5スレ>>645-2


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「なんだってこんなことに……」
 今日の説明をするアナウンスを右から左へと聞き流しながらぼやく。
 サヤにチラシを突きつけられた翌日、俺とサヤは再びサファリを訪れていた。
 行う仕事はサファリ内の生態系調査の補佐。
 平たく言えばサファリ内にどんなもえもんがどのくらい生活しているかを調べる仕事だ。
 サファリ内のもえもんを捕獲してデータ収集、発信機の取り付けの後放す。
 一見単純だが、生態系を調べる上では重要な作業だ。
 そんな重要そうな仕事にボランティアを募集していることや
 当日の飛び入り参加が可能なことなどツッコミどころが多い気がするが、
 それに便乗してデータ収集をしてしまおうと考えている俺達が言えた義理ではないだろう。
 俺達が行っているのはあらゆる種類のもえもんの個体データをできるだけ多く集めるという作業だ。
 当然手間も時間もかかる。他人の手を借りることのできる今日のような機会はかなり貴重だった。
「ほら、なにきょろきょろしてんのよ」
 周りを見渡しているとサヤに肘で小突かれる。
 その目は楽しそうに輝いており、
 やる気だけ見れば日ごろからこういった活動を好きでやってる人たちもかくやというほどだった。
 ただ、今のサヤに問題があるとすれば、
「いい? 力を借りていいのは一人まで。別行動して、集めたデータが多かった方が勝ちよ。
 私とルーメが組めばあんたなんかに負けないんだからね!」
 そのやる気が活動を行うことに対するものではないということだろう。
 今回は作業を円滑に進めるために捕獲時にもえもんの力を借りることが許可されている。
 サヤはルーメの力を借りて昨日のリターンマッチをするつもりなんだろう。
 確かにサヤとルーメのコンビは強力だ。しかし、
「だから、勝負じゃないんだって……」
「いいじゃないですか、勝負くらい。それでサヤさんもやる気になっているみたいですし」
 ミルトが苦笑混じりに俺のつぶやきに応える。
「それに、私とマスターのコンビも負けてはいませんよ?」
 俺が相方に選んだのはミルトだ。
 捕獲向きの技はルーメほどではないが、連携なら負けてはいない。
 なによりこの場所で一緒に活動するのなら、ミルトほどふさわしい相方もいないだろう。
「だから、サヤさん達に思い知らせてあげちゃいましょう」
「ああ、そうしよう」
 楽しそうに微笑むミルトに笑い返す。
 勝負は面倒だが、俺とミルトの連携を思い知らせてやるのも悪くない。
『では、今日はよろしくお願いします』
 タイミングよく響いたアナウンスに押されるように、俺達はサファリ内へと歩を進めた。

―――

「捕獲、成功しましたよ」
 いろいろな専門器具を持ったサファリの係員さんへとボールを差し出す。
「あ、ありがとうございます。そちらはもういいんですか?」
「はい。俺はもうデータを取らせてもらいましたから」
 係員さんからの問いかけに答えながら、図鑑を開く。
 現時点での捕獲数は15。
 開始から1時間ほどしか経っていないにもかかわらず、すでに昨日の記録と並んでいる。
 ミルトがいてくれることも大きいが、やはり多数の人間が協力したからこその数字だろう。
「わぁ、もうこんなに。もう昨日と同じ数字じゃないですか」
 ミルトが横から図鑑を覗き込んで驚きの声を上げる。
「ああ。今日はミルトがいてくれるしな」
「いいえ。たくさんの人が手伝ってくださってるからですよ。
 マスターもそう思ってるんでしょう?」
「まあな。でもミルトがいてくれて助かるってのもほんとだぞ?」
「ですから、私はたいしたことはしていませんって」
 俺の賛辞に表情をほころばせながらも控えめな態度を崩さないミルト。
 素直に喜べばいいのにと思うこともあるが、それがこいつのいいところだろう。
 もう少しその反応を楽しもうと思ったところで、ポケギアが着信を告げてきた。
 この音は、電話か。相手は――
「やっぱりこいつか」
 画面に表示された名前は、サヤ。あまりにも予想通りの展開に苦笑がこぼれる。
「はい、もしもし。どうせ『今いくつ?』って聞きに――」
『トウマ!? 今すぐこっちに来て! 私達は第二エリアにいるから!』
 しかし、ポケギアから流れてきた声が告げたことは、予想からかけ離れていた。

