5スレ>>884


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 アキラがトキワジムに腰を落ち着けて約半月。
 クリム主導の鍛錬(当然、マスターも鍛える)に慣れてきた頃、アキラ宛に一通のメールが届いた。





『Trust and distrust』





「マサキから呼び出しだって?」

 朝練を終え、少し遅めの朝食を摂りながらクリムは聞く。
 アキラはというと、半分死にかけの状態でそれに答えた。

「あぁ……なんか、近いうちにノッサとユキメさんとスイクン連れて来てくれって……何の用だろう」
「あー、んじゃアレだな。この辺じゃ珍しい萌えもんのデータが欲しいんだろ」
「萌えもんのデータ?」

 意味がわからず、首を捻るアキラ。
 その様子に苦笑しながら、クリムは話を続ける。

「お前、マサキについてどのくらい知ってるんだ?」
「あー……直接の面識は無いし、パソコンでの萌えもん預かりシステムの開発者ってくらいか」
「ま、一般人の認識としちゃそんなもんか」
「?」
「いやな、マサキは萌えもんマニアなんだよ。預かりシステム作ったのも、色々な萌えもんのデータが欲しいからって話があるくらいだ」
「データねぇ……」

 アキラは怪訝な表情をしながらコーヒーをすする。

「……変なことに使うんじゃないだろうな」
「その辺は大丈夫だろ。俺はあいつと会ったことあるけど、悪いやつじゃなかったぜ」
「まぁ、クリムがそう言うならそうなんだろうけどな」
「お、んじゃ行くのか?」
「そうだな……相変わらず放蕩してるスイクンが見つかり次第行くか」

 そう言って食事を終えたアキラが立ち上がった時。
 突然彼の背後から、底抜けに明るい声が響いた。

「あっるじっ様ーっ!呼んだ?」
「ってうぉあ!スイクン!?」
「……前にも思ったが、ホント一口に伝説っつっても色んな性格の奴が居るんだな」
「むむむっ、失礼な。あたしこれでも伝説よ?伝説なのよ?」
「じゃ、せめてそれっぽく振舞えばいいだろうに……つか、今度はどこに行ってたんだ」
「んとね、灯火山のてっぺん」
「ってファイヤーのとこかよ!?」
「そーそー。あ、そういえば聞いてよ。ファイヤーってばまた美味しいお酒隠してて……」
「……なぁアキラ。仮にもファイヤーのトレーナーとして色々と言いたい事があるんだが」
「わかってる……つか注意もしてるんだが、もう数十年はこういう関係だそうだしなぁ」
「「……はぁ」」
「そんでね……ってちょっと、聞いてる?」



 数日後。
 指定のメンバーの他にデル、メリィ、ホウを連れ、一行は岬の小屋の前に立っていた。

「ここがマサキの家か……」
「なんか、予想してたのと違うね」
「そうですね。預かりシステムの開発者という程ですから、もっとこう……」
「ほらほらみんな、ひとんちの前でお喋りしてても仕方ないっしょ。ってことでおじゃましまーっす♪」
「僕、スイクンさんは少し自重したほうがいいと思います……」

 そんなこんなで上がりこんだ先には、エーフィ族の少年が一人。

「ん?あんたら誰や?」
「ああ、俺はトキワジムのアキラ。マサキって人に呼ばれて来たんだけど」
「おお、あんさんがアキラか!わいは見ての通りエーフィ……ってちゃうちゃう、萌えもんマニアのマサキや!」
「……へ?」

 一同、硬直。
 それもそうだろう。皆、マサキが萌えもんだなどとは夢にも思っていなかった。

「何やその反応は。あんさんら信用してへんな?」
「信用って言われても……」
「ねぇ……?」
「ホンマやって!実験に失敗してしもうて、萌えもんと一つになってもうたんや!」

 必死で訴えてくるエーフィ(マサキ?)。
 その様子に、もしかしたら本当にそうなのではないかと思い始めた時だった。

「せやから、わいはこの機械に入るさかい。そこのパソコンで……」
「……ハ~マ~?」
「……ってその声はムドォ!?何でや!?何で今ここに居るん!?」

 いつのまにか彼の後ろにはブラッキーの少女が肉薄しており、振り向いたエーフィの顔面をぐわし、と掴むと。
 そのまま握り締めて持ち上げていた。
 要はアイアンクローである。

