―――この世界は腐っている。
理由?
決まっている……―――
コ ス チ ュ ー ム 愛 が 足 り な い 。
そうだ、コスチュームである、その愛を、この機会に、炸裂させようではないか。
―――これは、その為の祭り、そう……。
【コスチューム祭開催】
その宣言である。
さぁ、集え、コスチュームを愛する萌えもんマスター達!
今こそ、その二つの愛をここに捧げるのだ!
我々の底力、見せ付けてやろうではないか!
私はその尖兵であり、その為の道を作っておこうと思う。
我が後に続くがよい、萌えもんマスターよ!
― ― ― ― ―
朝起きたら、枕元に何かあった、何だろうな。
俺にはどうしてもこれが、ウェディングドレスにしか見えない、男の俺の枕元の服が、だ。
着ろというのか? 一体誰の差し金だ、普段なら普通の着替えがある枕元に何が起こったのだろうか?
―――そこで気付いた、窓の外に揺れる髪が見えている、尾のような9本の髪だ。
まぁ、この辺りで状況説明はいいだろう、自己紹介だ。
何、長くはならない、かつてとあるリーグの頂点に数年留まった喫煙者とだけ言っておこう。
しかし、だ。
これを着るのか? 他の服がないのだから仕方ないのか?
実家である今、服飾は気にしないのだが、これはないだろう。
……いや、待てよ。
素直に着てしまうのも面白いのではないか。
俺は淡白で他から見て非常に冷徹に見えるらしい。
その実そうではない、単純な話だ、照れ症だからさ。
そこで着てやる事により、自分のお茶目な性格を示すことが出来るのではないか?
やるしかない、そう決めた、恥ずかしいがやってやる。
―――それが俺のマスターとしての威厳がなくなってしまう序曲であった。
― ― ― ― ―
何かがリビングに座ってる、理解できない、ジョークのつもりだった。
本気で着るなんて、少しも思っていない、私はそのつもりがなかった。
どこから調達したのか、用意をしていないヴェールやブーケまである。
……見なかった事にした方がいい、そう思った。
―――しかし、向こうがこちらに気がついた。
目があった、なぜだ、非常に素の視線だよ、あの人、理解できないよ。
じっと見つめている、マスターがおかしくなった、長年いた私ですらクールでハードボイルドだと思っていた。
目が逸らせない。
―――逸らしたら食われる、何に? 判らない……。
― ― ― ― ―
目が合った、おびえている。
何故だ、アイツが用意したのではないのか?
こちらからわざわざ不可分のパーツを用意してやったのに。
……おかしい、何かがおかしいぞ。
口を開いたら終わる気がする、どうしてだ。
―――身動きひとつ取れない。
これが、滑った、という事なのか……?
判らない……俺には判らない……。
― ― ― ― ―
その日、何時間もの時間停止を経て、一人の青年と一人のキュウコンは、それぞれ違う認識で相手を見直した。
片や、相手が想像以上のやり手であると―――。
片や、相手が想像以上の馬鹿であると―――。
終わり。
最終更新:2009年05月14日 22:28