辺りのポケモンを捕まえては逃がししつつ、オレたちはトキワシティにやってきた。
さすがにマサラタウンとは違ってずいぶん活気にあふれてる感じだな。
とはいっても、今のところここですることも特にないし、先へ進もうとしたんだが・・・。
「ういーっ! ひっく・・・待ちやがれ! わしの話を聞け!」
なんというか、まぁ・・・。
「…こら! 行くな!と言っとろーが!」
見事な酔っぱらいだな、おい。
「道、ふさがれちゃってますね・・・」
新種のポケモンでも見たかのような顔でつぶやくマドカ。
そりゃそうだ。なんだってこのじいさんは真昼間から、酔っ払って道の真ん中で寝てんだよ・・・。
しかも横を通り抜けようとすると足を掴んで止めてくるし。放せ、こら。
「どうしましょう・・・」
まったくだ。旅の初日から随分とめんどうな壁にぶつかっちまったな。
「しょうがない。じいさんの酔いが醒めるまでどっかで時間つぶすか」
「わかりました。どこへ行きますか?」
朝飯は食べて来たからまだ昼飯には早いしな・・・。
ん? そうだ、たしかこのトキワシティからは・・・。
「ちょっと見に行きたい場所があるんだが、いいか?」
「はい! マスターの行くところならどこへでもお供しますよ!」
そんなに張り切らんでもよろしい。けどまぁ楽しそうなのでよしとするか。
ひとまずオレたちは街の西、22番道路へ向かうことにした。
「マスター、こっちには何があるんですか?」
っとそういや、言ってなかったか。
後ろをトコトコ歩いてくるマドカに、指をさして目的地を示す。
「ほら、あそこだ。あそこがこの旅の目的地ポケモンリーグだ」
ここからはまだ遠いが、セキエイ高原に立つポケモンリーグがうっすら見える。
もちろん、距離だけじゃなく、道のりも遠い。
あそこに辿り着くためには、各地にいる8人のジムリーダーを倒さなければならない。
その道のりの険しさに途中であきらめていくやつも多いらしい。
「けど、オレは・・・」
あきらめるわけにはいかない。ずっと待っていてくれたあいつのためにも、あのときの約束を叶えるためにも。
オレは、今度こそあそこを目指して戦わなきゃならない。
マドカとなら・・・きっと・・・。
・・・って、
「んー! んー!!」
なんかさっきから静かだなと思ってたら、
「マスター・・・見えませぇん・・・」
涙目で背伸びしてるマドカがいた・・・。
「あ、見えました! あそこですね!」
「あぁ、あそこがポケモンリーグだ」
どうやら前方にある高い木が邪魔になってて見えなかったらしい。
今はマドカを頭上に抱え上げて見せているところだ。
子どもにする「高い高い」だな、これじゃ。
「もういいか。降ろすぞ」
「あ、はい。ごめんなさい」
別に謝らんでもいいのだが。こいつは少し性格が丁寧すぎるのかもな。
「マスター!」
「なっ、なんだ?」
いきなり大声をあげるから何かと思えば、マドカは目を爛々とさせてオレを見上げていた。
「マスター、頑張りましょうね!」
そういってガッツポーズをする。
ガッツポーズというにはずいぶんと可愛らしいんだが・・・。
「あぁ、頑張ろうな」
と、オレもガッツポーズで返してやる。
その時、
――ガサッ!
不意に後ろの茂みで音がした。
オレとマドカは即座に後ろを振り返る。
どうやら真後ろの草むらに何かいるらしい。
油断のないように身構えていると、
ガサッ! バササッ!
現れたのはオニスズメだった。そういや、オニスズメはまだ捕獲してなかったな。
「マドカ、頼むぜ!」
「はい!」
マドカに戦闘の合図を出す。
オニスズメは確かヒトカゲより素早さが上だったな。なら後手に回るのは避けたい。先手必勝!
「マドカ、「ひっかく」だ!」
「はい! それぇっ!」
マドカの爪がオニスズメに襲い掛かる!
が、当たる直前に交わされて、せいぜいかすった程度に終わってしまった。
はずなのだが、
ヨロ、ヨロ・・・ポテッ。
・・・は?
オニスズメは数歩よろけ、そのまま倒れてしまった。
えーと・・・。
「マスター、今です!」
ハッと我に返り、すぐさまボールを投げる。
ボールから放たれた光はオニスズメを包みこみ、暴れることもなく捕獲成功のサインを出した。
・・・いいのか、こんなんで。
「なんか、ずいぶんとあっけなかったな・・・」
「あっ、もしかしたらケガしてたのかもしれませんよ?」
あぁ、その可能性はありうるな。とりあえずボールから出して確認してみるか。
今捕獲したばかりのオニスズメをボールから出し、様子を見る。
少なくともケガらしいケガはしてないようだ。まぁ、見るだけじゃわからんし、本人に聞いてみるか。
「なぁ、どこかケガしてるのか?」
ふるふる。
「じゃあ、腹でも減ってたとか」
ふるふる。
「どこも悪いとこはないのか?」
こくん。
ずいぶん無口だな・・・。
しかし、どこも悪くないならそれに越したことはない。今までどおり逃がすことにしよう。
「なら、大丈夫だな。逃げな」
逃げることを促した瞬間、オニスズメの顔が信じられないといった顔つきになる。
マドカの言うことを考えたら、自分を捕獲して逃がす人間なんて信じられないんだろうな。
だからオレはもう一度優しくいってやる。
「ほら、逃げてもいいんだぞ」
「・・・うことよ」
オレの言葉に、うつむくオニスズメが何かをつぶやいたようだが・・・なんだ?
「ん? どうし」
「どういうことよ!!!」
オニスズメを気遣った言葉は彼女の大音量によってかき消された。
オレとマドカは2人して何事かと彼女を見つめる。
どうやらこれは・・・怒ってる?
「どういうことよ、あんた! 人を捕まえといて逃げろだなんて!
普通捕まえたら逃がしたりしないでしょ!!」
無口かと思ったらずいぶんしゃべるようで。
まぁ、普通はそうなんだろうが、オレはそういうやり方は好きじゃないから。
「もう! 信じらんない! 捕まえたら最後まで責任持ちなさいよね!!」
そう言われてもなぁ・・・。あれ、ってことは。
「・・・着いてくるのか?」
「だから、そういって・・・あっ、じゃなくて! 捕まったから仕方なく着いていくって言ってるのよ!」
なんかひどい言われような気がするが・・・。
「えっと・・・」
「アサギ」
「あ?」
「アサギ! あたしの名前よ! ちゃんと覚えなさいよね!」
・・・なんかやっかいなもん拾っちまったかなぁ。
と、マドカがアサギに近づいていく。何をするかと思えば、
「わたしはマドカ。アサギちゃん、よろしくね!」
笑顔で握手を求める。その朗らかさが今は少し妬ましい。
あぁ、そうか。「仲良くしろ」って言ったのはオレか。
「あ、うん、よろしく・・・」
・・・なぜか、そっちは素で返すんだな。
こうして、新たな仲間が1人増えた。が、なんか前途多難な旅になりそうだな・・・。
駄文
というわけで本編第一話。オニスズメのアサギさんが仲間になりました。
一応ツンデレ設定なんですが、ツンデレってこうですか、わかりません。
今回は照れマドカと背伸びマドカが書けたので満足です(ぇ
次回はアマネと初バトルの予定。そしていい加減トキワの森には行きたい。
テンポ悪すぎですいません・・・orz
最終更新:2010年08月04日 23:59