5スレ>>816

「おぉー!すっごーい!」

始めてみる大きなビル郡に目を輝かせる姉さん。

『~~!~~~!!』

とアンノーン達。

「…あまりはしゃがないでください…こっちが恥ずかしいです」

そう言って帽子のつばを下げるムウマージ

『それで、どうするんですか?』

そう(筆談で)聞いてくるユレイドル
…そんなわけで、俺達ことリンご一行様はタマムシシティへとやってきていた。

「そうだな…まぁ、この街に来たらすることは一つだろうな」
「そう、当然お買い物!」
『そうですか』

まぁ、タマムシシティと言えば一番に名前が挙がるのが
カントー最大の規模と品揃えのショッピングセンター『タマムシデパート』だろう。
あと、こちらもカントー最大のゲームコーナー『タマムシゲームコーナー』もある。
楽しむには事欠くことが無い街といえるだろう。

「うん…それで、何か希望があるか?」
『とりあえず、わたしはおかいものにいきたいですね』
「私もー!」
「私は…タマムシのゲームコーナですかね 知り合いがそこに居るので」

デパートとゲームコーナーか…あと―

「~~?」
「~~~♪(くるくる」
「~~~~~!~~~!(しゅばばばば」

最低一人はコイツらの面倒も見なきゃいけない。

「わかった、じゃあ姉さんとユレイドルは買い物、ムウマージはゲームコーナーだな」
「リンは?」
「俺はアンノーン達と一緒にぶらぶらしとくよ」
「悪いですね…」
「いや、いいさ それにひとしきり回ったら姉さんの買い物の手伝いもしなきゃいけないし」

姉さんのことだ、何かにつけて大量に買ってしまうだろうから…

「それじゃあ各自自由行動で、夕方くらいに萌えもんセンターに集合、ってことでいいな?」
「はーい!」
「了解しました」
『それじゃあ、いってきますね』




「うわー!でっかい!」
「ラスピアス、主語が抜けてる…」
「そう言いつつ、おねーさまもちょっと浮かれてませんか~?何時もよりも早足ですよ~?」
「修学旅行の来た学生みたいだね…」
「そういうアンタは落ちついとるねぇ…」
「僕は初めてじゃないから」

私はユカ、萌えもんトレーナーをやっている。
私たち一行は、カントー随一の商業都市タマムシシティに着たわけなのだが…
まぁ、この通り私も含めて浮き足立っていたり。

「しかし…それなりにカントーを旅してるんやけど…会わへんな」
「うん…そうね」

私たちニビからトキワ、マサラ、グレンと回って来たわけなのだが、その間兄さんに出会うことがなかった。
そろそろ探す方向でいかないとまずいのでは…という気持ちに駆られ、空路で中心都市であるヤマブキ・タマムシ地域までやってきたのだ。

「それで、これからどうするんだい?」
「ウチはタマムシデパートに行きたいなぁ…久しぶりに思いっきり買い物したいし」
「う~ん…ボクは…」

思案するラスピアスの目に入ったのは、アイスクリーム屋…
甘いものに目が無い彼女の目は完全にそれに止まっていた。

「あ~…わかったわ」
「…ラスピの面倒は私が見ておきます」
「ありがとうエアームド」
「僕は初めてでもないし…ゲームコーナーにでもいくかな…ユカはどうする?」
「私は特にやりたいことは…じゃあ、サンダースについていくわ」
「了解、それじゃあ夕方に萌えもんセンターに集合、でええな?」
「わかりました~」
「はーい!」
「それじゃあ、皆気をつけてね」





こうして歩いてみると、タマムシは『都会』といった感じの街だ。
カントーの最大都市はここから東にあるヤマブキシティではあるが…

「まぁ、神社とふもとの町に比べればどこもでっかいか…」

田舎町育ちにはカントーは都会でしかないのだ。

「~~♪」
「~~~~」

元気に飛び回るアンノーン達。
彼らも一応ボールに入れている。
ただし、1000人を一人ずつ入れていると大変なことになってしまうため、体躯の小ささを生かして40人単位でボールに入れている。
定期的にグループごとで出してやっているのだ。

