5スレ>>828


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「ねえ、トウマ?」
「なんだ?」
 周辺の警戒をしながらサヤに返事をする。
「確かあんた言ったわよね? ほんとに悪霊だったら祈祷師の人に任せるって」
「ああ。確かにそう言ったな」
 ……とりあえず異常はないけど、油断はできないな。
 昨日みたいに気づいたらいましたってんじゃ洒落にならないし。
 社のほうを確認すると、祈祷師さん達があれこれと作業をしているのが確認できた。
 よし、こっちもOKっと。
「だったらさ……」
「ん?」
「……何で私たちはこんなことしてるの?」
「えーっと……」

 話は今日の昼前くらいにまで遡る。

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 タワーに行った翌日、俺とミルト、ファルは当初の予定通り祈祷師の組合のようなところを訪れた。
 目的はもちろん悪霊(暫定)のことだ。
 ちなみにサヤは疲れたと言ってセンターで待機。もちろんルーメも一緒だ。
 この町の祈祷師の長(おさ)だというおばあさんに昨日のことを洗いざらい話すと、
 長さんは俺たちの行動をたしなめた後、悪霊(暫定)が本物の悪霊であることを教えてくれた。
「やっぱり本物だったんだ……」
「こっちの攻撃は効かなかったもんねー」
 少し恐怖の混じったミルトのつぶやきにファルが応える。
 実際に遭遇したというのに、ファルには恐怖の色は欠片もない。
 ほんと、大した神経だよ。
「そうだな。どうやら俺たちには完全に手出しできない分野みたいだ。
 ……長さん、ありがとうございました。俺たちはそろそろお暇しようと思います」
 長に向かって頭を下げる。
「……お主ら、もえもん図鑑とやらのデータを集めておるのじゃったな?」
「え? ええ、そうですけど」
 突然の問いかけに戸惑いながら返事をする。
「悪霊の存在はデータ集めに邪魔じゃろう?」
「まあ……昨日みたいなことが続くと流石に困りますね」
「そうじゃろうそうじゃろう」
「えっと……それがどうかしたのですか?」
 次の言葉を半ば予想しながら、先を促す。
「いや、大したことではないのじゃがな。お主ら、ちとわしらに力を貸してくれんかの?
 お主らが5階で見た社。あれを修繕して悪霊めを再度封じるのじゃ」

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「……という経緯だけど。これ、昼に話したよな?」
「それはわかってるわよ!
 私が言いたいのは、なんであたしに相談もなく引き受けたのかってこと!」
「ごめん。かなり真剣に頼まれたから、断りにくくてさ。
 ……昼にも言ったけど、嫌なら無理にやらなくてもいいぞ?
 引き受けたのは俺なんだし」
 サヤの剣幕に押されつつ、妥協案を示す。
 するとサヤはさらに顔を赤くし、
「それこそできるわけないでしょ!
 あんた、これからなにやるかわかってんの? 1人じゃ無理に決まってるじゃない!」
「……そうだな。サヤが協力してくれないと無理だよな。
 何度も変なこと言ってごめん。それと、ありがとう」
「……ふん。わかればいいのよ、わかれば」
 そう言ってそっぽを向くサヤ。
 顔が赤いところをみるとまだ怒りは収まっていないようだが、とりあえず許してもらえたみたいだ。
 そのことに胸をなでおろしつつ周辺の警戒を再開しようとした、まさにその時。
「無駄無駄。その女の協力があったところでお前らじゃ相手にならねぇよ」
「なっ!?」
 いつからそこにいたのだろうか。
 声のしたほうを向くと、墓石に腰かけたゲンガーが小馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。
「あんたは昨日の……。まったく、おどかさないでよね」
「昨日は助かったよ。ありがとう」
「礼なんていらねぇよ。それより、てめぇら昨日のこともう忘れたのかよ。
 さっきから見てりゃあの悪霊をどうにかしようって魂胆らしいが、
 てめぇらごときが敵う相手だと思ってんのか?」
「それは……」
 返す言葉に詰まる。
 ゲンガーの言うことはもっともだ。
 長さんの話によると、悪霊を封印するためにはどうしてもある程度の時間がかかるらしい。
 時間にしておよそ5分。
 その5分間悪霊から長さんを含む祈祷師全員を守ればいいのだが、
 昨日のことを考えればそれがどれだけ難しいことかはわかりきっている。
「……確かに分が悪い相手だけど、別に倒そうってわけじゃない。
 祈祷師の長さんから対策も預かってるから、時間稼ぎくらいは……」
「だから、人間ごときの小細工じゃどうにもならねぇっての」
 ゲンガーの表情に呆れの成分が追加される。
「まあそこまで言うならやってみればいいさ。……ちょうどおいでなすったみたいだしな」
 視線だけでゲンガーが示した先では、黒い影が形を作りつつあった。
 おそらく、いや、間違いなく悪霊だ。
 いきなり襲いかかってくる様子がないのは警戒しているのか、それとも余裕の表れなのか。
 いずれにせよありがたい。
 昨日のように不意打ちをされていれば時間稼ぎどころの話ではなくなるのだから。
「ミルト、ファル、行くぞ。サヤ、手筈通りに頼む」
「はいっ」
「は~い」
「あんたこそヘマしないでよね」
「ま、がんばれや」
 俺の言葉に応じて、ゲンガーを除く全員が動き出す。
 せっかく先制のチャンスを与えてくれているのだ、逃す手はない。
 ファルとサヤ、ルーメが悪霊の正面に構え、俺とミルトが悪霊を挟むように左右に展開する。
 まずはこちらの『対策』が有効かを確かめなければ。
「それ~~っ!」
 俺とミルトが悪霊とファルを結ぶ直線上から離れた瞬間、ファルが『ねんりき』を放つ。
 昨日はほとんど素通りした『ねんりき』だが、
「ちょっとだけど、手ごたえあるよ~」
 ファルのうれしそうな声が響く。
 その手にあるのは『まがったスプーン』。エスパータイプの技を強化するアイテムだ。
 昨日の状況から威力を強化すればあるいは、と思っていたが、大当たりだ。
 『対策』の1つは効果あり、か。なら次は――
「ミルトっ!」
「はいっ!」
 2人同時にもう1つの『対策』を、シオンの祈祷師特性のお札を投げつける。
 カード投げの要領で投げられたお札は回転しながら飛んでいき、
 
