5スレ>>830


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平日の昼過ぎ、伝説とされる虹色萌えもん、ホウオウは主である少年と街へ出かけていた。
別段、何か特別な理由があってのことではない。今日の夕食の材料を買い揃える為の、ただの、買い物である。
にも関わらず。少年と一緒に玄関から出ようとしたその時から、ホウオウの心臓は鳴りっぱなしであった。
理由は至極簡単。時間を少し遡り、親友であるゴウカザルの、張本人にとっては何気ない一言が原因である。

「へぇ、今日もデート?」

最初は、なにを言っているんだ、少年と一緒に反論したが、その後になって初めてホウオウは気がついた。
買い物とは言え、若い(ホウオウの年齢は置いておいて)男女が二人きりで街に出て行く。これはほぼデートではないかと。
一緒に道を歩いたり。おやつにたこ焼きを買ってもらったり。他愛無い会話を交わしたり。笑ったり。怒ったり。
何を作るかを話したり時折は言い争いをするその様はまるで、というか、そのまま、恋人そのものではないか。
しかも今日に限ったことではなく。昨日も一昨日もその前の日も、当たり前のように二人で買い物に出掛けていた。
何故気づかなかったのか。羞恥に顔が真っ赤になって相対的に頭の中が真っ白になっていくのだが、
少年の方はといえば至って冷静で、ホウオウと違い立ち止まる事無く、玄関の扉を半開きにしたまま出て行った。

「ほら、行くぞ」

そんな声が聞こえた気がしたがホウオウは動けない。というか動かない。恥ずかしい。
機能を再起動させた脳内では無意味にも自分を責め立てる暴言や今までの買い物への言い訳が渦巻いている。
冷たい風が半分開いた外から流れ込んできて少し寒かったのだが、気にしない。それどころではない。
しかし考えている暇さえなくなった。後ろから肩を掴まれたかと思えば外に押し出されたからだ。
慌てて振り向けば、ニヤニヤと笑っているゴウカザルがいた。怒鳴り声を上げるより早くゴウカザルは笑みを浮かべる。

「じゃ、ごゆっくりー」

わざとらしい含みのある言い方をして、素早く扉を閉められた。これでは文句が届かないではないか。
混乱しながらも問い質してやろうとドアノブに手を掛けたが、そこへ後ろから声を掛けられる。
反射的に振り向けば、青年が少し先に立っていた。何をしているんだ、と言いたげな眼でホウオウを見ている。
不意に手に込めた力が抜けた。何故君は平然としていられるのか。訴えかけても少年は答えない。
暫くの間、沈黙が続いた。その暫くの後、仕方が無くなり、ホウオウは俯きながら少年の下へと歩いてゆく。

「気にすることでもないだろ」

歩き始めた少年が言ったが、ホウオウには聞こえない。聞こえることは多分無い。
何故ならば、今のホウオウの頭の中では自虐や言い訳やゴウカザルへの暴言が再び渦巻き始めているからだ。
半分自分を置いた状態で少年について行き、言葉を投げかければ「あぁ」「いいんじゃないか」と適当に返す。
それに少年が違和感を覚えたのは言うまでも無く、しかし何も言わず買い物を続ける。

そしてまた暫く経って、材料の買い物も終わって落ち着き始めたが、それでも緊張は解けず、現在に至る。
顔はまだ赤い。今も尚混乱する寸前の自分を必死に宥める。道行く人達からの視線が物凄く気になる。
緊張と錯覚の余り、まるで薄氷を踏むよう感覚に、平和な街中でホウオウただ一人が襲われていた。

「――――あれ、食うか?」
「ほぅぇい?!」

そんな中で突然に声を掛けられば、ホウオウは今までに出した事のない奇妙で大きな声で答えてしまう。
少年が眉を少し顰めながらも見ている。慌てて意識を前に戻してみると、屋台が見える。
屋台の形にも店主の顔にも見覚えがあった。ホウオウがとても気に入っているたこ焼き屋だからだ。
よくホウオウはそこのたこ焼きを買ってもらっていた。他の仲間には内緒にして二人だけで食べたこともある。
思えば、あれも。と思い出したところで頭の中で二度目の爆発が起こったのは言うまでもない。
少年は再び俯いて何やら呟き始めたホウオウを眺めながら、考えた末に、真正面に立って頭にチョップを喰らわせる。

