5スレ>>602-3


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今度こそ完全に倒したはずだ、と思いたかった。
だが現実には、ボロボロの状態ながらも、ミュウツーは立ち上がろうとしている。
そのか細い声が、耳に届いた。

「ごめん…なさい…お父様…」

泣いている。嗚咽が聞こえる。眼から大粒の涙が零れているのも見える。
追撃をかけようとしたファイヤーを片手で制止し、様子をみる。…何かがおかしい。

なけなしの血液を頭にすべて回して、考える。


そう。何か明らかにおかしい。
今までも何かに違和感を感じていた。

戦闘を始める前は確固とした意思を持っていたように見えたが、
戦闘中、そして今は別の何かを意識しているように思える。

「…助けて…誰か…お父様、お母様…!」
「…!!」



なんとなく理解した。
ミュウツーは孤独だったのだ。実験施設に人がいるときは、少なくとも誰かがそこにいた。
だが、今は誰もおらず、野生の萌えもんはここには近寄らない。

鉄壁の城塞ともいえるこの場所は、言いかえれば大きな檻だった。
ミュウツーという名の幼すぎる猛獣を閉じ込める檻。

本当はミュウツーに必要なのは力ではなく、それを抑える鎧でもない。
その孤独を理解してやれる存在だったんだと、俺は気付いた。



だが。
戦闘用に作りだされ、破壊することしか知らない彼女を、誰が愛してやれるのだろう。
遺伝子を組み替えられたミュウツーには、肉親さえも……

「………あ」

思い出した。ミュウツーは、とある萌えもんの睫毛の化石から取り出した遺伝子を改造して生まれた萌えもんだ。
それなら、その遺伝子の出元となった存在がいるはず―――!!




その結論に達するのと、声が聞こえたのは同時だった。

『見つけたよ、ミュウツー』

少年のような、少女のような、高い声だった。



一瞬の後、ミュウツーの目の前に、淡い桃色の光をまとった何かが舞い降りた。

(…なんだ、あれ!?)

隣にいるシャワーズも、唖然としている。
背後のファイヤー達も息をのんだのが分かった。

何より驚いたのはミュウツーであろう。
条件反射的に、目の前に現れたモノに念力をぶちかました――はずなのに、それを弾かれてしまったのだから。



先ほどの声はそいつが発していたようだ。
萌えもんのようだが―――手元に転がっていたカバンを手繰り寄せ、図鑑を取り出してもデータがない。
各地の萌えもんのデータを入れてある図鑑に反応しない・・・!?

俺の驚きを他所に、萌えもんとミュウツーは会話をつづけていた。

『こわがらないで』
「あなたは…だれ?」
『僕はミュウ。君の親…兄弟、かな』

ミュウ。

…そう。俺がさっき考えていた「ミュウツーの元となる遺伝子を持つ萌えもん」。
そいつが、今目の前にいる。各地の調査隊が血眼になって探している存在が。

ミュウは、震えているミュウツーの目の前に降り立った。
おそらく恐怖からくる相当な殺気の前に立っているはずだが、全く動揺していない。

『だいじょうぶだよ』
「…え…」
『きみは、ひとりじゃない。これからは僕が一緒だよ。僕はきみをむかえに来たんだ』
「むか、え…?」
『きみはここにいなくてもいい。僕といっしょに行こう』

その言葉は。
最近までここに長年幽閉されていた天涯孤独な萌えもんにとって、どれほど救いになっただろうか。

『もうきみは何もこわがらなくていい。これからはぼくがずっといっしょだよ…』
「うん…うん…!」



…なんだかよくわからないが、助かったらしい。
とか思っていたら、ミュウがこっちに向いた。

『きみは…ミュウツーを止めようとしてくれたんだね』
「…場合によっては、殺すつもりだったんだけどな」

わー、伝説を超えた伝説と普通に会話してるよ俺。

『ウソだね。…きみはホントはだれも殺したくなかった』
「…だったら?」
『ありがとう。僕の唯一のきょうだいを助けようとしてくれて』
「…唯一、か」

伝説と呼ばれるミュウは、どうやら世界にたった一人しかいないらしい。
ミュウにとっても、ミュウツーはたった一人の血のつながった存在、と言えるわけだ。

『ホントはもっとちゃんとしたお礼をいわないとだめなのかな』
「…いいよ、別に。もう済んだことだ」
『これからきみは、どうするの?』
「…さぁな。とりあえず外に出るんだろうが…それまで俺の体がもつかどうか」

