5スレ>>782-2


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「べろべろばぁ!」
「うわ!?」

 少年は驚いた。
 突然目の前に、可愛らしい女の子の顔が──それも逆さまで現れたら、誰だってそうなる。

「驚いたなぁ……会いに来るならもっと普通に会いに来てよ」
「な……だ、だれも会いにきたなんて言ってないでしょ!? これは、その!
 あんたを脅かしにきたのよ! いっつもへらへらしててムカつくのよあんた!」
「あはは、厳しいなあ。そういうとこがかわいいんだけどね」

 だがこの少年は慣れているのか、もともとそういう性分なのか、その後は至って平静に対応する。
 さらりと、褒め言葉すら口にする。

「────……」

 直後に、少女は沈黙する。
 照れ? 否。その顔に浮かぶのは──負の、感情。

「あんた……いつもそうよね。そうやって愛想ふりまいて。他の女がいつ引っ掛かるかわかったもんじゃない」

 怒り。違う。もっと暗い感情。

「もちろんあんたにそんなつもりがないのはわかってる。
 でも、向こうはそうは思ってくれない、私という女がいるのもわからずにあんたを押し倒すかもしれない」

 ──いや、感情かどうかすら疑わしい。

「私は、幽霊だから、あんたを押し倒して既成事実なんてわけにもいかない。
 逆に、他の女は誰でもそれができる。そんなの、いや」

 ただ、なにかに突き動かされるまま、その口から言葉があふれる。

「──私は、幽霊、だから。あんたを呪うかもしれない、ううん。
 あんたがいいって言ってくれるなら、今すぐにでも祟り殺せる自信がある」

 伸ばした手が、少年の胸をすり抜ける。反対側から出てくることはなく、まるで心臓を握っているようだ。

「ねえ、答えて。私と一緒になるために……地獄を見てくれる?」

 そのまま、背筋が凍えるような笑顔で問いかける。いっそ優しいくらいの声で。
 そして────少年は、答えられなかった。

「そのくらいにしておけ……」

 答えるより先に、新たな声が降りかかったから。
 見やれば、黒。
 かなり裾が長いその服は、まるでマントを思わせた。
 そして、肩に担いだ大鎌。


 ──その姿は、まるで死神。


「あなた、誰? お迎えって言うんなら全力でお帰り願うわ。
 私だろうが、こいつだろうが──あの世なんかに、連れて行かせるものか!」


 ──その死神を。少女は拒絶し。


「俺もそんなつもりは、ない」


 ──そして死神は、頷いた。




「なるほど、だいたいわかった」

 改めて事情を詳しく聞いた死神は、そういった。

「まぁ気持ちを理解できるとは言わないが、そういう心理の存在は知っている。
 だがな幽霊。祟り殺し、呪い殺しなんぞされた方は確かに現世に霊としてとどまるかも知れない。
 かわりに、死んだときの苦しみから解放されないまま自我の消滅を待つだけの存在になるんだ。
 方法としては、お勧めできないな」

 淡々と事実を述べる。
 幽霊はうつむき、なんの反応も返さない。

「少年。この幽霊、すでに生前の未練はないはずだよな」
「あ、はい。それは僕が解決したはずですから」

 ならばと死神は彼女を無視し、少年へ質問する。
 その答えに何事か思案し──面を上げたときには、感情の乏しい顔が真剣なものになっていた。

「道は2つある」

 一拍置き、雰囲気にのまれて言葉を挟まない少年と、なにも言わない少女に告げる。

「1つは、幽霊を転生させること。
 自然に起こるはずのそれを強引に行うことで、記憶を引き継ぐことができる」

 簡単なように言っているが、その表情からはとてもそうは思えない。

「ただし、再会できる確率は高くないと思ってくれ。
 一秒にいくつの命が世界に生まれているか、知らないわけじゃないだろう。
 それと、もし再会できるにしても時間がかかる。
 単純に考えて、転生したあと成長しなきゃならんからな」