「おーい、あんま無闇に飛び回るなよー」

人にでもぶつかったら…と言う前に―

どんっ

「うわっ!」

ベチャ

遅かったようだ。
見れば、ぶつかった少女の前の地面にはアイス…
それを見た少女の目にみるみる涙が溜まり―

「うあああああん!」

泣き始めてしまった…



今日はいつも一緒のおねーさまと離れて行動をしている。
すこし考えたいことがあったからだ。
それは『おねーさまの彼氏さん』の事…
私はおねーさま…ユカが大好きだ。
愛していると言ってもいい。
おねーさまも『好き』だとは言ってくれている。
だけど、それはあくまで『Like』であり、私が欲しい『Love』ではない。
所詮は同性相手の片思いなのだ。
そんなおねーさまが好きな人…大切な人。
私は否定するべきなのか、それとも祝福すべきなのだろうか。
というより、私はその人を全く知らない。
どんな人なのか、どういうところをおねーさまが好きになったのかも。
まずはそれを確認してからでも―

「うあああああん!」

私の思考はラスピの泣き声で現実に引き戻された。



「うぅ…えぐっ…」
「ごめん…俺が悪かった」

泣き続ける少女…
この事態はアンノーン達の管理不行き届きだった俺の責任だ。
お詫びに新しいアイスを買ってこよう…と思ったところで―

「ラスピ、どうしました~?」

どうやら少女の連れらしき人…いや、萌えもんのエアームドが少女―よく見ると彼女も萌えもん・ラスピアスだった―に話しかけた。

「アイス…ボクのアイスが…」
「アイス?…あぁ、そういうことですか~」
「すまなかった…」
「ん?おにーさんは誰ですか~?」
「まぁ、泣いてる原因かな…俺がコイツらをきちんと見てなかったせいでこの子にぶつかっちゃってね」
「~~~…(ぺこぺこ」

アンノーン達も反省しているようで、ラスピアスに謝っている。

「そうですか~…でも、ラスピも悪かったんじゃないですか?」
「え…?」
「普段のあなたなら余裕で避けられるはずですよ~?大方アイスに夢中で周りを見ていなかったんでしょう?あなたも一緒ですよ」
「え~!」
「すみませんでした…今回は此方も悪かったという事で…」
「じゃあアイスは…?」
「あなたも悪いんですから今日は諦めましょう~」
「ええええええ!」

エアームドは『二人とも悪い』で済ませるつもりのよう…どうやら、この事をラスピアスに『周りを良く見ること』を教えるために使う気のようだ。
どうしようか…と悩んでいたが、エアームドの動きを見て決めた。

「全く…仕方ないです―」
「いや、こっちが悪かったんだ お詫びに代わりのアイスを買ってくるよ」



「あの~…ごめんなさい、ラスピのワガママに…」

結局押し切られてしまい、おにーさんがラスピのアイスを買うこととなった。

「いや、いいさ
 君の考えも分かってたし、そのまま済ませるつもりだったなら口出しはしなかったんだけど…」
「だけど?」
「見えちゃったんだよ、君がポーチを探ってた―その中にあるであろうお財布を出そうとしたのを見てね」

…え?

「十分に反省させた後に代わりを買ってあげるつもりだったんだろ?」
「えーっと…はい、そうです…」

バレてましたか…



「はい、もう落とすなよ」
「わーい!ありがとう!」

買ってきたアイスに目を輝かせながらそう言うラスピ
本当に子供だ…
しかし、このおにーさんは優しい人だ。
それによく気もつく…
こんな人だったら…

―そうだ
ヒトが皆が皆悪い人というわけじゃない。
それに、おねーさまが選んだヒトだ。
…まずは会ってみてだ、それから考えればいい。
でも…どっちにしても、私は負けませんよ?