 バリバリッ

 悪霊に近づいた途端、電撃のようなものとなって襲いかかった。
 ……原理はわからんが、すごいなこれ。
 悪霊は腕でガード。
 大したダメージにはなっていないようだが、当たっただけでなく、ガードまでさせた。
 『対策』の効果はありといっていいだろう。
「長さん、『対策』は効果ありです! 封印を開始してください!」
「わかった。しばらくの間、頼んだぞ!」
 言うが早いか長さんは他の祈祷師さん達と一緒に社に向き直り、何やら唱え始める。
 するとその声に応じるかのように社が小さく輝き始めた。
 どうやら封印が始まったらしい。
「さて、後は俺たちのがんばり次第、か」
 封印が完成するまで、残り約5分。
 ちらりと時計に目を走らせてから、俺は悪霊へとお札を投げつけた。

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「ファル、正面突破は許すな! ミルトは背後へ!」
「ルーメ、直撃は狙わなくていいわ。やつに休む暇を与えないようにしなさい!」
 俺とサヤの指示が飛び、もえもん達がそれに応える。
 戦闘開始からおよそ2分。俺たちはなんとか悪霊の侵攻を阻止していた。
 しかし、それもそろそろ限界だろう。『対策』の弾切れが近いのだ。
 俺たちが投げつけているお札はもちろん、ファルの『ねんりき』だって限界がある。
 このままのペースで消費していったとすると、後1分程度が限界だろう。
 予想より消費が早いが、
「どうにかおびき出せた、かな。皆! 仕掛けるぞ!」
 俺の合図で全員が攻撃パターンを変える。
 俺とファル、サヤが真正面から積極的に攻撃を仕掛け、
 ミルトとルーメが死角から攻撃する。
 悪霊は急に勢いを増した攻撃に驚いたのか、咄嗟に攻撃の薄い方向へ、
 ――意図的に用意した包囲網の穴へと移動する。
「かかった!」
 サヤの声と同時に、悪霊の周囲に光の柱がいくつも立つ。
 あらかじめ設置しておいたお札によるトラップが作動したのだ。
 光の柱は瞬く間にその数を増して壁となり、悪霊を包囲していく。
 悪霊は逃げ道を探すように周囲を見るが、もう遅い。
 その視線が360度を見渡すよりも先に、悪霊は光の柱の内側に閉じ込められていた。
「とりあえず、なんとかなったみたいですね」
 光の柱を眺めながらミルトがつぶやく。
 この光の柱は社に使われていた封印を応用したもので、かなり強力な防護壁らしい。
 いくら悪霊といえども、簡単に破れはしないそうだ。
「油断はできないけどな。このまま封印の完成まで時間を稼げれば……」
 社のほうを見る。今のところ、戦闘の余波などによる影響はなさそうだ。
 それを確認した瞬間、社が纏う輝きが強くなる。
 おそらくは封印が進みつつあるのだろう。
 しかし、俺たちにそれを喜んでいる余裕はなかった。
『おぉぉぉぉぉぉぉ!』
 地獄の底から響いてくるような、怒りの咆哮。
 音源を見れば、今まで声らしい声を上げなかった悪霊が吠えていた。
 突然のことに驚く俺達の眼の前で、事態は進む。
 ピシッという音とともに、悪霊を囲む光の柱にひびが入り始めたのだ。
「そんな……」
 ミルトの愕然とした声が響く。
 その間にもひびは加速度的に広がり続け、
『ぉぉぉぉぉおおおおおおおっ!』
 悪霊がひときわ大きく吠えるとともに、柱が粉々に砕け散った。
 そして柱を砕いた悪霊の力は、そのまま俺たちへと襲いかかってくる。
「くっ!」
 咄嗟に腕で顔を覆うが、気休めにもならなかった。
 俺の体は軽々と飛ばされ、墓石にぶつかってようやく止まる。
 全身に走る痛みをこらえて顔を上げれば、悪霊がゆっくりと歩き出すところだった。
 柱を破るのために消耗したのかその動きはどこか緩慢だが、まだ余力はありそうだ。
 少なくとも、封印を妨害するには十分だろう。
 そうなれば皆が危ない。
「ぐ……あ……」
 どうにか起き上がろうとするが、全身の痛みがそれを阻害する。
 墓石に手をついてどうにか立ち上がった時、
「おまえ、なんでここまでやるんだ?」
 言葉とともに、俺の横にゲンガーが現れた。
「お前はこの町の人間じゃない。あの悪霊とも無関係だ。
 とっとと逃げたって誰も文句はいわねぇ。なのになんでここまでやるんだ?」
「関係なくなんか……ないから」
「なんだと?」
「俺は……知ってしまった。悪霊の存在も……困ってる、人のことも……」
 訝しげに見降ろしてくるゲンガーの視線を受けながら、言葉を続ける。
「知らなければ、通り過ぎたかもしれないけど……。
 知ってしまった以上、見て見ぬふりなんてできるかよ……」
