5スレ>>857


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「…それで愚痴ったのを聞いてたフレムに炎のパンチをもらって一晩意識不明に……」
「そいつは大変だったな……。ていうか、よく生きてたな」
「あの時は僕も本当に死んだかと思いましたよ」

 …さっきからもうどれくらい経ったろうか。
 結構な時間イワンと苦労話で盛り上がっていたような気がする。
 しかし聞いてると、この子、俺の想像以上に苦労しているようだ。
 俺なんてまだまだ苦労し足りないのかもしれないってくらいに。
 その内胃に穴が開いたりしないか心配だな……

 …おっと、このまま話してたんじゃキリがない。
 そろそろ止めにして皆の所に戻るとしよう。
 アイツらの事だから、もしかしたらのぼせてヘバってるかもしれないし。

「…ふぅ。じゃあそろそろ……んぃ!?」
「え? うわっ!」

 …丁度戻ろうとした時だった。
 俺とイワンは何者かに羽交締めにされ、身動きが取れなくなってしまった。
 まさかとは思うが、こんな事をするのは……

「あらン? イワン、またこんな所であたしの陰口叩いてたのかしらぁ?」
「え、いや、べ…別に僕は……」
「リュウも随分とあたしの悪口言ってたみたいだねぇ?」
「うっ……」

 やはり思った通り、オニドリルと、イワンのフレムだった。
 どうやらこの二人、俺とイワンの会話を盗み聞きしてたらしい。
 なんてタチの悪いやつらなのだろう。まぁ、そう言う俺も人の事は言えないが。

「さぁて、イワン?」
「さてと、リュウ?」
「「覚悟は出来てる?」」

 とても悪意に満ち溢れた笑みを浮かべるオニドリルとフレム。
 ていうか、確かこいつらさっき会ったばかりのはずだよな?
 なのになんでこんなに息がピッタリなんだよ……

「ね…ねぇフレム、何をする気……?」
「何をする気、じゃないわよ! そんなの教えたら面白くなくなるじゃない!」
「ふっふっふ。初対面で悪いけどイワン君、すこ~し痛い目見てもらうよ?」
「うぅ……」

 …うわぁ。オニドリルのやつ、初対面相手でも容赦ないな。
 しかもオニドリルのこの目。こりゃ本気だ。
 こうなったらもうタダでは済まされないだろう。
 それに今回はイワン持ちの凶悪なフレムもいるし、何されるか分かったもんじゃない。
 これはちょっと逃げ道考えとかないとヤバそうだ……

「な~に考えてるのかなぁ、リュウ? まさか逃げようだなんて考えてないよねぇ?」
「……」

 ニヤけ面で後ろから無理矢理目を合わせようとしてくるオニドリル。
 やはり長年付き合ってただけに、完全に先読みされてるな。
 …だが落ち着け、落ち着くんだ俺!
 ここで奴のペースに飲まれれば元も子もなくなってしまう!

「…ま、いいや。じゃあフレム、早いとこ連行しちゃおっか?」
「そーね。さっさと行きましょ」
「ちょ…待て待て! そっちは女湯じゃ……」
「「待たない!」」
「うっ……」

 話を振れば相手にされない。
 暴れても力じゃオニドリルに勝てるワケがない。
 最早これまでか……と思った時、ふと、ある疑問が浮かんだ。
 そういえば羽交締めにされてから存在していた背中の感覚。
 これって……

「…なぁオニドリル?」
「今のあたしにゃ何を言っても効かないよ~?」

 …こうは言っているが、果たして効果はあるのだろうか?
 下手をすれば自分がしっぺ返しを食らうワケだし……
 だが、ダメもとで言ってみる以外に逃れる術はない。
 出来れば言いたくはないが……

「お前、さっきから俺の背中に……当たってるんだが……」
「何が……っ!!」

 俺にそう言われた瞬間、頭から煙が出そうなくらい顔を真っ赤に染めるオニドリル。
 どうやら作戦は成功。効果は抜群だったようだ。
 今ならこの束縛から逃れられるかもしれない。
 …と、行動を起こそうとした時、悲劇は起こった。