「食うかって聞いてるんだが」
「いたっ?!」

割と力が篭っていたらしく、タイプ的にいえば効果はいまひとつなのに、悲鳴と共に顔を上げるホウオウ。
ちょっと涙目になり頭を抑えながら少年を見つめるが、呆れと冷たさが混ざった表情を返される。
続いて、ふぅ、と、やれやれとでも言いたげな溜め息を吐かれた。そんな少年に、僅かな怒りが湧く。

「なんだ。ゴウカザルが言った事をまだ気にしてるのか」
「気にしてない。気にしてない。気にしてない。決して、私は、気にしていないぞ」
「気にし過ぎだ。トレーナーが萌えもんが二人で買い物をするっていうのは、そんなに珍しいことじゃない」
「え?………そ、そうなのか?」
「ただの買い物に大勢連れても意味無いしな。効率を考えれば自然とそうなる」

ちょっと残念なような気がしてきたホウオウに少年は「というか」と返事を許さない鋭い声で続ける。

「本当にデートだったら俺だって洒落た格好をするし洒落た場所に行く。お前は疎いくせに敏感過ぎるんだよ」
「仕方ないじゃないか!それに少年!ならば何故、ただの買い物に毎日のように私を誘う!」
「仲間になった時に人間の生活を教えてくれって言ったのはお前だろう」
「………あ。た、確かに言ったが」
「それに、人間の事情は分かった。しかし買い物ぐらいは手伝わせてくれ、ともな」

完全に押し黙るホウオウ。話を戻す為に少年は人差し指を後ろに向け、たこ焼き屋を指差す。

「で?どうするんだ?たこ焼き。食うのか?」
「………あぁ、頂こう。小腹が空いているんだ」

了解、と呟いて少年と歩き始めて、ホウオウは吹っ切れたのか、それとも空腹だったのか、少し早足で屋台へと向かう。
当然ながらホウオウが先に到着してたこ焼きを一舟注文。遅れて少年がやって来たとほぼ同時に舟を渡される。
少年が小銭を何枚か渡し、ホウオウが舟を受け取り、その後で店主と短い挨拶を交わして屋台から離れる。
たこ焼きを片手に嬉しそうな伝説の虹色萌えもん。表情にこそ出してはいないが隣にいる少年は小さな鼻歌を聞いた。
あまり運動をしていないはずなのに何で太らないのだろうか。一瞬だけ思って、少年はなんとなく尋ねてみた。

「いつも思うことだが、それを買うと嬉しそうになるな。お前」
「当たり前だろう。このたこ焼きは本当に美味だ。この街の代表と言っても恥ずかしくないくらい」
「まぁ美味いのは確かだな。それでどうする?そこにベンチもあるし、今食うか?」
「いや、家に帰ってから食べる。遅れたなら遅れたで、ゴウカザルに何か言われそうだ」
「そうか」
「………?どうした、少年?」
「いや、なんでもない」

ほんの一瞬、寂しそうな表情をした少年に疑問符をぶつけるが、すぐに元に戻って首を振る。
違和感を覚えるホウオウであったが、すぐに気のせいだと切り捨てて、たこ焼きを夕食を楽しみに再び鼻歌を歌い弾ける。

嬉しそうにたこ焼きを食べるホウオウを眺めてたかったので今食べてもらいたかった、なんて死んでも言えない少年であった。




『逆転』 おまけで物語を無茶苦茶にする程度の狂気。
―――――数年後に、ありえたかもしれない未来のお話。




人の手が付いていない山道を踏みつけながらも一歩一歩着実に、私は前へ前へと進んでいく。
暑い。こんな時期に山登りなどするものじゃない。こんなに暑いのに登ろうとする奴は気が狂っているに違いない。
しかし止めようとは思わなかった。止めたら止めたで私の好奇心が悲鳴を上げて襲い掛かってくるからだ。
暖かい息を切らし冷ややかな汗を流しながら、私は少し休む事にして立ち止まり、思いきって溜めた息を吐く。
空では青色の中で忌々しい太陽が我が物顔で輝いている。堕ちてこないかな、と物騒な事を考えてみた。

「ふぅ~………よしっ」

何かを考えても今この暑さが引くわけでない。渋々諦めて私は辛い山登りを再開する事にした。
ざっ。ざっ。ざっ。ざっ。私自身の足音が五月蝿く感じ、意味など無いのだろうが仇でも想うかのように、足音を憎む。
凶暴な野生の萌えもんでも出てくれば、少しは肝が冷えてくれるのだろうが。残念だが出る気配が無い。
場所が場所な所為もあるが。この山の主には、もう少し登山者の事を考えてもらいたいものである。