「・・・・・なぁ、エアームド」
「何ですか~?おにーさん」

また私は思考の海に沈んでいたが、おにーさんに呼び戻された。

「この流れで、物凄ーく悪いんだが…」

と言って視線をずらす。
その先には、アイスにパクつくラスピと―それをキラキラした目で見つめるアンノーン達がいた。

「あ~…成る程 コレはウチのラスピの責任ですね~…」
「出したままにしといた俺の責任でもあるんだがすまん…流石に全員分はキツいんだ」
「ふふ…わかりました」
「助かる…お前たち!二人で一個だからな、考えて選べよ!」
『~~~~~♪』





タマムシゲームコーナー、旧名をロケットゲームコーナー
名前のとおり、当時萌えもんマフィアのカントーの一大勢力だった『ロケット団』の経営するゲームコーナーであり、拠点でもあった場所だ。
だが、数年前にその勢力は消え去ることとなった。
ゲームコーナー地下アジトがトレーナーの襲撃を受け壊滅。 その後武装占拠したヤマブキのシルフカンパニーにて、
萌えもんレンジャーや有志のトレーナー達による反抗作戦の為に撤退を余儀なくされた。
同時にナナシマにあった拠点が謎の襲撃を受け壊滅、多くの人員と拠点を失ったロケット団は崩壊した。
ロケット団崩壊後、ゲームコーナーは売りに出され、そのオーナー権はとある会社に渡った。
…実はその会社、私と同じ研究所から逃亡したメンバー、ドンカラスによって設立されている。
逃走後、『ヒトの経済』に興味を持った彼は、研究所から持ち逃げした研究資産を使って会社を設立したのだ。
表向きは青年実業家として民生から軍事まで手広く商売をしているのが、裏では私たちの支援をしてくれていた。
殆どのメンバーは居なくなってしまったが、今でも他のメンバーと連絡を取り合って、支援を続けているそうだ。



ロケットゲームコーナーを手に入れた後、ドンカラスはゲームコーナーを大幅な改装を行った。
まず名前を『タマムシゲームコーナー』に改名。景品交換も当時は攫った萌えもんを売買していたが廃止。
萌えもんは相手との交渉権利券となり、減った商品には代わりに他地方などの珍しい品物を揃えた。
ついでとばかりに以前はロケット団の拠点として利用されていた地下を一部開放、1階のスロットよりも大人向けのルーレットやカードで遊べるスペースを作った。
そんなゲームコーナー、地下に備え付けられたバーカウンターにて、私はドンカラスと会っていた。

「久しぶりだね…今は何と?」
「今は唯のトレーナーの手持ちです、『ムウマージ』で構いません」
「そうか…まぁ、元気そうで良かったよ」
「貴方も相変わらずなようで…」

久しぶりにあったが、相変わらず稼いでいるようだ。
地下スペースの増設により新たな客層までゲットしたようである。
…まぁ、お酒が飲めるスペースが増えるのは喜ばしいことだ。

「…キミも相変わらずみたいだね…確認しておくけど、それ、何だっけ?」
「コアントロー、ストレートなので度数は40度はありますね」
「好きだね…キミも…そういえば研究室の整理中に大量のリキュールが見つかったって報告書にあったような…」
「…ちゃんとソレも含めて用意してくれましたよね?」
「それは問題ないよ…持ってきてくれ」
「はい」

そう言って、彼が指示を出すと、職員が大きなトラベルバックを持ってきた。

「キミの研究室にあったすべての私物を圧縮ケースに入れておいたよ」
「ありがとうございます」

実はドンカラスに、私が使用し、シオンの一件以降ほったらかしになっていた研究室の全ての機材を纏めて持ってきてほしい、と頼んでいたのだ。
私は人間ベースで萌えもんとして作られた影響か、萌えもんの技の適正が低かった。
それに気づいた後は色々試行錯誤を行った結果、ウィッチクラウトのようなオカルトの適正が高いことがわかったのだ。
しかし、研究室に篭ってフラスコを見つめるムウマージ…事実ではあるが『魔女』じみて見えただろう。
ちゃんと薬品に混ざって用意していたリキュール類(休憩のお供)も含めてくれたようで、うれしい限りだ。

