5スレ>>780


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心地よい日差しに包まれて、ごく自然に訪れる目覚め。
きっと今日もすばらしい一日になる、そんな気持ちが訳も無く生まれてくることだろう。



……日差しが、空のど真ん中に上った、まごう事なき昼のものでさえなければ。
別段寝過ごしたとかそういうことではない。
降って沸いた休日を早速二度寝と言う形で堪能しているだけである。
「ふぁ……よく寝たな……
 ここまで熟睡したのは久しぶりな気がする……」
タマムシで暮らしていた頃はともかく、リーフィアたちと暮らし始めてからは基本的に休みと言うものは無かった。
センター職務が休みのときも平日どおりに起きて、皆と訓練かトレーナーとしての勉強に時間を当ててきたからだが…
ともかく、これだけ寝られれば十分だろう。昨晩は結局食事抜きになったし朝食も軽くしかとって居ない。
空腹に急かされて体を起こ……

…せなかった。

「……あれ?」
体が起き上がらない、と言うより腕を固定されているような感覚。
今まで寝ぼけていて両脇にまで気が回らなかっただけで、その正体はすぐに明らかになる。
「すやすや……」
「むにゃ……」
右腕にリーフィアが、左腕にリザードがしっかりと絡み付いて、俺の腕を抱き枕のようにして幸せそうに寝ていた。
なんだか足のほうにも妙に重さを感じる。おそらくラルトスのものだろう。
リザードの口の端っこに残る食べかすらしき跡から、俺が二度寝に入った後で三人とも一旦目を覚まし、
俺が用意していた朝食を平らげてから改めて俺に纏わりついてこちらも二度寝に入ったのだろう。
何はともあれ。萌えもんとはいえ女の子三人に抱き枕(?)代わりの要領で抱きつかれている状態。
「なッ…………!?」
こ、これはッ……
自慢じゃないがまともな恋愛経験の一つだってない独り者にとって、超至近距離に(萌えもんだろうと)女の子の寝顔がある状態など未知の領域。
それも両側。抱きつかれた両腕からは柔らかく暖かい感触が伝わってくる。
気づいてしまえばこの上なく素敵な状況。世の一般男性なら誰もがそう断定するに違いないだろう。
だが。
(待て落ち着け慌てるんじゃない別段特別な意味はない単にくっついて寝てるだけに過ぎないのであってそれ以上を考えるのは邪推以外の
 何物にもなりえず従って冷静に時が過ぎ去ってゆくのを待てば良いのだから敢えて意識など向ける必要が無いのは誰の目にも明らかで)
現実にはこのとおり大パニック状態。体は(幸いにも)指一本動かないが頭の中だけがこの有様。
いくらなんでも免疫なさ過ぎる、と思われるかもしれない。
確かに萌えもんセンター職員は萌えもんの治療のために彼女らの服の下を見る機会等は非常に多い。
だが、それでいちいちパニックなどしていては仕事にならない。仕事中と通常とで別の感覚を持っているようなものだ。
それに向こうだってある程度は警戒する。何せ見知らぬ他人に手当てをさせるのだから当然の話だが。
ということで、自分も相手もここまで無防備に接触している状態など想定の範囲外なわけだ。
…思考が大混乱しすぎて、眠気とか疲れとかそんな次元でもなくなってきた。誰に言い訳してるんだ俺。
そんな調子で一人で勝手に頭の中で暴走フィーバーを繰り広げていると。
「ん……ぅん………ふぁ…
 ……ぁ、ますたー……」
リーフィアのほうが目を覚ました。朝(といってももうすぐ昼過ぎだが)に弱いリーフィアは、寝起きはかなりぼーっとしている。
しばらく眠そうに目をぱちぱちしていたが、俺の顔を確認して…再びごろん。
「こら」
これ以上この状態が続けば頭が煮えてしまう。それにいい加減空腹もかなりきつくなってきた。
「もうお昼だぞ。起きて昼ごはんにしよう」
「ぅー……もう少し寝ます……」
「ならせめて手を離してくれ。俺はもう腹が減って辛いんだよ…」
「だってー……」
抱えた俺の右腕に頬ずりなどしながら駄々をこねるリーフィア。頼むから俺の心の防衛線をごりごり削るような仕草は勘弁……
普段こちらの指示を良く聞くいい子なだけに、時折こう可愛らしくごねられるとハンパなくやばい。
「ふあー…
 ん……おはよー」
声に刺激されたのかリザードも起きた。リザードは寝起きもバッチリ元気、すぱっと起きてくれるのが助かる。
「ご主人様ー、お腹空いたよー」
「ほらリザードもこう言ってるし、起きるぞリーフィア」
「ぅー……」
なんだか妙に愚図るリーフィア。眠いせいにしてもこうまではちょっと今まで無かった。
「マスターと一緒に寝るの、まだ二回目なんだもん……」
「…………」
……あれか。常日頃虎視眈々と一緒の布団で寝るのを狙っていたが俺の生活パターンやらなにやらに阻まれて達成できなかったと。
今が絶好のチャンスと。そういうことか。
「……、いや、だからだな……」
理由が分かるとどうにも怒れなくなる。
普段にしても別に一緒に寝たくない、というわけではないのだ。
町についてセンターで働いているときは仕事に支障をきたさない時間に眠る必要があり、
町から町への移動中では基本的に寝るときのリーフィア達はボールの中だ。
萌えもんたちの一部にはその体質だけで人間及び環境に多大な影響を与えかねない子がいる。
起きていればある程度その体質を制御できる子も、寝てるときまでそうとは行かない。
よって、野外で寝るときは原則としてボールの中と決められている。場所によっては守らなくてもまぁばれないが。
建物の中で眠る場合には出していても大丈夫なようだが、どうして屋内なら大丈夫なのかはまだ解明されてはいない。
そもそも日付が変わらなければ寝る以前の話だ。
俺自身の問題ではあるが、自分の寝るベッドに他人が居られると眠りが浅くなるのだ。
横になっても寝付けず寝不足でした、では意味が無い。仕事にミスが出かねない。
つまり、町では俺の都合で一緒のベッドには入れてあげられず(備え付けのベッドがそんなに広くないのもある)、
野外ではボールの中に居なければならない。
そんな日々の中でやっと巡ってきたチャンスをそうそう手放すつもりはない、らしい。
結局、リーフィアがしっかり目を覚まし、俺の上体が開放されるまでにもう一時間かかるのだった。
ラルトスのほうはというと、俺が声をかけるまで寝返り一つ無くぐっすり寝ていた。




