5スレ>>885-2


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 ピカチュウ達の後を追って森の中を走り回っているうちに、オレたちはさらに迷ってしまったらしい。
 あのときは状況が状況だっただけに急いでたから周りの確認もできなかったしな。

「ねー・・・」
「・・・あ?」

 もはや会話するのもしんどくなってきた。暑いし。

「あと、どれくらいで、着くのよ・・・」

 聞くな。考えるだけで嫌になる。

「・・・・・・知らん」
「き、きっと、もう少しですよ!」

 マドカが励ましてくれるが、マドカもマドカで相当疲れているみたいだな。
 どうしたもんか・・・。

「あ、あのー・・・」

 ・・・なんか声が聞こえた気がする。
 幻聴とは・・・これはもうダメかもしれんな。

「あのー!」

 アマネ・・・すまん、どうやらオレはここで終わりのようだ。
 お前は立派なポケモンマスターに・・・って、ん?
 声に振り返るとそこにはピカチュウが立っていた。たぶんさっきのピカチュウか。

「・・・なんだ」
「マ、マスター! 顔が怖いです!」

 疲れのせいで顔がしかめっ面になっていたらしい。そういやそれで怖がらせたんだった。

「もしかして・・・迷ってる?」
「・・・あぁ、大絶賛迷子中だ」

 もはや迷ってるのを否定するほどのプライドすらない。

「・・・もしよければ、ボクが案内しようか?」
「ぜひ頼む」

 即答だった。これ以上ないくらいに即答だった。

「う、うん、じゃあ着いてきてね」

 そしてオレたちはピカチュウの案内に着いていくことにしたのだった。


 いや、これは本当に助かったな・・・。
 ピカチュウは、たぶんこの森で暮らしてるせいだろう、特に止まることもなく、森の中をすいすいと進んで行った。
 しかもオレたちの進んでた方向とは逆側に。どんだけ方向音痴なんだオレは。
 けど・・・。

「ご、ごめん、サイカ、ちょっと足が・・・」
「わ、わたしも少し・・・」

 さすがに限界か。長時間歩きまわった後に走り回ってその後また歩きだしな。
 かくいうオレもいい加減足が棒になってきてる。

「えっと、もう少しで広い所に出るから、それまで我慢してね」
「だ、そうだ。もう少し頑張ってくれ」

 戦ったせいでおそらく二人の方がオレより疲労は強いんだろうな。
 二人を励ましながら歩いていると、開けた場所に出た。たぶんここがピカチュウの言ってた場所だろう。

「んじゃ、ここで一度休憩にするか。それでいいか? えっと・・・」

 そういやピカチュウの名前まだ聞いてなかったな。

「あ、ボクはルイザ、だよ」

 オレの視線に気づいたのかピカチュウ、ルイザがそう返してきた。

「じゃあ、ルイザ、それでいいか?」
「・・・うん、たぶん・・・」

 案内役のルイザに確認を取ろうと思ったのだが、返ってきたのは曖昧な返事。
 たぶん、あの追ってきた連中のことを気にしてるんだろうな。
 まぁ、嫌がってはいないみたいだし、ここは甘えておくか。もしものときは・・・何とかなるだろ。

「ふぅ・・・足がパンパンです」
「はぁー、疲れたー」

 マドカとアサギも思い思いの場所に座り息をつく。
 オレとルイザも少し距離を置いて適当なところに座った。
 んー、しかしあの連中のことを聞いてもいいものか・・・。
 あまり立ち入ったことを聞くのもどうかと思うが、けどなぁ・・・。

「ねぇ、ルイザ。あんた、なんであんな奴らに追っかけられてたのよ」

 アサギさん、もう少し、こう段階を踏んでさ・・・。
 案の定ルイザの表情は硬くなっていた。

「あ、あはは、あれは、ボクが悪いから・・・」

 声がどんどん小さくなっていく。無理矢理に笑ってみせるその笑顔はとても痛々しかった。
 聞いちまった以上はしょうがないか・・・。

「なぁ、よかったら話してくれないか。案内もしてもらったんだ。力になれるかもしれないし」

 ルイザは少し迷っていたようだったが、ポツリポツリと話し始めてくれた。

「ボクには友達がいたんだけど、一週間前その子にケガをさせちゃって・・・。
 その子はこの森で大きな力をもってるポケモンの子どもで、だからその子にケガをさせたことが問題になって、
 でも、ボクだって好きでケガをさせたんじゃなかったのに・・・!」

