5スレ>>650-1


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カントーとジョウトを分かつ霊峰、白銀山。
そのふもと、人もほとんど来ない静かな場所に、家があった。

普通の家族が暮らすには少々広いその家に向かい、朝の山道を進む青年と萌えもん。

「…1年ぶりか…おじいちゃん、元気かな」
「あの人はそうそう死ぬ人じゃありませんからねぇ…」

やがて上り坂から平坦な道になる。山のふもと…といっても高度はそれなりにあるが、
そこにながれる川を背にして作られた木造の家。

玄関の前のテラスに、杖をついた一人の老人が立っていた。
70代に見えるが、その割には背筋はしっかりと伸び、元気なように見える。
髪が少々後退している額には、サングラスがかけられている。

老人はこちらへ向かってくる二人を見ると、厳めしそうなその顔を少し綻ばせた。

「来たか、ミツキ。…久しぶりだな」
「ご無沙汰してます、義兄さん。サングラス変えました?」
「前のはネジが壊れてな。…お前さんはあまり変わらんな…当然といえば当然じゃが」





「…あの事件からもう50年経つか」
「ええ。…僕はこの一年、ホウエンを回ってきました。…あれからずっと、異変らしい異変は一切見当たりません」
「喜ばしいことだ…犠牲を払っただけの事はあったというわけだ。…俺もお前も」

老人はテーブルの上に置かれていたアルバムを、鈍く光る金属の左腕でめくった。

「…義兄さんは左手を『喰われ』て」
「お前は命そのものを奪われかけた。…ファイヤーのおかげで助かりはしたがな」
「年をとらないのは…やっぱりちょっと寂しいですね。キュウコンがいるお陰で助かってますが」
「…みぃと私の時間の流れはほぼ一緒ですから。私も一人じゃなくなって…よかった」

家の中。広いリビングにおかれたテーブルに向かい合って座っている、老人と青年、そして萌えもん――キュウコン。
二人はそれぞれ、最近の出来事を報告し合った。
青年は各地を旅して、調べて回ったことを。
老人はこの家で共に暮らしている萌えもんや人間のことを。

「…バルトも、今はもう二代目に任せて引退しとるらしい」
「あの人が喫茶店を開いたのが…まるで数日くらい前に思えます」
「まったくだ。…今度買いだしのついでにでもよってみようかね」

やがて、3人は立ち上がって家から出て歩き始める。

「折角だ。皆にも顔を見せてやってくれ」
「…もちろん、そのつもりできました」






家からさほど離れていない、見晴らしのいい崖の上。
そこには、規則正しく十数個の石が並んでいた。一つ一つに、名前や年号が刻まれている。

「ただいま。クロ、ルカ、みんな」
「ただいま。…お姉ちゃん達」

青年とキュウコンが並んで黙祷を捧げる。
崖下では、川岸で何人かの萌えもんがはしゃいでいるのが見えた。

「…時代は変わっている。眼には見えなくとも、新たな命が生まれ、そして古い命は消えゆく」

一つの墓石の前で座って黙祷を続けていた老人が立ち上がって、二人を見つめていた。

「もうすぐ俺もここに眠る事になるんだろう。…その前に、渡しておくものがある」





      * * *



それから数日間、青年とキュウコンは山の家で過ごしたのち、また旅立っていった。

「…やれやれ」
「お祖父ちゃん、お疲れ見たいですね」

椅子に腰掛け、軽く溜息を吐いた老人に、一匹の萌えもんが声をかける。

「年だからな。…肩でも揉んでくれるのか?」
「仕方ないですねぇ」

シャワーズは座っている老人の背中に周り、その薄い肩に手を当てて解していく。

「…お祖父ちゃん、どうですか?」
「………」
「お祖父ちゃん?」
「………」
「…もう…眠いなら部屋で寝てほしいです」

少し頬をふくらませ、シャワーズは椅子を離れる。
やがて毛布を持ってきて、老人の膝にかけた。



      * * *



俺は奇妙な空間にいた。
黒と赤と緑と青だけでできた、目の痛くなる空間。

(…ここ、どこだっけな)

ここには一度だけ来たことがあった…気がするが、思いだせない。
頭の中に靄がかかっているような。

(…いや)

靄がかかっているのは頭だけではない。
自分の肉体そのものが、ぼんやりとしか感じられない。

(…夢、なのか?)

その疑問が浮かんだ瞬間。極彩色の空間に、淡い水色の光が現れた。
光は何かの形をとり、その手を俺に伸ばしてくる。

『……タ…』

ああ。…いつになっても、お前は俺をそうとしか呼んでくれなかった。
思い出した。その光の正体が、わかった気がした。

答えるように手を伸ばす。

…触れた瞬間、その光は拡がって、俺を包み込み――――


       * * *


 





 Scarlet Fighter, Crimson Revenger



 完結編  - Final Dreamer -
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