「これで、私も戦闘に参加できます…」
「…随分と協力的じゃないか?」
「命を助けてもらった恩義があります…それに答えないのは主義に反しますので」
「わかったよ」

「社長、すこしよろしいですか?」
「どうした?…あぁ、彼女は問題ない」
「はっ…実は…」



タマムシゲームコーナー、旧名・ロケットゲームコーナー
改名後、色々後ろ暗いこともなくなったようだ。

「でもまぁ…これくらいはしないとダメかな?」

スロットゲームにて、微妙な仕掛けが発生している。
コインケースのコイン総数が10000枚を越えたあたりから、スロットの停止にランダムでズレが発生するようになっているらしい。
完全にドラムの動きを目で追えているボクだと判明してしまうが、普通の人ならまずわからない仕掛けだ。
仕掛けの解除は8000枚を下回ったとき、交換景品の上限が9999枚であり、ソレを考慮した上限設定なのだろう。
だけど―

「やった!また当たり!」

…完全に運で押して当てている場合には一切役に立たないのだ。
しかし、『運がいい』とは聞いていたがまさかここまでとは…
総枚数も50000枚に届きそうだ…どうするつもりなんだろう。



…気がついたとき、コインケースがパンク寸前でした。
調子に乗ってやっていたら当たりが連発、気がついたらコイン数50000枚近く…どうしよう、コレ

「・・・・・ねぇ、サンダース…」
「取り敢えず、もうやめにしておかない? さっきから視線が痛いし…」

さっきから店員さんの目が怖い…
とにかく、この場を離れることとした。



―集めたコインは景品と交換できます―

普通は、手持ち枚数から悩みつつ選ぶものだ。
しかし―

「…余ったわね」

そう言ってため息をつくユカ
アホな枚数を稼いでしまったため消費しきれなくなってしまっていた。
現在枚数は24000枚、初めにあった約50000枚の半分以上は必要な景品と交換して消費した。
そして、やはりというか、ここでも職員さんのなんともいえない視線が…
と、そこへ―

「いらっしゃいませ、タマムシゲームコーナーへ」

他の職員より少し年配の職員が出てきた、恐らく責任者クラスの人間だろう。

「申し訳ありません、何分スロットでそれほどまでの枚数を出される方がいらっしゃるとは思いませんでした…」

そういいつつ、責任者らしき職員はリストをユカに渡した。
それは、9999枚以上の商品を含め大幅に増やされている交換リストだった。
そういえば、ゲームコーナーが新装運営される際、地下スペースがカジノ風になったと聞いた。
恐らく、予期しない大量コインに、慌てて地下用の交換リストを持ってきたのだろう。

「えーっと…レインボーパス・7000枚、すごいつりざお・5500枚、イーブイ交渉権・16000枚
 …あ、コレ丁度24000枚だ…って、エンテイ・スイクン・ライコウ交渉権?希少種じゃない…」
「えぇ、カントーに少数生息している方々で、人間についていってもいいとおっしゃってくれた方との交渉権利となっております」
「うーん…あんまり手持ちを増やす気ないんだけどな…あ…コレも丁度だけど…」
「どうしたの?」

ボクもリストを覗き込んでみる、と、コレは―

「自転車・ペアセット…?」

自転車、それも2個セットだった。
しかも何故か単品がリストにない…謎だ…

「コレだと丁度使いきれるんだけど…」
「うーん…あ、そうだ」
「何?」
「丁度良いんじゃないの?一個は自分で使って、もう一個は件の『兄さん』に…」
「な、何言ってるの!?」
「まぁ、そうでなくても予備として使えばいいんじゃないかな?どうせ圧縮ケースでかさばらないし。
 それに、使い切ってしまった方がボク達としても、職員さんとしても良い事なんじゃないかな」
「う…」