皆の身嗜みを整えさせ、センター内のトレーナー向けの食堂に足を運ぶ。
今は質より量の気分。寝起きで食欲が、なんて悠長なことを言えるレベルじゃないのだ。
その点、トレーナー証明書を見せれば格安で食事が出来るここは非常に頼れる。
……別段この食堂の質に問題があるとかそういうことは一切ないのだけど。
それはともかく普段の1,5倍ほどの量を各自注文し(いつもは少食なラルトスも多めに頼むあたり空腹の度合いが伺えた)、
椅子に座って待っていると。
「あ、ヒロキさん」
こちらも昼までぐっすり寝ていたらしいレッド少年一向が姿を見せた。
「やぁおはよう。…いや、この時間ならこんにちはの筈か。
 けど、おはようであってるだろ?」
笑いながら問いかけると、向こうも笑いながらうなずいた。
彼らが注文を終え、隣に座ってから忘れていたことを尋ねる。
「そういえば昨日はバトルは出来ずじまいだったね」
「そうですね…まぁ時間も皆の様子もバトルが出来るような状態じゃありませんでしたけど……」
「だな……」
話題に出すだけでもあの時が蘇るのか声のトーンが落ちる。……互いに。
「……まぁ今ならお互い体調は回復してるだろうし、昼食の後でどうかな?」
「そうですね、お願いします」
と、そこまで話したところで注文したメニューが届き始めた。
「そうと決まればさっさと食べるか」
今はとりあえずバトルより腹を満たすのが先決。
その場の全員が同じ気持ちだった。






目一杯昼食をとって、さすがに食べ過ぎた感があったので少し時間を置いてから。
俺とレッド少年は距離をとってクチバ郊外の草むらで向かい合っていた。
俺の手持ちはリーフィア・リザード・ラルトス。
対するレッド少年はカメール・オニスズメ・ニドリーナ。
見た限りではレベル差はほとんどない。タイプ相性と指示の腕が結果をダイレクトに左右するだろう。
形式は入れ替えなしで1on1を三回繰り返す形にした。
それでは出す順番を決めようか、というところで
「あたしはカメールとやる!」
リザードが無茶を言い出した。
「いいねそれー!いいよねご主人?」
カメールのほうも乗り気だ。というかレッド少年側に否やはあるまい。
勝ち負け度外視で楽しむ、と捕らえれば別段いいのかもしれないが…
「ニビのときも苦手なタイプに喧嘩売って返り討ちに遭ったっていうのに……」
ちょっと思い出して涙が出そうになった。
まぁ、リザードもあの時とは違う。
進化もしたし体力も大分ついている。何より当時のイシツブテとの差ほどにはあのカメールと実力差はないだろう。
半ばリザードに押し切られる形でGOサインを出した。