―――

「これは……」
 直径20cmくらいの大きさの鉄の輪と、輪に沿ってびっしりと生えた鉄の牙。
 輪を二分している棒を踏んだものは、たちまちその牙の餌食になるのだろう。
 第二エリアの入り口で合流したサヤが見せてきたのは、トラバサミだった。
「ひどいと思わない? よりによってサファリにこんなものを仕掛けるなんて。
 しかもこれ違法品よ? とりあえずサファリパーク本部に連絡はしておいたけど……」
 横でサヤが何か言っているが、俺の頭はそれどころではなかった。
 この罠には、覚えがある。
 10年前、まだ幼い少女を捕らえていた罠。
 隣に立つ少女を見る。
 俺と同じように10年前を思い出しているのだろう。険しい表情をしていた彼女は、
「…………っ」
 次の瞬間、風のように駆け出した。
「ミルトっ!」
「ちょっと、トウマ!?」
 その後を追うように俺も走り出す。
 後ろから制止の声が聞こえるが、知ったことではない。
 今のあいつを放っておくなんてできるものか。
 
―――

「くそっ。どこだ、ミルト!」
 すぐに追いかけたはいいものの、茂みに入ったあたりで俺はミルトの姿を見失っていた。
 このあたりはまだ罠が仕掛けられている可能性がある。
 不用意にうろつくのは避けるべきなのだが―――
 ガサガサッ
 右手側、茂みの奥から物音。
「こっちか!?」
 茂みを掻き分け、奥へと向かう。
 そこでは、
 まるで10年前の再現のように、罠にかかっているミニリュウの少女がいた。
「ひっ!」
 俺の姿を認めると同時に顔を引きつらせ、逃げようとするミニリュウ。
 しかし彼女の足を捕らえた罠はそれを許さず、逃げようとした分だけの苦痛を彼女へと与える。
「よせ! 傷が深くなるだけだ!」
 制止の声を上げるが彼女の行動は変わらない。
 むしろ俺が喋ったことで危機感を煽られたのだろう、より必死になって逃げようとしはじめた。
「頼むからやめてくれ!」
 言葉と共に荷物を放り投げる。
 俺が何かを投げたことに身をすくませたミニリュウだが、
 俺が放り投げたものが何であるかを認識するととりあえずあばれるのをやめてくれた。
「私を捕まえに来たんじゃないの……?」
「違う。そいつを仕掛けたのは俺じゃない。……待ってろ、今外してやる」
 話しかけながらゆっくりと近づく。10年前は歯が立たなかった罠。でも、今なら――

