5スレ>>713

                WARNING!!

            A HUGE INFORMATION
                 猟奇描写
           IS APPROACHING FAST.

 ※このSSには猟奇描写が含まれています。大丈夫な方は下へどーぞ。あ、「右端で折り返す」と読みやすいかもです。






















 幽玄の視線
 Snow White's eyes










 腕時計を見る。既に約束の時間は過ぎていた。
 タマムシシティの夜景を一望できる、とある高級レストランの窓際の席に、男が一人、ちらちらと時計を気にしながら座っていた。
 男はスーツを着込んでおり、やや緊張した面持ちである。
 店内のスピーカから流れる聞き慣れないゆったりとした音楽が、逆に彼の緊張を加速度的に増加させているようだった。
 「遅いな……」
 もう何度時計を見たか分からなくなったその時、店の入り口から小走りでこちらに近付いてくる影が見えた。
 その影を確認すると、男はいよいよという顔になった。
 影は白いワンピースを着ており、黒い髪と対象的で似合っている。が、この鮮やかな色づかいのレストランとは少々不釣り合いだった。
 歩み寄り、やがて影は男の正面に座ると、
「グラエナさん、すみません。待たせてしまって……」
 と言った。
 グラエナと呼ばれた男は、
「いや、いいんだゲンガー。ぼくが少し早く来すぎたかもしれない」
 と言いながら、ゲンガーと呼ばれた影――彼女の顔をうかがうようにしてちらちらと見た。
 彼女はにこりと微笑み、膝に手を置くと、
「ところで、言いたいこと……って、何ですか?」
 と聞いた。
 彼は、やっとか、といったようで、また深刻そうな顔をして、話を始めた。
 いつの間にか、聞き慣れない音楽が止まっているのに、彼は気が付いた。



                           ***



 昔、グラエナがとある探検隊に所属していたこと。
 その探検隊は、探検隊とは名ばかりで、極悪非道な行いをする犯罪グループだったこと。
 そして、雪山の洞窟で遭難して、自分一人以外全員死んでしまったこと。
 それらを話し終わり、彼はふう、と息をついた。
 その間ゲンガーは口を挟まずに、先程と変わらない笑顔で相槌だけをうっていた。
「ここから、よく聞いてほしいんだ。先程の話はもう知ってると思うんだけど、これから話すことは今まできみに一度も話したこともないし、勿論きみ以外にも話したことがない。……きっと、きみはショックを受けるだろう。それでも、聞いてくれるかい?」
 と、彼は先程よりも深刻な顔をして言う。
 彼女は、こくりと頷いた。
 すう、と息を吸う。これは、これから話を始めるという、意思表示である。
「ぼくは、その洞窟で飢えて――あろうことか、萌えもんを、喰らってしまった」
 彼はゆっくりと話した。彼女は、少し驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。
「子供のグレイシアを生きたまま、肉を引き裂いて食べたんだ」
 彼は視線を落とした。
「一心不乱に、生きるためにまだ幼いあの子を、この爪で引き裂き、この牙でかみ砕いた」
 話を続ける彼。その語尾は幽かに震えていた。
「泣きながら、その子は喰われていく自分の身体を抵抗もできずに見ていたよ。僕たちは、人間ほど簡単には死ねないからね。彼女の目は、死んでもなお、ぼくを見続けていた!」
 テーブルクロスの上にぽとりと涙が落ちた。彼女はそれを確認すると、膝に置いていた手を彼の自責の言葉を紡ぎ続けようとする口にそっと当てた。
「もう、いいです」
「でも!」
「もう、貴方が可哀相です。ずっと貴方はそのことを今まで引きずってきたのね」
 彼は沈黙した。
「貴方の爪は、その子の身体を切り裂くために存在していたのでしょう。貴方の牙は、その子の骨をかみ砕くために存在していたのでしょう。そう……その子は、きっと貴方の血肉になれて感謝していると思いますよ」
 と、落ち着いた声で話す彼女。いつしか、彼も落ち着きを取り戻していた。
 それから、二人は見つめあって――どれくらいの時間が過ぎたのだろう。先に口を開いたのはゲンガーだった。
「何故あんな話を私にしたのでしょう。きっと、貴方は――」
 そこまで言ってグラエナに静止される。
 グラエナは、
「ぼくに、言わせてくれ。こんな、酷いことをしたぼくでもいいのなら――」
 と言って、懐から小さな箱を取り出し、
「結婚してくれないか」
 と言った。
 開かれた箱の中心には、小さなダイアモンドがきらきらと輝いていた。
 彼女は、はじめて全体的に表情を崩した。
 目尻には涙が溜まっていた。
「――ええ」
 と返事を返し、指輪を通してもらう。
 彼女の雪のように白い手に、白い、雪のような結晶が輝く。
 彼女は涙を拭くと、
「ありがとう」
 と。そして、
「私が――そのグレイシアですよ」
 と言って、幽かに微笑んだ。









ずっとROMってたけどついに執筆衝動が抑え切れなくて書いてしまいました。
初投下ですがこのスレ的には如何でしょうか? とりあえず、グレイシアスキー、グラエナスキーさんに謝ります。 ごめんなさい!
なんだかよくわからないストーリィ、話の展開が早い、というのは仕様です(^^;

ちなみに、これのテーマは、ラフカディオ・ハーン、もとい小泉八雲の『雪おんな』です。



2009.5.8

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最終更新:2009年05月14日 22:32
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