5スレ>>695-2


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No.258
種族名:みずごろう
タイプ:みず
性格:クーデレ
ニックネーム:くらら

~ 第二話 ~

オダマキ博士について研究所にたどり着いた。
やっぱりこの小さな町の中でほぼ唯一といっていい立派な建物だ。
研究者って儲かるんだろうか?
みずごろうは抱き上げられて怖いのか、俺の服にしがみついていた。
「下ろそうか?」
「…重たいですか?」
「いや、怖いのかなって。」
みずごろうは自分の手が俺の服を力いっぱい握っているのを見て慌てて放す。
「どうする?」
「…このままで。」
「了解。」
出会ったばかりでここまで懐いてくれるというのはもえもんボールの洗脳というのは考えていたよりも強力なのかもしれない。
俺はもえもんと人との関係が少しだけ怖くなった。

「という訳で、さっきのお礼としてそのみずごろうは君にあげよう。というかどう見てもその子はもう君のもえもんだしね。」
研究所に入るとみずごろうは自分から床に下りて俺の足元に待機している。
「オダマキ博士、一つ聞きたいんですがいいですか?」
「なんだい?私に分かることなら。」
「もえもんボールを使うとこんなにも早く懐いたりするんですか?これじゃあまるで…。」
洗脳じゃないか、とは今この場では言えなかった。
俺を信頼した目で見上げるみずごろうの前では。
「君の言いたい事はわかるよ。トレーナーとなっただけでこんなにも懐かれるのは変じゃないのか、だね?」
「はい。」
「君は優しいんだね。センリさんが自慢するはずだ。」
「親父が?」
「ああ、翠くんにはトレーナーの才能がある、チャンピオンにだってなれるってよく言っているよ。」
ジムリーダーがその発言はよくないんじゃないか?親バカとしか見られてないならありがたいかもしれない。
「まあ、夢ではありますけど。」
「さっきの質問に答えるとね、もえもんボールにはそこまでの強制力はない。捕まえた後にまた襲われるトレーナーもいるくらいだ。」
「じゃあ…。」
「このみずごろうは自分の意思で君を自分のマスターだと認めてるんだ。君も受け止めてあげるべきじゃないかな?」
俺は今まで黙ったままだったみずごろうと向かい合う。
「俺でいいのか?」
「あなたがいいではありません、あなたじゃなきゃいやです。」
「そっか、よろしくな。みずごろう。」
みずごろうはこくりと頷くだけ。
「ふむ、挨拶も終わったみたいだし、そのみずごろうにニックネームを付けてあげたらどうだい?」
「そうですね…。」
みずごろうなんて呼ぶのも長いし、人間なんて呼んでるのとおんなじだしな。
確かみずごろうの進化後っていうとヌマクローとラグラージだったっけ。
女の子だし可愛い名前の方がいいよな。
でもヌマクローからだとちょっと難しいな。
ラグラージ…、あ!
「くらら、ってのはどうかな?」
「ふむ、随分と可愛らしい名前だね。」
「どうだ?嫌か?」
「…悪くはないです。」
くららはそう言ってそっぽを向くが、そのほっぺたは真っ赤に染まっている。
嫌がってないし、くららで決定だな。
「うんうん、君たちはいいパートナーになれそうだね。それはそうと翠くん、ハルカには会ったかい?」
「はい、さっき引越しの挨拶をした時に。」
「実は103番道路でもえもんの分布調査を頼んだんだが、くららくんの事もあるから呼んできてほしいんだけど、頼めるかな?」
まあ、成り行きだったとはいえ、くららのことは自分の口から謝った方がいいだろうしな。
「わかりました。」
俺は手持ちになったみずごろうのくららと一緒に研究所を後にした。

