5スレ>>668


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冬のある日、俺がトキワジムリーダーに就任して数週間経った頃。




かりかり。

「…………」

かりかり、かりかりかり。

「……はぁ」
「…マスター、お疲れですね」
「正直相当しんどい…延々と自分の名前と丸だけ書いてるのは果てしなく面倒だ」
「でも、これも仕事だからね。バトルで私達が頑張るんだから、マスターはこっちで頑張ってもらわなきゃ」
「…………頭痛ぇ」

いつもと変わらない暇なトキワジム、いつもの書類仕事。
俺はシャワーズとフーディンに手伝ってもらいながら、サインやチェックをくりかえす。

シャワーズが俺が書き終えた書類を整理しながらお茶を入れ、
フーディンは書く前の書類選別。本来一人でやらなければならない事を考えるとだいぶ楽なのだが…。

「あ゛ー…」

いい加減頭も飽きているのか、頭痛がしてきた。
少し頭がぼうっと、もやがかかったような感覚がする。昨日シャワーズが寝かせて…ゲフンゲフン。

「…咳まで出てきやがる…てか、寒くないか?どこか窓でも開いてるんじゃ…」

俺の素朴な疑問に、シャワーズとフーディンが顔を見合わせる。

「…マスター」
「ん?…って、つめたっ!?」

耳に触れる冷たい感触。そして、小さく高い「ピピッ」という金属音。

「…体温計?」
「38.5℃」

…は?

「…風邪ですね」
「風邪だね」
「…え?」






…翌日。
俺はベッドの上で布団をかぶり、何もせずに横になっていた。

診断結果は幸いなことに普通の風邪。最近はやっているインフルエンザやポケルスB型ではないらしい。
身体を冷やさないようにして、栄養と休養を取ること、だそうだ。

―――が、しかし。

「…暇だな」

昨日まで忙しかっただけに、この暇は少々辛い。
薬のおかげで熱も頭痛も抑えられていて、若干ぼやけた感覚以外はすべて普段どおりなのがまた逆効果だ。

「はぁ…」

そう言えば俺は、旅を始める前の数年間、風邪をひいた記憶がない。
それがまた心細さを掻き立てる。

トキワジムは今日は閉鎖、ということになっている。
窓から見ると、ライチュウとキュウコン、プテラがキャッチボールをしている。
こちらに気づいたライチュウが手を振ってくるので、振り返した。…今日も平和だ。

「…いい天気なのにな…」
「でも、窓から脱出しようなんて考えないでくださいね?」
「いや、流石にそれはない」

部屋の入口からかけられたシャワーズの言葉に、反射的に返す。
というか、俺はそんなに逃げ出しそうに見えるのか。

「ミュウツーの事件の後から、ジムリーダーになって、休みもなしに働いてた反動ですよ。
 ちゃんと看病しますけど、マスターが休まないと治らないんですからね?」
「分かってるよ…悪いな」

ベッドの横の机で林檎を剥き始める。…器用なことに、皮を一つなぎにしてくるくると剥いている…。
出来る人には簡単なのかもしれないが、俺には全く出来る気がしない。…できなくてもいいような気もする。

「フーディンとフライゴンがいま夕食の買い出しに行ってます。…具合はどうですか?」
「薬が効いてるから何とも言えねーな。正直治ってからの書類を考えてると気が重い」
「あんまり何も考えない方がいいですよ…出来ました」

見れば、見事に切られたリンゴが皿の上に整列している。芯と皮は袋に入れて捨てるようだ。
で、爪楊枝を刺して…

「はい、マスター。口開けてください」
「……………」
「食べないとよくなりませんよ?はい、あーん」
「…いや、普通に自分で取って食うけd『駄目です!』何故に!?」

…ものすごい圧力だ。これは…もし自分でとったりしたら今後が怖い。

「……あー」
「はい、どーぞ♪」
「…どーも」

うん、普通にうまい。流石だといいたいが…いや、もう何も言うまい。

「私、こういう看病したことないので…一度してみたかったんです」
「…なるほどな」

考えてみれば、シャワーズが仲間になってから、寝込むほどの病気になった奴は誰もいない。
ロケット団に捕まってる間は論外だし…その前はあまり看病の必要性がなかったんだろうな。親がいたし。

「…シャワーズ」
「なんですか?」
「もう一つ欲しい。取ってくれ」
「…はい!」

…まぁ、折角だしたっぷり看病されてやろう。
どうせこういう機会はなかなかないし。




「…ごちそうさま」
「お粗末さまでした。…マスター、寝たらどうですか?」
「暇すぎて逆に眠れないんだが…なんか落ち着かないしな…やっぱり起きて書類片付けたりは…」
「だめです」

…まぁ、そりゃそうか。
暇なんだが、逆に下手してこじらせると厄介だしな…たかが風邪、されど風邪。

「…シャワーズ、何か暇をつぶす方法はないか?できれば頭に負担をかけないのがいいんだが」
「うーん…じゃあ、こうしましょう」
「?」

言うが早いかシャワーズはベッドに腰掛け、掛け布団の下に手を入れて、俺の右手を握った。
水タイプの体は割と冷たい、などと言われるが―――

「自分以外の体温を感じてると、安心しませんか?」
「…うつるぞ、風邪」
「その時はマスターが看病してください」
「…リンゴは剥けないからな」

―――シャワーズの手は、あたたかい。

「…意外と、効くかもな、これ」
「何か言いましたか?」

「…いや、なんでもない。もうしばらく頼む」

冬の昼下がり。
シャワーズに手を握られ、俺は眠りの海へと沈んでいった…。



















あとがき。

風邪には気をつけましょう。ストーム7です。

所要時間2時間の割に、内容のないものとなってしまいました。

いまだに受験生なので長いのは書けない、というのもありますが、

ブランクが開き過ぎたのが大きいようです。

これからもちまちまリハビリとして作品を投げ込んでいくので、よろしくお願いいたします。
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