「いけませんねぇ、そのようなことをなさっては」

「……え?」
 突然響いた声に振り向くと、茂みの向こうから1人の男が歩み寄ってきた。
 探検服を模した服装から、サファリの係員だとわかる。
 サヤが連絡をつけたといっていた本部の人間だろう。
「当サファリでは罠の使用は禁止です。そのくらいわかってますよね?」
「違う、これは俺が仕掛けたんじゃない」
「言い訳は後で聞きます。とりあえず両手をあげておとなしくしてください」
 どうやら男の目からすれば、俺が犯人で確定らしい。
 できるならここで誤解を解いておきたいが、今はミニリュウの手当てが優先だ。
 俺が両手をあげたのを確認すると、男はゆっくりと近づいてきた。
 男が俺まであと数歩のところに来たとき、俺のポケットから簡素な電子音が鳴り響いた。
「……電話なんですが、出てもいいですか?」
「だめです。仲間を呼ばれると厄介ですからね」
 電話の相手はおそらくサヤだ。
 彼女の説明で誤解が解けるとは思えないが、できればこちらの状況を伝えておきたい。
「そんなことはしません」
「信用できませんね。さ、出してください」
 男の言葉にしぶしぶポケットの中に手を入れる。
 しかし取り出す過程で通話ボタンに触れたのだろう、
 ポケットから出ると同時にポケギアからサヤの声が流れ出した。
『トウマ、何処にいるの? こっちは今サファリ本部の人と合流したところ。
 今は1人しか来れないみたいだけど、そのうち応援が――』
「さっさと出しなさい!」
 男が急に血相を変え、俺の手からポケギアをひったくる。
 しかしいつも以上に早口でまくし立てるサヤの声は、すでに多くの情報を伝えきっていた。
 本部の人は『1人』しか来ていなくて、今サヤと一緒にいる。
 じゃあ、目の前の男は――?
「気付いたようですね」
 男が声を出す。
 先ほどまでとはまったく違う、殺気が篭もった声を。
「おっと、抵抗なんて考えないでくださいよ?
 ――彼女の命が惜しければね」
 男が指を鳴らすと、茂みの向こうから大きな物音が近づいてきた。
 やがて現れたのは金色の髪と葉っぱをあしらった服が特徴的な萌えもん、ウツボットと、
「ミルトっ!」
 ウツボットの蔓に拘束されているミルトだった。
「マスター!
 ……あなたたち、騙しましたね! マスターの身柄を押さえていると言っていたのに!」
「だから今、身柄を押さえているじゃないですか」
 言葉と共に男が新しいボールを取り出し、投げる。
 中から出てきた2体目のウツボットが、俺の体を縛り上げた。
「――ほらね。そもそも自分のトレーナーから離れる方が悪いんですよ」
「くっ――」
 悪びれた様子もなく言ってのける男に、ミルトが悔しそうに歯噛みする。
「トレーナー君も変な気は起こさないでくださいよ? 私も手荒なことはしたくないので」
「あんたはサファリの係員じゃないのか」
「そうですよ。でもこの方が儲かりますからね。まあ、副業ってやつですよ」
 自分の優位を確信しているのだろう。急に饒舌になる男。
「しかしちょっと派手にやりすぎましてね、ばれそうになってたんですよ」
「それで今回のイベントを利用して、どうにかしようってわけか」
「ご明察。まあ、少々雑な計画ではありますがね。
 さて、先ほどの電話のお嬢さんが来る前に用事を片付けてしまいますか」
 言葉と共にミニリュウのほうへと歩き出す男。
 その手にはサファリボール。性能から考えて、今のミニリュウに逃れる術はない。
 俺は拘束されているし、道具はさっき放り投げてしまった。ミルトは――
「おい、俺達を解放して、その子から離れろ!」
 ミルトの様子を窺った瞬間、俺は男に向かって叫んでいた。
 ミルトの様子がおかしい。殺気がここまで伝わってくるのだ。
 まるで、あのときのように。
「はあ? 何を言っているのですか。……ウツボット」
 しかし俺の焦りは男には伝わらず、男の指示によって俺を縛る蔓が俺を締め上げ始めた。
「ぐっ! いいから早くしろ! さもないと――」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 響いた怒りの声に振り向くと、ミルトがウツボットの拘束を力ずくで破るところだった。

