガテなタイプなのだから、余計にこわい。
 気が強くて、勇猛果敢。自分とは大きくかけ離れたイメージのリザードンは、私に昔の友人のことを思い出させた。
 ……帰りたいですよぅ……べとべたぁ大佐ぁ……。
 でも彼女のことを考えると少し勇気がわいた。
 ……が、がんばります!
 とりあえず、向かいの椅子に座ることにしましょう。

「……」

 勇気を出して座ってみたものの、あちらからアクションがやってこない。
 相手の出方を窺って応答する、という作戦が失敗に終わった。
 ……うぅぅぅ。
 そればかりか、リザードンは眉をひそめるような、難しそうな表情をとる。
 ……き、きげんがわるくなってしまったんでしょうかぅ……。
 びくびく。
 ……やっぱりわたしには無理ですよぅ……。
 難易度が高すぎた。
 初心者に難易度最高なんて無理ゲーだったんです。
 しかし、こちらの諦めがついたところで相手には関係ない。
 こうしている間も、リザードンの表情は曇っていくばかりである。
 ……あぅあぅ。
 このままじゃだめだ。
 このままじゃだめだ……。
 このままじゃ……だけど。
 心臓がばくばくと激しく鼓動する。
 血が頭にたまってきて、顔が赤くなっているのが自分でも分かる。
 くらくらと視界が揺れて、
 ……このまま倒れてしまった方が楽かもしれません。
 少なくとも、リザードンから受けるプレッシャーは感じなくなるはず。
 ……だめです。だめです。
 目の前で倒れられちゃ相手に迷惑をかけてしまいます。
 それに、
 ……がんばるために、私は外に出てきたんです! 見ていてください、べとべたぁ大佐!
 深呼吸。
 血がさぁ、と降りていく。
 自分の周りの空気を少しだけ冷やして。
 ごくり。

「「あ、あのぅ……」」

 私とリザードンの声は、見事にマッチングした。





「「……!?」」

 一瞬の驚き。

「「……」」

 一瞬の間。

「「……?」」

 一瞬の疑問。
 全ての結果はただ一つの行動となってフリーザーとリザードンを動かした。

「「ふふ……」」

 小さな笑みだ。
 本当に小さな、ささやかなものだった。
 だけど、彼女達の間に、それ以上のコミュニケーションはありえなかった。
 二人は同時に理解する。
 彼女とは、似たような気持ちでいたのだ。
 ということを。





「えぇと、一応自己紹介をしたほうがいいんでしょうか……?」
「では、私からいきますよぅ……」

 ……と、年上の貫禄を見せ付けてあげます!
 意味もなく椅子から立ち上がり、意味もなく咳払いを一つ。
 彷徨っていた視線をようやくの思いでリザードンの目へ。

「わ、私は……つい最近までふたごじまに引きこもっていたふりーざーというものですよぅ」

 そして意味もない紹介までしてしまった。
 くすくすと、控えめに笑みをこぼすリザードン。
 ……あぅぅ。
 でも、笑われても、心地が悪い気はしなかった。

「私は……リザードンです……。その……えぇと……」
「私みたいに自爆はしなくてもいいですよぅ……。それで、リザードンさんはどうしてここに?」

 ぴく、と体を跳ねさせ、可愛らしい反応。

「ご主人様に少しだけ、時間を頂いたんです。色々、考えたいこともあったので」
「考えことですかぅ……?」
「……」
「……」

 じー。

「ひ……ひみつです! ひみつです! フリーザーさんはどうなのですか……?」

 むむむ……。

『なにがむむむですかっ!』

 べとべたぁ大佐の声が聞こえた気がした。

「そのぅ……今日は近くでイベントがあるのをしってますか……?」
「……?」
「そのイベントが、二人一組で……」
「……その、ごめんなさい」
「違うんですよぅ。余ったんじゃないんです、イベントはニガテなので辞退したんですよぅ」

 本当だ。
 ……べとべたぁ大佐も彼とイベントにでたがっていましたし……。
 二人が出場することに決まった時の、べとべたぁ大佐の笑顔のほうが、イベント参加よりも……。
 にへら。
 頬が緩んだ。
 その変化を見てか、リザードンも説明に納得したようだ。

「好きなんですね。そのお二人のことが」
「ち、ちがいますよぅ……。別にべとべたぁ大佐のことが好きだというわけでは……」
「そうなんですかー。べとべたぁ大佐さんのことが特に好きなんですね」
「ちがいますっ。笑顔が可愛くて好きなわけでも、行動が可愛らしくてすきなわけでもないのですよぅ……」
「そこまで言われると、私もべとべたぁ大佐さんに会ってみたくなりました」
「イベントが終わったらこっちに来るといってましたから……ここにいれば会えますよぅ」
「……でも私のほうが時間のようです。今からご主人様のところにいかないと心配をかけてしまいます」
「それは残念です……」

 リザードンは立ち上がり、私に軽く礼をして、

「それでは、フリーザーさん」
「さようならですよぅ……」
「……」

 部屋を出る直前、リザードンは振り返った。

「……では、いつか、きっとべとべたぁ大佐さんに会わせてもらいますね」
「……。は、はいっ。また、また会いましょう!」

 パタン。
 扉が閉じて、私は気付く。
 ……リザードンさん、以外のことは全部分からないままです。
 つまり、再び会うことは……難しい?

「違います」

 ……私は、リザードンさんを知っているのです。
 必ずまたどこかで会える自信が、私の心の底には秘められていた。
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