 絞り出すようにして話すその声は微かに震えていた。
 こんな小さな子が一週間も怯えて暮らしてたのか・・・。

「昔っからそうなんだ。ボクは自分の力を制御できなくて、だから仲間たちからも嫌われてて、
 そんなボクでも友達になってくれたのに、なのに・・・あんなことになるなんて・・・」

 最後は嗚咽混じりだった。
 きっと追われることが辛いんじゃない。友達にケガをさせてしまったことが辛いんだな。

「あいつらはその話を聞いてくれたのか?」

 ルイザは黙って首を振る。
 だろうな。あのスピアーの様子じゃ聞く耳持たずって感じだったし。

「なんなのよ・・・なんなのよなんなのよあいつら!!」

 激昂して疲れも忘れ立ち上がるアサギ。気持ちは分かるが落ち着け。

「サイカ、あいつら次会ったらギッタンギッタンに・・・」

 お前、それは・・・!

「アサギちゃん!」

 オレが制止しようとした瞬間、大きな声が響き渡った。
 それは今まで聞いたことがないようなマドカの声だった。

「な、なによ、マドカ。あんただって分かるでしょ! あいつら・・・」
「それでも、ダメだよ・・・そんなの」

 マドカがルイザにすっと近づく。
 ビクッと身をすくめたルイザの頭の上にそっと手が置かれた。

「ルイザちゃん、その友達のこと今でも友達だと思ってる?」
「・・・・・・うん」

 優しい問いかけに涙声ながらも応えるルイザ。

「もし、その友達が許してくれるならまた仲良くなりたい?」
「・・・うん!」

 今度はよりはっきりとした答え。
 その答えにマドカはにっこりと微笑み、アサギに向き直る。

「ね? だからダメ、今、わたしたちがもめ事を起こしたら直るものも直らなくなっちゃうから」
「ん、そ、そうね・・・わかったわ」

 しぶしぶといった感じでアサギもうなずく。
 ・・・驚いたな。まさかマドカがこんなにはっきり否定の言葉を口にするなんて。
 それにルイザに見せたあの微笑み。小さい身体からは想像もできないような慈愛に満ちた微笑み。
 けど、なんだ・・・。その笑顔を見てなんでオレはこんなにも・・・モヤモヤするんだ・・・?

「というわけでマスター、なんとかなりませんか?」

 そこで矛先がオレに向くのかよ・・・。とりあえずモヤモヤは置いておくとして。
 そうだな、交渉に行くのもいいかもしれんが、あの様子だと目が合った瞬間に襲われかねん。
 そうなると結局もめ事を起こす羽目になるしな・・・。
 どうしたもんか・・・。

「あ、ねぇ、それだったら、あたしたちについてくるっていうのはどう?」

 考え込んでたオレをよそにアサギが提案をしてくる。
 あー、考えないでもなかったんだがなぁ。

「え、えっと、それは・・・」
「大丈夫、大丈夫、あたしたち強いから、もしもってときはちゃんと守ってあげるわよ!」

 乗り気なアサギに対してルイザは口ごもっている。
 そしてチラッチラッとこっちを見て・・・オレ?

「あ、もしかしてサイカが怖い? そうよねぇ、いっつもしかめっ面だし。けどなんだかんだでその・・・優しいし」

 ルイザの視線に気づいたのかアサギがフォローを入れてくる。・・・フォロー、でいいんだよな。

「あ、あの、そうじゃなくて! ボクは・・・電気が使えないから」

 ピカチュウなのに、電気が使えない? ・・・なるほどな、それであの時。
 いや待てよ、さっきは。

「でも、さっきは『制御できない』って言ってたよね? 使えなくなっちゃったってことかな?」

 マドカの優しい問いかけに、俯きながらルイザは話を続ける。

「・・・ボクが友達にケガさせちゃったのは、ボクの電気が原因だったんだ・・・。
 あの日、森を二人で散歩してたら偶然人に会っちゃって、その人は友達を捕まえようとしたんだ。
 だから、危ない、と思って電気で邪魔しようとしたんだけど、それが友達にもあたっちゃって・・・。
 それから・・・電気を使うのが怖くて・・・使えなくなっちゃったんだ・・・。
 ボクも人に捕まったりしたんだけど、電気が使えないってわかると、みんな、ボクを捨てちゃう、から・・・っ!」

