5スレ>>766


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 『ブッキング』という言葉がある。


大体は、複数の約束事を同時系列で先約してしまったり、または予約した事象が重複したりと、
そんな意味合いで使われることが多いだろう。


勿論、それは当人にとっては"得てしてそうなってしまった"ひとつの結果なわけであって
多岐にわたる約束事の中で、意図せずそうなった場合が多いだろう。
「そんなつもりは、なかった。」
・・・故意に行うそれとしても、本人にとっては不本意な結果でしかないかもしれない。


しかし如何なる過程を得ようが、もし仮にそのようなことが起こってしまったら。


終端の重なった因果の一点に立ち、何を思って、何を願うだろうか。



―――ああ、せめてあの時あの場所まで、時間を戻せたらいいのに・・・?



それもある。



それもあるのだが・・・



僕は、僕が置かれているこの状況では、寧ろこう願うだろう。




―――ああ、せめて僕があと、ふたりいればなぁ。



・・・と。





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             萌えっ娘もんすたぁ創作SS         
                                    
                                     
                猫娘三名様             
              にゃんこさんめいさま          
                                     
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子供のころに膨らませて遊ばせた、水風船の息苦しさがわかる。
容量いっぱいにいれては、思うように弾んではくれない。
むしろ僅かな落差でいとも簡単に破裂しては抱えた水を無造作に吐き散らす。


似たような事例として処理していただきたい。

今、自分の体を動かすことは非常に危険極まりない行為である。
同時に、周囲からの刺激ひとつ取っても同様。
今の僕にとっては、鋭く光る針で刺される水風船の如く、である。


「ぅぇぷ。ぉ、ぉぉぉあ・・・。」


このように、口を開くことさえ黄色信号。
靴を脱ぎ棄て手足を投げて、懐かしい匂いが残るやわらかなソファに横たわったまま。


天井を見上げれば、見慣れたシャンデリア。
とはいえこれもまた、父か祖父か、誰の趣であんなものを吊るしたのかは僕は知らないが、
どことなく神々しさを醸し出していて、高価な品であることは誰の目にも明白である。



『あの』三人は、今頃厨房で洗い物だろうか。
静かな居間は、人をはらって僕一人。
耳をすませれば、かすかに聞こえてくる。
どれを拾い上げてもとても特徴的な、それでいて魅力的な、声、みっつ。


形作るその字の如く、姦しいやり取りは、どのようにして僕の耳に届いているのか。
いくつ壁を隔てた先、あるいは開いた窓の外からか。


その会話とともに、思い起こされるのは数十分前の、あれは戦場か、地獄か、惨劇か。
どれも言い得て妙なもの。
ただ、ただただ。湧き上がる気持ちは、ただ一つ。
・・・不安でしかない、正直。




「ちょっとペルっ!邪、魔、よ!もう少し右に寄って!」


そんな僕の心の靄を振り払うかのような、一番に耳に届いた怒声。
怒ったような困ったような、耳に差し込まれる声。
これほど攻撃的な気性を持った声は、ひとつしか知らない。


「あたしにこれ以上腰を絞らせるつもり?マニュが痩せればいいのにぃ」


先の声を矛とするならば、対するこちらの声は、盾、だろうか。
如何なる槍も、彼女の体を貫かず。
掴みどころのない流れる雲のような言動は、無邪気でもあり、不気味でもある。


「私は幅の話をしているのではなく、位置の話をしてるの!
・・・むしろ幅だったらペルのほうが私の一回りも・・・」


確かにそうですが、早くも話の腰を折られてますよマニューラさん・・・。


「あら、規格ってわからない?知的なマニュさん?比率よ比率。
高さ的にあたしがおねーさんなんだから、取っていい幅もあたしが僅かに多いだけじゃない。
いーい?わずかよ?わ・ず・か!ここ重要でしてよ?わかりまして?」