一戦目、リーフィアvsオニスズメ。
葉っぱカッターと電光石火で善戦したが、ヒットアンドアウェイの繰り返しに敗れてしまった。
タイプ相性も悪く、オニスズメに上空に逃げられるとダメージを減らされる上当てにくい葉っぱカッターしか使えないことも非常に不利に働いた。
動きの早さなどその他の面では決して引けをとっていた訳ではないが、相性を覆すまでには至らなかった。
バトル後の怪我はさほどでも無いのが唯一の救いか。


二戦目、ラルトスvsニドリーナ。
先ほどとはうって変わってこちらが相性の有利を抑えたバトルだが、終ってみれば辛勝といったところか。
ラルトスの攻撃手段は現在、念力とマジカルリーフの二つのみ。
耐久力にかけてはニドリーナに大きく劣ってしまうラルトスが、わざわざ必中させられるとはいえ効果の薄いマジカルリーフを使っている余裕はまずない。
結果、主な攻め手が念力一本に。それはつまり、慣れられてしまいやすくその場での対処されるという事態を招いてしまう。
対してニドリーナは自身こそ毒タイプだが、悪タイプ技の噛み付きがエスパータイプに高い効果を発揮する。
毒針や二度蹴りはともかく、相性に左右されない乱れ引っかきも持つことから近寄られれば分が悪い。
有利を取りつつも攻めに専念できず、当たるを幸いと逃げ回りながらちまちま念力を撒く戦法を取らざるをえなかった。
ニドリーナの高めの耐久力も相まって、有利ながら苦しいバトルをさせてしまった。
体力に劣るラルトスでは一度でも噛み付かれれば挽回は難しかっただろう。
それが余計に彼女の神経を削らせた。


勝ちはしたものの、疲労困憊した様子で後ろでぐったりしてしまっている。
後で十分に休ませないと。





そして、最後のバトルが始まる。
三戦目、リザードvsカメール。
…バトルといっても、半分は仲良し同士の力比べ。
の、はずだったが。




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よーし、次はあたしの順番だね。
ラルちゃんお疲れ様ー。
……そういえば、こんな感じにまともなバトルをゼニガメとやるのは初めてかも。
っと、もうカメールに進化してたね。あたしもリザードになったし。
さてと、準備おっけー。向こうもよさそう。
リー姉、合図お願い!