―――

 そこから先はあっという間だった。
 ウツボットの拘束から逃れたミルトは己を拘束していたウツボットを瞬殺し、
 俺――否、2体目のウツボットの方へと突撃していった。
 ウツボットは俺という盾を使おうと動くがミルトの動きにまったくついていけておらず、
 俺を縛る蔓を切り落とされた後はサンドバッグ状態だった。
 ここまでは問題ない。
 男の萌えもんは全員戦闘不能になったし、ミニリュウもまだ捕まっていない。
 だが、これがもしあの時と同じなら――
「ひぃっ!」
 ミルトの視線を浴びた男が悲鳴をあげる。
 男を見るミルトはあの時と同じで、殺気をむき出しにしている。
 まずい、と思ったときにはすでに遅く、
 ミルトが掲げた手から風――『たつまき』がはしり、男を吹き飛ばしていた。
 男を吹き飛ばしたミルトは今度は俺の方を向き、同様に手を掲げる。
 回避しなければと思ったが、後ろを確認すると同時に俺はそれを諦めた。
 俺の後ろにはミニリュウがいた。もし俺が『たつまき』をよければ、ミニリュウに当たってしまう。
「くそっ!」
 足を開き、しっかりと踏ん張る。次の瞬間、風の渦が襲い掛かってきた。
「くっ!」
 必死に耐えようとするが耐え切れずに地面を転がされ、何かにぶつかって止まった。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
 思わずつぶっていた目を開けてみれば、ミニリュウが心配そうな顔でこちらを見ていた。
 幸い、先ほどの『たつまき』は彼女にダメージを与えてはいないようだ。
「大丈夫だ……」
 起き上がりながら答えると、ミニリュウが不思議そうに聞いてくる。
「ねえ、あのお姉ちゃんどうしちゃったの? お兄ちゃんのお友達なんじゃないの?」
「ああ、ちょっと混乱しちゃってるだけさ」
「こんらん?」
「……誰がお友達かわからなくなっちゃってるんだ。大丈夫、お兄ちゃんがきっと何とかするから。
 でも危ないから君は少し離れていてね」
 トラバサミへと足をかけ、全体重を乗せてトラバサミを開く。
「さあ、早く離れて!」
 言葉と共に走り出す。ミルトの注意がこちらを向くのがわかった。
 ――よし
「ミルト、もういい! やめるんだ!」
 声をかけても返事はなく、代わりとばかりに『たつまき』が放たれてきた。
「俺もあのミニリュウも無事だ! もう戦わなくていい!」
 『たつまき』をかわしながら声をかけ続ける。
 1発、2発――3発目で体勢を崩され、4発目で再び吹き飛ばされた。
「いてて……」
「お兄ちゃん!」
 足を引きずりながらミニリュウが寄ってくる。
「よせ! 離れていろ!」
「お兄ちゃん、これ使って!」
 俺の言葉を無視して近寄ってきたミニリュウは、小さな緑色の木の実を持っていた。
「これは?」
「頭がごちゃごちゃになってきたらすぐ食べなさいってお母さんに言われてたの。
 あのお姉ちゃん誰がお友達かわからなくなってるんでしょ? だったらこれで治るかも!」
 そういってその木の実を渡してくる。
 本当に効くのかはわからないが、ただ言葉をかけるよりは効果的だと思えた。
「ありがとう、使ってみるよ。
 ……ところでさ、君はあのお姉ちゃんみたいに風を使える?」
「うん、ちょっとなら……」
「だったらさ、俺が合図したらあのお姉ちゃんに向けて風をぶつけてくれないかい?
 お姉ちゃんを治すのに君の力を貸して欲しいんだ」
「……うん、わかった!」
「じゃあ、いくよ!」
 言葉と共に再び駆け出す。
 ミルトとの間合いを詰めるように、ミルトの注意を引くように。
 さっきと同じように『たつまき』が来る。1発、2発――
 3発目をかわしきったところであと数歩の距離まで近づくことに成功する。
 ミルトの注意が完全にこちらを向くのを感じた。
「――今だ!」
「えいっ!」
 俺の合図と共にミニリュウが『たつまき』を放つ。
 それはまだたつまきとも呼べない、ちょっと強いくらいの風だったが、
 俺に集中していたミルトにとっては完全に虚を突かれる形になった。
 ミルトの集中が乱れ、隙ができる。
 俺はその隙をついて一気に接近し、
「正気に戻れ、ミルト!」
 小さく開いた口へと木の実を押し込んだ。