「あんた……悪戯も大概にしなさああああああいっ!!!」
「ああいがががががががががくぁwせdrftgyふじこlp!?!?!?!?!?」

 エーフィは暫く声にならない悲鳴を上げていたかと思うと、泡を吹いて気絶した。
 そしてブラッキーはポカーンとしているアキラに向き直ると、頭を下げた。

「ごめんなさい、うちのが変なこと言ってたみたいで」
「あ、え、いや、別にいいけど。君は?」
「あ、そうだった。申し送れました。わたしはマサキ兄ちゃんの助手の一人で、ムドっていいます。そこのバカはハマ。あんまり認めたくないですが、わたしの双子の弟です」
「そうか……マサキは今は居ないのか?」
「はい、でもすぐに戻ると思いますよ。よろしければ皆さん、奥でお待ちになりませんか?」
「なら、お言葉に甘えようかな」
「わかりました。こちらへどうぞ」



 そして奥に通されて数分後。

「やー、君がアキラか。わいがマサキや。よろしく!」
「あ、どうもよろしくお願いします。マサキさん」
「硬いなー、わいもアキラって呼ぶけん、わいのことも呼び捨てでええで」
「そのほうがいいならそうさせてもらうよ、マサキ」
「おおきに。ほな早速、データ取らしてもらうで。その間そこのパソコンで、わいの萌えもんコレクションでも見てき。データしか無いけどな!」

 そういって、マサキは三人を連れて別室へと去っていった。
 残された四人は、勧められた通りにパソコンで萌えもんのデータを見ることにした。

「……御主人様!見てください、これ!」
「なんだなんだ……ヘルガー族のデータか」
「はい。このデータによりますと、私の種族の平均的な胸の大きさはAらしいですよ!別に私が特別小さいわけじゃないみたいです!」
「……でもデルちゃん、身長の平均は160cmよりも上だよ」
「……っ!」
「……それに、デルのサイズはAA。平均より全然下。しかも、種族的に成長は見込めない」
「Σ( ̄□ ̄;)」
「うわ、ホウちゃんキッパリ言い過ぎ……」
「まぁ、何だ。デル……あんま気を落とすな。俺は嫌いじゃないぞ、小さくても」
「うぅ……御主人様の優しさが地味に痛いです……orz」

「これは……デンリュウ族のデータか」
「え、見せて見せてー!」
「……普通ですね」
「……人間と殆ど変わらないな」
「……面白みが無い」
「えー……普通でいいよぉ」
「そこはほら、話のネタにならないじゃないですか」
「……読者も、読んでて面白くないはず」
「ホウ、あんまメタな話はナシで頼む」

「んで、これはヨルノズク族のだな」
「……おっきいね」
「……(ギリギリ」
「……それほどでもない。普通」
「お前のサイズでデル達に普通って言っても嫌味にしか聞こえんからな。種族内では普通でも」
「くぅ……飛行タイプの種族の方々は何故皆胸が大きめなのでしょう……」
「一説には、羽ばたく時に胸の筋肉を使うから、その近くに栄養分となる脂肪を溜め込むようになっているとか何とか」
「どこの誰がそんなこと決めたんでしょうね……」
「……多分、トーヨー史に詳しくて胸とお尻が大好きでピジョットが嫁の人」
「だからメタな話はよそうか」



 ……十数分後。
 妙に生き生きとしている三人を連れて、マサキが戻ってきた。

「やー、ホンマにおおきに!……どないしたんやお二人さん、えらい落ちこんどるけど」
「いや、ちょっとな……それよりもそっちこそどうしたんだ?」

 アキラが聞くと、ユキメが柔らかく笑いながら答えた。

「実は、データ取りのついでにリフレッシュもしてもらったんですの」
「リフレッシュって、どんな?」
「そうですわね、私の場合は氷雪浴とでも言いましょうか……仮想とはいえ、久しぶりに一面の銀世界に触れられて素敵でしたわ」
「へぇ……ノッサやスイクンも?」
「はい!僕は全身のマッサージと整体みたいのをやってもらいました!」
「あたしも、好きなだけお酒飲めたしさいっこー♪」
「はは、喜んでもらえたなら何よりやわ」

