5スレ>>691-6


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『6.ディア・メ・トリカル』






朝…といってももう太陽は高く昇り、じきに昼になろうかというころ。
ボクはいつも通り、パートナーを起こし終えたところだった。

「あら、おはようミツキ」
「おはようクロ。あのさ…朝が弱いのは分かるけど、やっぱりもうちょっと早く起きれない?」
「起きてますわよ。ただ身支度に時間がかかるだけです!」

…その割にはまだ寝癖がついてるんだけどなぁ、綺麗な藤紫のロングヘアーに。
適当に指を通して梳いてみると、すごい眼で睨まれた。

「…シャワー浴びてくる?」
「そうさせてもらいますわ…」

若干ふらついた足取りでシャワー室へ向かうクロ。
…まあ、低血圧だし、本来夜に強い種族だから仕方ないといえば仕方ないんだけれども…


「…どうしようかな」

暇になった時は、気づけばボクの足は家の裏のテラスに向かう。
裏庭があって、小さな野菜畑があって、手作りのトレーニング用具がある。
で、そのトレーニングフィールドで一人ストレッチをしているルカリオ。

この前シンオウから帰ってくる際に一緒に連れてきてしまったのだけれど、
彼女自身は僕の手持ちとして仲間となることを決めていたらしく。

「まぁ、強いし、真面目だし、朝早いから頼りになるといえば頼りになるけど…」
「…聞こえているぞ、みぃ」
「え!?」

タオルを首にかけたルカが、こっちへ歩いてきていた。
クロも女の子にしてはそこそこ背が高くてすらっとしてるけど、ルカはさらにちょっと高い。
正直、ボクも負けそうだ。…負けたくないな、男として。

「…カルシウムを取ればいいんじゃないか?」

…ルカはなんというか…義兄さんのフーディンのように思考を読める訳ではないけど、
すごく勘と洞察力が強くて、顔に出やすいボクの考えはすぐに読まれてしまう。
でもその割にはちゃんと言っていいことと、黙っておくべきことをわきまえてる…というか。

何にしても、ボクのような駆け出しトレーナーにはもったいないような有能な萌えもんなんです。
…それはクロやミカ、ファンもそうなんだけど。

「…あまり朝から暗い顔をするな、みぃ」
「ん…うん、ごめんねルカ」
「わかればよし。…シャワー浴びるか…一緒に来るか?」
「ええ!?」
「ふふ…冗談だ」

うぅ、からかわれてる…
と、反対側から寝癖を治してきたらしいクロがやってきた。

「「…!」」

クロとルカがたがいに気づいて、にらみ合う。

「…今日も朝寝坊か。ずいぶんと怠惰な生活を送っているものだな」
「あらあら、朝から汗までかいてご苦労なことですわね。…体重でも落としたいのかしら?」
「「……むっ…!!」」

…もうこの喧嘩も慣れてきた。
一日三回くらいはこれをする。僕が口を出すと余計二人ともヒートアップするので、
最近は黙って成り行きを見守ることにしている。

「いい加減に貴様とは決着をつけなければならないらしいな」
「あら、やる気ですの?いいでしょう、受けて立ちますわ」

…この展開も、慣れてきた。頻度はだんだん少なくなっているが、
今でも三日に一回は喧嘩が始まる。
さすがにこれはちょっとまずいので、

「そこまで。…やるなら兄さんの許可得てジムでやってよ?」
「む……」
「くっ…」

…義兄に頼るって情けないトレーナーだなぁ…とちょっと思うけど、
実際勝負するならジムのスタジアムを使うわけで、許可を得ずにやったら…
まぁ、怒られる。それなりに。


「というか、お前ら毎日のように喧嘩しててよく飽きないな」
「む、兄上…」
「お兄様…」
「…ミツキ、こいつらの俺に対する呼び方はどうにかならないか」

…無理だと思います。いまさら名前で呼ぶのもアレだし。

「…ミツキ、シャワー浴びてくる」
「わ、私はお昼御飯を…」
「あー…うん、いってらっしゃい」

義兄さんがいさめると逃げるようにその場を立ち去る二人。
以前ボクがいない時に喧嘩して怒られて半ば逆ギレ同然に二人が突っかかったところ、
まとめて吹っ飛ばされたらしい。…正確には義兄さんだけじゃなくて、横にいたフーディンが止めたらしいけど。



「…ごめんなさい、義兄さん」
「まぁ…気にすんな、とはいわないけどな。
 俺は別にいいけどお前がトレーナーとして力不足を感じてるのはよく分かってるつもりだ」

義兄さんことトキワジムリーダー・クリムは、トレーナーとしての力量はもちろん、
手持ちの萌えもんもきちんと統率している(普段は結構好き勝手させてるみたいだけど)。

「…どうしたらいいのかな…」

僕の力量がもっとあれば、義兄さんのように…

「そんなに、思ってるほど難しいことじゃないと思うぞ」
「え?」

義兄さんはほんのわずかに唇を釣り上げた。微笑にも満たない小さな苦笑。

「俺は…萌えもん図鑑を作るためにいろんな萌えもんを捕獲してきた。
 けど、今俺が連れてるやつらは皆、自分の意思で俺と一緒にいることを選んだ。
 そういう点では、お前のクロバットとルカリオだってそうだろ?」
「あ…」
「…なんなら、試してみるか?」
「え?」