 再び声に嗚咽が混じり始める。
 そういえば一週間くらい前にトキワの森でものすごい落雷があったな。
 雲もなかったのに雷が落ちたってことでちょっとした話題になってたっけか。
 あのすごい落雷をこいつが起こしたんだとしたら、力が制御しきれないのもそうだろうし、それで友達を傷つけてしまった怖さも相当だろうな。
 仲間に嫌われ、友達を傷つけてしまい、トレーナーにも捨てられる。
 この子が、この一週間で抱えた恐怖や悲しみはどれだけのものだっただろうか。
 あの時、オレを見て逃げ出したのも、きっとまた人に捨てられることを恐れたんだろうな。
 ・・・なんか、昔を思い出すな。

「そんな・・・」
「・・・ほんっとに人間って最低ね」

 ルイザの告白にマドカとアサギも思い思いの反応を返す。
 これだけたくさんのトレーナーがいればそういうやつもいて然り、か。
 それ自体はしょうがないことなんだろうな。
 けど、それでもオレは。

「・・・ルイザ」

 肩を震わせて泣いているルイザの頭に手を乗せ、はっきり言ってやる。

「オレと一緒に来い」
「えっ・・・?」
「マスター!」
「サイカ!」

 オレの突然の提案にルイザは驚いたような、マドカとアサギは嬉しそうな表情をする。

「け、けど、ボクは・・・」
「安心しろ。バトルに出そうなんて思っちゃいないさ」

 そう、そんなつもりは毛頭ない。ただ・・・似てるんだ。

「オレも昔周りに冷たくされてたことがあってな。お前はその時のオレに似てる」

 あれはオレがトレーナーをやめたくらいの頃。
 理由は分からなかったが、街の人たちがオレを、いやオレの家族を避けるようになった時期があった。
 前は友達だった奴らも、掌を返したように目さえ合わせないようになっていた。
 まぁ、オレ自身そんなことはあまり気にはならなかったんだが、それなりに堪えるものもあった。
 けど、オレにはそんな時でも一緒にいてくれる奴がいた。
 変わらず親友であり続けてくれた、あのバカが。

「今は、その友達にも会えないんだろ? だったら誰か一緒にいる奴が必要なんだ、お前には」

 あいつのように。せめてオレたちがお前の友達の代わりになれたら。

「い、いいの? ボクが一緒に行っても・・・」

 不安げな眼差しで顔を上げるルイザ。

「もちろん、大歓迎だよっ!」
「大丈夫よ! バトルなんてあたしとマドカだけで十分なんだから!」

 その不安は諸手をあげての歓迎で迎えられるのだった。

「ここのほとぼりが冷めるまででもいいし、お前が嫌になったらいつ離れてもいい。
 まぁ、オレは少なくとも歓迎するよ」

 そう言って手を差し伸べてやる。
 涙をぬぐって見せたルイザの笑顔は、

「・・・うん、ありがとう・・・!」

 あの悲しみを隠した笑顔じゃなく、きっと心からの笑顔だった。


「けど、サイカがいじめられてたってのはなんか意外だったかもねー」

 いじめられてたってのはちょっと違う気もするけどな。
 あの後、オレはルイザを仲間にし、森を歩き続けていた。ルイザによるともう少しで出口だそうだ。
 さすがに空がだんだん赤くなってきている。暗くなる前に抜けられて本当によかった、本当に。

「でも、それって原因は何だったんでしょうね?」
「ん? いや、それがよく分からないんだよな」

 マドカの問いかけに答えながらも当時を思い返す。
 が、正直なんでそんな事態になったのか思い出してみても思い出せない。

「もしかしたらトレーナーやめた時に何かあったのかもしれないけど、あんまりその頃のことは覚えてなくてな」

 それもそのはず、オレはその周辺のことは覚えてなかったのだから。

「え!?」
「そ、それってどういう・・・!?」

 マドカとアサギが驚いたような反応を返す。
 ・・・なんだってそんな驚くんだよ、二人とも。

「いや、単純にトレーナーやってた頃のことを覚えてないっていうか。記憶喪失みたいなもんか?
 そんなに驚くようなことでもないだろ?」
「「驚きます!・驚くわよ!」」