 少年が幽霊を見る。未だ伏せられた顔からは、何も読み取れないだろう。

「もう1つは、少年が同じ幽霊になることだ。
 他の誰に邪魔されることなく、2人だけの世界で愛し合っていける」

 この言葉を聞いて、僅かに少女が死神を見やった。

「ただ、まともな神経が残ったまま幽霊になるとは限らない。
 最悪、幽霊にすらならずに昇天する可能性もあるし、そうはならなかったとしても、
 今とは別人になることだって十分にあり得る」

 続く言葉を聞いて、再び顔を伏せた少女。戸惑う少年。
 そんな彼らに、死神は、

「明日、またここで会おう。その時までに、道を選べばいい」

 それだけ、放り捨てるようにして背を向けた。
 その背中に少年は問う。

「あんた、何者なんだ?」

 答えは素早く。

「通りすがりの死神だ。……覚えなくていいぞ」

 ただそれだけだった。




「ねぇ?」
「うん?」

 その背が見えなくなるより早く、少女の声がする。
 振り向けば、そこには月のような、心をひきつけて離さない笑みがあった。

「さっきの答え、聞かせてくれる?」

 その儚げな声に、姿に、彼は。

「正直、それでもいいかなって思うのも確かだよ」

 拒絶はせずとも、受け入れてもいない、そんな答えを返す。

「でも、僕は一生で十分なんだ。いつ消えるかもわからないなんて、そのうちつまらなくなりそうでさ。
 君といるのが退屈ってわけじゃないよ。でも、やっぱり天寿を全うした人って、安らかに逝去なさるそうじゃない。
 やっぱり、ああ、幸せな人生だった……っていって、最後を迎えてみたいんだよね、僕」

 少年の年に相応しくない、悟った様な考え。
 その顔に見惚れていた幽霊だが、彼が照れくさそうな笑みを浮かべれば、当然疑問を投げかける。

「なに?」
「ああ、いや、そのね。幽霊になっちゃえば関係ないかもしれないんだけど……」

 酷く煮え切らない反応が、さらに彼女の好奇心を刺激し。
 高まる期待に対する答えは──

「やっぱり、惚れた女と子供を作りたいなぁ……なんて思ったりするわけですよ」

 ──とてもストレートなもので。
 彼女は、当然というか、硬直してしまう。

「そんなわけだから、できれば僕の体は持ったままがいいなー、なんて思ったりする訳で。
 どうかな、だめかな……?」

 そう言っても、しばらくは反応がなかった。
 数秒待って、ようやく返ってきた言葉は。

「あ、ああんた、なにいってんのよ!?」

 ひどく狼狽した声だった。

「そ、そん、んなぁ! 女の子に、その、あの、ああもう!」

 きっと、彼女に体があったなら赤面していたに違いない。

「ふふ、あはは……。まったくもう、君は……」

 こぼれた笑みに、彼女は怒ったような顔を作り、

「……フフ……ハハ……っ」

 同じように笑いだして、そして……

「「あはははははは!」」

 ……一緒になって、大笑いした。




「…………」

 樹に預けた背中。そこから聞こえる笑い声に、彼は溜息を1つ。
 足音を殺して歩き出すと、正面から声が届く。

「またそんなお節介してるのかい?」

 あまり聞きたくはない声だった。

「またお前か。いい加減俺に付きまとうのやめろよ」
「冷たいねぇ。というか、ボクの名前ぐらい覚えてくれない?」

 真正面には誰もいない。少し顔をあげた先、木の枝に腰かけて、彼女はいた。

「お前の名前を聞いた覚えはない」
「あれ、そうだっけ? じゃあ改めて、」
「聞くつもりもない……」

 何度交わしたかもわからないやりとり。
 この次に何を言われるかも、わかっていた。

「──まぁ、君がボクを今すぐあの世に送ってくれるなら構わないさ。
 けどそうじゃない以上、やっぱりボクの名前を覚えてもらいたいんだよ」

 彼は、この言い分が気にくわなかった。
 好きで死神なんてやっているわけじゃない。
 それしかできないからやっているというのに、こいつは。

「お前がファイヤーの生き血を飲んだ不死鳥だとかいうのを信じる信じないは置いておくとして。
 俺は旅の先々で出会う問題を解決しているだけだ、お前の問題を解決してやるつもりはない」

