5スレ>>846

 …初めまして。僕はキキョウシティ出身のイワン。
 訳あってジョウト地方を旅している半人前のトレーナーです。

 手持ちはポニータのライズ、ギャロップのフレム、色違いのポニータ、バーンの三人。
 決してバランスのいいチームじゃないけど、それなりには強いと思う。
 僕がそう思い込んでるだけかもしれないけど。

 それでつい先日、ヒワダタウンのジムリーダー、ツクシ君に辛くも勝利。
 無事に二個目のバッジを手に入れる事ができました。

 そして次のジムリーダーがいるコガネシティにやって来たんだけど……

「ふぅ…やっと着いたぁ……」
「この程度でいちいちウダウダうるさいわねー。男ならもっとシャキッとしなさいよ!」
「そーだそーだ!」
「うぅ……」
「まぁまぁ。無事着いたんですからいいじゃないですか」

 はぁ。もう家に帰りたい……






 weakness!
 ~コガネシティ編~






 …コガネシティ萌えもんセンター個室。
 手持ちのみんなを回復し、しばらくは各自自由行動。
 この後みんなで買い物に行くと言うので、僕はそれまで部屋でゆっくり休む事にした。

「はぁ……」
「お疲れ様、イワン。飲み物持って来たよ」
「ありがとう、ライズ」
「どういたしまして」

 僕が疲労混じりの溜息を吐いていると、一人のポニータが飲み物を持ってきてくれた。
 このとても気が利くポニータはライズ。年は僕と同じ15才。
 幼い頃からずっと僕と一緒に育ち、今もこうして一緒に旅をしています。
 本来僕の両親にメイド用として育てられたはずなんだけど、僕の猛反対で取り止め。
 そしてそこから色々あって、最終的には僕の最初の手持ちになりました。
 メイド用に育てられただけあって、バトルはもちろん、家事もこなせるスゴい子です。

「…どうしたのイワン? さっきからずっとこっち見て固まってるけど?」
「う…ううん、なんでもないよ!」
「そう? それならいいんだけど……」

 そして長い付き合いだけあって、ちょっぴり僕に対して勘が鋭かったりします。
 ライズはよく僕の顔に書いてあるって言うんだけど……
 僕ってそんなに分かりやすい顔してるのかなぁ?
 …と、そんな事を考えていた時。

「いやらしい」

 部屋に一人のギャロップが入って来て、誤解を招きそうな一言を放った。

「えぇっ!? べ、別に僕は何も……」
「ふーん。ま、いいわ。買い物行くわよ。さっさと準備する!」
「えっ、もう行くの? もう少し休んでから……」
「バカ言ってんじゃないわよ! せっかくコガネに来たんだから買い物優先!」
「うぅ……分かったよ……」

 …この結構無茶苦茶な事を言うギャロップはフレム。年は18。
 この旅を始めるにあたって連れて行く事になった、いわゆるお目付け役。
 基本的に意地っ張りで、よくこんな感じで僕をからかったりしてきます。
 元は僕の父親の手持ちで、実力はかなりのもの。
 僕の指示なしでも不自由なく戦います。
 …というか、僕の言う事なんか初めから聞こうとしないだけなんだけど。
 普段はバトルで使うなと言われているので、フレムが戦う事は滅多にありません。

「ねーさん、はやくおかいものいこうよー!」

 そうこうしていると、青い髪をした小柄なポニータが部屋に入ってきた。
 そしてフレムにぺったりとくっつく。

「ほら、バーンが待ちくたびれてるじゃない!」
「僕のせい!?」
「はやくしろー! アホイワン!」
「わ、分かったよ……」

 このフレムにくっついている色違いのポニータはバーン。年は8。
 最近手持ちに入ったばかりの新入りです。
 性格はとても活発でわがまま。その大半はこれまで育ててきたフレムの影響です。
 捕まえた当時はもっと素直な性格だったんだけどなぁ……