「……それが、お前がここにいる理由か?」
「そうだ」
 荒れる呼吸の中、意思をこめて言葉を紡ぐ。
 ゲンガーは俺の眼をしばらく見つめると、
「……ならこの町のために、もう少し傷つく覚悟はあるか?」
 何かを俺に投げてきた。
 受け止めた手の上にあったのは、少し古ぼけた指輪。
「教えてやるよ。なんで俺の攻撃があいつに当たったのか」
 指輪を眺める俺をよそに、ゲンガーの言葉は続く。
「俺はな、厳密にいえば萌えもんじゃねぇ。幽霊なんだよ」
「え……?」
「もっと言えば半分だけ幽霊の半端ものだけどな。
 半分とはいえ同じ幽霊だから、俺の攻撃はやつに当たる。
 お前が手ぇついてんのが、俺の墓だ」
 触っていた墓石を見る。
 比較的新しい墓石の表面に刻まれている名前は、
「ガイっていうのか? あんた」
「ああ。……さて、こっからが本題だ。その指輪をつけろ。
 そいつを使って、お前を俺の依り代にする」
「依り代?」
「ああ。今の俺はこの墓からあんまり離れられなくてな。
 そこでお前にとり憑いて、あの野郎を殴りに行こうってわけだ。……ただし」
 ゲンガー――ガイの目が細まる。
「一度お前にとり憑いたら滅多なことじゃ離れられない。
 そしてお前は俺が憑いてる限り、俺の活動に比例した量の生気を吸われ続ける。
 その覚悟があるか?」
 その目は俺を試しているようでいて、どこか心配そうな光を宿してもいた。
 俺はガイの目をまっすぐに見返し、
「上等だ。やってやろうじゃないか」
 右手の中指に指輪をはめた。
 途端、体から力が抜けていくような感じがする。
「ようし。行くぜ!」
 ガイが悪霊に突っ込んでいく。
 あっという間に距離を詰めたガイは、勢いを乗せたドロップキックを叩き込んだ。
 たまらず吹き飛ぶ悪霊。
 ガイはそれを追撃しようとするが、
「ちっ。さっさとこっちに来い!
 今度はお前から離れられないんだよ!」
「悪い。今行く!」
「早くしろ! 俺と距離があるほうが消耗もでかいぞ!」
 俺が近くまで行くと、ガイは再び悪霊へと突撃していく。
 その攻撃は確実に悪霊へとダメージを与えていくが、
「結構、きついな……」
 ガイが動くたびに、体から力が抜けていく。
 さっきまで悪霊相手に散々動きまわったのもあり、正直かなりきつい。
「……ちっ、根性無しが」
 小さくつぶやいたかと思うと、ガイが速度を落とす。
 悪霊はその隙に反撃に転じようとするが、
「よくもやってくれたじゃないの!」
「この~!」
 側面から飛来したお札と『ねんりき』により、動きを阻まれる。
「マスター、ご無事ですか?」
「なんとかな……。みんな! そのゲンガーは味方だ。協力してやってくれ」
 傍に来たミルトに支えられながら指示を出す。
「わかったわ!」
「は~い」
「了解しました!」
「くそ、お前さえしゃっきりしてれば、この程度……」
 返事はそれぞれだが、行動は1つだった。
 ガイが正面にたち、サヤとルーメが援護。ファルは悪霊の背後へと回りこむ。
 即席の連携は拙い部分もあったが、ぎりぎりのところで悪霊の侵攻を食い止めている。
 ここまでくれば後は根性比べだ。
 封印が完成するのが先か、悪霊に突破されるのが先か。
 数えきれないほどの攻防の後に、
「待たせたのう! よく凌いでくれた!」
 長さんの言葉とともに悪霊が光に包まれる。
 それが意味するのは、封印の完成。
『おおおぉぉぉぉぉぉ!』
 悪霊が吠えるが、光は破れるどころかますます強くなっていく。
『おおぉぉぉ!
 人間……復讐……まだ……足り……おおおおおあああああぁぁぁぁぁ!』
 それが悪霊の最後の言葉になった。
 悪霊を包む光は一際強く光ると、社へと吸い込まれていく。
 光が完全に社内部に入るのと同時、社の扉が勝手に閉まり、かんぬきがかかる。
 後に残ったのは、先ほどまでの戦闘が嘘のような静寂。
「終わった……の……?」
 サヤがぽつりとつぶやく。
 その一言で、凍りついた時間は再び動き出した。
 喜びをあらわにする者、疲れて床にへたり込む者。
 皆が思い思いの行動をとる中で、長さんが俺に近づいてきた。
「御苦労じゃったの。お主のおかげで悪霊を封じることができた」
「いえ。そんな……。あの、それより長さん……」
「わかっておる」
 俺の言葉を手で制す長さん。
「お主の聞きたいことはわかっておる。……明日またきておくれ。
 この話をするには、わしもお主らも疲れすぎておる」
「……わかりました」
 長さんの言葉に従って、もえもんタワーを後にする。
 センターに帰ってベッドに倒れこむまで、悪霊の最後の言葉が耳から離れなかった。

