5スレ>>678


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 現在の時刻は午後九時をやや回ったところ。
 今日は珍しく、俺とべとべたぁの二人で夕食後のまったりタイムをすごしていた。
 ふりぃざぁに何やら用事があるらしく、一人どこかへ飛び立ってしまったからである。
 捨て台詞は、

『べとべたぁ大佐にケーキを食べてもらわないといけないので、明日には帰りますよぅ!』

 帰ってきたらまず頭をシェイクして言うこと言ってやらないと気が済まん。
 何の為に三人分宿泊代払ったと思ってるんだ……。
 っと、その前に。
 テレビにかじりついてる(半分程度比喩)べとべたぁを眠らせないと。

「おーい、九時過ぎたからそろそろ寝ろよー」

 声を掛けるとテレビに映る食べ物から視線が剥がれ、

「きょうは、ねないです」

 相手が相手であれば結構魅力的なセリフを吐き申したでございまする。
 しかし残念ながら、その相手はまだまだ子供まっさかりのべとべたぁだ。

「だーめ。早く寝ないといっつもグズグズ言うだろ?」
「いわないです」
「ご飯減らすぞ……?」
「そ、それでもいいですっ」
「んー……」

 食べ物を出してもだめとなると……。
 主に頭の天辺と首の下を見て、

「大きくなれないぞ?」
「う……い、いいです!」

 ふむ……。
 ここまで意地を張られると無理矢理寝かせるのも気分が悪い。
 べとべたぁの睡眠時間にはうるさいふりぃざぁもいないし、

「じゃあ今日だけだからな」
「わかってるです!」
「調子いいなコノヤロウ」
「へへー」

 許しがでたのが嬉しいのかだだ甘えで抱きついてくるべとべたぁ。
 その頭を撫でつつ、
 ……抱きついてくれるなら毎日許してもいいかなぁ。
 なんて思い始める俺の頭に拳骨をいれるのだった。





「ごひゅじんさまぁ……あえおいしそうれすよぉ……」

 一時間後、そこには呂律が怪しくなりだしたべとべたぁがいた。

「そうだな。おいしそうだな……」

 隣でちょこんと正座する姿は、フラリフラリと眠気で揺れて危なっかしい。
 とりあえずこめかみに人差し指をつきたて抑えるとして、

「眠いんなら無理すんなよー?」
「ねむくなーです。ちゃとおきてるれす」

 さっきから何度か寝かせようと試みはしたけど意地で眠るつもりはないらしい。
 布団へ強制連行しようとしたら嫌がって暴れたし。
 ……今日何かあったっけな?
 理由もなく意地を張るようなことはそうないと思うが……。
 とりあえず……、

「みかん食おう」

 小腹が空く時間帯なのです。
 いくつかある中から小さいものを選んで剥き始める。

「……」

 が、隣から圧力のようなものを感じて手が止まった。
 視線をやると、姿勢を崩したべとべたぁが目はうつろなままにこちらを見ていた。
 みかんを動かすとそれを追うようにゆっくりと頭が動く。

「食べるか?」

 訊ねるとこくりと頷いた。

「んじゃ少し待ってろよ……」

 ぱぱっと一房取って、べとべたぁに手渡そうとするが、

「……」

 八割五分眠ってるこのお方が受け取ってくれるはずがなかった。
 というかよくその状態で食べようと思うな……恐るべき食欲。
 しかたなく口に運んでやる。

「あーん」

 ぱくり。
 指先に伝わる体液の生暖かさ。
 ざらりとしたまとわりつく舌の感触。
 みかんと共に甘く噛まれるくすぐったさ。
 そしてなんといっても、まったりと無防備なその笑顔。
 ひな鳥にエサを与える親の気持ちが分かるね、うん。
 べとべたぁが頬に右手をあて一言。

「おいひいれふ……」
「それじゃもう一個食べるか……?」

 結局みかん一個全部食べさせてしまった。





 はっとして顔をあげると、時刻は十二時を回っていた。

「……いかんいかん。少し寝てたか」

 みかんをあげてからは特にコレといったこともなく、べとべたぁがどこまで頑張るのかを眺めているだけだった。
 結果としては、途中で観測者がバタンしてしまったわけだが。
 肝心のべとべたぁは……。
 目が部屋の中を彷徨うよりも先に、伸ばした両足の上の重みに気付く。
 そこには俺の足を枕に、すやすやと気持ちよさそうに眠っているべとべたぁの姿があった。

「zzz」

 ……小さいくせにいっつもよく暴れてくれるよな。
 どこからそんな力が出るのか全くもって不思議だ。
 その代償としての食欲かもしれない気がしたが。
 ……よし、次の目的地はテレビで見たグルメなお店にしよう。それがいい。
 驚くかなぁ……。
 深夜に女の子のことを色々想像してニヤニヤする男。変態である。

「さてと……」

 べとべたぁを布団まで連れて行かないとな。
 起こさないようにそっと担ぎ上げ、布団に寝かせた。

「……ぅ」
「ん、起きちゃったか?」
「……」

 べとべたぁは薄く目を開けてぽーっと天井を見つめる。
 そのまま数秒が過ぎて、

「……!」

 何かに気付いたのかはっとして上半身を起こした。

「いまなんじですか……?」
「十二時を少し過ぎたくらいだな。さすがにもう寝てくれよ? 俺ももう寝るつもりだしな」

 そう言ってべとべたぁを横にさせて、トイレに向かった俺の背中に、

「おたんじょうびおめでとうです。ごしゅじんさま」

 驚いて振り返るが、べとべたぁは既に寝息を立て始めていた。
 ……ハハハコヤツメ。
 胸いっぱいに暖かいものを得て、俺の一年はスタートした。





 朝早く。

「ただいまかえりましたよぅ!」
「てめぇまだべとべたぁ寝てるから静かにしろ!」
「ひぃぃっ」

 怒鳴った俺も大概だが。
 ともあれ何やら小さな袋を手にふりぃざぁが帰ってきた。

「用事はちゃんと済んだのか?」
「は……はぃ。いちおうは……」
「そうか」
「あ、あとあとっ」
「?」
「これお誕生日のプレゼントですよぅ」

 小袋はどうやら俺への貢物(強がり)のようだ。
 軽くて小さい……キーホルダーとかの類だろうか。
 開けてどうぞという目をしていたのでそのまま開けると……。

「石っておま……草っておま……」
「ど、どっちも立派なご利益のあるものですよぅ! 主に長寿のっ」
「へーコレガネーソウナンダーアリガトウネー」
「さ、さすがにあんまりですよぅ……」

 だって、べとべたぁのおめでとうの言葉と比べたらね。
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