「マスター、そのハルカさんという方はどんな方なのですか?」
「う~ん、さっきも言ったように俺も会ったばっかりだから詳しい事まではわからないけど、可愛い女の子だよ。」
「女の子…。」
「で、さっき聞いただろうけど本来の君のご主人様。」
「私のマスターはあなただけです。」
「ああ、ハルカちゃんには嫌われても仕方ないけど、もうくららは俺のもえもんだよ。」
「…当然です。」
途中の草むらでは野生のもえもんに会う事もなく、俺たちは103番道路に辿り着いた。
「え~っと、103番道路に生息してるもえもんは、あの子とあの子と…。」
早速ハルカちゃんを見つけた訳なんだけども…、真面目に調査しててちょっと声を掛けにくいな。
「声を掛けなくてもいいんですか?」
「仕事中みたいだから少し待とう。」
くららも納得したのか俺の足元にくっついて空を見上げている。
「よし、今日はここまでかな。…ってあれ?翠くん?」
「あ、調査は終わった?」
「うん、そうだけど…どうしたの?」
「オダマキ博士に頼まれてハルカちゃんを呼びにきたんだ。」
「あ、そうなんだ。声掛けてくれてよかったのに。」
「後…。」
俺は足元で黙っていたくららを持ち上げるとハルカちゃんに見せる。
「アレ?その子って。」
「ごめん、本当ならハルカちゃんのもえもんになるはずだった子なんだけど、成り行きで俺の手持ちにしちゃったんだ。」
「ふ~ん。」
ハルカちゃんは俺が抱き上げたくららをじっくりと眺めている。
そうすると俺とハルカちゃんの距離も自然と近くなるわけで…。
というかちょっとハルカちゃん、近いです。
人間の女の子に慣れてない俺には耐え難いものがあります。
そんな俺を見てくららがハルカちゃんをにらみつける。
お前にらみつけるなんて覚えてないだろうが。
「いいんじゃないかな?」
「え?」
「だって、この子は君の所にいるのがいいみたい。」
ハルカちゃん、いいこだな~。
ってくらら、俺の手をつねんないでくれ。
ハルカちゃんはそんな俺とくららを見て微笑ましそうな笑顔を浮かべている。
「モテモテだね、翠くん。」
そうなんだろうか?なんだか理不尽な被害を受けている気がするんだけど。
「あ、そうだ!翠くんももえもんを持っている事だし勝負しよう!」
「勝負ってもえもんバトル?」
「いえ~す!いいよね?」
どうしようかとくららを見るとなにやら妙に気合が入っている様子。
なんでこいつはハルカちゃんを敵視してるんだ?
「くららもやる気みたいだし。オーケー。受けてたつよ!」
「じゃあ、いくよ!ゴー!きーちゃん!」
ハルカちゃんの投げたボールから緑色の生き物が現れる。
「ふっ…あっしの出番かい?」
その緑色の女の子は外見の可愛らしさに見合わない妙に老成した雰囲気を持っていた。
「きーちゃん!はたく攻撃!」
「くらら、たいあたりだ。」
短い手をぱたぱたと振り回すきもりと、とてとてーっと走りこむくらら。
やばい、これはやばい。
テレビなんかで見るジムリーダー戦やリーグ戦を見ているのとまるで違う。
なんというか子供のじゃれあいみたいだ。
「くはーっ可愛い、可愛いよ~。」
「和むな~。」
本人達は必死なんだろうが、どうも緊張感に欠けてしまう。
まあ、攻撃方法がお互い一つしかないんだからただの殴り合いになってしまっている。
お互い戦い慣れてないんだろう、あっちにゴロゴロ、こっちにゴロゴロ。
「くらら、なきごえで相手を弱らせてみな。」
少しはトレーナーらしいこともしてみるかと指示を出してみる。
えいえいと叩きあいをしていたから聞こえるか不安だったけど、俺の指示は伝わったらしい。
きもりの耳元でくららが可愛らしいなきごえを放つと、きもりの手から明らかに力が抜けていく。
「くぅ~くららちゃん可愛い~!」
んで、こっちのトレーナーはすっかりメロメロにされている。
大体五分ほど経った頃、ようやく決着がついた。
先ほどのなきごえが効いたらしく、我慢比べの結果くららの勝利となった。
「勝ちました。」
「ああ、よく頑張ったな。えらいぞ。」
「どろかけを覚えました。」
「おお、すごいじゃないか。」
こっちが勝利の祝福をしている間、向こうは向こうで励ましたり慰めたり忙しそうだ。
「私、お父さんがもえもんの研究者してるからトレーナー暦は結構長いんだけどな~。やっぱりおじさんがジムリーダーだと英才教育とかあるの?」
「いや、親父はなにも言わなかったよ。そりゃ、あわゆきの育て方でやり方を聞いた事はあったけどバトルとかの事は聞いたことないな。」
「へー、ってことはやっぱり才能なんだね。」
さっきのじゃれあい程度に才能も何もない気がするんだけどな。
「じゃあ、戻ろうか。」
帰り道の最中、ハルカちゃんのきもりとくららはさっきのバトル(という名のじゃれあい)の結果について、次は負けないとか何度やっても無駄だとか言い合いをしていた。

