5スレ>>691-7


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『7.AQUARIUM』






昔、テレビで水泳の世界大会を見てプールへ行きたいと両親に頼んだことがある。
連れて行ってもらって泳いだのはいいのだが、競技用のプールにあるものがそこにはなくて少し残念だったのを覚えている。
ずばり、深さだ。飛び込み台というよりも、あの深いプールの底に潜ってみたかった。

海にはない無機質な水槽の底。そこから水面を見上げてみたかった。
…それが、予想外の形でかなうとはなぁ。

「泳がないんですか?」
「んー…いや、俺考えてみたらここ数年まともに泳いでないんだよ」
「もし何かあったらすぐ私が助けますよ」

…それはそれで恥ずかしいんだが。

何もない、いつもの平日。俺とシャワーズは、セキエイ高原の競技用プールに来ていた。
セキエイでのジムリーダーの会合ののち、ここのプールが借りられると聞いて興味本位でやってきたのだ。

50m×8レーン、しかも中央は10mはあろうかという深さの巨大プール。
水着もレンタルで借りて、俺たち二人の貸切状態。

「~♪」

俺はぼんやりとプールの縁で足を浸けているだけだが、
シャワーズはもともと水が好きなのでテンションの上がり方も激しく、
さっきからもぐったり50m往復したりと元気に泳ぎ回っている。水の妖精とか言われてたことあったっけな。

「ほら、マスターも一緒に泳ぎましょうよ!」
「いや…俺は別にこういうプールが見れただけで満ぞ…うわっ!?」

…引きずり込まれた。
透明なようで、そのくせ光を吸いこみ暗闇へと変えていくたゆたう水。
海のような大きな波もなく、わずかな水の揺れだけを感じるプールの中央。

「まぁ…たまにはいいかな」
「そうですよ、泳ぎましょう!」

また水の中の世界へと戻っていくシャワーズをしばらく見送り、
俺は背泳ぎのように身体を仰向けにする。耳元を擽る水の音と、窓からの光を反射した輝きを移す天井。
確かに水は動いているのに、時が止まったような錯覚を覚える。

「ふぅ…」

溜息が洩れる。シャワーズはそういえば水の中で何をしているのだろう。
水着に着替えてもつけていたいつものゴーグル(もちろん最初からフル防水加工済)をつけて、水中をのぞいてみる――と。

「マースター♪」
「ぶっ!?」

目の前にいた。…正確には、さっきまで仰向けだった俺の背中にぴったりつくように泳いでいたらしい。
…器用だけどホラーみたいで正直めちゃくちゃ怖いんだが。
というかこいつ水中にいると性格変わってないか?

「このプールすっごく深いですよ!」
「まぁ、競技用だからな。飛び込み台とかあるし」
「マスターも一緒に潜りません?」

…無茶言うなよ。

「常識的に考えて俺みたいな素人が素潜りできる深さじゃないだろ…3mとかならともかく」
「大丈夫ですよ、引っ張りますから。…ほら、思い切り息吸って―――」
「ちょ、ま…!?」

本日2回目の引きずり込みだった。耳が水圧に押され、溜めていた息の半分を吐き出してしまう。
だがそれほど苦しくはない。とっさに吸いこんだのが幸いしたようだった。
抵抗するよりこの際乗ってしまおうと決めて、シャワーズと同じ方向に頭を向けて足を動かす。

プールの底にたどり着くまでは、それほど時間はかからなかった。
先ほどのように仰向けになって見上げれば、泡が立ち上る水面がはるか遠くに見える。

浮き上がりそうになる身体をシャワーズがきちんと抱きとめていてくれているおかげで、
俺は水槽の底にとどまっている。光もわずかにしか届かない水底。

水面と異なり、痛いほどの静寂が支配するぜかい。
温水の水も、このほの暗い薄闇の中だとやけに冷たく感じる。

「どうしたんですか?」
『何でもない』

水中で声が出せるほど俺は人間をやめている訳ではないので、口を動かして意志を伝える。
…確かに静かで二人きりだが、いつまでもこの水底にいる訳にもいかない。というか息がもたない。
それを伝えようとシャワーズの腕を引っ張り、水面を指さす。

「…あ、苦しいですか?それじゃあ…ん…」
(!?)

