5スレ>>785-2

『R』Story~化石に愛された男~


第一話:序曲









「うーむ……」


意味もなく書類を読んでみる。
給料の内訳についての書類だ、既に判も押されている。
今月はノルマをしっかりとこなせたのは7割か……まぁいいところだろう。

「じーーーーーー」

視線を感じるが無視しておく。
言っておくが怖いわけではない、断じて怖いわけではない。
自分で言っておいて何だがここまでの立場になった私だ、恐怖するものなどほとんどない。
……いや、未知なる物はやはり恐怖を感じてしまうのは生き物本来の感覚か。
目の前に置かれた『それ』にどうしても生物として畏怖するのは仕方ない事なのだ。

「食べて……くれないのか?」

仕方なく書類をデスクの上に戻して相手を見る。
お盆で顔を少し隠して不安げな表情でこちらを見ていた。
可愛い事は可愛いが今の場ではそういう問題ではない。

さらに仕方なく私は『それ』を見た。
何故だ、何故モザイクがかかっているのだ。
いやまて何か今動いたぞ!?


「食わねば・・・駄目か?」


ロケット団本部一室にて私は自分の命の危機を感じるのであった。











話は少し前に遡る。
セキチクでの任務を終え、私はタマムシの己の部屋に帰ってきた。
クチバの闇オークションが最近目をつけられはじめた、という確かな筋からの情報により
セキチクに場所を変更し、その指揮官役として派遣された、というわけだ。
いつもならば幹部のサエグサ辺りがやりそうなものだが運悪くその日は休暇中。
その他幹部も他の任務中ということにより特別団員長の私に回ってきた、という感じのものだ。
何ら妨害もなくオークションは終わってくれたが帰れるようになったのは朝の6時、おかげで少し寝不足なものだ。

「むっ帰ってきたか主殿」
「お帰りなさいませマイロード」

部屋には待機を命じたアーマルドとオムスターがいた。
帰りを待っていた、という感じではあるが……

「お前達、寝ていないのか?」

てっきり既にボールで寝ているとものだと思っていたがどうにもそうではないようだ。
手持ちのボールを全て机に置く。
中にはユレイドル、ノクタス、カブトプスが入っている。
私の手持ちはほぼ化石萌えもん達で構成されている。
それ故に団内部には『古のレイド』なる異名があるがまぁ気にしない。
ボールから3人とも出てこないところを見ると任務完了と共に寝ているようだ。
まぁ無理もあるまい、昨日から寝ていないのだからな。

「何時でも貴方様の下へ馳せ参じるように待機しておくのは仕える者として当然の事」
「一応何かあった時の為に起きておかないと、と思ってな」

「……見ての通り任務は終わった。もう寝てもいいぞ」

生真面目というか病気にすら入ってる域の真面目さを持つオムスターならば仕方ないと思っていたが
アーマルドまで起きていたのは意外ではあった。

「それでは失礼いたします……アーマルド、頑張ってね」
「あ、あぁ……」

オムスターはボールに戻ったがアーマルドは未だ戻らずに何やらもじもじしはじめた。
オムスターが戻る前に何やらアーマルドに言ったようだが何かあるのだろうか?
とりあえず椅子に座り何事かとアーマルドを見る。

「あ、あの、その、朝食は食べてないな?」

「そんな余裕はなかったからな……それがどうかしたか?」

何かよしっとか言い出したがいったい何なんだ……?

「いや、その……朝食を作ってみたのだが……食べてくれないだろうか?」








そして現在に至る。



目の前に置かれた興味から恐怖に変わった『それ』
おい何かこっち見てる気がするぞ気のせいか。

「アーマルド、味見はしたか?」

バイザー越しにでもわかるくらい真っ赤になっているアーマルドに問う。
何だかいやにさらにもじもじしていはじめているのは気のせいだろうか。

「い、いやしてないけど……」

だろうな、と思った。
していたらこの奇想天外な物は出てこないだろう。
さぁてどうしたものかと思っていると

『レイド団員長、いらっしゃいますか』

内線にしたっぱからの連絡が入った。
何事かと受話器を取る。

「何か?」

『お寛ぎかと思いますが会議室にいらしてください。
 次回の作戦会議についてお話があるそうです」

もうか、しかし作戦終了から直ぐに呼ばれるとはなぁ。
まぁ仕方あるまい、ロケット団は忙しいからな……

「わかったすぐ……」

電話をしながらアーマルドに目がいった。
バイザー越しとはいえ少し涙ぐんでるような気がした。



……仕方ない奴だ本当に



「いや、少しだけ遅れると言っておいてくれ。
 帰ってきたばかりでな、出る準備というものがある」

『了解であります、出席者の幹部の方々には少し遅れると伝えておきます」

「すまんな、よろしく頼む」

電話を切る。
さて、と……

「あ、主殿、会議ならその後にでも……」

ぽんとアーマルドの上に手を置く。
このような悪の組織の中じゃ自分の萌えもんに信頼を置く者はあまりいないとは思う。
己の手持ちは全て道具、そう思うのが普通だろうしそうしたほうがいいのやもしれない。
だが私にとって自分の萌えもん達は相棒である。