「おお、遅かったね。」
「お父さん、聞いてよ。さっき翠くんとバトルしたんだけどさ、コテンパンにやられちゃったよ。」
「ほお、ハルカに勝つなんてすごいじゃないか。」
いや、そこのトレーナーさんがじゃれあいにメロメロになってたから勝てたんだけどね。
「やっぱり君にはトレーナーとしての才能があるんだな。ちょっと待っててくれ。」
オダマキ博士は床に積みあがったダンボールを片っ端から開いてなにやら探し出す。
「う~ん、あれでもない、これでもない。」
「あはは、ごめんね、翠くん。お父さん片付けが出来ない人なもんで。」
「何を言うか。ハルカだって似たようなものじゃないか。」
「ちょ!おとうさん!恥ずかしいことバラさないでよ!」
なるほど、ハルカちゃんも片付けが出来ない人なんだな。
「おお!あったあった。」
目的の物が見つかったらしく、オダマキ博士は手になにやら赤い箱みたいなものを持って戻ってきた。
「これは研究のために取り寄せた最新版のもえもん図鑑なんだ。」
「これが…。」
カントーのチャンピオンもこれを持って旅に出かけたと聞いている。
もえもんの生態だけでなく、一度見ただけのもえもんの分布、レベルや技までわかる便利アイテムでトレーナーの中では憧れの一品だ。
「いいんですか?」
「ああ、ハルカにも持たせているんだけどね。」
ほらほらとハルカちゃんが自分のもえもん図鑑を見せてくる。
「君が旅に出るときに一緒にお願いしようと思っていたのでね。センリさんの話だとこっちでリーグ制覇を目指すっていってたから。」
「旅…か。」
もえもん図鑑を手にした途端、俺の頭の中は旅に出ることでいっぱいになった。
どんなもえもんに出会えるのか、どんな不思議に出会えるのかと。
でも、あいつが帰ってくるのを待ちたいという気持ちがそれを足止めする。
「よ~し、私からもプレゼント!」
ハルカちゃんが自分のバッグからもえもんボールをいくつか取り出すと俺に預ける。
「これが私からのプレゼント。二人で頑張ろうね!」
ハルカちゃんの笑顔に自分でも顔が赤くなっていくのがわかる。
あと、足にくららが噛み付いているのがわかる。
抗議の視線を送ると無表情のまま睨まれた。
俺、本当にこいつに懐かれているんだろうか?

「ただいま。」
「お帰りなさい。遅かったわね。」
「色々あったんだよ。色々。」
「そ、あら?その子は?」
「今日から俺の手持ちになったみずごろうのくらら。」
「よろしくお願いします。」
「はい、よろしく。そっか、どうするの?」
「本当、どうしようか…。」
食卓に着く人数が増えたその日の夕食はいつもより少しだけ豪華だった。

「マスター。」
「ん?寝れないか?」
「いえ、お聞きしたい事があるんです。」
「なんだ?」
「マスターには私以外にも手持ちがいるんですか?」
まあ、気になるよな。
「手持ちっていうか、なんというか。確かに名目上は手持ち扱いなんだけどな。その…妹っていうか、娘っていうか…。」
俺はあわゆきの事についてくららに説明する。
卵から孵して育ててきたこと、俺が水もえもんでリーグ制覇するのが夢だと話してその所為でこっちに引越しする前に家を飛び出して言ったこと。
「…心配…ですか?」
「まあな。心配ないわけないからな。」
「そのあわゆきさんが娘だったら、」
「ん?」
「私をあなたのパートナーにしてください。」
「パートナー?」
「私は水もえもんです。あなたの夢のお邪魔にはならないはずです。」
くららはまっすぐに俺を見つめている。
「あなたが夢を叶える時、一緒にいさせてください。」
「くららってさ…。」
「は、はい。」
「案外熱いんだな。」
てっきりクールな知性派かと思ったら意外な部分を見た気がする。
「…。」
茶化されたとでも思ったんだろう、くららは少し機嫌が悪そうにそっぽを向いている。
「くらら。」
「…。」
「くーらーら。」
どうもずいぶんとご機嫌ななめになってしまったらしい。
俺はくららを抱き寄せた。
「いいね、そういう熱いの嫌いじゃない。」
「私は真剣です。」
「ああ、分かってるよ。俺も夢で終わらせるつもりなんてない。一緒に目指そう。」
「はい。」
心は決まった。
善は急げ、あのおてんば娘には後から追いかけてきて貰おう。
勝手なことをした罰だ。
「じゃあ、おやすみなさい。」
「ん?どこで寝るんだ?」
「ボールの中ですが…。」
まあ、普通はそうなんだけどな。
「ほれ、こっちおいで。」
あわゆきがいた頃はいつも一緒のベットで寝てたもんだから少々寂しい気がしていたのだ。
「あ、その、一緒に…ですか?」
「うん、嫌か?」
よく考えたらもえもんでも女の子だもんな。
男と一緒は嫌かもしれない。
あわゆきは生まれてずっと一緒だったし、子供だったから気にしなかったんだろうしな。
たぶんそういうことだろう。
「いや、悪い。あわゆきとはいつも一緒だった所為で感覚麻痺してた。そうだよな、普通は一緒に寝ないよな。」
「寝ます。」
「へ?」
「一緒に寝ると言いました。」
「い、いや、別に嫌ならいいんだぞ?」
「あわゆきさんとは寝て私とは嫌ですか?」
ギラーンとくららの目が危険な色に光る。
ああ、今なら分かる。
どんなに小さかろうと可愛かろうと、この子は人間以上のパワーを持ったもえもんだ。
「いえ、よろしくお願いします。」
先ほどまでのギラーンから打って変わって恥ずかしそうに布団に潜り込んでくるくらら。
こうして、俺とくららが出会った長い一日がようやく終わった。
ツールボックス

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