義兄さんがさっきから手に持っていたビラをボクに見えるように持ち上げる。
そこに書かれていたのは…

「ニビジム、ダブルバトル大会…?」
「トキワジムから一人出してくれって話になってな。
 …俺が行くといろいろまずいだろうし、おまえに頼もうって話だ」



「で、なんでよりにも寄って私達が組むんですの!?」
「まったく同感だ。ファンやミカ、チックはどうした?」
「いや…ほら、二人が一番レベル高いから…ね?」

…正直言うと、ほんとは義兄さんが他の皆を預かってるんだけども。
ニビジムのスタジアムを二つに区切ったリングで、二ブロックの選手計8組が対戦する。
優勝者にはジムリーダー、タケシへのダブルバトル挑戦権が与えられるらしい。

「…まぁ、ほら!勝てばグレーバッジ貰えるんだからさ!がんばろ?」
「みぃがそう言うのなら…」
「むぅ…」

…なるほど。さっきの反応といい、確かにこの二人は似ているのかもしれない。
ひょっとしたらこの作戦、うまく行くかもしれない…



「…ええい、邪魔ですことよ!」
「お前が私の邪魔をしてるんだろう!」

…前言撤回。

現在2回戦、1回戦は相手に1対1の勝負に持ち込まれたので逆に確固撃破であっさりと勝利。
けれど、現在は相手のラムパルドとブーピックに押されていた。

突進力と防御力にたけたラムパルドが前衛で二人をかく乱し、後ろからブーピッグが援護を行う。
完成されたコンビネーションに対し、こっちは…

「ええい、もう…!」
「くっ、この…!」

お互いに牽制しあいながらブーピッグとラムパルドの攻撃をかわすので精一杯。
チームワークも何もあったもんじゃない…。

「ああもう、鬱陶しい!あなたが邪魔するからいつまでも片付かない!」
「五月蠅い!だまって戦えないのかお前は!」

また言い争ってるし…って、ラムパルドが突っ込んできて―――!?

「くぁっ…!?」
「が…!!」

『クロバット・ルカリオ戦闘不能!』



「………」
「………」
「…何か言う事は?」

「「………ごめんなさい」」

バトル終了後の控え室。
回復装置から出ても言い争いを続けていたクロバットとルカリオを待っていたのは、今までにない怒りのこもったミツキの姿だった。

というか、タケシとジムリーダー席で大会を見てて、ミツキが負けてしまったので
一応フォローに来たつもりだったんだが…どうやら俺は今回は何も言わなくていいらしい。

「いつまでたっても子供じみたいい合いばかりで、相手のせいにしてばっかり!
 そんな風だから勝てるバトルでも勝てないし、周りにも迷惑かけるし!」
「「うぅ………」」
「ボクの指示だって全く聞かないし、そんなに自分の意地とプライドが大事!?
 それなら野生に戻してあげるから好きなところで好きなだけ喧嘩してきなさい!」
「うぅ、ごめんなさい…」
「もうしません…」

…うーむ、なかなか激しいな…まぁ、今回は自業自得だしどうしようもないか。

「そりゃ二人の喧嘩を容認してた僕だって悪いけど、バトル中くらい意思の疎通できないの!?
 仲が悪いのは分かってるし、反りが合わないのかもしれないけど、
 ボクの萌えもんとしてバトルするときくらいそれなりの自覚を持ちなさい!」
「はい…」
「気をつけます…」




「…ダブルバトルで何かこう、共通点でも見つけてくれればそれでよかったんだけどな。
 まさかああなるとはさすがに俺は予想してなかった」
「結局怒っちゃいましたし…ごめんね、義兄さん…せっかくいい機会だったのに」
「いや、なかなか面白かった。お前があそこまで怒るのは少なくとも俺は初めてみたし…
 ちゃんと共通点があったしな」

…え?

「あの二人はたぶんもうお前には逆らえない。
 今まで普通に接してただけに今日の事は心に刻まれるだろうからな」
「どういう事ですか?」
「二人だけの共通の経験が、関係の起点になるってことさ」





「……まさかあんなに怖いとは思わなかった」
「全くの同感ですわ…今まで2年間の中であんな激しいみぃ、パルキアのときくらいで…」
「その前もだ…シンオウにいた頃のみぃもあんなに怒る事はなかったぞ…」
「………ねぇ、ルカ」
「………なんだ、クロ」
「記憶喪失になる前のみぃって、どんな子でしたの?」
「…教えてもいいが、代わりにお前が出会ってから、私が出会うまでのみぃを教えてほしい」

「…ギブ&テイク、ということですの?」
「ふふ、少なくとも語り合いというよりは私達らしいな」
「あはは、同感ですわ」
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