その日は雪が降っていた。
ご主人様に捨てられた私は行く当ても無く街の片隅で寒さに震えていた。
少しでも寒さを凌げる路地裏で命を繋ぎ止めていたが、それでも降り注ぐ雪の冷たさに視界がぼやけていく。
私はバトルで弱かった。
だから棄てられた。
萌えもんトレーナーに捕まった後の生活が染み付いてしまい、野生での生き方すらも忘れてしまった。
一人で生きていくには今の私は弱すぎた。
バトルに一生懸命勝ってもご主人様は他の仲間達みたいに褒めたり頭を撫でたりはしてくれなかった。
バトルは駄目でも家事も頑張った。
だけどご主人様は私を見てくれなかった。
そして…この知らない街に置いてけぼりにされた。
私は涙を流しながら雪の上へ横たわった。
一度でいいから、ご主人様に褒めて貰いたかった。
頭を撫でて欲しかった。
「───」
朦朧とした意識の中、誰かの声が頭に響く。
最後の気力で目を開いて見据えると、漆黒の体を持つ者が私を見下ろしているのがわかった。
「大丈夫かい?」
私は小さく口を開けて返事をした。
返事がちゃんと聞こえたのか、彼は私を起こすと暖かい飲み物を取り出して私に飲ませた。
しばらくすると意識がはっきりしてきてぼんやりしてよく見えなかった彼の顔が見えた。
「よかった、まだ生きていてくれたね。
…トレーナーに棄てられたのかい?」
私は首を縦に振った。
「…よかったら、僕のところにおいで」
私がもう一度首を縦に振ると、彼は私を抱きかかえた。
漆黒ではあるが、優しさに満ちた温もりに私は目を閉じた。
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あの日から、4年が経った。
今も私は彼の家に彼と共に同棲している。
彼もまた、私と同じ捨て子だった。
恐らく同じ境遇だった私を救いたかったのかもしれない。
他の人々は彼を悪魔を見るような目で見ていたが、私はいくら人々から罵倒されても彼の傍に居た。
彼の生い立ちと境遇を知っている私が彼を見捨てるわけにはいかない。
私が彼の暖かな胸に体を預けると、彼は何も言わずに頭を撫でてくれた。
彼だって、もう心がボロボロのはずなのに。
だから…
私は彼の心を癒すため、毎夜のように彼と交わるのだ。
【あとがき】
ふと思いついたので文にしてみました。
しかし…いかに稚拙なのかがわかるのでこれからも書くことがあれば精進しようと思いますorz
小説本文に名前は書いてないのですが、彼女はハクリューです。
最終更新:2009年11月05日 18:46