 後の部屋から「何やこの額はー!?」「伝説のデータと引き換えなら安いものって言ってたわよ」という声が聞こえてきたが、アキラはとりあえず今は気にしないで後でスイクンを〆ることにした。

「色々と世話になったみたいだな。さんきゅ」
「えーってえーって。ところでアキラ、帰りにハナダ寄る用事ある?」
「ハナダ?まぁ折角だしカスミさんに挨拶くらいはしてこうかと思ってるけど」

 その答えを聞くと、マサキは真面目な顔になって言った。

「……せやったら、なるべく寄り道せーへん方がええで」
「……なにかあったのか?」
「あったっちゅーか、現在進行形やな。実はな……」

 マサキの話を要約すると、こうだ。
 先の萌えもんの暴走事件以来、被害を受けた市民の間で萌えもんに対する不信感が強まってきている。
 また、詳細が伏せられていることから、この事件自体が萌えもん協会が起こした不祥事ではないか?と勘繰る者まで出ている。
 それを受けて「全ての萌えもんは管理されるべきである」という思想を持つ市民団体と、ハナダジムとの間で何度か衝突があった。
 ……それらの話を聞いたアキラは、完全に面食らっていた。

「んな、ばかな……あの事件の顛末は詳細にした方が混乱するからって伏せられてたのに」
「ま、市民の感情も理解できへん訳やないがな。仲のよい隣人やと思うてたら、突然暴走して家を壊され、傷を負わされ……人によっては家族を奪われとる」
「だからって……その状況から救ってくれたのも萌えもんだろうに!」
「せやな。せやけどそうも思わん連中も居るっちゅうことや。気つけとき」
「……ああ、情報ありがとう。またな」

 そうして、アキラはマサキの家を後にした。



 その後、ハナダジムへ飛ぶこと数分。
 降り立とうとすると、なにやらジムの前に人だかりができているのが見えた。

「なんだあれ……まさか、マサキの言ってた市民団体ってアレのことか?」
「……アキラ君、どうする?」
「そうだな……人目につかないように、ジムの裏に降りるぞ。ちょっと様子を見よう」



 ハナダジム前。
 そこでは市民団体が一人の少女を取り囲んでいた。
 もっとも、取り囲まれている少女も怯んではいない。
 胸を張って腕を組み、彼らを正面から睨み返している。
 ピリピリと張り詰めた空気の中、均衡を崩したのは少女……ハナダシティジムリーダー・カスミのほうであった。

「あんたたちねえ……いい加減な言いがかりはもうやめてもらえないかしら?」
「言いがかりだと!?」
「言いがかりよ!あれはロケット団残党による犯行で、ちゃんと協会が派遣したトレーナーが止めてきたって報告があったでしょ!」
「嘘をつけ!自分たちに都合が悪いからって隠すな!」
「勝手な妄想はやめなさい!それに全萌えもんを管理するですって?バカらしい、彼らの意思はどうするって言うのよ!」
「奴らの意思なんか関係ない!我々の安全のためには、全てを管理する必要があるんだ!」
「そんなことが許されると思って……!」
「うるせぇ黙れ!協会の犬風情が!」

 そう吼えた男がカスミに石を投げつける。
 反射的に自らをかばうカスミ。
 だが、その石は見えない壁によって弾かれた。

「な、何だ!?」
「おいおい……女性一人を取り囲み、挙句石を投げるとか、あんたら人として恥ずかしくないのか」
「誰だてめぇ!出て来い!」
「言われなくとも……っと」

 罵声に応えるように、屋根の上からヨルノズクを伴った青年が降りてくる。
 アキラとホウである。
 二人はカスミと人だかりの間に立ちふさがり……背後から怒鳴られた。

「ちょっとあんた!突然割り込んでなんのつもりよ!部外者はどいてなさい!」
「ちょっ……部外者は酷いな、知り合いが囲まれてたからマズいと思ったのに」
「知り合い……って、ああああああっ!あんた、うちの子たちをヘルガー一人でボコしてバッジ取ってったナメ男!」
「……流石にその物言いは傷つくんだが」
「うっさいわね!相性良い筈の炎タイプの子にジムバッジ戦とはいえ3タテストレート負け食らったあたしのプライドの方が傷だらけよ!」