―――

「……お姉ちゃん、大丈夫なの?」
「ああ、ちょっと疲れたから寝ちゃったみたいだね」
 草むらの中、ミニリュウの手当てをしながらの会話。話題は自然とミルトのことになっていた。
「それにしてもすごい効き目だったね、あの木の実」
「でしょ? お母さんの言うことは間違いないんだから!」
 誇らしげに胸を張るミニリュウ。
 あの実を飲み込んだ後、ミルトは急におとなしくなり、そのまま眠り込んでしまった。
 今は俺の膝を枕にして静かな寝息を立てている。
 おかげで少々手当てがしにくいが、まあいいだろう。
「でも、なんで俺達を助けてくれたんだい?
 俺達があの罠を仕掛けたのかもしれないのに……」
「だってお兄ちゃん達は私を助けようとしてくれてたでしょ?
 だから私もお兄ちゃん達のことを助けたいって思ったの」
「……なるほど。はい、これでおしまいっと」
「ありがとう! じゃあこれは手当てしてくれたお礼だよ!」
 頬に柔らかい感触。その感触があった場所から、自分のものではない熱が広がっていくのを感じた。
 驚いてミニリュウの顔を見ると、はにかんだような笑顔が返ってきた。
「でも、お姉ちゃんにはナイショだからね?」
「え? それってどういう――」

「あ、いたいた!
 ってコラー! 人を働かせといて何いちゃついてるのよ!」

 思わず発した疑問の言葉は、乱入してきたサヤによってかき消されてしまった。
 
―――

「今回は大変だったな」
 サファリからの帰り道、隣を歩くミルトに話しかける。
「すみません。あの罠に誰かがかかってるかもしれないと思ったら、
 いてもたってもいられなくなって……」
 責任を感じているのだろう、ミルトはしょんぼりとしていた。
「気にするな。止められなかった俺にも責任はあるし、みんな無事だったんだから」
「でも、マスターを危険に晒してしまって……」
「俺だってミルトを危ない目に遭わせてしまった。だからそのことは言いっこなしだ。いいな?」
「……はい。ありがとうございます、マスター」
 ミルトの顔に少しだけ笑顔が戻る。
 それを確認したところで、サファリパークの門に差し掛かった。
 2人で門をくぐり、どちらとも無く振り返る。
 夕日に照らされるサファリパークの建物は、あの日と同じようにきれいだった。
「ずいぶんと久しぶりだなぁ、ここも」
 思わずそんな言葉がこぼれた。
 実際には昨日も訪れた建物なので久しぶりもなにもないのだが、
 同じ日の事を思っているのだろう、ミルトは何も言わなかった。
「なあ、俺達が出会ったときのこと、覚えてるか?」
「もちろんですよ、マスター」
 なにを当たり前のことを、とでも言いたそうなミルト。
 そのことを嬉しく思いながらも、俺の表情はだんだんと固くなっていった。
「……俺は、10年前の約束を守れているか?」
 今回の件で思い出されるのは、10年前のこと。
 人生初の大事件と、守りたいと願った少女のこと。
 あれから10年経ち、自分では力をつけたつもりでいたが、
 今回もあの木の実が無ければミルトを『暴走』から戻すことができなかった。
 ならば俺はあのときからまったく進歩していないのではないだろうか。
 そんな俺にあの約束を守ることができているのだろうか。
 そして、これから先は……
「そうですね、どちらかといえば私がマスターのことを守っているのですが……」
 響いてくるミルトの声に意識を集中させる。
 一度言葉を切ったミルトは俺の正面に回ると、
「あの約束は、一度も破られていませんよ」
 あの頃から変わらない、極上の笑顔を向けてくれた。
「……そっか」
 その笑顔を見ながら、思う。
 これから先もこの笑顔を守れるのなら、
 『暴走』だろうがなんだろうが跳ね除けてみせる、と――
ツールボックス

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