「えと…、
 第三戦目、リザード対カメール、はじめ!
 …でいいんですよね?」


「行くぞリザード、ひっかく!速攻で仕掛けろ!」
リー姉のちょっと頼りない開始の合図からすぐ、ご主人様の指示が飛んできた。
「おっけー!いっくぞー!」
返事一つ返して、あたしは地面を蹴り飛ばして思いっきり加速、カメールに激突する勢いで突っ込む。
「カメール、慌てず水鉄砲で狙い撃ちだ!」
あっちもレッド、ていう男の子の指示がでて、カメールが思い切り息を吸う。
「リザード、動きをみるんだ!ぎりぎりでかわせ!」
あたしは速度を落とさない。
ご主人様の指示を背中で聞きながら、ぐんぐん距離をつめていき、
「今だ、撃てー!」
水鉄砲が撃たれると同時に地面を蹴って方向転換。
それまでのあたしの軌道上、頭があったあたりを水の塊がすっとんでく。
ほっぺたを水が掠めていったけど、直撃じゃないからかんけーない。
2発、3発、発射にあわせて軌道を無理やり変えてかわすけど…
(やっば、だんだん正確に狙ってる…!)
4発目は間一髪、避けれたのが奇跡みたいなタイミング。
「っ…!リザード、全力で次のをかわせ!」
ご主人様の声も焦ってる。炎タイプのあたしがあれに当たっちゃったら一発で勝負がつきかねない。
次の5発目、落ち着いて横に飛んでかわす。
4発目をかわしたときに足は止めていたけど、それでもぎりぎり足を掠めていった。
「煙幕だ!態勢を戻すのは後でいい!」
飛んだ勢いで地面を転がりながら、指示通りに真っ黒い煙幕を吐き散らす。
あたり一面が黒煙に覆われて、互いの位置が分からなくなるけど、
「カメール、構うな!水鉄砲、煙幕ごと撃ちぬくんだ!」
地面に伏せてるあたしの顔のすぐ上を水が飛び越えていく。
それだけじゃない、水が通った後。
(げ、煙幕を水が削り取ってる!)
一瞬だけ水鉄砲が通った後は煙幕が晴れちゃってる。
慌てて姿勢を直すけど、その間にもそばをひっきりなしに飛ぶ水鉄砲。
どうしよう、一瞬躊躇したあたしにご主人様の声が聞こえた。
「さて、次はどうするかな……?」
のんびりしないでよー!当たっちゃったら負けちゃうよー!
けど、向こうは勝手に何かを考えたみたいで、
「っ!カメール、下から来る!飛ぶんだ!」
慌てた声が聞こえたと思ったらぴょーんと飛び上がるカメールが見えて……
…煙幕の中でじっとしてたあたしと目が会った。
「あーっ!?うそ、なんで!?」
「!?…しまった!」
カメールが慌てた声をあげて、次にあっちのトレーナーの子が気づいた。
あたしはイマイチどういうことかわかんなかったけど、
「リザード、火の粉だ!打ち落としてやれ!」
ご主人様の指示もあったし、目一杯息を吸い込んで…
火の玉をめいっぱい吐き出す。いくつか反れちゃったけど、火の粉はだいたい一直線にカメールへ。
「あち、あちちっ!!」
まっすぐ飛んじゃったせいで火の粉が直撃してる。けどあんまり効いてなさそう。
あ、でも。
「あ、あわわわ……!」
「よし、体制が崩れた…!リザード、落ちるのにあわせてひっかくだ!」
空中でのけぞっちゃって甲羅から落ちるかっこうのカメール、その落ちてくる場所めがけて猛ダッシュ。
あと数歩ってところで一生懸命もがいてるカメールと目が合って、あたしはすぐさまジャンプ。
「うりゃぁーー!!」
そのまま甲羅のお腹に思いっきりツメを振り下ろした。
「ぎゃんっ!」
落っこちてるところに上から攻撃されて、ズドーンと勢いよく地面に落ちたカメール。
あたしの煙幕ほどじゃないけど土煙がぶわーってなってる。
「やった……かな?」
思わず声に出しちゃって、
「…まだまだっ……!」
いきなり返事が聞こえて。
次の瞬間、あたしはお腹に水鉄砲を食らってご主人様のほうへ吹っ飛ばされた。
「!!! リザード!」
いったぁ……
直撃、しちゃったぁ……。
「はぁ、はぁ、はぁ、……
 さっきは、よくも、やってくれたじゃない……」
静まってきてた土ぼこりの中からカメールが立ち上がった…けど、へろへろしてる。
「はぁ、はぁ…そ、れは…
 こっちの…セリフ……!」
苦手な水を食らってこっちもぼろぼろだけど、アイツが立ったのに寝てなんていられない。
根性だけで立って見せた。
「……ふふ、ふふふ……ふふふ……」
「……うふふふ、ふふふふふ………」
どっちともなく含み笑い。

そして……
指示なんか知らない、今はもう何も考えたくない。
限界も何もぶっちぎって互いめがけて走る。
頭にあるのはただ一つ、




「「今度こそ決着つけてやるーっ!!」」








──────────────────────────────────────────────────────────────────




「「………………」」
まさかの第二ラウンド。
どちらもダメージが蓄積し、次の一撃で勝負が決まるという最高に緊張する場面。
いかに相手の指示、攻撃を予測しそれをかわす、あるいはそれより先にこちらの技を決めるか、
という最も研ぎ澄まされた読み合いを要するはずのシーンが、軒並みカットされたようなものである。というかされた。
俺とレッド少年の間で繰り広げられる殴り合い・クチバ(草むら)。
もう止める気にもなれないし止めようも無いだろう……。
ひとまずほうっておいてラルトスの手当てをすることにした。
レッド少年のほうも放置する方針のようだ。