屁理屈そのものがまるで理屈に聞こえるペルシアンの議論展開は、
連ねる言葉の後半にらしくもない熱を孕んでいた。・・・気がした。


「狭いシンクを取り合う二人。絵的に見ていられないのでプニャットさんが口を挟みます。
まずは背後の堆く積まれた皿を崩しなさい。さっきみたいにまた割られても困る。」


矛盾という理論に決着がつくとしたら、それは第三の、理の介入かもしれない。
矛と盾、そしてこの背反を受け止める理論。
三人目の猫は、例えるなら魔法。低めのトーンがお似合いな、冷静でいてどこか冷酷で、
それでいて不思議な、声の持ち主。


「何も洗った皿の枚数までカウントしなくてもいいとは思わない?」


今度は皿の枚数か・・・。
どうして彼女ら三人はこうも実績の数値化を好むのだろうか?
・・・いや、そもそも好んでいるかどうかはわからないわけだが。

    ・・・・
「そこなむちむちは理解に乏しいわね。」


相手のことをそう言うペルは、どのように理解したのだろう。


「いいだろう。おまえの頭に皿をぶつけてやる。」


きっと今、皿を振りかぶったであろうニャットに関しては、理解が乏しいといわれる始末。


「では割った皿の枚数×10点をペナルティとして引きますわ。」


おそらくそんな粗相はしない自信があっての発言だろうが、そんなマニュの心境は?


「えっちょっと・・・急にそんなルール作っ・・・!ぃっ、にゃああああ!?」



そもそも、の話。

僕がこうして安静を強いられているのも。
三人娘の姦しいやりとりも。
・・・たった今割れた、皿の音も。


「・・・に、さん、よん・・・。14枚ね。ペル、マイナス140点。」


総て僕が撒いた種・・・だったりする。





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 まずは、僕の置かれている特殊な立場について説明したいと思う。


僕の住んでいる場所は、カントーのちょっとした僻地にある。
草木生い茂る丘の少し高い場所に、ひっそりと建つ洋館。
館の主の一人息子として、僕はこの世に生まれた。


但し、その館の主、つまり僕の父はここにはいない。
代わりに、この館にはたくさんの萌えもん達がいる。


―――誰が呼んだか、故にこの建物を指して、人は皆、『萌えもん屋敷』と口を揃える。


「さてご主人様、おわかりいただけまして?」


ああ、ここまでは別にいい。
生い立ちも、然らばこの地に住むことも、変えようのない事実であるわけだし。


ただこれだけでは、ただの金持ちの家の息子である。
従って、僕が頭を悩ませる理由とは、そこではない。


「なーんか聞いてなくない?その呆けてる顔つっついていい?」


さて、先ほど僕は、"この館にはたくさんの萌えもん達がいる"と述べた。
何のためだかおわかりだろうか。
まさか独り身の僕の心を紛らわす存在だとは思ってはいないだろうか。
(ある意味では正解と言わざるを得ない程彼女達には感謝しているが。)


