5スレ>>839


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じわじわと蝉が鳴く、暑い暑い、夏の或る日。

「…あち…」

俺はクーラーのない部屋で、一人ぼやいていた。
地球温暖化が騒がれる昨今だと言うのに、太陽は頑張り過ぎだと思う。もう少しソフトな光を提供出来ぬものだろうか。
地熱だったり、コンクリートからの反射熱だったりする事もあるけれど。
長めの道路など眺めた日には、蜃気楼が見えそうだ。そんな事を思いながら、傍にあったペットボトルを手に取った。

「…ぬっる!」

部屋に篭もる前に冷蔵庫から取り出したそれは、傍に置いた時にはまだキンキンに冷えていた筈である。
しかし、今やそれも窓から降り注ぐ熱ですっかり温くなっていた。
この部屋で篭もるのはあまりにも危険だ。日射病的な意味で。
ペットボトルを冷やしに行く序でに、コンビニに行ってアイスでも買って来よう。
そう思いながら立ち上がる、と、その時だ。

「おとーさんっ」
「…おとーさん」

ドアが開き、二つの影が飛び出して来る。

「ヒスミ、ウルハ。どうした?」
「あのね、あのね、お隣のシャナおねーちゃんからもらったのー」
「…向日葵?」

二人の持つ黄色い大輪は、一般からすれば小振りだが、それでも立派な向日葵だった。
因みに、お隣のシャナお姉ちゃんとは、文字通り、隣の家に住むトレーナーのシャナさんの事だ。
庭に向日葵の花壇があって、毎年この時期になると立派に花を咲かせるのだった。

「…うちは、飾り気がないからって」
「……あぁー…そう言う事」
「飾ろ! 飾ろ!」
「ああ、待って待って。確か物置に使ってない花瓶が…」

そんなやり取りをしながら部屋を出る。
温いペットボトルも忘れずに持って、ドアを閉めた。




俺・アカヤシ カナタは、文章で生計を立てる作家である。
先程の二人――グレイシアのヒスミとリーフィアのウルハからは「おとーさん」と呼ばれているが、実際は結婚暦などない独身だ。
当然ながら、この二人とは血の繋がりは無い。その理由は話すと長いので、また今度。
兎に角、この一つ屋根の下で暮らす血縁のない親子は、暑さにもめげず(一瞬めげかけたが)生活を続けているのだった。

「えーと…これだ」

リビングから直結している物置を探ると、大き目の花瓶を引っ張り出す。
緑の硝子で出来た花瓶は、少し埃を被っている。
少しは彩を添えたらどうだ、と言う友人の勧めで買ったものだが、特に飾るものもないので放置してしまっていた。
水洗いして埃を落とすと、緑色が透き通る。
模様が刻まれた陶器製の花瓶より、こう言うシンプルなものの方が何かと気が楽だ。何かとは言わないが。

「ヒスミ、ウルハ、向日葵かして」
「はいっ」
「…はい」

二人から手渡された向日葵を、纏めて花瓶に挿す。そして、中に水を注ぎ入れる。
これで準備は万端だ。後の問題は、置き場所だ。

「何処に置こうか?」
「玄関!」

ヒスミの間を置かない即答に、ウルハもこくこくと頷いて同意する。
玄関なら目に付くし、幸いシューズボックスの上には何も置いていない。確かに適所だ。
それを受けて玄関へ向かうと、シューズボックスの上に花瓶を置く。うん、なかなか映えるじゃないか。

「これで良し、と」
「きれー」
「…きれい」
「花瓶買っといて正解だったな。…っと、そうだ」

リビングに戻りながら、ふと席を立った本来の目的を思い出す。
ペットボトルは既に冷蔵庫に突っ込んであるから、後はコンビニでアイスを買うだけだ。

「二人とも、これからコンビニ行くけど、アイス要るか?」
「アイスっ!?」
「…アイス」

呼びかければ、二人は目を輝かせてこちらを見る。

「アイスっ、アイスっ。ヒスミねー、ハーゲンダッツのクッキー&クリーム!」
「子供がハーゲンダッツなんて食べるんじゃありません」
「む、むー!」
「ウルハは?」
「…ブラックサンダーアイス」
「はいよ。大人しく待ってろな」
「はぁーい」

財布をポケットにねじ込むと、二人に見送られながら家を出る。
まだ陽は高い。太陽が休息に入るのは、まだまだ先だろう。

「…暑いな」

俺は道中ずっと、それだけを呟いていた。





――――――――――――
見よ、この1時間クオリティ(^q^)
実はこれ続くんだってよ。連載と言うよりシリーズに近い。


最後にちょこっと登場人物。

・アカヤシ カナタ
24歳。小説家で生計を立てる男。
結婚暦がないどころか彼女すらまともに居た事がない独り身。何故かヒスミとウルハと一緒に暮らしている。
・ヒスミ(氷澄/グレイシア♀)
6歳。ウルハの双子の妹。
カナタとは血縁関係はないが、彼を「おとーさん」と呼び慕っている。非常にテンションが高い。
・ウルハ(麗葉/リーフィア♀)
6歳。ヒスミの双子の姉。
同じくカナタと血縁関係はないが、彼を「おとーさん」と呼ぶ。妹とは対照的に大人しい。

あくまでヒスミとウルハはカナタの義理の娘であって、手持ちではありません。
カナタの手持ちは居る事には居るんですが、登場時期は未定。
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