「たぁぁすけてぇぇぇ」
「……」
アイが非常に冷ややかな目で俺を見る。
「アイ。見てるなら助け……あぁぁぁ……」
ア「頑張れ、ご主人」
見捨てられた。
ア「冬だというのに元気ですね」
サ「それ氷属性の貴女が言う言葉?」
一応グレイシアでしょ?とサラさんは付け加える。
それもそうですね、と私は返してテレビを見始める。
ア「それならサラさんが助ければよかったのでは?影から見てたでしょう?」
そうなのだ。
引きずられていくご主人を彼女は影から見ていたのだ。
サ「いえ、貴女が助け舟を出したら仕留めようと」
……聞かなければよかった。
ア「ほんと一途というか、独占欲が強いというか……」
サ「愛すべき人を独占したいというのは当然じゃなくて?それはあの子達だって同じ。
貴方だって同じでしょう?」
思わぬ言葉に私は体を一瞬こわばらせた。
彼女を見ると楽しそうにクスクスと笑っていた。
ア「……どうしてその能力が嫌われるのかよく分かりました」
サ「あら酷い」
酷いとは思ってない様だった。
本当にこの人は掴みどころが無い。
ご主人も「エーフィの時からそうだった」と言っていた程だし。
サ「だからこそ、私はあの人を好きになったのかも知れないわね」
ア「……」
そう言うサラさんの微笑みを前に、私は何も言う事が出来なかった。
その言葉に、何故かご主人と彼女との間に強い繋がりがあるように感じたから。
サ「少しくらい素直になったら?その"氷"を溶かして触ってもらえるように努力してみたら?」
微笑んだまま私にそういった。
ア「……理解、出来ません」
サ「?」
ア「何で……何で、こんな事が出来るんですか?取られないっていう自身があるから?
それとも私には出来ないという確信があるから!?
私なんかが選ばれないって分かってるからですか!?」
私は、この人を前に叫んでいた。
溜まったものを吐き出すように。
我慢が出来なかった。辛かった。
彼女は目を閉じて真面目な顔で呟くように言った。
サ「……その"言葉が"聞きたかったのよ。アイ」
ア「……!」
彼女は目を開けて今度はまっすぐと私を見つめた。
それこそ、全てを見透かされるような感覚に陥るほど。
サ「辛い時はいつも溜め込んで一人で泣いて。自分では不相応だと思い込んで冷たくして……
誰がそんなこと決めたの?誰がそんな事望んだの?誰が貴方にそれを押し付けたの?誰が……誰が貴方を見捨てたの?」
そこで、やっと私は分かった。
どうして、こんなことするのか。
どうして、こうして微笑んでいられるのか。
サ「私はね、あの人のことが大好きよ。でも、仮に私だけを愛するようになったら、きっとそれは私の望んだ形ではない。
私の愛した男性(ひと)では無いのよ」
そう言うと、また小さく微笑んだ。
サ「皆から愛されている彼が、私は大好き。それなのに彼を想う娘が泣いているなんて許せない。
これは私だけじゃなくて彼も同じ。だからあの人は大事な事を貴方に頼んだりしてるんじゃない」
彼女はきっとご主人と同じようにみんなを愛しているから。
きっと何が幸せで何が幸せでないかが分かっているから。
サ「自信を持ちなさい。ここに居ていいのだと。愛されていいのだと。
貴方はここの大切な一員なんだから」
きっと、それを理解しているから彼女は微笑んでいられるんだ。
自分が愛されている事も。ここに居ていいという事も。そばに居られるという幸せも。
ア「……普通なら、きっと泣いている私を貴女が抱きしめるような構図になるんでしょうね」
そう言って目じりに浮かんだ少しの涙を拭きながら笑みを返すと、彼女はいつもの調子で
サ「そうね。でもその役はあの人に譲るとするわ」
と言った。 ……その構図はどうしたら出来るのか分からなかったけど。
サ「まぁ、その前に」
ふと彼女が呟くように言った。
サ「お風呂とタオル。着替えも用意しないとね」
ア「え?」
サ「リーちゃんとブイがあの人を海に落としたみたいねぇ」
ア「えぇぇぇぇぇ!?」
……きっと、私が言った構図が起きる日は無いんだろうなぁ。
後書き的なもの
『名前の由来』
サラは前にもやったので省略。
アイは想像通り グレイシア=氷=Ice=アイス=アイ です。
『話進んでなくね?』
あくまでSS(Short Story)を目指した書き方を心がけてるからでしょうねぇ・・・
途中から読んでも分かるように という感じです。
説明っぽくなってる会話とか結構見られます。駄目だこりゃ。
他の萌えもん達出すとどうしても他の話が湧き出てしまうので、短編でまとめられるブイsを先に出しただけです。
過去話とか色々展開起こすには他の娘達がメイン(サラとかは別だろうけど)になると思います。
『今後出る予定であろう萌えもん達』
ハクリュー カイリュー ゲンガー メガニウム(一回出演済み) クロバット 位でしょうか。
『まったく関係ないけど』
自分の中で最も好きな萌えもんはメガニウムです。次にムウマージ。
絶対にこれだけは譲らねぇ。
『意味不明な台詞』
「学者になったとは聞いたが……さて何処に居るのやら。
トキワの一件も詳しく聞いてなかったから色々と面倒だな……ああ、分かっている。分かっている。
アレは我々は関与できなかったのだから愚痴を言っても仕方あるまい、そう言いたいんだろう?
分かっていると何回言えばいいんだ私は。 ここか?あぁここだな。さて現マスターランクチャンピオンは何しているんだか」
最終更新:2009年12月17日 19:50