「これと、これ……あとはこれも一応飲んでおこうか。
 すぐに萌えもんセンターまで行くから無くても大丈夫だとは思うけどね」
手当てといっても実はラルトスは相手の攻撃によるダメージを食らってはいない。
正直言ってあれは一発でも食らってしまえば即KOもありえたバトルだった。
ということで、今回の彼女への処置は主に肉体・精神両方の疲労を回復させるものになる。
「ありがとうございます……兄様」
「お礼なんかいいって、俺が戦わせたんだから俺が手当てするのは当然のことだろ」
ちょっとしたことでもきちんと丁寧なお礼をするラルトス。礼儀正しくて大変よろしいが、さすがにそろそろ堅苦しいか。
などと思いながら、使い終わった薬類を片付けていると。
「…っ……!?」
「どうした!?」
ラルトスの様子が急変する。
行儀よく正座していた彼女の体から光があふれ、見る見るうちに白のシルエットのみの姿に。
リザード・リーフィア時の例に漏れず、変化はあっという間に収束し……
一回り以上は伸びた背丈、二つの赤い髪飾り、一見二つ結びとでも呼ぶような髪型、随分短くなり前がざっくり開いた白い袖なしワンピース。
今までは隠れていた足に髪色とほぼ同じタイツ風のものを着用した、新たな姿のラルトスがそこに居た。
「……進化……した、のか……」
「っ…………はぁ、はぁ……」
進化が終ると同時にへたりこんでしまう。バトルによる疲労はやはり手当てしたといってもすぐには抜けきらない。
「何はともあれ、おめでとう。えっと……キルリア?」
「はぁ、っ…、……はい。ありがとう、ございます、兄様…」
息を切らしながら、どうにかこうにかといった体で返事が返ってくる。
もともとラルトス自体、確かカントー地方では生息が確認されていない萌えもんだったはずだ。
その進化系となると、もううろ覚え程度にしか知らない。
名前を思い出すだけで精一杯だった……とは、キルリアには間違っても言えないな。いくらなんでもあんまりだ。
……と、そこへレッド少年がやってきた。(まだまだ続く大乱闘を大きく迂回しながら)
「あれ、ヒロキさんの萌えもんも進化したんですか?」
「あぁ、そうなんだ……
 ……も?ってことは、レッド君も……」
「はい」
見れば、バトルの時にはオニスズメだったはずが、彼の後ろについてくるのは立派なオニドリル。
彼女もこのバトルで進化条件に達したらしい。
「進化のタイミングまで一緒だなんて、なんだか面白いね」
「はい。すごい偶然ですよね」
はははと笑いあう俺たち。

……そのバックで、ある意味お約束通りに見事にクロスカウンターを決める赤と青の二人。
ようやく決着が付いたらしい。これまたお約束どおりの引き分けで。










仲良くノックダウンして戦闘不能状態のリザード、カメールを各自引き取ってから、今後のことについての話題になった。
「さて、萌えもんセンターに戻るか。
 これから君はどうする?」
「僕ですか?ちょっと一旦ハナダに戻ろうかと思ってます。
 せっかく昨日引換券をもらいましたし……」
語尾が若干トーンダウン。うっかり思い出しかけたのだろう。
「それから、今度はディグダの穴を行ってみるつもりです。
 ディグダが全部掘り抜いたらしいし、どんな風になってるのか興味あるんで。
 何より、ディグダってそこでしか見かけないみたいなので」
「あぁ、そういえば図鑑を作ってる、って言ってたっけ」
きちんと役目を果たそうと頑張ってるんだなぁ。感心感心。
「ヒロキさんはどうするんですか?」
「俺?そうだな、俺もせっかくもらったしチケットを使ってみるよ。
 今ちょうど豪華客船が港に来てる、って聞いたし。サントアンヌ号、だっけ?」
「そういえば、そうでしたね。
 ……っと、そういえば僕もチケット持ってました」
「えぇ!?」
豪華客船、それも名だたるサントアンヌ号のチケットとなれば手に入れるには金かツテか、とまで言われるほどのレア物である。
一体どうやって入手したのだろう?オーキド博士ルート?
「ハナダに住んでる萌えもんマニアのマサキさんからです。
 本人は萌えもんマニアって名乗りましたけど、ほんとはすごい人なんですよ」
「あぁ、知ってるよ。萌えもん預かりシステムの開発者だろ?」
彼の発明したシステムが人、特にトレーナーと萌えもんとの関係を激変させたといっても決して過言ではない。
カントー全域で共通して使われるばかりか、これを原型としてほぼ同様の質のシステムがホウエンやシンオウでも利用されているとのこと。
……なんだって萌えもんマニアという名乗りを使うのかは理解できないが。言葉の響きが非常に不穏である。
「でも、後回しにしようかな、って思ってます。まだしばらく港に泊まってるみたいですし」
「そうだね。ただ俺は自由に休みが取れるわけじゃないし、ちょうどいいから今日中に中を見て回るとするよ」
すると、萌えもんセンターまで戻った後は別れることになる。
まぁお互いカントーのどこかには居るわけだし、その気になれば連絡くらい楽勝でとれる。オーキド博士経由で。
話しながら歩いていたら、センターまで戻るのにさほど時間は要らなかった。