「あなたも主の顔ばかり伺ってばかりでなく、早くツモってください。」


正しくは、彼女たちこそこの館の管理を任された、故郷の守り人である。
流行りの言葉でひとつに集約するなら、要するにメイドさん達である。


「・・・あら、きたわよっ!そーれリーチぃ!」


―――卓に叩きつけられた牌のこもった音は、僕の耳を刺激し、思考を中断させられた。


「リーチ棒不要よ。ロン、8000点。」
「にゃ、にゃんですとおおおおおおお!?」


僕の左隣に座るマニュの両手が、きれいに並べられた13枚の牌を倒した。
同時に、僕と顔を合わせる位置のペルが、奇声を上げる。


「・・・それで、ご主人様。」


どこか形式的な声で、マニュの声が僕に向けられた。


「先ほどの説明で、お分かりいただけましたか?」


逸らすのが勿体ないほど、綺麗な黒い瞳で、僕の眼を捉えてくる。

      ・・・・・・・・・・・
「それとも、聞いていませんでしたか?」


その目が細まり、声色に怒りを潜めていることがわかると、尚更逸らせなかった。


「いや、うん・・・」
「その肯定は何に対してですか!!」


ぴしゃりと言い放つ、彼女の強い語調に、完全に呑まれた。


「う、その・・・ごめん。」
「・・・はぁ。」


まるで鬱陶しいと責めてくるような溜息を吐かれてしまった。


「まぁいいじゃん。マスターって麻雀するとすぐ考え込むし。」


僕の拘束を解いてくれるかのように、ペルが口を挟んだ。


「どーせやらしー事考えてるんだよ。にゃはは。」


・・・但し彼女の中の僕の評価も、それほど高くはないようだ。



―――話はちゃんと聞いていた。

何故彼女たち三人が、ここに集まったのか。
彼女たちに、何を言われたのか。

理解してる。ちゃんと理解してるよ。


「ところで、何故ニャット達は麻雀をやっているのでしょうか。」


だからこそ悩んでいるんじゃないか・・・。


「え・・・なんでって、メイド長決定戦じゃないの?」


      『おまえの世話をしている三人の中から、一人を選びなさい。』


「そんなこと誰が言ったのよ?」
「ん!(びしっ)」
「僕!?」
「・・・・・・。(ぷるぷるぷる)」
「にゃっ、と。東4局。」



久々の父からの連絡。
僕の身の回りを世話している三人の猫娘たちの中から一人選んで決めろという命令。
選ばれた一人は、メイド長に。
選考するのは、僕だという。

僕の心をさらにかき乱したのは、マニュの口から突き付けられた、ある一つの事実。



        ―――メイド長は、館の外に出てはいけない―――



心の葛藤。
十字路のトリレンマ。
思考のリフレイン。


僕の心とは裏腹に、卓には順調に牌が並んでゆく。
しかし、この半荘の結果は珍しいことに、全員の点棒が始める前と同じになるのであった。


まるで、僕が、あたかもそう望んでいたかのように。




    ----------------------------------------------------------



 父は貿易商である。
その息子の僕も当然、そうなるだろう。
そうなれば、僕の子も当然、そうなるだろうし、
その子の子も当然、そうなるだろう。


何も変わらない。


確約された地位。
確定した将来。


然るべき段階を踏んで、十数年後にはきっと、数万人の社員を従えることになるだろう。

僕が、そんな自分の人生プランの意味を考え始めたのは。


「ご主人様。あなたはもっとご自身のことについて真剣に考えるべきです。」


―――呆れるように怒ったように。常に凛々しくある彼女と。


「未来なんてもの、誰が決めたの?定められたとしても、ニャットはイレギュラーだけど。」


―――無関心を装って、そのくせ誰より他人を大事に見守る彼女と。


「マスターってさぁホント、ふにゃふにゃだよねー。そんなんじゃ女の子にモテないよ?」


―――そして誰もが羨むような、まるで自由の象徴のような彼女。



          『おまえの世話役達だ。大事にしなさい。』



みっつの出会い。―――それは、今まで僕が見たことのない色だった。




目が覚めたら夕方になっていた。
窓から差し込む西日は、どことなく憂いを帯びているような気がして、


「こんな時間か・・・。」


窓の風景と同じ温度の溜息が出た。


ここ最近は色々な夢を見るな。と、軽く汗ばんで張り付いたシャツを摘まんで、思う。
今見た情景もそうだが、よくもまぁ色褪せたページを引き出してくるものだ、と苦笑。


「起きたの?」


逆光になっていてよくわからなかったが、対面のソファには、確かに彼女が座っていた。
左手は膝に、右手には本を持っている。
目で追っているのは、本の頁か、それとも僕なのかは判別に難しい。


「マニュとニャットなら晩ごはんの買い足しに出たわよ。」


彼女は言葉を続ける。
滑らかなラインを描く腿のきわどいところまで露わになった脚を組みながら。

・・・ふと気づいたことがあった。
確か最後に見た時は、制服を着ていたはずである。
彼女のシルエットは、制服特有の肩口の膨らみもなければ、スカートの広がりも、なかった。