流石に自分がやらかしたことも含め考えている…他の事も考えているようで時折顔が赤くなっている。
暫く悩んだ結果、ユカは自転車ペアセットと交換をした。



「ふぅん…『スロットで大当てされた』と聞いて来てみたけど…まだ若いね」
「イカサマ、といった風には見えません…よほどの強運の持ち主のようですね」
「運も才能のうち…彼女は今後どんな道を歩むのかな…まぁ、ギャンブラーは簡便願いたいけど」
「ですね…」





「えーっと…きずぐすりに状態治療薬、あとは…携帯食料に缶詰…みんなの分はこんなところやね…」

カントー最大の品揃えを誇るタマムシデパート
トレーナー用の薬はもちろん、保存食やさまざまな日用品も置かれている。
そこにて、自分ことマニューラは買い物をしている。

「あとは…最近新しい髪留めとイヤーカフスが欲しいと思ってたんやけど…」

おしゃれすること、自分を磨き、飾ることは女性として生まれたからにはやらなければならない事。
そう師からも教えられ、自分でもそう思っている。

(…エアは自分の長い髪の手入れや肌の手入れは欠かしてへんけど…ラスピは伸ばし放題、お手入れ皆無やからなぁ…)

そのうち本気で手を入れないといけないだろう。
かく言う自分も、普段着ている服は師が選んでくれたものなので着替えていないが、
髪に付ける髪留めと、耳を飾るイヤーカフスは買い揃えるようにしている。
取り敢えず、どんなものがあるか見てみるとしよう…



「人参にじゃが芋…あ、玉葱が安い。あとは…あ、無糖チョコがある!
 流石タマムシデパートね…あとは…」
『あの…なんのかいものなんでしょうか?』
「見て分からない?カレーの食材なんだけど…あとはマゴの実とマトマの実かな…」
『きのみをいれるんですか?』
「うん、隠し味でちょっとね」

タマムシデパート・地下食品売り場、昔は無かったそうだが他の地方のデパートで開店しそれに対抗して作ったそうな。
商品の品揃えにも気合が入っており、国内はもちろん海外の食品、地方原産の木の実なども売っている。
そんな場所で、私ことホウオウは食材の買出しをしている。
ちなみに上のフロアにも食品は売ってはいるが、それは保存食。
やや味気ないそれらは私は好きになれず、料理も出来る為自炊をするようにしている。

「うん…大体食材の買い物はコレくらいで良いかな」
『あの…』
「何?」
『おくすりとか、そういったものはいいんですか?』
「薬?病気用の薬は常備してるし、ケガなら私が治すからいいの」

わたしは腐っても神社の祭り神、戦う力はないけど他者を癒す力を持っている。
流石に病気を祓いきることは出来ないけれど、ケガなら例え内臓がはみ出していようと治すことができる。

「んで、買い物が終わったんだけど…」

そう言いつつ、私は同行者であるユレイドルを見る。
・・・・・最近、私たちの空気と食事が余程合ったのか、すさまじい成長をしている…主に胸が。
まぁ、それは兎も角…

「ほいっと」
「!?」

何の確認もなくいきなりユレイドルの前髪をかき上げる。
普段は見えない琥珀色の瞳を見つめているうちに、段々ユレイドルの顔が赤くなっていく。
そして限界に達したのかやや強引に手を払った。