こういうプールの底に潜るのも初めての経験だが、
他人から空気を口うつしされるのも初めての経験だった。

「これでしばらく大丈夫ですか?」
『…まぁ、いろいろ予想外だったが』

…とりあえず、上にあがる機会を逃した俺は再び水面へと向き直り―――


―――そして、もらった空気をほとんど吐き出してしまった。
というのも、水面からハナダジムリーダーことカスミと、
その相棒たるスターミーがなんとも形容しがたい笑顔でこっちを見下ろしていたからだ。

「!?!?!?」

…あ、シャワーズも気付いた。
混乱している様子で、真っ赤になって水面と俺の方を交互に見ている。
とりあえずカスミに話をしようにも水中ではどうしようもないので、シャワーズを引っ張って水面へと上がる。

水深のあるところから浮上する場合は、息を吐きながら上がらないと気圧の問題があるらしい。
シャワーズも俺も驚きで空気はあまり残っていながったが、なんとか水面へと出ることができた。

「ぶはっ…!!」
「はぁ…!」
「悪いわね、お邪魔だったかしら?」

ニヤニヤとこちらに笑顔を向けてくるカスミ。
正直何か言い返したいところだがそんな気力さえも湧いてこない。

「…なんで、おまえが、こんなとこに、いるんだ…」
「あら、あたしだってジムリーダーよ?急用で遅れたけどさっき書類だけもらいに来て、
 せっかくだからひと泳ぎして帰ろうかな、って。ここのプールすっごくきれいだし」

…お前のジムのスタジアムはここより広いプールになってるだろうが。

「そしたらあなた達が先にいた、ってわけ。
 あー、いいもの見ちゃった♪」

こ、こいつ…!!

「まぁ、ちょうどいいわ。あたしの手持ちも一人、あなたの手持ちも一人。
 結局前のハナダジムでの戦いのリベンジもできてないし、今からここで勝負よ!」
「…マジかよ」

…どうやら、このまますんなりとは帰してくれないらしい。
シャワーズの方を振り向くと、まだ顔は赤いながらもこくんと頷いてくれた。

「…仕方ないか。俺達が勝ったらさっきの事は他言無用だ、いいな?」
「いいわよ。あたし達が勝ったら、二人分のお昼御飯おごってもらうから!」

プールサイドに上がり、50m先の向こう岸のカスミとにらみ合う。
…泳ぎに来てバトルというのもいまいち釈然としないが、まぁ成り行きだしどうしようもない。



…さっさと勝って、シャワーズと一緒に帰ろう。




そう思って俺は、ボールを空中へと投げ上げた。



























「…まぁ、流石に他言されたら困るし本気でやらざるを得ないわけで」
「ちょっと、何よその水分身って!?反則でしょ!?」
「いや、もともと持てる技能の応用だから別に反則じゃ―――」

「納得いかないわ、もう1戦よ!」
「ちょっとまて、それじゃ何時までたっても終わらないだろ!?
「あ、こら、逃げるな~っ!?」


おちなし。



















あとがき。


7777ヒットss、いかがでしたでしょうか。

結局自分ではネタも思いつかず、ほとんどを他の作者さんに頼ることとなりました。

そのくせ自分ではあまり満足いかない出来栄えだったのですが、

まぁ…時間が時間ですし。これ書いてるときもう1万ヒットが目と鼻の先ですし。

時には妥協もひつよ―――すいませんごめんなさいもうしません。

とりあえず、今回はいまいちクオリティが冴えないものとなってしまった感があります。

それでも気合いと根性で書き上げたので、少しでも楽しんでくだされば幸いです。




何はともあれ。これまでストーム7のssを読んで下さり、ありがとうございました。

今度からは、量より質を心がけた作品を書いていこうと思いますので、

なにとぞ今後ともよろしくお願いいたします。






 



2009.3.27    ストーム7。
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