 突然繰り広げられた喧嘩(というには一方的だが)に面食らう市民たち。
 が、延々と彼らをスルーして続けられるそれにとうとう先の石を投げた男が食いかかった。

「てめぇ、ナメやがって……!ただのカッコツケならどいてろ、怪我したくなかったらな!」
「だから知り合い……つか一応関係者なんだな、これが」
「は?あんた、とおりすがりのトレーナーやってたんじゃなかったっけ」
「ちょいと思うところがあってな……今はトキワジムでサブリーダーやってる。今日はその挨拶も兼ねて来たんだけどな」
「なによそれ、聞いてないわ!」
「だから今日言いに来たんだって。それに書類には書いてあっただろうに」
「顔は覚えてたけど名前まで覚えてないわよ!」
「さいですか……」

 と、再び始まる漫才(?)。
 そんな時、人だかりの外側がガヤガヤ言い出したと思うと、すっと道ができて一人の男が通ってきた。

「まあまあ皆さん、そんなに熱くならないでもよろしいでしょう」
「ら、ラーク様!?」
「様付け……?カスミさん、彼は?」
「……奴らの幹部よ。面倒なのが出てきたわね」

 そういって嫌そうな顔をするカスミ。
 そんな彼女に、男……ラークはうやうやしく挨拶をした。

「これはこれはジムリーダー殿。ご無沙汰しております」
「一昨日ぶりのどこがご無沙汰なんだか。顔も見たくなかったわ」
「おやおや、嫌われていますね。そちらの方は……見ない顔ですね」
「まぁ俺は新参だし、リーダーでもないから当たり前か。トキワのリーダーの補佐をやってる」
「なるほど、あなたがあのトキワの……こちらから挨拶しに行く手間が省けましたよ」
「挨拶ね……あんたは何者なんですか?」
「おお、これは失礼いたしました。わたくし、アッシュ団幹部のラークと申します。以後、お見知りおきを」
「んで、どうしてこうなってるのか説明してもらえないですかね?」
「どうしてもこうしても、彼女が我々の言葉に耳を傾けて頂けないのがいけないのです」
「誰があんな話をマトモに聞くもんですか!萌えもんがかわいそうじゃないの!」
「ですが、次同じようなことが無いとも言い切れません。そんな時、あなたたちは街を護れるのですか?」
「そんなの、当たり前じゃないの!」
「ええそうでしょう。当たり前です。『護れるはずがありません』」
「っ!」
「おい、どういうことだ!」
「今回の暴走のときのこと、ご存じないのですか?リーグがあるからとジムを空け、肝心なときに不在。
 挙句戻ってきた後も、ヘタな戦いをして悪戯に被害を増やす。
 さて問題です。『今回護れなかったのに、次は護れるという根拠は何でしょう?』」
「うるさい……うるさいうるさい!もっと勉強するし、対策だって考えるわよ!」
「しかし、その対策に意味は無い。なぜなら、事件を起こしたのはあなた方協会……無論、リーグ中に事件があったのも自然に各地を手薄にするため」
「違う!そんなのデタラメよ!」

 のらりくらりと語るラークに、過熱していくカスミ。
 見ていられず、アキラは間に割り込んでいた。

「カスミさん、一旦落ち着くんだ。確かに奴の言ってることはデタラメだけど、デタラメだという証明ができないんじゃ仕方ない」
「それは……そうだけどっ!」
「いいから。とにかく、こうやって話してても不毛だし……これ以上文句付ける気なら、相手になるぜ?」

 そう言ってアキラはボールに手をかけ、ホウは一歩前に踏み出る。
 が、ラークは表情を全く変えずに一歩前に出た。

「……おい、何のつもりだ?」
「おやおや、我々の話を聞いていなかったのですか?我々は萌えもんによって被害を被った者。故に、萌えもんを連れてはおりませんよ?」
「だから何だってんだよ?」
「いいえ、何も。ただ……丸腰の相手に萌えもんで攻撃を仕掛けるほど、貴方も愚かではないでしょう?」
「……なるほどね。ここで実力行使に出れば、その時点で『萌えもんが人間に害を為した』証拠が取れるって寸法か」
「人聞きの悪い。私はただ単に戦う意思は無いと言っているに過ぎません」
「戯言はもう十分だ。んで、どうすんだよ」
「……これでは埒が明きませんね。本日のところはこのくらいにしておきましょう。皆さん、解散です。お疲れ様でした」