「具合はどう?苦しかったんでしょ?」


そういえばそうだった。
言われて腹部に右手を宛がうが、調子は悪くない。
昼間のあの、水風船のようなお腹の膨らみは、すっかりなくなっている。


「大丈夫、ちょっと食べすぎただけだから。」


きっと向こう側からは、僕の顔が見えるのだろう。
苦笑しながらそう言うと、「そう・・・」と安心したかのような声が漏れたのがわかった。

彼女の読んでいる本もさることながら、
僕には彼女の気持ちが少し沈んでいるほうが気になって仕方がない。


「・・・制服は?」


黙っていても仕方がないので、思い切って尋ねてみる。


「今洗ってる。」

                              ・・
予想通りの言葉が返ってきたのだが、やはり彼女の声はいつもより弾みが少ない気がする。
逆光で彼女の顔に陰りがあることも手伝って、そんな雰囲気が和算される。


「その本―――」
「これはね、お料理の本。」


予測されていた僕の第二問は、言い切る前に遮られて答えを示されてしまった。
正直、こちらの回答は予想外であった。


「ふふっ。狐につままれたような顔してるわよ?」


笑われてしまった。
僕がこんな顔をすることまで、まるで予想通り、と言わんばかりに。

正直、マンガか女性誌あたりだろうと思っていた。
なぜなら、彼女には唯一・・・いや三つほどか。苦手なものがあったからだ。


「洗い物してたらね、汚れちゃったの、制服。」


第一に、活字。
故に彼女の部屋の本棚は、見事に少女マンガとファッション誌で埋め尽くされている。
そういえばこの前は、過去数年分の古雑誌処分のために手伝わされた。

・・・僕が主なんですけど。


「そのまんまだと風邪ひいちゃうからって、無理やり脱がされちゃった♪」


第二に、家事である。
特に料理。今日の一件で後片付けもランクアップかもしれない。
こちらはメイドにあるまじきウィークファクターであるが、
実際のところ、手際自体は悪くない仕上がりである。
・・・ただ、昼間の出来事のように、粗相をする可能性が格段に跳ね上がる。

他二人の猫娘と比べた場合、プロとアマの差があることも忘れてはいけない。
以上の二点から、彼女にとって至らない汚点となっている。


「慣れないことを、無理にするもんじゃないねぇ、やっぱり。」


第三は―――。さて、何だっただろうか。
一瞬陰った西日の強い光で、彼女の表情が一瞬垣間見える。


綺麗だと思った。
困ったような、照れたようなはにかみ顔は、どこか母のような優しさを持っていた―――。
そんな気がした。





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 僕に課せられた使命は三つある。


一つ目は、父親の会社を継げる人格の形成、並びに知識の備蓄である。


「さてこのような経営戦略において、予期されるいくつかの事例をあげていきます。」


今の僕の日々とは、朝起きて勉強、昼飯を食べて勉強、風呂に入ってまた、勉強。
日課はとても定常的で、停滞的で、定例的な毎日。

勉強はさほど嫌いではなかった。
学園での成績は自宅の学習で事足りたし、それでいて首席であった。
テスト前に詰め込む。
そういった事はあり得なかったし、する必要もなかった。


