5スレ>>697


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カントー唯一の港町、クチバ。
多くの人がここからカントーを離れ、またここからカントー内を旅してゆく。
そんな、とめどなく出会いと別れを紡ぐ町で、俺は旅の目的の一片を達することになった。




クチバシティに着いた俺たちは、早速一時の職場となる萌えもんセンターへ向かった。
その受付で資格証明証を示し、手続きをしながらのこと。
「旅の疲れもあるでしょうけど、早速往診に行ってほしいところがあるのよ」
「往診に?来たばかりの俺にですか?」
基本的に萌えもんの治療のためにセンター職員が出張るのはジムくらいのもの。
でなければ何のために設備を整えたセンターがあるのか分からない。
それにジムも基本的に正規の職員だろうといきなりやってきた勝手の分からない人間が行くようなものではない。
俺の問いかけに受付のジョーイさんは、
「簡単な診察だけで済むわ。
 別に動かせないほどの重態の子が居るとかじゃないから安心して。
 ……ごめんなさいね。行って欲しいのは……」
微妙にはぐらかして、行き先を説明するジョーイさん。
このときはまだ、最後の謝罪の意味が分からなかった。
最も、すぐに思い知ることになったが。







ジョーイさん自身緊急事態ではないと言ったので、ひとまず仕事の割り振りなどの説明を一通り聞いてから向かうことになった。
とはいっても、仕事自体は全く一緒で設備の構造もカントーで統一されているのですぐに済んでしまった。
ひとまずの仮住まいとなる空き宿舎に荷物を置き、センター玄関を出たところで。
「うわっと!」
「わっ、ごめんなさい!」
こちらは行き先への道順を頭の中で反芻しており、相手は相手で何か考え事をしていたのだろう。
センター利用らしい帽子を被った少年と派手にぶつかってしまった。
幸い二人とも歩きだったためよろめくだけで済んだが……
「ごめんな、考え事をしてた」
「いえ、こちらこそ…」
と、互いに簡単に謝って済むはずだったのだが……
「あーーー!!」
唐突に響き渡る声。発信源は俺の腰のモンスターボール。
「うわ、急にどうしたリザード!」
反射的で問いかけた俺の声も無視して飛び出してくる。
そして、少年にびしっと指を突きつけ、
「ゼニガメ連れてったやつだ!」








興奮して暴れだしかねないリザードを宥めてすかしてもちあげて、なんとか一旦ボールに戻して。
改めて、俺はその帽子の少年―――レッドと、あいているセンターの椅子に腰を下ろした。
「君がマサラタウンから旅を始めた子だったのか。
 俺はヒロキ。萌えもんセンターの一職員で、ちょっと訳ありでカントーを回ることになってる。
 君達の後でこの子の身柄を譲り受けたから、実質君達の後輩に当たるわけか」
「もう知ってると思いますけど、僕がレッドです。
 オーキド博士からゼニガメを渡されて、萌えもん図鑑の完成ともえもんリーグ制覇を目指してます」
互いに簡単に自己紹介と事情の説明。
割と大人しめで、だがその目にはっきりと強い意志が覗く、見る人が見れば口を揃えて先が楽しみと評するだろう少年。
それが、俺が彼から受けた第一印象だった。
そして、いよいよお待ちかねの対面タイム。
「もういいよ、出ておいでリザード」
「カメール、出て来ーい」
二つのボールが投じられ、赤と青の影が形を作る。
現れた二人はしばらく向かい合ったまま黙って立っていた。
俺もレッド少年も何も言わない。横から口出しなど必要ないから。
やがてどちらとも無く……










……何故か始まる取っ組み合い。
「わー、ストップストップ!
 カメール、落ち着いて!」
「何故にそうなる!
 いいからやめろって、リザード!」
二人して慌てて止める、その声も届かず繰り広げられる大乱闘。
緊急事態と見て飛び出してきた俺のリーフィアにラルトス、レッド少年のオニスズメにニドリーナも、
割って入るに入れずまごまごするばかり。
あちこちから何だ何だと野次馬が集まってきて騒ぎはさらに拡大してゆく。
位置が目まぐるしく入れ替わるせいでボールに戻すこともままならない。
(あっれー……?友達同士のはずだったんじゃ……?)
結局、この乱闘騒ぎは駆けつけた職員が連れて来た萌えもんが眠り粉を撒くまで続き…
レッド少年ともどもジョーイさんに小言をもらう羽目になった。
…ちなみに立場的な理由からか俺のほうは内容が約ニ割増だった。
















小言から開放され、改めて町外れまで出向いてから目を覚ました二人を(少し距離を置いて)対面させる。
先ほど大乱闘しでかした分もあるのか、即効第二ラウンド開始!とはならなかった。まことに喜ばしい。
てくてくと歩み寄る二人。思わず身構える俺とレッド少年だが別段暴れだす気配は無い…まだ。
お互い手が届く距離になって、互いの両手が上がり……そのままがっしと肩を抱き合って跳ねだした。
「ひっさしぶりー!相変わらずかったいわねー」
「そっちこそー、相変わらずいいパンチしてるじゃなーい」

