「まったく、あいつにも困ったものだ……」
「あはは。ほんとにね、ヒスイさん」
台所で即席ラーメンをすする影2つ。
ジュプトルとピカチュウだ。
「なんでカップめんたべてるの、2人とも」
「いや、人数分作れなくてな。コガネには悪いと思ったが、こいつの性格はお前の方が知ってるだろう」
そこにもう1人、イーブイが現れた。
「そうだね。バカだもん、コガネ」
「うぐ、ひどいなサラ。せめてお人好しと言ってよ」
この抗議に対し、ヒスイとサラは。
「おなじだよね」
「おなじだな」
こう返して、コガネの顔を見事に膨らませた。
~るぎゃーとほーおー・てーるおぶからー……のうらで~
「アイツ、ほんとに女誑しだよな」
「ハハハ……」
彼らのマスターが伝説の萌えもん2人に翻弄される様をみて、彼はそう言った。
ヒスイの言葉に、貴方がいいますかと言いたくなったのがコガネ。
何も言わずに体育座りしているのがサラだ。
「全く、あいつは女心ってのがわからないらしいな」
その姿勢からわかるように、ふだんはおとなしいサラなのだが、
これにはなぜか突っ込んできた。
「ヒスイにはわかるの?」
「すこしはな。あの状況じゃ、そうだな……『比べられないよ』くらい言ってもらいたいもんだろう」
挙句サラリと返すものだから、深々とため息をつく。
ヒスイはなぜそんなものが出るのか、とでも言わんばかりの顔になる。
「(サクラがかわいそう……)」
「(だよね……)」
それは、この場にはいない、ある人物を慮ってのものだった。
「なんだ、言いたいことがあるならはっきり言え」
「「なんでもないよ」」
声を揃えてごまかすあたり、この2人は非常に相性がいい。
そして、それになぜか腹を立てるヒスイ。
「……いくぞ、サラ」
「?」
立ち上がり、やたらと細い腕をとって歩こうとする。
が、次の瞬間。
「きゃー、ようじょゆうかーい」
などという言葉が飛び出るものだから、誰もが驚く。
「な!? お、俺はそんなつもりなど!」
「いやヒスイさん、それむしろ肯定してるよ!」
大慌てで否定するも口ごもる。それは確かにコガネの言うとおり、図星であると言っているようなものだった。
「へー、ヒスイってやっぱりロリコンで、しかもわたしをらちかんきんするつもりだったんだー」
重ねての言葉にさらに大慌て。コガネも焦った。
実はロリコンという言葉は、この一行の男性全てが言われてもおかしくない言葉だったりする。
「……やだ、そんな、コガネもロリコンだったの……?」
ひどく傷ついた様な声に、さらに焦った彼は。
「や、ちが! 僕は、その、サラの外見で好きになったわけじゃなくて、
なんといか、眼、かな。サラの目を見たときに、惚れたんだよ。
一目ぼれ、ってうまいこと、いったよ……ね…………」
一種のノロケだろうか。とりあえず、恥ずかしい台詞を言い放っていた。
自分でも何を言っているのか気づいたようで、最後はしりすぼみになっていた。
「……俺だって、サラがロリだから好きになったわけじゃない!」
気まずい沈黙、それを破ったのはヒスイの叫び。
「ロリコン、というのも認めるつもりはないが、そのあたりは語るだけ無駄だろうから割愛する。
だがな……俺だって、外見だけでここまでこいつに惚れやしねぇよ」
格好いい、けれどなにかが違っている主張。おもに前半が。
なにもいい返せずに黙っていると、続きがくる。
「俺はな、サラのことはよく知ってる。サラの方は俺のことを知らなくてもな。
こいつのいいところも、悪いところも全部知ってる。笑った顔も、怒った顔も、泣いた顔も」
1つ1つを思い出すように、目を閉じたまま語ったヒスイ。
その目を開いて、こう言った。
「──その、全部に惹かれたんだ」
見つめられるサラ。2人分の視線を受けながら、彼女は。
「その、今後ともよろしく」
・・・・・・・・・・・・。
「「(どうしてあれで友情の方のLikeだと勘違いできるんだこの子はーーー!?)」」
どこぞの誰かと同じく、あっさりフラグを叩き折っていた。
最終更新:2009年12月17日 19:41