「一つ目の代表的な例としては、経営諸費と労働能率における相関に着目して考察します。」


混ざり気の全くない澄んだ声で、僕の講師は淡々と講話を進めていく。
その声は、どこか無機的な印象さえ受ける。


「・・・従って、このような相関関係が導かれます。この式がもつ定性的な説明として・・・」


目をとじて、呼吸を止めて、聴覚だけを研ぎ澄ましても、
聞こえてくる言葉はやはり機械のよう。
一パーセントの誤差なく、彼女は精密な出力をひたすらはじき続ける。


実に彼女らしいな、と思える。
公私を混同しないとは、声を使い分けるということ。

それを彼女は完璧にこなしている。


「・・・・・・様。」


だからこそ僕は、この単調で単純な作業を厭わない。


「ご・・・・・様!」


五感を、開け。さすれば見える。
心のどこかで、僕に語りかける、声がある。


「ご主人様!!」


耳を劈くような声に、目を開く。息を吸う。

下目づかいに肩を怒らせた、彼女が見えた。
ミントのような爽やかで、ほのかに甘い、彼女が香った。


「今の話を、聞いていましたか?」


―――やばい。
この流れは、経験則からも、本能的にもやばいと、脳が警鐘を鳴らす。

      ・・・・・・・・・・・
「それとも、聞いていませんでしたか?」


それは先ほどの機械と変わり、執行人の声。
迫られる二択の片方は、地獄行きの死亡フラグ付き。

そう考えると何度、僕は死線を掻い潜ってきたのだろうか。


「き、聞いてた!聞いてたよ!?」


緊張に耐えられず乾ききった喉は、やっとの思いでその一言を繰り出せた。


「そうですか。では―――」


          リフレインしなさい。私の詩を。


安堵したような微笑み。
そして先ほどの落差と比べて気味が悪いほど慈愛に満ちたようにさえ感じる声。

次に行う儀式は、どちらが言うまでもなく決まった段取りで始まる。


「事例Cについて―――」


単純な儀式である。
聞いていたかどうか疑わしい『師』の呪文を、僕が復唱するだけの作業。


「――と、考えられるのが一般的であり、故にこれは本方針に対して負の結果となる。
つまり、リスクの一つとして管理されるべき、である・・・?」


問題なく詠唱を完結した。
自信も持っていたし、理解に易い内容であったのが助かった。
・・・そのはずだがなのだが、僕は彼女の顔を恐る恐る伺うことしかできなかった。


「・・・・・・。」


沈黙が重い。
彼女と目が合い数秒か、数分か、数時間なのか。
感覚さえも奪われたかのような錯覚に見舞われたその頃合いに、


「・・・休憩するわよ。」


マニュは、先に目を逸らした。

ふわり、と踵を返した彼女のスカートが踊る。


「どうして、って言いたそうな顔ね。」


二つほど歩を進めた彼女は、振り返って言った。
その表情は、とても有機的。生きもののそれ。
切り替わったシグナル。


「・・・いつまで呆けてるのよ。こっち来なさい。」


催促されて、椅子から腰を上げた。
微かに、重く感じる体。


「つ、疲れてたら入るものも入らないわ。
詰め込むのもいいけど、私の時間が無駄になってしまうわ。」


・・・要約すると、僕の調子を見ながら講義のスピードを調整してやる、と言っているらしい。
来客用のソファに遠慮もなく腰を下ろすと、彼女は机の上のベルを取った。

乾いた鈴の音から一拍置いて、部屋の扉が開かれた。


「ご主人様にお飲み物を。些かお疲れのご様子よ。よろしくお願い。」


「如何なされましたか?」と尋ねてきた、扉を開いた給仕の問いに対し、マニュが答えた。
拍を置かず「畏まりました。」と返す彼女は、何事もなかったかのように扉を閉めて去った。

会釈の為起立した彼女は、再びソファに腰をおろした。

メイド長の候補とは言え、その立場は他と対等であることを思い出す出来事であった。
勿論、マニュが依頼した内容とは本来彼女の仕事である。

但し、この時間だけは、彼女は僕の先生であるから。


何事にも"例外"は存在する。


「・・・くく。」


つい、たった今思ったことが滑稽に思えて、僕の口から意図しない苦笑が漏れた。


「な、何笑ってるのよ・・・?」


さすがにこれは予期していなかったのだろう、とても怪訝な顔をしていた。
それもそうだろう。
本人ですら予期しなかったことだ。仕方がない。


「いや、ごめん。」


なるべく冷静に、宥めてみようと試みた第一歩で、


「・・・口角を釣りあげながら誠意のない謝罪。ふしだらな男ね。死ねばいいのに。」


惨殺された。

どうやら最初の選択を間違えたらしい。


「それで、何がそんなに面白かったのかしら?」


そう、実に滑稽。
気づいてしまった感覚。
脱線した思考。


「マニュって、僕のこと結構見てるよね。」


特異点。


「っ!?・・・ばっ馬鹿!何、を・・・急に言い出すのよ!?」


恥じらう彼女との、接点。
メイドと主は、教師で生徒。そんな関係。


「いやほら、僕が疲れてるのがわかったり、それで気を遣ってくれて、さ・・・?」


これほどもつれて、決まりの悪い"例外"が、他の何処に存在するというのか。


「~~~~~~っ!!」


目の前で悶える彼女をよそに、僕は笑う。


「悪いかっ!?」
「いっ、いだだだだだだだだだ!」


そして今宵も。
彼女のアイアンクローが暴発。


「あ、ああアンタはっ・・・恥ずかしいことを毎回毎回っ・・・!死ね!死ねええええ!!」
「目っ!目が!!つぶれ・・・いただだだだ!!」
「お館様、ハーブティーをお持ちしまし・・・お、お館様!?」