「はぁ~」

二度目となる思いきった溜め息。溜め息を吐くと幸せが逃げる、と誰かから聞いた事があるが多分気の所為だろう。
むぅ。仕方ないとは言え私自身の足音が本当に忌々しい。何とかならないだろうか。何とかなった。
不意の事だが幸運にも私には足を止めて顔を顰め肝が冷えてくるシリアスシーンへと突入する権利を得たようだ。
ぶつけられる冷たい視線。蛇を前にした蛙のように、生存本能の警告。その他様々な刺激が心地良い。

「去れ。ここより先は、我が主が聖地」
「招かれざる客が立ち入る事は許されぬ場所」
「その命を無意味に散らせたくなければ、早々に引き返しなさい」

姿は見えないが、上から順に、エンテイ、ライコウ、スイクンであると、声の高低や大きさから勝手に推測してみる。
先に不意の事だと言ったがいつか来るだろうとは予想はしていた。しかしもう少し先だと思っていた。
まぁ、いい。遅いか早いかの違いだ。大きな誤算ではない。番人が現れた以上、正々堂々と押し通るだけだ。
笑みを浮かべてやると集まる視線も殺意にも似たものへと変わっていく。当然の反応だろうな。
私は腰のホルダーの六つのボールの内、三つを選び取って一つの手で掴む。さぁ、徹底抗戦と行こうじゃないか。

「フシギバナ、リザードン、カメックス。出番だ」

凶暴な野生の萌えもんも素足で逃げ出すだろう凶悪な萌えもん達の咆哮があがった。


流石は伝説と謳われる萌えもん達と言うべきか。ただ撃退するのに六体全員を総動員させる事になるとは。
だがお蔭で少し気が楽なった。ボールから聞こえる不満不平疲労の声を無視しながらも歩き続ける。
やはり、と言うべきか。目的地までかなり近づいていたらしい。目的地である小さな神社へと辿り着く事ができた。
建てられてから一年か二年くらいだろう、推測に過ぎないんだが真新しさを感じさせるその神社へと近づいてく。
見れば神社の前に巫女が竹箒を握って境内の掃除をしていた。否、彼女は巫女ではない。

「おや、侵入者か。まさか三犬達を退けてここまで来るとは」
「一応確認させてもらいたい。君がホウオウかい?」
「そうだ。それで一体何の用だ?捕らえに来たというのなら痛い目を見てもらうが」
「とんでもない。ただ噂を聞いて来ただけさ」

そう、この山登りは好奇心を煽られて起こした行動だ。噂と好奇心の所為で痛い目を見るなど、真っ平御免だ。
この山の頂上近くに奇妙が寺があり、そこに美しい巫女が居る。巫女ではなく神だが、確かにあった。
帰る前に少し休ませてもらおう。信頼を得る為の詭弁を考えていると、ホウオウが私を睨んでいる事に気づく。

「ふむ。どうやら本当のようだ。その強さを称え、茶でも出してやろう」

心を読んでいたらしい。ホウオウってエスパータイプだっけ?と思ったが神様だし、放って置いた。
掃除を止めて神社へと歩き始めたホウオウに急いでついていく。住居と神社を兼ねているらしい。
住居であるスペースに入ると、やはり綺麗な床や壁が目に入る。二年目で、最高級の木材を使用しているらしい。
客室に連れていかれて出された座布団に座る。ホウオウが茶を出す前に、途中で見たあるものについて質問してみた。

「なぁ、ホウオウ。あれは一体何なんだ?」
「ん?あれ、とは?」
「分断されて綺麗に飾ってあった、リアル過ぎる少年の生首とその胴体と思われる首無しの人形だ」
「あぁ、あれか。あの少年は私の夫でな」

駆け足でどこかへ行く。そして戻ってきた時には先程見た少年の生首を、大事そうに抱えていた。

「まぁ私にも色々あってな。だがこうすれば、ずっと一緒だろう?」
「腐らないのは?」
「知り合いのファイヤーの血を飲ませた」

ファイヤーの血には不老不死の効果があると聞いていたが、本当だったのか。
そして先程私が少年の胴体を見た時に僅かだが動いていていたのは気の所為ではなかったのか。
聞いてもいないのに、とても嬉しそうに自分と若い男との惚気話をし始めるホウオウ。
その様子はとても可愛らしく、内容は頭が痛くなってくるもので。その光景はとても滑稽に見えた。
私は笑いを隠すのに必死だった。
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