……へ?
研究所ではこの二人とさらにフシギダネは友達同士だった、ということは聞いていた。
この様子を見る限り、仲がいいのは間違いない。
じゃあさっきの乱闘はいったい……?
「さっきまで殴り合いしてたのに……」
レッド少年も首をかしげている。
その独り言を拾い上げてリザードが返事をする。
「あー、さっきの?あのくらいはいつもやってたよー?」
「うんうん、どっちかが具合悪かったりとかしてないと絶対してたねー」
……そうか。
ケンカ友達というか、傍から見ると乱闘レベルのコミュニケーションを取るレベルでの仲良しだった、と……
「……はぁ」
「あはははは……」
「リザード姉さま……」
もうため息しか出ない。リーフィアとラルトスも困った顔で乾いた笑いを漏らしている。
レッド少年のほうも大差ない様子だった。





「そうだ、ヒロキさん。一度バトルして見ませんか?」
しばらく普通の仲良し同士らしい形での親睦を深めた後、レッド少年からこんな提案があった。
目がキラッとしていたあたり、年相応の萌えもんトレーナーというところだろう。
「それは是非…と言いたいところだけど、これから仕事で行かなきゃならない所があってね。
 まぁすぐそこといえばすぐそこなんだけど……
 とりあえず、その後で頼むよ」
一連の騒動ですっかり忘れていたが、俺はまだまだ勤務時間中でこれから往診なのだ。
「そうですか……お仕事なら仕方ないですよね。
 そういえば、その行かなきゃならない所ってどこなんですか?」
「えーと、何て言ったか……」
萌えもんセンター職員、とはつまりは萌えもんを専門に見る医者である。
従って仕事内容の多くが部外秘の情報であり、一般人のレッド少年にいろいろ教えてしまうのはまずいことになる。
……とはいえ、これから向かう先は誰でも立ち入り可能、別段特殊な場所でも無い。
「そうそう、萌えもん大好きクラブだ」
























俺がクチバに着いたのが午前中のこと。
そこから手続きをして、簡単なガイダンスを終え、荷物を所定の部屋に置いたのが大体正午過ぎくらい。
レッド少年との遭遇からリザードとカメールが引き起こした大騒動、それから一休止置いて改めての二人の再会。
それから二人連れ立って取りとめもない話をしながらジョーイさんに頼まれていた場所―――――
―――――萌えもん大好きクラブに向かった。
着いた時点でまだ午後二時前だったはずなのに。
「「………………………」」
現在、時刻は午前一時を過ぎたくらい。
正直言って甘く見ていたとしか言えない。
いや、寧ろ侮っていた、というべきだろうか。
その名前から、萌えもんが大好きな人々の集まりである以上の意味を見出すことは難しいだろう。
だが、その「大好き」の度合いをここまで極めた人々を俺は見たことが無かった。
……「大好き」だから、で済む段階はとうに通り越していた気もするが……
「「………………………」」
もはや言葉を発する気力のあるものは誰一人としていない。
何がすごいって、これだけの長時間がほぼたった一人のうちの子(萌えもん)自慢の話のみで消費されたことだろう。
俺もレッド少年もリーフィアたちも、一切飲み食いはおろかお手洗いにも行くことが出来なかった。
だが、それは自慢話を繰り広げていた人物――――萌えもん大好きクラブ会長も同じ条件のはず。
いや、会長は見たところ既にかなりの歳であり、また俺たちが単に聞き続けるだけであったのに対し、
彼は息継ぎすら惜しむかのように語り続けていた。
その上で話し終わった後も疲れたそぶりの欠片もうかがえなかったのだ。
彼だけでない、密かに周りを伺ってみればそこらじゅうで絶えることの無い親馬鹿話のオンパレード。
その場の誰もがろくに食事・休憩をはさんでいる様子もなく同じように喋り続けていた。
……否、「喋り続けている」、だろう。現にクラブの建物の明かりは未だに明明としている。
「「………………………」」
足取りは重い。ほとんど椅子に座った同じ姿勢のままで約9時間もじっとしてれば疲労困憊するに決まっている。
空腹もかなりつらいところまできているが、腹を満たそうという気にもならない。ただひたすら睡眠を欲するばかり。
生きた死体のような顔つきで戻って来た俺とレッド少年に、ジョーイさんはすまなそうな顔でねぎらいの言葉等一言二言をくれた。
誰が行ってもこうなることが分かっていたんだろうな……
辛うじて部屋にもどった俺は、食事どころかろくに着替えもせずにそのままベッドに転がり込み、数分しないうちに深い眠りに入った。
意識が飛ぶ間際、ぎりぎりで部屋に出した三人も大差ない有様だった。