互いの萌えもんの治療を済ませて、簡単に別れの挨拶。
「それじゃ、元気でな、レッド君。またどこかでばったり会うかもな」
「そうですね。案外すぐだったりして。
 それじゃぁ、お元気で」
そう言って、ハナダへと向かう彼の後姿を見送る。
ある程度歩いたあたりで勝手に彼のボールからカメールが飛び出し、こっちに向かって手を振る。
俺が慌てて出すより早く、こちらも勝手にリザードがボールから飛び出て手を振り返す。
自分も軽くこちらに手を振りながら、そのまま立ち止まって手を振り続けるカメールの襟首を捕まえてずるずる引きずっていくレッド少年。





見送った後、俺たちは早速港へと向かう。
皆の治療の間に仕事用と個人用の薬の補充は済ませてある。
「船って、どんなものなんでしょう?」
「どんな、って聞かれると、逆に説明しづらいな。
 まぁ、見てみて、乗ってみるのが一番分かりやすいか」
「楽しみー!」
「はい……」
わくわくしてるリーフィア・リザードと、平常通りのキルリア。
彼女は船に乗ってクチバまで来たわけだからあまり感慨は無さそう、というより辛い記憶が先に立つのだろう。
そっと、その頭に手を置いて、優しく撫でる。
「今度は、きっと楽しいよ」
「……兄様……」
ようやく笑顔になるキルリア。
そのまま俺の手を捕まえ、自分の前にもってきてぎゅうと抱きしめる。
「あー、きるちゃんずるーい!
 じゃぁこっちはあたしの!」
反対側の手に飛びつくリザード、
「ああっ、ずるいです二人とも、
 私の分は……?」
若干出遅れてあぶれたリーフィア。
悔しいらしくて後ろから飛びついておぶさるようにぶら下がってくる。
「……歩きにくい上に人目につくから止め……
 ……ほどほどにしといてくれ」
両腕に伝わってくる女の子の感触を振り払うことは俺には出来ませんでした。煩悩全開ごめんなさい。
「あとリザードはキルリアの呼び方を即変えること。
 今使った奴はアウト」
「えー?何でー?」
「何ででも、だ」
やっぱKILLちゃんは聞こえがよろしくないしね……
あと余談ではあるが、リーフィアがキルリアちゃん、と発音しようとして速攻噛んだ。(これからもよろしくね、キルい゙っ……)
このことを話題に出すとべそを書くのでほどほどにつつくことにしよう。
……だんだん底意地が悪くなってきたかな俺も?もしくは環境に適応してきてるだけなのか。
きゃいきゃい騒ぐ二人とおとなしくくっついてくる一人と共に、港までの道すがら。
そんなたわいも無いことをつらつら考えていた俺には。
この後にまつ騒動について想像のしようもなかった。






                                 続く




言い訳風後書き
またもや間が開いた。忙しいんだ……
クチバは短く終ると踏んだのは一体何故だったのだろう。普通に3話分じゃないか…
そしてまさかのマチス不登場。マチスの名どころかクチバジムすら話題に出てこない。二人して忘れてるんじゃないのか。
次回はレッドの変わりにマチス大活躍!するのか?
そしていまさらマサキが出てくるという。けど名前だけ。
萌えもんセンター勤務の人々にはマサキの名はメジャーです。というか普通のトレーナー間でメジャーなんだから知らないわけ無いよね。
預かりシステムについて細かいこととかは考えてないです。基本的にヒロキの方針上ほぼ利用しないはずなので。
いろいろ細かい設定とかあるものはあるんだけど……結局でてこないとかザラだなぁ。

ぼろぼろ間が開いてても楽しみにしていただけていたら書く側としてはこれほど嬉しいこともありません。
まだまだ書きたいことは山ほどあるけど時間が……
当分はこんなペースで書いていくことになりそうです。
ここまでお読みいただきまことにありがとうございました。
ツールボックス

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