「準備終わった? じゃあ行くわよ!」
「れっつごー!」
「え!? ちょっと待ってよー!」

 はぁ……少しはマスターである僕に配慮して欲しいものです。
 もちろん、してくれと言っても即却下なんですけどね。
 今日も溜息が止まりそうにないなぁ……






 …買い物が始まって早1時間。
 僕は腕いっぱいの荷物を抱え、必死にコガネ百貨店内を歩いていた。

「…ねぇイワン、その荷物、私も持った方が……」
「甘やかさなくていいわよ、ライズ。男ならこれくらい持てて当然なんだから」
「フレム姉さんには聞いてません」
「だ…大丈夫だよライズ。これくらい僕一人で持てるから」
「そう? 無理しないでね?」
「うん」

 …そうは言ったものの、実はかなり腕がキツかったりする。
 でも、だからといってライズに持たせるのは良くないし……

「へぇー、言うじゃない。じゃああと2時間追加で買い物するわよ」
「フレム姉さんも、ちょっといい加減にして下さい」
「えー。もうちょっといいじゃないー」
「もぅ……。じゃああと少しだけですよ。そしたら少し休憩入れます」
「はーい」

 …最早僕には決定権すらないみたい。
 まぁ、端から期待はしてなかったけど。


 …………。


 あれから更に1時間後。
 僕達はコガネ百貨店の屋上で、少し早めの夕食を取ることにした。
 みんな今日はもう疲れてるだろうし、今から夕食を作っても遅くなってしまうし。

 …そして僕の横の椅子には、山のように積まれた荷物。
 今日だけでフレムは一体どれだけお金を使ったんだろう?

「…なに? あたしの荷物に何か?」
「う…ううん、なんでもない」
「ふーん」

 …どうやら荷物を見ていたのに感付いていたらしい。
 そんなに大事なら自分で持てばいいのに……

「今なんか失礼な事考えなかった?」
「べ、別にっ?」
「ふーん。ま、いいわ。じゃあイワン、あたしたこ焼きで」
「う…うん、分かった」

 何を考えていたのか聞かれたら怖いので、取りあえず急いで席を離れる。
 それに、みんなの分のご飯も買って来ないといけないし。
 …女の勘って、怖い。

「あ、私も行くよイワン」
「あぁ、うん。ありがとうライズ」

 …流石はライズ。僕が何も言わなくとも、自ら手伝おうとしてくれる。
 ホントにいつも助かるなぁ。今度きちんとお礼を言わなくちゃ。


 …………。


「…ねぇイワン?」
「え? なに?」

 持ち場を離れて露店へ向かう途中、ライズに呼び止められた。
 何やら心配そうな表情でこちらを窺い、話を続ける。

「最近表情固いよ? 大丈夫?」
「そ…そうかな?」
「そうだよ。何か悩みでもあるの?」
「……」

 ライズとは幼い頃から一緒に育った仲。
 それだけに、やっぱり隠し事は出来ないみたい。
 隠そうとしても、すぐにバレちゃうみたいだし。

「フレム姉さんの事?」
「…うん」
「大丈夫。フレム姉さんもバッジさえ集めれば、きっと少しは言う事聞いてくれるよ」
「そうかなぁ?」

 持っていれば他人の萌えもんでも言うことを聞くというジムバッジ。
 でもフレムの場合、なんだかそういう問題じゃない気もするんだよね……
 だけどせっかくライズが心配してくれてるんだし、気のせいって事にしておこう。

「だから、少しずつでいいから頑張って行こう?」
「…そうだね。ありがとう」
「どういたしまして。じゃ、早くご飯買いに行こっか」

 そう言って、ライズは露店へと歩いて行った。
 …本当に僕ってライズに助けられてばかりだなぁ。
 彼女がいなかったら、一体僕はどんなダメ人間になっていたのだろう?
 そんなもしもの事を考えつつ、僕もライズのいる露店へと向かった。
 …ところが。