 ラークがそう言って手をたたくと、蜘蛛の子を散らすように市民達は去っていった。
 それを確認して、ラークは再びアキラ達にその能面のような微笑を崩さずに「では、御機嫌よう」と挨拶すると、何事も無かったかのように去っていった。
 残されたのは、アキラ、ホウ、カスミの三人だけ。

「……アキラ君」
「何だ?」
「疲れた……」
「お前、もうちょっと空気読んで発言してくれ……」
「……戻ってていい?」
「いいよ、お疲れ……カスミさん?」

 ホウをボールに戻し、アキラはさっきから黙ったままのカスミに声をかける。
 カスミは今にも泣きそうな表情で、ギリギリと歯を食いしばっていた。

「あの、謂れの無いこと言われて悔しいのはわかります。でも……」
「違うのよ……全部、事実よ……」
「え?」
「あたしがトレーナー引き連れてリーグ行ったのも……建物ごと暴走萌えもんを押し流したのも……事実だわ……言い返せなかった……ッ!」
「カスミさん……」
「ゴメン、あんたにつっかかったりして……あと悪いけど、今日は帰ってもらえる?ちょっと、落ち着いて話できる気分じゃないわ」
「……わかりました。でも何かあったら連絡してくださいよ。俺は当然、クリムだって、きっと力になってくれるはずですから」
「……ありがとう。あとなんか堅苦しいから、敬語はやめてくれる?年だって大して違わないでしょ」
「それ、マサキにも言われたな……了解、カスミ。これでいいか?」
「OK。じゃ、ね」
「ああ」

 そうして二人は別れ、それぞれの帰るべき場所へと帰るのだった。



「ただいまー……あー、疲れた」

 トキワジムに戻るなり、アキラはレストルームのソファに倒れこむ。
 奥からクリムとシャワーズが、淹れたてのコーヒーを持って来てアキラに差し出した。

「お疲れ様です。どうぞ」
「ああ、さんきゅ……あー、ったく参るなぁ」
「お疲れ。つかどうした。やたら遅かったが、何かあったのか?」
「何かも何も……エラい奴らに会った」

 そう前置きして、アキラはハナダであった事を話した。
 その話が進むにつれ、クリムは渋く、シャワーズの方は悲しげな表情になっていく。

「……ってことがあったんだよ」
「アッシュ団……か。ったく、漸くロケット団を潰して落ち着いたと思ったらこれだ」
「それにしても、あの事件でそれほどまで萌えもんに不信感や危機感を感じている人々が居たなんて……」
「まぁ、ハナダシティはあの事件で最も大きな被害を受けてるからわからないじゃないけれど」
「にしても動きが早いな。ロケット団の元傘下か、それとも似たような対抗勢力だったのか……どっちにしろ、放ってはおけないな」

 コーヒーを飲み干し、クリムは立ち上がる。
 それを追う様に、アキラも立ち上がった。

「けど、挨拶が省けたってことはこっちにも勢力伸ばすつもりだろうし、迂闊には動けないぞ」
「いや、大丈夫だ。こっちにはリーダークラスの人間が二人居る」
「マスター、それってもしかして……」
「ああ。俺かアキラ、どっちかがジムを守り、どっちかが捜査する。これならいけるだろ」
「なるほどな……確かに、俺たち二人で防衛しなきゃならない敵なんてそう居ないか」
「居たとしたら、それこそミュウツークラスだろうし。その時は四天王の応援要請もするさ。折角近いんだしな」
「あはは……」

 そんなクリムの物言いに、アキラは苦笑した。

「にしても、相手が萌えもんを連れていないとなると厄介だな。押しかけられてもこっちからは手出しができん」
「最悪、門を閉めて立てこもるしかありませんね」
「それにもう一つ気になることがある。連中、全萌えもんの管理っつってたんだろ?具体的に何するつもりなんだ?」
「言われてみれば……そもそも現状のトレーナーと萌えもんの関係だって、言い方は悪いが萌えもんを管理してるようなものだし」
「全萌えもん、と言っているくらいですから、野生の存在を認めないということでしょうか」
「それとも、今のトレーナーと萌えもんの関係をより人間優位に変えていくつもりか……あるいは、両方かもな」
「……私、怖いです。もし本当に彼らの言うような世界になってしまったら、私とマスターの関係も……」
「大丈夫、変わらねーよ。そもそも、そんな世界にはさせねえ。シャワーズ、俺を信じろ」
「マスター……」
「シャワーズ……」