僕に課せられた使命は三つある。


二つ目は、メイド長の選任。




      『おまえの世話をしている三人の中から、一人を選びなさい。』




          『おまえの世話役達だ。大事にしなさい。』




        ―――メイド長は、館の外に出てはいけない―――




・・・果たして僕は、どこに向かうというのか。

誰の希望になれるのだろうか。

―――そこに犠牲があるならば・・・



            リフレインしなさい。私の詩を。





その後、マニュはその場に居合わせたメイドに、軽く注意を受けていた。

ちょっと、スッキリした。







                                  前編・終







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【あとがき】

本作品のご愛読、誠にありがとうございます。
本編はこれにて終了で、次回へと続きます。
これより先は、作品本編のネタばれ・メタ発言を含むあとがきとなります。



その点をご理解頂いて、お読みいただけると幸いです。
皆様のご理解に感謝して、御挨拶に代えさせて頂きます。


此度は「猫娘三名様」をお読みいただいて、ありがとうございました。








     -------------------------------------------------------








P「ペルよー。」

M「マニューラこと、マニュです。」

B「ニャット。」

P「ということで、筆者が何も書く気がないみたいなのであたしらがあとがきもらいっ!」

B「わー(棒読み」

P「とりあえず、ここでは本編で書ききれなかった補足、解説とか、そこらへんを、重点に
 置いて、・・・お話しするコーナーみたいなものね(棒読み」

M「あからさまにカンペ見てんじゃないわよ。
 ・・・まぁそういうわけなので、本編の自己解釈と比較しながら聞いていただくと
 理解が一層深まると思いますし、そうであれば感無量でございます。」

P「うーん・・・そうなのよねぇあたしも読んでみたんだけど、描写とか意味不明っていうか
 筆者が稚拙な所為で伝わるものも伝わってこないのよねぇ。」

M「・・・当事者なのにそれはないと思うわ。」

B「ペルが頭悪いだけ。」

P「はいはい知的なお二人には敵いませんよーだ。」

M「ほら拗ねてんじゃないわよ。無駄話してても埒が明かないから早速行きましょう。」

P「はぁーい。」

B「ふぁ・・・ねむ・・・。」

M「アンタも真面目にやりなさいよ!!」



―――とりあえずこの話なんなの?



M「いきなり核心を迫るような切り込みね。そこから入るなんて大丈夫なのかしら・・・。」

P「魂震えるマスターのハートフルボッコストーリー。」

B「ちょっぴりエッチな主のドタバタ四股ラブコメ劇場。」

M「適当なこと吹き込んでんじゃないわよ・・・。」

B「マジレスすると、由緒正しき血統連なる館の主を主軸にしたお話ね。
 特殊な館で、萌えっ娘たちが給仕をしている場所で、カタチをうるさくモノ言う
 家系の生まれに疑問を抱く心情と身の近い三人のメイド達を巻き込むストーリーに
 注目をした作品ね。原作の設定をいくつか残しつつ、かつそれを生かした設定に
 悩まされたという筆者の苦汁が沁み込んでいるわ。」