出血こそ収まったものの、脇腹の傷は深く、無事にこの洞窟を出られるとも限らない。
シャワーズが俺の方を心配そうに見ていたが、あえて目は合わせなかった。

『…わかった。ぼくはミュウツーといっしょに行くよ』
「…そうか」
『これは最後に、ちょっとしたお礼―――』

その言葉とともに。
俺の意識は、白い光の渦に飲み込まれて――――――――――










…まるで、昼寝から目覚めたような気だるさが体を覆っている。
なんとか目を開けて体を起こすと、そこは草原だった。…太陽は東。心地よい風が頬を撫でた。

「…ここは…」

遠くにハナダシティが見下ろせる…ということは…位置関係からして、ハナダの洞窟の真上か。
あの暗闇の上に、こんな場所があったとは。

立ち上がろうとして、右手に暖かい感触があるのに気づいた。
…視線をたどると、シャワーズの寝顔。

「…そういえば…!」

ちょうど今気づいたのだが、先ほどまで大量の血を吐きだしていた脇腹の痛みがない。
あわてて座ったまま、どす黒くなった服をめくってみると…傷は跡形もなく、肌色があるだけ。

「…治ってる」
「ん、ぅ…あ、マスター」
「起きたか、シャワーズ」

シャワーズも目を覚ましたらしく、体を起こした。…所々にあったはずの傷が消えている。

「…みんなは…」
「まさか、まだ洞窟の中に!?」

まずい。その可能性を忘れていた。おそらく俺達を転移させて傷を治したのはミュウだろうが、
奥のボールに閉じ込められている奴らには気付いたのだろうか?
…と、思ったが…

「まーすーたーっ!!」
「ごしゅじんさまー!」
「うごおおおぉぉぉぉぉぉっ!?」

後ろから押し倒された―――って、フシギバナにライチュウ!?
キュウコン、フライゴン…お前らまで乗ってくるなっ!
フーディンやバタフリー、プテラも後ろにいるのがわかった…けど、さすがに4人はきついっ!!

「いでででで!ちょっとまてお前ら、降りろ!痛い!重い!」
「怖かったよーっ!」
「怪我は大丈夫?」
「まったくー、ウチらほっといてシャワーズといちゃいちゃしおって!」
「…………!!」
「ま、無事で何よりですね」
「まったくだ、一時はどうなる事かと思ったよ」
「あまり心配をかけさせないで欲しいものだ」
「いいから降りろーっ!!」

なんとか全員に降りてもらい、体を転がしてあおむけになる。
…頭上を見上げると、空の上に三色の光が見えた。

(…ファイヤー…サンダー、フリーザー、ありがとう……)

空中で散り、それぞれの方向へ飛んでいく3人を見送る。
さらにそのあとに、二筋の光が駆け抜けていった。
シャワーズがぽつりとつぶやくのが聞こえた。

「…ミュウツーは、救われたんでしょうか」
「…さぁな。…とりあえず、わかったことは一つある」
「?」


「これにて一件落着、ってことだ」
「…ですね」











「フシギバナ」
「うん」
「フライゴン」
「はいな」
「ライチュウ」
「はーい!」
「キュウコン」
「…はい…」
「フーディン」
「ん」
「バタフリー」
「はい」
「プテラ」
「応」
「シャワーズ」
「はいっ」


「…よし、全員居るな。…帰るぞ」




失ったものも、得たものもなく。

結局何もかも元通り―――たったこれだけ。

大した盛り上がりも、何もない終わり方だったけれど。

復讐の旅はこれくらいの終わりがちょうどいいのだろう。




これからどうするかは分からない。

とにかく、もう俺は何かに囚われることはない。…それだけだ。

だけど―――






(―――それだけで、充分なんだ―――)






                                 
              


                                fin.



















あとがき。


とりあえず、あとがき書く前に一言。
ここまで読んでくださった皆様、そしてここまで書いた私、お疲れ様でしたっ!(ぇ

思い返せば勢いだけで書いてきたゴーグルシリーズ。
やっとこさ終わらせることができました。

なんだかんだいって一番難関になったのは、
8人+主人公を同時に動かすことだったと思います。
他にもいろいろ無理はあったけど、あれはもうやりたくないなぁ、と。

逆に書いてて楽しかったのは…まぁギャグやらネタやら盛り込んでるシーンでしたね。
メイド服シャワーズは某所で非常に好評をいただいたのでその後もいろいろ使ってました。


とにかく、ここまで読んで下さって本当にありがとうございました。

一応完結となりましたが、ゴーグルの物語はまだまだ書く予定ですので、お楽しみに。

…またどこかでお会いしましょう。それでは。



2008年9月29日   ストーム7
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