後から聞かされた話だが、彼はあれでも、とある大財閥を取りまとめる会長でもあるとのこと。
そのポケットマネーによる萌えもんセンター及び萌えもんリーグへの寄付の額たるや凄まじく、萌えもんセンター運営費の実に1割にも届こうかという額だそうな。
そんな人物がなぜ10時間近くも自慢話に費やせるのか理解に苦しむが、ともかくも彼の機嫌を損なうことはセンター側として切実に避けたい事態である。
ということで、センター職員が週一のペースで往診に向かっているらしい……今回のような調子で。
萌えもんのために働くセンター職員に対しては相当に太っ腹な人物らしく、往診に行った職員はたいていが何かお礼の品…それも高額なものを渡されるらしい。
今回も、長話に付き合ってくれた礼といって、レッド少年にはハナダミラクルサイクルの自転車引換券
(目に飛び込んできた自転車の100万円という値段に我が目を疑った)、
俺には豪華客船サントアンヌ号の乗船チケット
(こちらも負けず劣らず高額な代物、そもそも数が限られていて値段以前に現物が無い)を、
それぞれ渡された。
だが、たとえどんな礼をされようとも俺は二度と行きたいとは思えなかった。










「うぅ、ねみぃ……」
いつもどおりの時間に起きられたのは奇跡か、はたまた空腹によるものか。
ろくに疲労も取れては居ないが無理やり体を起こし、簡単に朝食を準備する。
「すぅ……」
「ぐー……」
「くぅ……」
リーフィア達はまだぐっすりだ。彼女達は別に仕事があるわけではないのでこのまま寝かせておいて上げることにする。
三人の分の朝食もこしらえて、自分はさっさと平らげる。
顔を洗いに洗面台に向かい、洗面台に写る自分の顔にくっきりと浮かぶ隈に肩を落としつつ……
勤務準備完了。さすがに慣れた工程、疲労と寝不足がセットでもしくじりはしない。
……昨日そのままで寝たのを忘れて着替えを探したり顔を洗うつもりで何故か手を洗ったり、といったミスを省けば。
「疲れ果ててる、なんて休む言い訳にになる筈無いからな…」
そう一人ごちながら受付に顔を出した俺を見てジョーイさんは驚いた様子で、
「あら、今日はあなたはお休みだから寝ていても良かったのに……」
とのたまった。
「……はい?」
「あら、昨晩言わなかったかしら?
 例の往診の次の日は特例で有給扱いにしてるのよ。
 無理に仕事に回ってミスを多発されるよりはそのほうがずっとマシ、ということになってね」
全く持って記憶に無い。それほどまでに疲れていたわけか。
だがありがたい話ではある。この状態で普段どおりの仕事が出来るかといわれれば、正直に言って自信が無いからだ。
「それではお言葉に甘えまして、一日休ませていただきます。
 ……来てすぐ休みなんて、なんだか気が引けますが」
「いいのよ、どんな内容かもほとんど説明なしに送り出したのはこちらなんだから。
 明日から、期待してるわよ」
そんなジョーイさんの言葉を背中に受けながら、俺は部屋へといそいそと戻っていった。



部屋に戻っても、三人はまだ夢の中だった。
リーフィアは普通に布団を来ており、リザードは掛け布団を蹴倒して大の字になっていて、ラルトスはベッドの隅のほうで丸くなって寝ていた。
変わらないのは皆寝顔が幸せそうなこと。
三者三様の寝相に自然と顔が綻ぶのを感じながら、自らもゆっくり二度寝せんと布団にもぐりこんだ。




                                   続く

















あとがき(と言う名の言い訳集)
間を空けすぎた。自分でも流れをすっかり忘れはてる有様でした。
レッドとヒロキの掛け合いがぎこちないのは半分仕様、半分はうまく書けないせい。互いに年齢差がひっかかってる感じか。
レッド少年は礼儀正しくて大人しめだけど芯のしっかりした少年、という性格に一応設定ではなってます。
そう書けてるか、書いていけるかはわかりませんが。
あと彼の手持ちも最終メンバーまで設定はしています。設定だけで生かされるかどうかは分かりません。
今回バトルが一切無い。それ以前に萌えもんたちがろくに喋ってない。
リザードですら二言、リーフィア・ラルトスは一言のみ。後は寝言というか寝息のみ。
レッド少年の萌えもんたちになるとカメール以外は一切発言がない……
マチスに至っては名前すら出なかった。次のジムなのに。
少々リアル事情が立て込んだ状態が長引いてまして、かつての鹿さんVerからちっともバージョンアップしていません。
途中でVer変えていろいろと変更点が会ってもこんがらがるので、資料にするROMはこのままのバージョンで行く予定です。
そして事情が別段好転してるわけでもないので続きを書く時間の確保もかなり困難な気配……
それでも書く気自体はあるんですほんとに。誰もが忘れた頃に細々と書いていくことになりそう。
それ以前に現在の時点で忘れられてるんじゃないかというのは置いといて……w
こんな文でも読んでいただけるならうれしい限りです。
                              
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