>>871

「へぇ……、萌えもんかぁ」
これは俺が萌えもんを初めて知ったぐらいの小さい頃の話である。
父さんが俺に教えてくれたのだ。父さんは凄い萌えもんトレーナーらしい。自称だから良くわからないが、とりあえず父さんの持っている萌えもんは強かった。
まあそれはそうとして、俺はこの頃まだ何の萌えもんも持っていなかった。

さて、小さい頃の俺はその話を聞いて萌えもんに興味を持ったのだろう。
父さんの萌えもんのニドクインを借りて近くの草むらに潜って行った。

「しっかりして下さい!……は、早くオレンの実を取ってこないと……」
そんで……何故かはわからないけど、いきなり傷ついたイーブイが倒れてて。
よほど大事な萌えもんなのか近くにいた見守ってた萌えもんがそりゃもう怖い目で睨みつけててさ。
さっき喋ってたアブソルが威嚇してきたから、慌てて弁解しようとしたんだけどまぁ勿論通じなくて。

「あ、おやめ下さい!」
小さい頃はかなり無理をする事がある。俺はニドクインが止めるのを振りきってきずぐすり持ってイーブイの元へ。
でも小さい頃は大きくなってからよりはかなり俊敏なもんで、真っ先にイーブイの元についてきずぐすりをかけると、ニドクインの元に真っ先に戻って行った。
ニドクインの元へ戻ったのは正解だったと思う。ちなみにきずぐすりはスプレー式だ。

「イ、イーブイ様!大丈夫ですか!?」
アブソルが毒でもかけられたのかと慌ててそれをふきとろうとすると、イーブイがのっそりと立ち上がった。

「あれ……?……うん、アブソル、もう大丈夫。治ったよ」
「え!?」
アブソルが驚いたように言ってこちらを見てくる。
……もう威嚇しているわけでは無いようだった。

「さっきの人がかけてくれたのが効いたみたい。心配してくれてありがとう、アブソル。
 後、あなたも。ありがとうね」
イーブイがぺこりとお辞儀をすると、アブソルも慌ててお辞儀をして、すまなかったなと付け足した。
するとイーブイが歩み寄って、モモンの実をくれたのである。

「これはお礼。食べてみて、美味しいから。……ところで、あなたはどこに住んでるの?一度行ってみたいの、人間の家」
「え、い、いけませんイーブイ様!ブラッキー様からも駄目と……」
「いいじゃん別に。お父様だってこの人なら許してくれるはずだよ。私、この人の萌えもんになりたいし」
何を仰せられますか、とアブソルがまた慌てる。……外見の割に結構慌てっぽいらしい。
そんな事を考えながら、小さい頃の俺はモモンの実を握りながらそれを見ていた。

「うーん……イーブイ様がそこまで仰せられるのでありましたら、私からもお願いしておきますが……
 私も一緒に行きます。イーブイ様とこいつだけでは危険です」
「えー?……まぁ行けるようになるなら仕方ないかな」
良くわからないが、俺の手持ちになるという前提で話が進められているらしい。
まぁ元々俺は萌えもんを手に入れに来たので、願ったり叶ったりだったが。

「ただし、イーブイ様がもっと大きくなった時にさせて頂きます。今のままでは危険です!」
「え……うーん……ま、いいや。というわけで君、えーと……五年後ぐらい……かな?
 に私を迎えに来て!待ってるからね~」
イーブイはにこりと笑って草むらに消えていった。
俺もニドクインも暫く呆然としていたものの、いつの間にか空が赤くなっていた事に気づくとすぐに帰って行った。


――それで、俺はイーブイを迎えに来たわけであった。


「あ、来た!ほら、アブソル、来たじゃない」
「……そうですね。はぁ、ちょっと残念です……」
「何よそれ」
彼女たちは五年前と変わらぬ容姿のまま、そこにいたのであった。

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最終更新:2010年12月15日 00:17
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