相棒の事は少しは大切にしてやるのは悪も正義も関係あるまい。


とりあえず視覚をあまり意識させずに食べることにした、あまり注視すると何か大切な物を失う気がしたからだ。
口で噛む度にギャアアアアアアとか聞こえた気がするが気のせいだろう、気のせいにしておきたい。
しかし何だろうな、なぜか視界がぼやける。む?花畑?昔死んだ伯父が手を振っているような……



何時の間にか気を失い慌てたアーマルドや起きてきたユレイドル達に介抱される事になって会議にかなり遅れたのは言うまでもない。

とりあえずアーマルドには作るなら基本からやれと言っておいた。
沈んでいるアーマルドの頭に再び手を置き上手くなったらまた食べてやると言っておいた。
その時の泣きながらの笑顔はしばらく忘れる事ができないだろう。

どうにもこういうのは苦手だ。









「すまない……少し野暮用が増えて遅れてしまった」


ユレイドルに付き添われる形で会議室に入る。
まだ少し気持ちが悪いが仕方あるまい、責任は軟な自分にあるということだ。

「どうしたレイド、顔色が悪いぞ」

幹部の一人が俺の青い顔が気になったのか尋ねてきた。

「あー大丈夫だ……それで私まで呼ばれたという事は何かしらあったのか?」

一応幹部と同等くらいの権限を特別団員長として持たされている俺だが幹部会議に呼ばれる事はほとんどない。
私個人の好き嫌いもあるが立場というものもある。
権限は同等とはいえ相手は幹部だ、団員長が出るべき事ではない、ということだ。
有事や大作戦時には呼ばれるが今度もそういう事かと思うのが普通か。
そのような話は聞いてはいないのだが……

「うむ、3日後にお月見山にて化石と月の石の発掘作業があるのだが、どうにも我々の作戦を察知した奴らがいるらしい。
 念の為団員の数を増やすと共に化石に関しては専門家でもあるお前に化石発掘のグループに参加してほしい。
 全体の指揮はハナダにいるサンドラが任されている。だが化石発掘の大まかな指揮はお前に任せることになるだろう」

サンドラ……あぁ、あの猫好きの幹部か。
化石と月の石発掘か……なるほど、私が呼ばれたのもわかる。
他に売り物となりそうな化石があればついでにということだろう。

「了解した。明日ハナダの部隊と合流しよう」

「頼むぞ、全てはロケット団の為に」




ロケット団の為に、か……





この時私はここからロケット団の崩壊が始まるなどということを気付くはずもなかった。

それもたった一人のトレーナーが引き金となるなど……夢にも思わなかった。


























後書きみたいな何か

ども、新参作者司黒でござい。
こうなんて言うかロケット団のシナリオ書きたくなったから書いちゃった、みたいな。
バトル描写自信ないけど頑張ってはみたいお年頃。

とりあえずセリフがあった子だけ紹介

☆レイド
主人公。ロケット団の中でも変わり者として有名らしい。
化石萌えもん達を多く所持できる特権を持つ故に特別団員長という肩書きをもつ。
過去に起きた事件によりロケット団に入り自分の化石萌えもん達を取り戻す事と世の中に復讐を誓う。
性格は冷静沈着……のはずなのだが手持ちの子が色々とやらかす為にあまり維持できない。

☆アーマルド
乙女に憧れる古風な子。家庭の仕事は何やらしても今のところ全滅。
ロケット団の手持ちならそんな事は必要ないのだが自分の主人公に特別な感情を抱いている故らしい。

☆オムスター
その殻よりもお固い子。多少の融通は利く、でも生真面目。
主人公をマイロードと珍しい呼び方をする。特別な呼び方の裏には何かあるのかもしれないしただ単に色んな呼び方を作者が欲しかっただけかもしれない。

☆男
どうみてもボスです本当にありがとうございました。


他の子も出番が出てきたら紹介……できるといいなぁ。

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最終更新:2009年10月16日 15:10
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