『なにするんですか!?』
「・・・そこなのよ」
『はい?』
「その人見知りよ、恥ずかしがりのその性格は直した方が良いと思うの」

元々のマスターに虐待を受けていた彼女。
その為か、極度に内向的で恥ずかしがりになってしまっている。
流石にそれはマズい、少しずつでも直して行かなければ…

「取り敢えず、今のところは会話は構わないわ、その部分は一番大変だろうし。
 まずは…その前髪からね」
『やっぱりいけませんか?』
「長すぎるわね…自分の視界も悪くなってるんじゃないかしら?」
『はい…』
「まぁ、今すぐに切れとは言わないけど、せめてヘアピンで上げてみたら、と思うんだけど。
 そうだ、そのついでに新しい服も用意してあげる」

そんな流れで、ユレイドルのヘアピンと服を買うことになった。



「うーん…結構品揃えが…悩むなぁ…」

現在、装飾・服飾コーナーにて。
まず最初はヘアピン、これは決まった。
流れ星の飾りのついたヘアピンを2つ、現在既に購入し、ユレイドルを飾っている。
視界が開けたと同時に恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしている姿が愛らしい。
問題は服である。
私も気を使ってはいるが、主に和服中心、洋服が似合いそうなユレイドルの服を選ぶのが大変になっている。
どうしよう…そう考えていたとき―

「まさか此処で会うなんて思いもしませんでしたわ」

―ムニュ―

「ひゃあああああ!?」

背後から思いっきり胸を鷲づかみにされた。



「いや~…久方ぶりでしたんで、頭よりも先に本能がつい…」
「で、何か言いたいことは?」
「旅をしている間に5センチも大きくな」
「ユレイドル、拘束率アップ」
「ぐあああああ!?ギブ!ギブ!」

久しぶりの再会がこんな(ユレイドルに拘束された)形になるとは…
先にユカと一緒に旅をしていたニューラ…現在はマニューラと会った。

「まぁ、貴女のセクハラは治らなかった病気だから、今更どうこう言うつもりもないけど…
 気配を消して近寄るのはやめてね。心臓に悪いわ」

そういって、拘束は解除させる。

「しかし、何故此処に?確か和服以外は余り好みやなかったはずでしたよね?」
「まぁね。今回は私じゃなくて、この子の服を買いに来たのよ」
「へぇ…」

そういって、マニューラはユレイドルを見る。
まずは全体、そこから各部、その後瞳を見つめた後―

「ほいっと」
「っ!?」

呼吸をするように胸をつかむ。
流石のユレイドルも喉の奥から声が漏れた。
しばし感触を堪能した後、開放。
ユレイドルは涙目だった。

「…結構大きめ、でも反応から見て露出を好む感じのコやない、そうですね?」
「えぇ、そう」

何だかんだ言いつつ、おしゃれなどに関しては彼女は頼れる。流石だ。

「うーん…そうすると…ちょっと待っててくれます?」

そう言って、彼女は服を選びに言った。
…そして数分後、彼女は服を手に戻ってきた。

「今着てる服も参考に選んでみたんやけど、どうです?」
「へぇ…かわいいわね」

持ってきたのは、腰の後ろ部分に赤いリボンのついた薄緑の袖長のワンピース、
その色に合わせたリボン付きのケープ
そのチョイスは流石だ。

『それ…』
「貴女の服よ?」
『やっぱり…ですか』

照れとある種の諦めの表情をするユレイドル
前髪上げのお陰で表情が読めるようになっている。

「悪いもんんやないと思うんやけど…」
『ですが…』
「あくまで恥ずかしい、って言うんなら…ウチが着替えさせてあげてもええんやけど」

そこ、手をワキワキさせないで、怖いしユレイドルが怯えてるから。





エアームド達と別れ、アンノーン達を一頻り相手にしていたら夕方になっていた。
姉さんにはユレイドルも付いているけど…やはり心配ではある。

「お、いたいた…」

丁度デパートから出てくる姉さんを見つけ、声を掛けようとする。

「おーい!姉さー…ん…?」

隣にどこか見覚えの有る別の女性が居ることに気づいた。
向こうもこちらに気づいたようだ、近づいてくる。

「ホウオウ様がいらっしゃったから、まぁおるとは思っとったよ…久しぶりやね、リン」
「えーっと…ニューラ…かな?」
「正解…一応今はマニューラに進化しとるんやけどね」