 二人の声が見事にハモった。
 あぁ、あれか本人があまりに慣れすぎてただけってことか、うん。

「と、とにかく、その辺のことはあまり覚えてないんだよ!」

 なんだか責められるような展開になってきたのでこの話はおしまいとばかりに言葉を結ぶ。

「そう、ですか・・・」
「・・・・・・」

 なんだが、どうやら二人は神妙な面持ちになってしまっているようだ。
 むぅ、やっぱりトレーナーがこんなだと手持ちも不安になるんだろうか・・・。

「あ、もう少しで着くよ!」

 先行して案内してくれていたルイザが元気な声で教えてくれる。
 さっきまではどこか後ろめたい感じだったけど、きっとこの元気な声が本当のこいつなんだろうな。

「あぁ、分かった。ほら、行くぞ」

 いい加減森を抜けてゆっくり休みたかった。
 まだ神妙な顔をしている二人を急かして森を抜けようとした瞬間、

「ルイザちゃーん!」

 小さくだが、ルイザを呼ぶ声が聞こえた。

「っ! あの、声・・・!」

 ルイザがその身を硬くする。
 まさか、スピアー達が・・・いや、だったらあんな呼び方はしないか。
 ってことは・・・。

「ルイザちゃん!」

 少し経って姿を現したのはビードルだった。

「ビードルちゃん・・・」

 ビードルを呼ぶルイザの顔が曇る。やっぱりこいつが例の友達か。

「ご、ごめ・・・」
「ごめんなさいっ!」

 謝ろうとしたルイザの声がビードルの声に遮られる。

「・・・えっ?」
「スピアー達に話を聞いたの! わたしの知らない間にルイザちゃんを捕まえようとしてたなんて・・・」

 どうやらあのスピアー達の行動はこの子の指示だったわけじゃないようだな。

「わたし、あの日から今日まで寝込んでたみたいで・・・ケガはそんなになかったんだけどショックが大きかったみたい。
 でも、わたしが起きなかったもんだからお父さんたちが慌てちゃって・・・」

 先走っちまったってわけか。

「本当にごめんなさいっ! お父さんたちにはルイザちゃんは何も悪くないって言っておいたから!」
「・・・あり、がとう・・・っ! それにボクの方こそごめん・・・」

 ルイザの目から涙がこぼれる。やっぱり怖かったんだろうな、許してもらえないんじゃないかって。

「あのときもうちょっと落ち着いていれば、ケガなんてさせなかったのかもしれないのに・・・。
 本当にごめんっ!」

 ・・・どうやら解決しそうだな。短い付き合いだったか。

「ね、だからまた前みたいに・・・」
「うぅん、やっぱりボクはしばらく森を出るよ」
「え!? どうして・・・」

 ビードルから意外そうな声が上がる。
 オレとしても意外だった。仲直りできたならてっきり森に残ると思ってたんだが。

「なんで!? わたしは別に・・・」
「ビードルちゃんが許してくれても、やっぱりケガをさせちゃったのはボクだし・・・。
 だから、自分がちゃんと納得できるまで考えてみたいんだ」

 なるほどな・・・身体は小さいけど芯は相当に強そうだ。

「そっか・・・あの人たちについていくの?」
「うん、お兄ちゃんはこんなボクでも一緒に来いって言ってくれたから」
「寂しく、なっちゃうね・・・。ねぇ、離れてても、友達だよね?」
「もちろんだよ! 自分で納得のいく答えが出たら、きっと戻ってくるから」
「うん、約束だよ!」

 そう言って二人は指切りをする。
 離れていても友達か。オレたちはどうだったかね。
 そんなバカみたいなことを考えたら「さぁな」って笑い声が聞こえた気がした。うるせぇ、バカ。

「じゃあ、行くね」
「うん、頑張ってね!」


 別れの挨拶をすませ、オレたちは揃って森を出る。ルイザとビードルは最後まで名残惜しそうに手を振っていた。

「よかったのか、これで」

 傍らを歩くルイザに問いかける。森でゆっくり暮らすこともできただろうに。

「うん、少し迷ったけど、やっぱり納得できない人もいるだろうし、ボクだって納得できないんだもん。
 ちゃんと自分で納得できなきゃ、他の人だって納得させられないよ」
「そうか・・・」

 最初会ったときはあんなに怯えた表情をしてたっていうのに、今はずいぶん晴れ晴れとした表情をしてる。
 憑き物が落ちたってところか、よかったな・・・。
 それはそうと。

「ところでルイザ」
「ん? なに、お兄ちゃん?」
「・・・そのお兄ちゃんってのはなんだ?」

 ビードルにも言ってたけど・・・お兄ちゃん?