「人の気にしてる事を……こんのやろぉー!」
「がっ!?」

 一瞬で視界が歪んだ星空に変わり、若干体が宙に浮く感覚。
 …どうやら後ろからゼロ距離飛び膝蹴りをかまされたらしい。
 首痛い背中痛い目眩はするし息出来ない……
 だがそんな事を言っている場合ではない。
 今が逃走する絶好のチャンスなのだから!

「ゲホッ、ゴホッ! いぐぞイヴァン!」
「えっ? うわっ!」

 隣りで呆然としているフレムから、なぜか顔を真っ赤に染めているイワンを強奪。
 そのままイワンを引っ張り、自分の荷物がある場所まで全力疾走。
 そう。ボールを取りさえすれば俺達の勝利。
 ボールに彼女らを戻してしまえば、ひとまず場は治まる。
 ただ、そうなると後が怖いが……今そんなの気にしてる暇ない!

「させないわよ! さぁ、イワンを返してもらいましょうか!」
「くっ!」

 荷物の場所まであと数メートルという所で、フレムに道を塞がれてしまった。
 流石はギャロップなだけに、足がとてつもなく速い。

「リュウマ……待ちなさい……」
「なっ!? いつの間に……」
「ど…どうしよう? 囲まれちゃった……」

 引き返そうと試みたが、背後にはオニドリル。
 前後を二人に挟まれ、完全に包囲されてしまった。

「よくも……よくも! さては私が一番小さいって知ってて言ったんだなこのやろー!」
「はぁ!? 何の話だよ!?」
「とぼけるなぁ!」
「!?」

 そう叫ぶと同時に、突然オニドリルが自分の羽根を物凄い勢いで飛ばしてきた。
 オニドリルから放たれたそれは俺の頬をかすめ、鋭利な刃物で付けたような傷を作る。
 これは刺さったら痛いじゃ済まなさそうだな……

 …ていうか、さっきから何か微妙に話の論点がズレている気がする。
 俺はただ「当たっている」と言っただけなのに。何がとは言わないが。

「許さない許さない許さない許さない許さないーっ!」
「どわっ! 逃げるぞイワン!」
「う…うん!」

 絶叫しつつ四方八方に羽根という凶器を乱射するオニドリル。
 しかし幸い頭に血が上っていて狙いが甘いためか、俺達には奇跡的にかすりもしない。
 だが跡をつけながら放ち続けているので、それも時間の問題。
 早くボールを取りに……って、あれ? 俺達の荷物がなくなってるぞ?

「これはもらって行くわよ」
「ちょ…ちょっとフレム、それは僕達の荷物……」
「え? なに? 聞こえないわよ! それじゃ、せいぜい頑張って逃げてよね~」
「えぇー!」

 俺達が目を離している隙に、フレムが自分達の荷物を持って行ってしまった。
 追いかけても勝ち目がないのが分かっているため、その瞬間俺達の敗北が決定した。

「許さない許さない許さない……」
「うおっ! あっぶねぇ!」
「誰か助けてぇー!」

 作戦はフレムの妨害で失敗し、成す術もなく逃げ惑う俺とイワン。
 表の女湯に逃げ込むというのも考えたが、それではアイツらの思うツボだ。
 しかし、だからと言って逃げ続けるのもいつまで持つか分からない。
 どうする……どうするよ俺!?
 …と、必死で策を練っている最中。

「痛っ! うわっ!」
「大丈夫か!?」
「な…なんとか大丈夫です……」

 不幸にもオニドリルの攻撃がイワンの足にかすり、転んでしまった。
 大した怪我ではなさそうだが、これではもう走れそうにない。

「ぜぇ…ぜぇ……。あんた達……覚悟は出来てる?」
「ひぃっ!」
「ま…待て! イワンは関係ないだろ!?」
「関係ある! そいつはさっき哀れみに満ちた眼差しであたしを見てたんだから!」
「えぇ!? 別に僕はそんな目で……」
「見てたの!」
「うぅ……」

 せっかくイワンだけでも逃げてもらおうと思っていたのに、
 オニドリルの素晴らしい勘違いのおかげで失敗に終わってしまった。
 そんな自意識過剰になるほどヤバかったのかなぁ、あの発言?

