5スレ>>130


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もうすぐ来るかな? まだまだ先かな?  わくわく、どきどき。
今日には来るかな? 明日なら来るかな? わくわく、どきどき。
ともしび山の山頂から山裾を見下ろしながら、今か今かと胸を弾ませる。
その様子は、恋人を待つ女性というより仲良しの友達を待つ子供そのもの。
勿論、来るという確約などないし、可能性なら来ないことの方が大いにある。
そんなことは無論彼女も承知しているし、そのことでいちいち怒ったりなどしない。
来ないこともあると理解しているうえで、待ち焦がれているのだ。
来るか来ないか、今日来るか明日来るか。彼女は、待つということを既に楽しんでいる。
彼女にとって、それは永遠に変わることのない唯一の娯楽。
飽きることなく待ち続ける。
果たされるという確約の何処にも無い、かつて交わした約束の果たされる日を。






   彼、覚えててくれてるかなぁ?…ううん、絶対覚えてるよね!たった十年前の約束だもん!  






カントーに名を残す伝説の鳥萌えもんのうちで、彼女のみは他の二人とは異なる言い伝えが別に残っている。
曰く、不死鳥伝説。

彼女自身が不死の存在であり、気の遠くなるような長い周期ごとに炎で自らを清め生まれ変わる。
彼女に気に入られ、その生き血を口にすることが出来たものは、彼女と同じく永遠の命が得られる。

そういった伝説というものはえてして伝わるうちに歪むものであり、この不死鳥伝説にしてもそれは変わらない。
別段自ら炎に飛び込んで生まれ変わりはしないし、彼女の生き血を啜ったところで永遠の命など得られはしない。
だが、伝説の全てが嘘偽りというわけではない。
唯一つ、彼女が永遠を生きる存在であること。それだけは、確かな真実であった。
人には──寿命を持つ身には想像も付かぬ年月、大地すら姿を変えてゆくほどの時を、彼女は生きている。
そして、終わりのない生を生きるものの宿命として、彼女の周りに暮らすものは皆、彼女を置き去りに旅立って逝く。
星の数ほどの出会いと、星の数ほどの別れを繰り返して、今の彼女は其処に在る。
萌えもんだけに限らず、多くの人間もまた、彼女と出会い、送られて逝った。
彼女を取り巻く環境の全ては、彼女を残して移ろいゆく。
だが、彼女は己の終わらぬ命を憎むことも、恨むことも無い。
永遠の命を理由に自らに閉じこもることはしない、そう彼女は誓っているから。
別れは誰でもが経験すること、自分の場合は常に見送る側であるというだけ、そう捉えていた。
彼女にとっては、生きること、未来を想うことはいつまでも胸躍ること。
満ち足りた日々、過ぎ去った思い出を振り返ることもまた、彼女の生を満たすもの。
人が、大好きな少女である。
出会うことが楽しくて。
約束を残して一度は別れ、再び会う日を待つことが楽しくて。
その後に、その相手の一生を共に過ごすことが楽しくて。
相手の最期を見送ってから、ふとしたときにその思い出を拾い上げるのも楽しくて。
最期の別れが寂しくないわけでも、辛くないわけでもない。それらを味わうことを覚悟してなお、人の下に姿を現す。
新たな出会いを経ても、彼女の中でかつて共に過ごした者の面影が薄れることは無い。
誰一人として軽いものなどない、彼女の心に住むのは彼女の愛した者ばかりだから。暖かく美しい想い出は、ただ増える一方。
彼女がパートナーとして選ぶことに、基準はほとんど無い。あげるとするなら、出来るだけ歳若いこと、そして彼女が心惹かれること。
男でも女でも構わない、惹かれさえしたならば。
そうして惹かれる相手に出会ったら、相手の歳にあわせた姿をとり、ひと時を共に過ごしてみる。
その段階で気に入ったなら、己の素性を明かし、いくらかの年月ののちに再会を約束する。
その約束が果たされたとき、初めて彼女はその相手の元へ下り、一生を共に過ごし、終わりを看取るのだ。
今回の相手は、出合った時に九つかそこらの少年。
同じ年頃の少女として出会い、一緒にくたびれはてるまで遊び、そして約束を交わした。


───今日は、楽しかったね!

───そうだね!

───また、逢えるかな?

───会えるよ、絶対!

───あたしは人じゃない。萌えもんだけど、それでも逢いに来てくれる?

───もちろん、絶対会いに行くよ!どこにすんでるの?

───ここから遠い遠い、山の頂上よ。火山なの。

───なんて名前の山?

───ともしび山。いい?忘れないでね。ともしび山よ。

───うん、分かった!いつ行ったらいいの?

───いつでもいいの。でもね、今のキミには遠すぎる場所なの。
   そうね、十年。あと十年経って、キミが大人になったら、迎えに来て?

───十年?長いなぁ。忘れちゃったりしないかな?

───忘れちゃったら、それでもいいの。でも、忘れて欲しくないわ。絶対迎えに来てね。
   絶対よ?

───…わかった、十年たったらともしび山の頂上まで迎えにいくんだね。
   絶対忘れない。絶対会いに行く!指切りして約束しよう!

───うん!絶対、また逢おうね!



──────ゆびきりげんまん うそついたらはりせんぼんのーますっ ゆびきったっ ──────









「ふぅ、やっとついた。ここが、ともしび山か」
眼前にそびえ立つのはナナシマ諸島唯一の火山。温泉があることでも有名で、多くのトレーナーが修行地に選ぶ場所でもある。
そして、カントー全域にのこる伝説の一つと、かかわりの深い山でもある。
「ご主人様、ここを上るんですか?」
「そうだよ」
「でも、伝説の萌えもんなんて、ほんとに伝説でしかないかもですよ?」
「いや…彼女はいるよ、ここに」
「へ?」
「いや、なんでもない。行こう、皆」
手持ちの萌えもんたちに号令をかけ、一歩一歩上ってゆく
遠い日の、幼い約束を果たすために。 






   彼女は、覚えていてくれているだろうか?もう、十年も昔の約束だけれども。
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