「あらん? なんか今、あたしの悪い噂が風に乗って聞こえてきたんだけどー?」
「うわっ!?」

 いつの間にか僕の真後ろにフレムとバーンが立っていた。
 しかも二人共何やらあまり機嫌がよろしくないご様子。

「ふふふ……イワン、こんな所であたしの陰口だなんて、いい度胸してるじゃない……」
「ごはん……まだ……?」
「えぇっ!?」

 別に陰口を叩いたつもりはなかったけど、どうもフレムにはそう聞こえていたみたい。
 そしてバーンは、どうやらお腹が空いてて機嫌が悪いらしい。
 二人揃って手に炎を灯し、こちらに向かって身構える。

「さぁて、覚悟は出来てるかしらぁ?」
「おなかすいた!」
「ち…違うって! ちょっと待って! タイムタイム!」
「問答無用! バーン!」
「はーい!」
「うわああぁぁ!?」

 次の瞬間、二人の炎が炸裂し、僕の意識はそこで途絶えた。






「うわっ! …って、あれ? ここは?」

 気付いた時、僕はベッドで横になっていた。ここはセンターのベッドかな?
 辺りを見回す。外は既に暗くなり、だいぶ静まり返っていた。
 どれくらい気絶してたのかが気になって時計を探すが、見当たらない。
 …とにかくこのままでは始まらないので、みんなの所へ行くことにしよう。

「みんな…いる?」
「…イワン!? 良かった……無事だったのね!」
「え…えぇっ!?」

 みんながいる部屋に入った次の瞬間、僕はライズに抱き付かれた。
 一体どういう事なのかよく分からない。
 …っていうか痛い痛い! ライズの締め付ける力が半端ない!

「ちょ、ちょっと…ライズ……く、苦しい……」
「あっ……ゴ、ゴメン!」

 そう言うと、やっとライズは僕から離れてくれた。
 さっき背骨からビキビキって音が聞こえたような気がしたんだけど……気のせいかな?

「まったく、お騒がせ者もいいとこね」
「元凶が何を言うんですか! 元はフレム姉さんが悪いんでしょ!」
「あ…あたしは知らないわよ! 紛らわしい話をするイワンが悪いんだから!」

 言うだけ言って、そっぽを向くフレム。かなり頑固だ……
 こうも頑固だと、バッジを集めてもちゃんと言う事を聞いてくれるのかが心配だ。
 本当に大丈夫かなぁ……?

 …そうこうしていると、バーンが右往左往しつつ、こちらへやって来た。

「えっと、ごめん……」
「えっ?」
「ちょっとやりすぎたから……」

 反省した様子で僕に謝るバーン。
 いつもは強情な彼女が素直に謝ってきたのだから、少し驚いた。
 意外とまだ素直な所が残っているのかもしれない。

「…ううん。もういいよ」
「ホント?」
「うん。でも、これからは気をつけてね」
「…わかった!」

 そう僕が言うと、バーンは満面の笑みを浮かべ、フレムの横へ戻って行った。
 フレムもこんな感じに素直だったら良かったんだけどなぁ……
 そう思ってフレムの方を見るが、目を逸らされてしまった。
 まぁいつもの事だから、大体分かってたけど。

「とにかく、本当に無事で良かった!」
「えっと……それなんだけどさ、ライズ? 僕、一体どれくらい気絶してたの?」
「昨日の夜から今日の夜まで丸一日気を失ってたよ。本当に心配したんだから……」
「えっ!? そんなに!?」

 予想外だった。てっきり僕は、2、3時間気絶してただけかと思ってたんだけど……
 今更ながら、みんながこんなに心配していた理由が分かった。

「…ゴメン。まさかそんなに気絶してたなんて……」
「イワンが謝る事ないよ。悪いのはフレム姉さんなんだから」
「あー、分かったわよ! あたしが悪ぅございました! ご・め・ん・な・さ・い!」

 またもや言うだけ言って、そっぽを向くフレム。
 これだけ頑固だと、逆に可愛く見えてしまうのは僕だけかな?