 それだけ言って、走ってこの場を去る。

「……やれやれ──」

 背後に聞こえた声は、無視した。




「……さて、お二方。選ぶ道は決まったかな?」

 翌日。死神が、2人に問いかける。

「ええ。私が転生する方でお願い」

 答えたのは幽霊の方で、少年はただ微笑むだけだった。

「そうか」

 軽く頷く。同時に、幽霊がこちらへ近づいた。

「っ────」

 意識を集中する。普段は見えないものを、見るために。
 “それ”が何なのかは、わからない。ただ、“それ”に何をすれば何が起きるかは、理解できた。

「……輪廻の時計の、針が廻る」

 つぶやき、肩に乗せた鎌に左手を掛けて構える。
 刃先を返すと、少年があわてたように駆け寄ってきた。

「ちょっとまって、まさかそれで切るの?」
「ああ。何か問題があるのか?」

 問題あるのだろうとわかっていたが、それでもそう聞き返した。
 思惑通り、答えに詰まる少年。やがて躊躇いがちにこう聞いてきた。

「それで、本当にうまくいくの?」

 これには苦笑してしまった。
 うまくいく保障など、どこにもないけど。

「俺はいつでも、だいたい正しい」

 それでも、こう答えた。
 まだ納得していない様子の少年だが、幽霊に微笑みかけられると、黙って下がった。

「……さて、幽霊。今度少年に会えるのはどれだけ先かわからないぞ。
 言いたいことがあるならいってみろ」

 よく考えれば、何も言えずに別れというのもさびしいだろう。
 そう思い、発言を促した。

「……そうね。私は、他の誰にもあんたを渡さない。絶対によ。これは私のわがまま、ただの独占欲。……覚悟、しときなさい!」
「ははは……。ここで、まってるよ」

 満面の笑みで言いきった幽霊、苦笑で応える少年。
 2人の視線を受け、死神は鎌を振り下ろす。

「そして、時計が夜を刻む……」

 どこで覚えたかも知らない、気障な台詞と共に。




 それから1週間。
 少年は、ある少女に話しかけられた。

「あなた、だれですか?」
「ああ、死神の知り合いとでもいえばいいかな。彼がどこにいったか知らないかい?」

 暇をしていた彼は、話し相手にでもなってくれないか、と期待とともに答える。

「いえ、僕も知りたいんですよ。なんか、あれから他の幽霊が言い寄ってきて……」

 言った途端、彼女は目を見張る。
 軽く視線をめぐらせると、納得したように頷いた。

「あ~……あれか。ふむ。うん。じゃあボクはこれで失礼するよ」
「あ、はい……って助けてくださいよ、貴方もそういうのできるんじゃないですか?」

 そのまま放っておかれるとは思わなかった少年だが、しかしたいしてあわてる様子も見せなかった。

「いや、ボクはそういうの苦手なんだ。それに君も、いうほど困ってるわけじゃないでしょ?」
「や、困ってますよ。あの子に見られたらと思うと……」

 取り乱してもおかしくない状況でありながら、落ち着き払っている。
 そしてそれは、彼女の一言で壊される。

「……いや、もう遅いみたいだね」

 その視線を追って振り向く。
 そこにいたのは。

「……あんた……」

 見たことのない萌えもんだった。
 聞き覚えの無い声だった。
 それでも。
 それでも、間違いなく。

「……  !」

 自らが愛した少女だった。

「……わ、わ!? ちょ、あん……あんた! だ、抱きついて誤魔化そうたってそうはいかないわよ!
 あの女は何!? いったわよね、誰にも渡さないって! はなせ、*させろ!」
「もう、だめだって、  !」

 照れ隠しのような声で、さりげなく危ないことを言う少女に、少年は。

「──……  っ」

 ただ、口づけることで沈黙させた。

「……あったかいね、  の体。」
「……ば、ばか……」








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 ~あとがき~

 ネタが出てきたので書いた。
 非常に萌えもん要素が薄いと書き終わってから気づいた。
 でも後悔していない。
 妄想だけは出来てるので続きができるかもしれない。
 以上箇条書きな吸血の人でした。
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