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「トウマ、そっちの準備はどう?」
「悪い。もう少しかかる」
 荷物をまとめながら答える。
 翌日の正午。まだ疲れの残る体で俺たちは出発の準備をしていた。
 正直もう少しゆっくりしていたかったのだが、そういうわけにもいかない。
 オーキド博士から連絡が来たのだ。
 データ収集に関する報告と図鑑のメンテナンスのためとのことだったが、
 博士の様子から察するに『暴走』関連で何か進展があったのだろう。
 博士のところに行かせたレーティのことも気になるし、
 できるだけ早く戻ってやらないといけないのだが……
「こーら、手が止まってるわよ?」
 俺の手元を覗き込みながらサヤが言う。
「……やっぱり、気にしてるの? 長さんの話」
「……ああ」
 先ほど長さんから聞いた話を思い出す。
 もえもんタワー。
 死者が眠る、在りし日の思い出を偲ぶ場所。
 あの社は、もともとは萌えもん達の魂を慰めるために建てられたのだそうだ。
 祈祷師達は社を介してたくさんの魂を慰めてきたが、祈祷師達とて人間。完璧ではなかった。
 恨みなど、負の感情を特に強く抱いている魂の一部を慰めきることができなかったのだ。
 慰められなかった魂達は長い年月をかけて少しずつ集まり、力をつけ、
 ――悪霊となって、人間達へと牙をむいた。
 当時の人達は悪霊の力に歯が立たず、悪霊を社に封じることでどうにか事態を収めた。
 もう、ずいぶんと昔のことになるそうだ。
「魂を慰めるための場所に、魂を封じるなんて皮肉な話だよな……」
「そうね。悪霊が生まれた原因だって、もとはといえば人間だし」
 サヤが背後の壁を――正確には壁の向こうにある自分たちの部屋を見る。
 ここからは見えないが、そこではミルトやファル、ルーメが荷造りをしている。
 そう。悪霊のもととなった魂達のほとんどは、人間により何らかの被害を受けている。
 虐待を受けたもの、捨てられたもの、そして……殺されたもの。
 そのことを考えれば、今回の件も――
「まだんなこと考えてやがるのか、てめえは」
 言葉とともに俺の影からガイが出てくる。
 俺を依り代にしたガイは、昨日の件以来俺の影に入っている。
「そんなことって……重要なことでしょ?」
「いいや、そんなことだね」
 サヤの言葉を否定し、ガイの言葉は続く。
「いいか? 確かにあの悪霊が生まれたのはお前ら人間のせいかもしれねぇ。
 実際ろくでもない人間がいるのも確かだ。
 でもな、それが誰かを傷つける理由になるのか?」
「それは……」
 言葉に詰まる。
「ならないだろ? お前らはこの町の人を助けた。
 そのために倒した相手がなんであれ、お前らのおかげで助かったってやつはたくさんいる。
 それでいいじゃねぇか」
「そう……なのかな」
「ああ。それでいいんだ。昔のことにとらわれすぎるな。
 もしどうしても気になるってんなら、
 これから先そんな萌えもんが少しでも減るように努力するんだな。
 それが、お前らにできる弔いってやつだろうさ」
「…………」
 サヤがぽかんとした顔でガイを見ている。
 多分俺も同じような顔をしているのだろう。
 出会ってからずっと口が悪かったガイが、こんなことを言うなんて……
「ちっ、あんま変なこと言わすんじゃねぇよ。じゃあな」
 俺の影に引っ込むガイ。
 その顔が少し赤いように見えたのは、俺の気のせいだろうか?
「おい、俺たちはもうすぐここを発つが、お前はどうするんだ?」
 影に向かって話しかける。
 ……傍から見れば変な人だな、これ
『今はお前から離れられないんだから、ついていくに決まってるだろうが』
 くぐもった声が返ってくる。
「口は悪いけど、あいつ案外いいやつね」
「そうだな」
 苦笑を返しつつ、荷物まとめを再開する。
 ガイの言うとおりだ。
 これまでの人間がやったことはもうどうにもできないが、
 これからの人間がやっていくことは良くしていけるし、しなければいけない。
 それができるかどうかが、俺達人間すべての課題なのだろう。
 そう思うと、荷物をまとめる手に自然と力が入る気がした。