 …そしてさっきからフレムが岩の上で堂々と寝転がりながら高みの見物をしている。
 こりゃすっげぇムカつくな。イワンの気持ちがよく分かるよ、ホント。

「さぁて、歯ぁ食いしばってよね?」
「待て待て待て! 話せば分かる!」
「そ、そうそう! 話し合えばきっと……」

「二人して未練がましい! さっさと諦めて食らいなさい! 必殺……」
「ぎゃっ!」
「つばめがえ…うわっ!」

 もうダメかと思い、覚悟を決めて目を閉じようとした瞬間。
 なぜか突然フレムが結構なスピードで飛んできてオニドリルと衝突。
 そのままオニドリルもろとも飛んで行き、派手に温泉へと着水した。
 俺達は何が起こったのか全く分からず、ただキョトンとしている事しかできなかった。

「まったく。フレム姉さんったら懲りもしないで……」

 俺とイワンが呆然と二人の着水した温泉を見ていると、
 いかにも一仕事終えたように手をはたく仕草をしながらこちらに来るポニータが一人。
 あのポニータは……イワン持ちのライズって子だっけ。

「ラ、ライズ!? もしかして、今のは君が?」
「さすがに今のは危なかったからね。ちょっとオニドリルには悪かったけど」

 どうやら今のはライズが故意にやったものらしい。
 ずいぶん景気良くやってくれたようだが、大丈夫だろうか?
 …まぁ、取りあえず助かったみたいだからいいけど。

「すまない。ライズ……だよな? 助かったよ」
「いえ、元はと言えばうちのフレム姉さんが全ての元凶なので……」
「…どういう事? フレムは僕を捕まえた事以外あんまり関係なかった気がするけど?」
「あの人がリュウマさんのオニドリルを触発しなければ、こうはならなかったの」
「触発? じゃあフレムが……」
「危ない! 伏せて!」
「「!?」」

 話の途中で突然ライズに指示され、慌てて伏せる。
 するとその直後、頭上を物凄い熱気が通り過ぎるのを感じた。
 恐らくフレムの火炎放射だろう。あのまま伏せていなかったら……考えたくもない。

「いい所だったのに邪魔が入ったわね」

 先程着水した温泉から早くもフレムが復帰。
 その表情から、怒りに満ち溢れているのが容易に見て取れる。

「こちらからしたら全くいい所ではありません」
「そうね。でもあたしには全然関係ないし」
「……」

 そのフレムの言葉を聞き、黙り込むライズ。
 気のせいか、何かライズからオーラのようなものが見えるような……

「あんたら……もう許さないからね……」

 そしてこの最悪なタイミングでオニドリルが復帰。
 見るからにこれはもう怒りを通り過ぎて殺意に満ち溢れている。
 …これで首謀者二人が揃い、辺りは険悪な雰囲気に包まれた。

「イワン、リュウマさん、離れてて下さい」
「う…うん。でも、ライズ一人で大丈夫?」
「心配は無用よ。こっちだってちゃんと準備して来てるんだから」
「準備? まさかとは思うが……」
「そのまさかです。ポニータ、ハクリュー、お願い」
「待ってましたっ!」
「助太刀に参りました。お怪我はありませんか、リュウマさん?」

 ライズの呼び掛けに応じ、ポニータ、ハクリューの二人が岩影から登場。
 既に服も着ており、ライズの言った通り準備万端のようだ。

 …今度こそ後編へ続く。
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