P「あたし達のサービスシーンにもご注目あれ!」

M「そんなものはなかった。」

P「あれ、そだっけ?」

B「まぁショートストーリーの癖に緻密にしたつもりで結局穴だらけな設定と
 道のりの長い筋書きばかりを組むのは筆者のいつもの悪い癖だから。」

M「ニャットはなかなか手厳しいわね。」

B「文学少女の私から見たら、もう少しうまく書いてほしいのものなのよ。」

P「文学少女(笑)」

M「もう少しうまく書いてほしいものなのよ(キリッ」

P「だっておwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

B「いくら楽屋裏だからって、キャラ崩壊は程々にしなさいよ。」

M「え、私今なにか言った・・・の・・・?」

P「そのごまかし方、ちょっと苦しいわね・・・。」

B「とりあえずこの質問に関しては、いろいろと波紋を呼ぶので適当に流す方針で。」

P「そーね。じゃぁ次いきましょ、次!」

B「・・・強いて言えば、筆者の自慰行為(ボソ」

M「その発言が一番波紋を呼ぶから永遠に封印しなさい。」



―――マニュが『矛』、ペルが『盾』、ニャットが『魔法』っていう比喩。



M「無理やり感があるわね。」

P「そう?あたし結構この表現すきー。」

M「そうなの?」

P「フルアタ、受け、サポってことでしょ?」

M「違います。」

B「多分性格面のことを描写しているのでしょう。
 なんだかんだ猫かぶっていても、主から見たら槍みたいな性格してるのね、あなた。」

M「ぐっ・・・。」

B「ペルの場合はなんでも受け流す盾って意味からだから、何事も真に受けず不真面目な性格、
 って思われてるのね。」

P「ひっどいなぁ。アタシこれでも傷つきやすいの(うるっ」

B「あなたみたいな女性が男性にとって一番厄介なんでしょうねきっと。」

P「それはニャットにいわれたくないにゃぁ。」

M「ニャットが『魔法』っていう表現も納得できないわ!」

B「的確よ。個人的にここだけは褒めてあげてもいいわ。」

P「得体が知れないって思われてるのがいいってこと?」

B「謎が多いほうが・・・雌は魅力があるのよ。」

M「だとしても、対等な関係にならないじゃない、これじゃ。ニャットが優位すぎるわ。」

B「いつからあなたたち二人とニャットが対等になったのですか。
 私はいつもあなたたちより先を歩いてるつもりよ。」

M「へぇ、そんなこと言うんだ。それだったら私が一番前よ!
 常に兵隊は槍をもった者が最前線なんだから!!」

P「んー、じゃんけんみたいな表現でもよかったかもね。」

M「三すくみってこと?」

B「ヘビ、カエル、ナメクジってことかしら。まぁ、それも的を射てるわね。」

M「同感ね。・・・たまにはペルもいいこと言うわね。」

P「えへへー。」

B「・・・ところで、そうなるとしたら誰がナメクジなの?」

PB「・・・・・・・・・・・・。」



―――三人のことについて教えてください。



M「私たちのことかしら?」

P「えっと上からななじゅう・・・」

M「スリーサイズの話じゃないわよ!・・・ってちょっと待って、それ誰のスリーサイズ?」

P「マニュ。」

M「わーーーーーーっ!ダメ、絶対ダメーーーーーーーーーー!!」

B「というか三人の中で"上"が80未満の時点でマニュ確定なのですが・・・。」

M「っさいわね!余計なお世話よ!!」

P「身長はニャットが一番低いのにねー。」

M「ちびっこめ・・・成長が脳細胞と乳腺に限定されてるんじゃないの?」

B「うっさいぺたんこ。」

M「~~~~~~~っ!!」

P「まぁ身体のコンプレックスなんてどうでもいいじゃないこの際。私たちのことでしょ?」

M(言いだしたのはアンタじゃない・・・!)

B(憎い・・・あの長身が妬ましいわ・・・!)