やはり、ユカと一緒に旅に出ていたニューラ―現在はマニューラ―だ。
偶然彼女も此処に来ていた様子だ。

「中で偶然会って、ちょっと協力してもらったのよ」
「協力?」
「まぁね…ほら、ちゃんと出てきなさい」

そう言われて出てきたのは一人の少女。
長めの前髪を流れ星の飾りのついたヘアピンで持ち上げ、琥珀色の瞳が覗いている。
薄緑のワンピースとケープに赤のリボンのアクセントが良く映える。
…服装は変わっているが、見覚えがある顔つき―

「ユレイドル…?」
「正解! どう?服を新しくしてみたの」
「うん、前よりもすっと可愛くなったな」
「うわぁ、口説き文句や…」
「うっさい」
『ありがとうございます…』

かなり恥ずかしいのか、ホワイトボードで顔を隠し、文字も小さめだ。

「でも、良かったのか? 確か萌えもんの服って特殊だったんじゃ」
「そうよ、普通の服じゃ『かえんほうしゃ』や『はっぱカッター』などの攻撃に耐え切れない」
「一応特殊な処理が必要になるんや…まぁ、これだけ大きな街やし、あると思うんやけど…」

「問題ありません、処理は私が出来ます」

その声は、俺達の上から聞こえた。
視線を上げると、そこには杖に跨り空に浮かんでいるムウマージが居た。

「遅くなりました…」
「え…それは…?」
「コレを含む装備一式を知り合いに持ってきてもらうように頼んでいたんです」
「…そ、そうか」

完全魔女にしか見えない彼女に言葉が出ない…

「話を戻しますが、彼女の服の処理、私が出来ます。
 正規の方法とはやや異なりますが、効果は変わりません」
「へぇ…それじゃあ、お願いできるかしら」
「分かりました」



商品の引き換えを終え、萌えもんセンターに来る頃には夕方になっていた。

「~♪」
「随分機嫌が良いわね…」
「おねーさまのプレゼントですからー」

交換したアイテムは分配して、ラスピアスには『メトロノーム』を、
サンダースには『ピントレンズ』を、エアームドには『メタルコート』をあげた。
だが、その前からエアームドは機嫌が良いように見えたのだが…何かあったらしい。

「お、もう皆そろってるんか…遅れてしもうた…」
「お帰り、マニューラ ハイ、これ」
「何やろう…お、『せんせいのツメ』やん、どないしたん?」
「スロットをやってたら大当てしちゃって…」
「…成る程」

そう言って『せんせいのツメ』を受け取ったマニューラ
…何故かニヤニヤしている。

「…何よ?」
「いや、ちょっと懐かしい顔にあったもんでね…」
「懐かしい顔?」
「・・・・・頃合やな…出てきてええでー」

その声に答えて出てきたのは―

「や、ユカ 久しぶりね」
「姉さん!?」

ホウオウ姉さんだった。

「タマムシに来てたんですね…」
「まぁね」


・・・・・待てよ?
姉さんが居ると言うことは…まさか…?

「…久しぶり、暫く見ないうちに逞しくなった…っていうのは失礼かもな」

その声…見覚えのある姿―
暫くぶりだったが間違えるはずも無い…

「兄さん…久しぶり…だね」

兄さんだった



別々の旅をしていた二人は

「あー、さっきのお兄ちゃんだー!」
「…(あの時のおにーさんがおねーさまの…)」

二人と、その仲間達とともに、想いを生みながら

「ふふ…ユカ、顔真っ赤やで」
「会わない間に悪化してない…?」
「へぇ…」

今日この日、出会った。




遅すぎますがな、自分。
待ってないとは思いますが、合流編、ということで…

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最終更新:2009年12月17日 19:48
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