小さい子、電波、無口で大人しい……
コイルに対するイメージは人それぞれだろうが、殆どの人のイメージするコイルはこのような感じであろう。
かくいう俺もコイルにそんな固定観念を持ってた……
「あぁ!! 待ってよマスター!!」
こいつに出会うまではな……
俺は名もないもえもんトレーナー……と言っても、バトルとかはしないトレーナーだけどな。
パートナーは後ろで俺を追いかけているコイル。俺が初めて捕まえた……というか保護したもえもんだ。
保護した経緯とかは……まぁ色々とあったので省略する。
このコイルはみんなが思い描くようなステレオタイプのコイルとは殆ど真逆で、
体は小さいが、人間の子供のように活発、笑ったり泣いたりと大人しいという言葉とはほど遠い。
まぁ、そんな姿が可愛らしいんだけど、本人には黙っていよう。
今日はちょっとした買い物をするために、ちょっと離れたタマムシのデパートまで来た。
家で待っててとコイルには言ったのだが「いっしょにいきたい!」と言って聞かなかったので、渋々承諾した。
今更ながら、好奇心旺盛なコイルを家に待たせておくのも無理だったと思うがな……
「待ってマs……はう!」
ばたっと音がしたので振り返ると、コイルがもっていた買い物袋の中身をぶちまけて転んでいた。
「あちゃぁ……こりゃまた盛大に……」
そう言って転んだコイルを立たせる。既にコイルの目には涙が貯まっていた。
「うぅ……いたい……」
「ほらほら、こんな事で泣いていちゃだめだぞ?」
「まだ泣いてないもん、それより……ごめんなさい……」
「ん?」
「マスターに……全部めちゃくちゃにしちゃって……ごめんなさい……」
そう言ってコイルは俯いてしまった。
「大丈夫だよ、コイルが落としちゃった物の中に割れ物はなかったし、問題はないさ」
「でも……」
「それより、コイル、お前はえらいぞ」
そう言って俺はコイルの頭を撫でた
「あぅ……マスター……?」
「ちょっと前のコイルだったらすぐに泣いちゃったけど、今日はまだ我慢してるじゃないか」
「あぅぅ……」
前の泣いた事例を言われたのと褒められたのが重なって、コイルは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
そんなコイルはお構いなしに、俺はコイルの頭を撫で続けた。
「マスター……なでてくれるのはうれしいけど、はずかしい……」
「あぁ、ごめん」
そう言って俺はコイルの頭から手を離した。
コイルはいそいそと先程ぶちまけてしまった買った物を袋に回収し、その袋を右手に持った。
「んしょ……」
「……やっぱりちょっと重いかもな、俺が持つよ」
「だいじょうぶです。いつまでもこどもじゃないですっ」
そう言ってコイルは頬を少し膨らませた。
「そう、だったら良いけど……」
「でもマスター……」
「ん?」
「歩くはやさ……はやくてついていけないよ」
「そっか、だったら」
そう言ってコイルの空いてる左手を握った。
「マスター……?」
「こうすればお前のペースに合わせて歩けるかな……って思ってさ」
そう言ってコイルの方を見る。
先程の頭を撫でたときよりは赤くはないが、少し恥ずかしそうにしていたが
「……うん!」
そう言って満面の笑みを浮かべた。
コイルには笑顔が一番似合うな……なんて場違いな事を思いながら、俺達二人は帰路に着いた。
最終更新:2009年03月20日 21:10