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あとがき

 こんにちは、白です。
 今回は幽霊(後編)をお送りします。
 前編から中編までの間に比べるとずいぶん早く新作をお届けできたかなと思いますが、
 単に中編と後編の内容の整合性を取るために中編を出し渋っていただけでして……
 もっとコンスタントに出せるようにしたいなと思います、はい。

 さて今回は対悪霊の決着編。
 普通の攻撃が通用しない悪霊に対して、若干効果のあったエスパー技と霊能力的なお札で立ち向かいます。
 霊能力の類は出さないほうがいいかなとも思ったのですが、幽霊がいるならアリなんじゃないかと思い、
 対抗策として採用させていただきました。
 そして忘れちゃいけないのが半分幽霊、半分萌えもんのゲンガーことガイ君。
 本編じゃわかりにくいかもしれませんが、白は男の子のつもりで書いております。
 彼の加入と今回の悪霊事件で得た経験。これが今後どのように作用していくのか、期待していただければ嬉しいです。

 それともう一つ。
 本文中で「萌えもん」と「もえもん」という2種類の表記がありますが、
 前者は萌えもんそのものを指す場合、後者は前後に何かがくっついて単語になる場合(もえもんセンターなど)
 に使用しています。いえ、使用するつもりでした。
 ……はい、今までの作品を読み返していただければわかるとおり、バラバラです。
 今後は注意して書いていくので、どうかご容赦を。

 次回はマサラ帰省編。
 トウマは『暴走』の手掛かりを得られるのか? マサラでは何が起きるのか?
 久しぶりの登場となるレーティの活躍は如何に。
 そのあたりを楽しみにしていただければなと思います。

 では、次回の作品でお会いできることを祈りつつ、今回はこのあたりで筆を置かせていただきます。
 ご意見・ご感想・ご指摘等はいつでもお待ちしておりますので、どしどしお寄せください。

2009/12/22 白
ツールボックス

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