「ま…まぁ、元気になったんなら良かったじゃない」
「うん。心配かけてゴメン」
「なんであんたが謝るのよ! ていうか別にあたしは心配してたわけじゃないから!」
「そ…そう?」
「誰があんたの心配なんか……ブツブツ」

 …コレってなんていうツンデレだろう?
 なぜかフレムがすごく可愛く見えて仕方がない。
 …と、そんなバカな事を考えていた時、僕はある事に気が付いた。

「…あれ? フレムとバーン、なんかすごく髪型整ってない?」
「え? …そう言えばそんな気がするね」

 ライズも気が付いたらしく、確認のためフレムに近寄る。
 …しかし。

「あ! あたし風呂入って来なきゃ!」
「え? お風呂って、さっきフレム姉さんお風呂に入ったんじゃ……」
「気のせい気のせい! じゃ、バーンも行くわよ!」
「はーい!」

 そう言うと、二人は超特急で風呂場へと行ってしまった。
 何か様子がおかしいのは一目瞭然。
 しかし、一体何をそんなに慌てていたのだろう?
 …と、ここで更に僕はある事に気が付いた。

「…あれ? ライズ、僕の財布がないんだけど、知らない?」
「え? 私は知らないけど……まさか!」

 どうやらライズは犯人の目処がついたらしく、風呂場へと向かって行った。
 何かすごく嫌な胸騒ぎがするんだけど……
 取りあえず変な事になっても困るので、僕も風呂場へと移動した。

「…フレム姉さん、あなた今日、美容院に行ってませんでした?」
「えー? なんの事やらさっぱりー」

 風呂場の薄いドアを隔てて質問を投げ掛けるライズ。
 話し方からして、フレムが白を切っているのは丸分かりだ。

「しかもイワンのお財布のお金勝手に使って」
「ギクッ」

 やっぱり犯人はフレムだったみたい。それにしても、ギクッて……
 …と、フレムが犯人だと発覚した次の瞬間、辺りが熱気に包まれ始めた。

「フレム姉さん? あなた本当に反省してるんですか?」
「へ? なんであたしがー?」

 その言葉をライズが聞くと、辺りは更に熱気を帯びてきた。
 えっと……コレって、状況悪化ってやつ……だよね?

「どうやら反省してないみたいですね……」
「ラ…ライズ、そろそろ止め……」
「イワンは黙って」
「は、はいぃ!」

 …あぁ、こうなるとライズはもう止まらない。
 それは昔からライズと一緒にいる僕が一番よく知っている。

「フレム姉さん、覚悟して下さいね? ふふ…ふふふふふ……」

 そう言うと、ライズは風呂場のドアをこじ開け、中へ入って行った。
 炎と共にものすごい殺気を纏ったライズは、もう誰にも止められない。

「え? ちょっと、勝手に入んないで……って、悪いのあたしだけ!? バーンは!?」
「知りません」
「ま…待った! 話せば分か……いやああぁぁぁぁ!」

 フレムの悲鳴が聞こえる中、僕は隙を見て逃げて来たバーンを連れ、風呂場を離れた。
 あんなのに巻き込まれたら、人間の僕はひとたまりもない。
 それに、最終的にこうなるのも大体は想定の範囲内。ていうか、よくある事だし。

 はぁ……どうして僕の旅路はいつもこんなに目茶苦茶なんだろう。
 まだまだ旅は終わりそうにないし、本当にこの先大丈夫なのかなぁ?
 …ともかく今日はもう疲れたので、僕はこれにて失礼します。
 それでは、また会いましょう。










~あとがき~
こんにちは。最近不調な日が続き気味のポエルです。
…どうでもいいですよね。ごめんなさい。

…で、今回は特別編、イワン君の旅路(コガネシティ編)です。
彼らのハチャメチャな日常、お楽しみいただけましたでしょうか?
イワン君のパーティは炎のみとなっておりますが、これにも一応理由があります。
今はまだ語れませんが、また書く機会があったら語ろうかと思っております。

そして『course of life』とは直接関係ない番外編ですが、
もしかしたらそれに特別出演等するかもしれません。お楽しみに!
ここまで見て下さって有り難うございました!
…では、お疲れ様でした!

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最終更新:2010年05月01日 11:40
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