P「・・・名前とか?」

B「! そうね。私たちの名前ってちょっと特殊だもの。仕組みとか説明しないと。」

P「えっとー、あたしの場合は、子供のころはニャースだったから、
 今の名前は持ってなかったの。ちっちゃい頃は『スニア』って呼ばれてたの。
 で、私たちもんすたぁは進化する種族が大半なんだけど、その際進化前まで呼ばれてた名前が
 進化後の名称の後につけられるのよ。だからあたしの今の正式名称は、
 『ペルシア=スニア』ってことね。ペルって呼ばれてるのは愛称。」

B「同様にしてニャットは『ニャット=マール』が正式名称なのです。」

M「ちなみに種族名で言われると怒るわ。」

B「・・・いいじゃないですか。嫌いなものは嫌いで。」

P「"ブ"ニャットだもんね。」

M「だから自分の一人称も『ニャット』。」

B「・・・はぁ。好きでこんな種族に生まれたわけではないのに。」

P「いいじゃない。おっぱいも成長しやすいってことで。」

M「・・・・・・。」

B「そんなものより、太りやすい種族体質なんてものを返上したいわ。」

M「はぁ・・・。」

P「ほら、マニュも自己紹介しなきゃ。」

M「いっ、いいわよ私は!」

B「いいじゃないですか。ちゃんと挨拶しなさい。」

P「ほらほらぁ~、いってごらん?さぁ早く!はりぃぃ!」

M「ぅぅ・・・マ、『マニュ=ラーニャ』よ!!」

B「まにゅらーにゃwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

P「かわいぃーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

M「~~~~~~~!///」

B「どんなwwwwwwwwwwwwww呪文wwwwwwwwwwwwwww」

P「おなかwwwwwwwwいたいwwwwwwwwwたすけてwwwwwwwwww」

M「こっ・・・これだから・・・いいたくなかったのよおおおおおおおおおっ!!
 ご主人様のばかあああああああああああああああああ!!」



   ※三人が落ち着くまでしばらくお待ちください。
    ちなみに、マニュの名称に関して最初に気づいたのはペルで、
    それをニャットに伝えたところ、彼女のツボに入ってしまったのが事の始まりでした。

    あと彼女たちの体格差についてここでちょっと解説。

    (長身) 【主人公】>ペル>マニュ>ニャット (チビ)
    (豊満)   ペル>ニャット>>>>マニュ (スレンダー)

    こんな感じです。



P「はぁー・・・はぁー・・・疲れたww」

B「大変でしたね。」

M「誰のせいよ・・・ほんとに。」

P「・・・っとと、そろそろ終わりかな?」

B「そうね。まだまだ説明の足りないところはあるんだけど、今回はここらへんでお別れですね。
 さて次回ですが・・・。」

M「あ、次回予告は別撮りみたいよ。これはこれで一旦切れるって。」

B「む、そうですか。・・・それでは次回またお会いしましょうということで。」

P「まぁちょっとくらいいいじゃない。次回ではついに、四人に新展開がやってくるわよ!」

M「そうね。正直次のお話が一番謎に近いと言えばそうかもしれないわ。」

B「その真相を垣間見たくば・・・次回!猫娘三名様中編!にて、お会いしましょう。」




       「「「それでは失礼します。ごきげんよう、お館様」」」










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    【次回予告】






             強くて美しい萌えっ娘もんすたぁ。
     ・・・を、手に入れるためには、何と何がまぐわえばよいのか。





「それって―――」
「そう。兵器の開発。」


水銀が、揺れる―――。
戦慄が走る僕の全身から、不快な水気が噴き出した。





冷えた炎のような、瞳。



確かに、僕はそこに見た。
木々が焼かれ、焦土と化す、瓦礫の街を。






「主様。許婚様より、恋文を預かっております。」
「―――えっ。」




名前すら記憶におぼろげな、生涯を添い遂げる伴侶の存在。




         季節の変り目に、貴方様は如何お過ごしでしょうか。




「・・・ふ、くくく。」




「信じられないな。」


あまりにも、不釣り合い。
どう考えても、不似合い。




君が見ている僕は存在しない。




            ―――では信じさせてあげよう。―――





          みんながみんな、それぞれの色の花を持ってるんだ。
       その中から一つ摘めと言われても、そんな特別なことはできないよ。




長い長い、孤独な時間。




だからその柱は、私でいい。





              「大切な話が、あるんだ。」





           『おまえの世話役達だ。大事にしなさい。』
 





         ―――メイド長は、館の外に出てはいけない―――







              リフレインしなさい。私の詩を。











                ―猫娘三名様・中編―
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