 クリムの言葉に、瞳を潤ませるシャワーズ。
 見つめあった後、瞼を閉じたシャワーズにクリムが口付け……ようとした所でアキラは咳払いをした。

「あー、ゴホン。お二人さん、そういうのはせめて二人でいる時にやってくれ。俺一人置いてきぼりじゃねーか」
「へ?あ、う、あ、ごごご、ごめんなさいいぃぃぃっ!!!」
「なんだアキラ、混ざりたいならそう言えば混ぜてやっぞ。当然、制限つきだが」
「マ、マスター!?何言ってるんですかぁっ!?」
「誰が混ざりたいと言った。つかシャワーズが沸騰しかけてるがいいんか」
「無論だ。こうなってるシャワーズも可愛いだろ?」
「か、か、かわ、わ、わはぁぅ……(プシュー」
「あ、のぼせた」
「やれやれ、しゃーねぇ。アキラ、俺はとりあえずシャワーズ寝かせてくるから後片付け宜しくな」
「おめーの事だから寝かせてくるだけじゃ済まないんだろーな……まぁいいや。仲良くしてこい」

 クリムがシャワーズを抱き上げて去っていくのを見送りつつ、今夜はどうデル達を可愛がってやろうかと想いを馳せるアキラだった。



 ほぼ同じ頃、カントー某所。
 嫌らしくない程度に豪華な部屋に、二人の男が居た。
 片方はいかにもビジネスマンといった出で立ちの若い男。
 もう片方はぼさぼさの頭にくたびれたシャツ、薄汚れた白衣という、如何にも研究員然とした老人だった。
 若い方の男は読んでいた書類を机に置くと、老人の方に視線を向けた。

「なるほど、開発のほうは順調のようだね」
「ええ、そうですとも。何せ、理論と根幹の設計だけは既に出来上がっていましたからなぁ」
「素晴らしいね。これが完成すれば……フフフ、世界を変えられるだけの力が手に入る」
「わしゃ力なんぞ興味ありゃしませんが……ひひひ、研究さえ続けさせとくれるんならいくらでも協力しまさぁ」
「勿論さ。じゃあ早速だけど、これの試作品のテストをしたいね」
「でしたら、お月見山なんぞどうでしょ?」
「お月見山かい?」
「ええ、あの山には珍しい萌えもんの集落があるという噂。そこの住人ならば……試した後、高く売れるかと」
「フフフ……なるほど。では早速手配するとしよう」
「人選はどうなされますかぃ?」
「僕が今決めよう。そうだな……バージニア、ケント、フィリップの三人を向かわせろ」
「わかりました、伝えときまさぁ」
「宜しく頼むよ、グレイ博士」
「こちらこそ、シガー社長」

 そう言葉を交わし、博士と呼ばれた男は部屋を後にする。
 残された社長と呼ばれた男は、ガラス張りの壁……外は高層ビルの森が眼下に広がっている……に歩み寄り、笑いを零す。

「そう、力だ……力があってこそ全てを制するのだ……フフフ……フハハハハハハハハハハ!!!」

 月は、もうあとわずかで満月になろうとしていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・後書き

 どうもこんにちわ、曹長です。
 ……気がつけばまた半年近く放置。もっとがんばらにゃ。

 さて、今回のお話ですが……えー、ほのぼの日常話、一話で終了のお知らせが入りました(ヲイ
 どーも私はなにかと若干ハード目な話が好きなようで。
 今後の人間と萌えもんの関係はどうなってしまうのか?
 アッシュ団とは何者なのか?
 アキラ達はそれにどう立ち向かうのか?
 それはまた次回以降、乞うご期待!

 そして毎度のことになりますが、キャラ貸し出し・クロスオーバー等、ストーム7氏に感謝です。
 それではまた、次回の後書きでお会いしましょう。
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