「へっ!? あっ、つい・・・。
 その、お兄ちゃんっていたらこんな感じかなぁって思ったんだけど、ダメ、かな・・・?」

 んー、まぁ、その、なんだ。

「・・・いいんじゃねぇか」
「あ、マスター照れてますよ!」
「ププ・・・顔が赤くなってる!」

 こいつらボールに押し込めてやろうか・・・。
 ともかく、そんなこんなで迷いに迷ったトキワの森をようやくの思いで抜けたのだった。
 新たな仲間を増やして・・・。


「ふー、いい風呂だった」

 そんな独り言が漏れるほどいい風呂だった。センター様々だな。
 トキワの森を抜けてニビシティに辿り着いたオレたちは、時間も時間だったため、ポケモンセンターに宿泊することにした。
 トレーナーは料金格安で泊まれる上に設備も充実。言う事ないな。

「あ、そうだった」

 一つ、気がかりなことがあった。
 オレは財布をとり、公衆電話のスペースへ向かう。
 硬貨を電話機に入れ、慣れ親しんだ番号をプッシュする。
 呼び出し音がしばらく鳴り、相手が電話に出た。

『はい、もしもし』
「あぁ、お袋? オレ、サイカ」
『あらあら、誰かと思えば。こんな時間にどうしたの?』

 電話に出たのはオレのお袋だった。
 家に電話した理由。それはどうしても確かめたいことがあったから。

「いや、ちょっとお礼を言っておきたくてさ」
『ん? お礼?』

『マスターのお母さんに聞いたんです・・・』

「マドカにオレの好きなもの教えといてくれたんだろ? そのお礼をさ・・・」

 まだ、会って一日くらいしか経ってないはずなのに。
 なぜか気にかかってしょうがない。
 時折見せる仕草や表情、そして言葉が。
 自分でも分かってる、バカなことを考えてるくらい。
 だから、確かめたかった。

『・・・・・・・・・・・・』
「お袋?」

 受話器の向こうは無言。
 本当は・・・どうなんだ。

『あぁ、はいはい、あんたが蕎麦好きだってことね。そうそう教えたわよ。
 昨日あの子と話し込んでるうちにねぇ』

 ・・・・・・・・・・・・。
 なんだ、やっぱりそうか。

「あ、あぁ、それ。ありがとな」

 そりゃ、そうだよな。

『それくらいいいわよ。で、なぁに? まさかそれだけで電話したわけ?』
「べ、別にいいだろ。まぁ、そういうことだから、それじゃ、おやすみ」
『はい、おやすみ。風邪ひかないようにしっかり布団かぶりなさいよ』
「・・・子どもじゃないんだから」

 受話器を置く。
 まさかと思ってたんだけどな。
 偶然つけた「マドカ」の名前だったけど。
 まさか、あいつが「マドカ」の生まれ変わりだなんて。
 小学生か、オレは。こんなロマンチストっぽい考え、オレには似合わないっての。

「はぁ・・・寝るか」

 頭を振ってバカな考えを追い出し、オレは早々に寝床につくことにした。


 ツーツー・・・。
 受話器の向こうから聞こえるのは不通音だけ。
 受話器を置き、彼女は溜め息をついた。

「あの子は、『覚えて』たのね・・・」

 息子の問いかけにとっさに出た言葉。
 そういえば、あの子は料理が好きだったから。

「あなた・・・」

 テーブルに飾られた写真に話しかける。
 そこには30代半ばくらいの男性が笑顔で写っていた。

「あの子たちを、どうか守って・・・」

 写真を抱きしめ、祈る。
 愛しき子どもたちのために。



駄文
 ヒャッハー!!ようやくいろんなことが終わったぜー!!というわけで前回からだいぶ空きましたが第三話です。
 某動画サイトなら「うp主失踪」タグがつきそうなところ。もっとペース上げたいなぁ。
 いろいろ謎や伏線も絡んできましたがちゃんと回収することはできるのでしょうか!?(ぇ
 では、第四話、ニビジム戦でお会いしましょう!
ツールボックス

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