5スレ>>889-13


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sweet hideout 1-9b メロウ(ゴル姉)ルート



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俺は視線をゴル姉に向ける。
 
【ゴル姉】
「~♪」
 
楽しそうに料理をするゴル姉。
 
決断力があって、料理の手際も良くて、
やっている仕事もかっこいい
才色兼備のお姉さんって感じがする。
 
【カイナ】
「………………」
 
【ゴル姉】
「ん? なんや? もしかしてもう腹ペコなんか?
煮るのに少し時間掛かるからアルと話でもして、
時間つぶして欲しいんやけど……」
 
【カイナ】
「あ、いや……別にそういうわけじゃないんだけど……」
 
視線に気付いたのか、申し訳なさ気に
気を遣ってくれる。
 
本当に深い意味はなかったけど
ただゴル姉の仕草に見惚れていた、
というのが素直な意見だった。
 
【アルティナ】
「ちょっと、うら若き雌を視線で汚さないでよ!
ゴル姉に失礼でしょ!?」
 
【カイナ】
「…………」
 
君はちょっとツンケンし過ぎだよ。アルティナさん。
 
でも、改めて自分がゴル姉を見惚れていた理由を考える。
 
それは仕草だけじゃなく、彼女の持つ不確かさが
気になっているからなのだろうか。

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【ゴル姉】
「ニンゲン……? ……まさ……か………」
 
【ゴル姉】
「知らんなぁ、ニンゲンとかいう種族なんて……
代わりに、ウチの目の前にいるオスらしきアンタが、
グラエナ種っちゅう萌えもんなのはよう知ってるけどな」
 
【ゴル姉】
「せや、その人も萌えもんのこと、よう知らん人でな。
ウチは物珍しさにその人と話してみたんや。
当然ウチの話し方も普通やった」
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彼女は幼い頃に俺と同じような人に会ったことがあって
その人と俺が似たような雰囲気をしていたからか思案した。
 
けれど、確証が持てないことから
嘘という形で言葉を濁したらしい。
 
人の世話を焼きたがるのに、自分のことはあまり明かさず、
表面上での会話しかしないという
矛盾とも感じるその不確かな性格に
俺は惹かれているのだろうか……
 
【???】
「『本心を知りたいから』、顔にそう書いてあるわよ?
彼女に負けないくらい世話焼きのカイナ君……」
 
【カイナ】
「な……!?」
 
饒舌な声がした後、辺りが急に暗くなる。
 
部屋も、テーブルも、
ゴル姉の姿も全て闇に掻き消される。
 
いや、それだけじゃない……!
座っていた筈の椅子の感触も、
そもそも『自分が座っていた』という感覚さえも曖昧で
宙に浮いているような奇妙な錯覚が体を取り巻く。
 
【???】
「こんばんわ……カイナ君。
こっちの世界は気に入ってくれた……?」
 
【カイナ】
「そ、その声……!?
まさか……あの時の……!!」
 
この人を喰ったような話し方は忘れようがない。
俺が意識を失ったときに聞こえてきた少女の声のそれだ。
 
この声がしてきた途端に俺以外の全てのものが
俺の前から無くなった。
 
つまり今この状況を作り出したのも
俺の意識を失わせ、この世界に連れてきたのも、
この声の主と判断するのが妥当だろう。
 
【カイナ】
「……アンタは何者だ? アンタも萌えもんなのか?
俺をこの世界に引き込んだのはアンタなのか!?」
 
【魔女】
「えぇ……貴方をこの世界に連れていたのは私。
萌えもんかどうかは言えないけど、
とりあえずは魔女と呼んでくれればいいわ」
 
【カイナ】
「魔女……身も蓋も無い呼び方みたいだけど、
合うっちゃ合うか……」
 
自分の中での魔女のイメージ、自分の身に起こった出来事、
それらを照らし合わせてみても、
魔女と名乗るこの娘の発言は筋が通っている。
 
けど、腑に落ちないことはまだ山ほどあった。
 
【カイナ】
「……何で俺を連れてきた?
気まぐれにしちゃ大掛かり過ぎる」
 
【カイナ】
「それに、俺なんかを連れてきたところで
何の得があるんだ? アンタの期待に答えられる事は……」
 
【魔女】
「……言ったでしょう? ここは、貴方にとって、
そしてこの娘達にとっても『隠れ家』だって……
辛い現実から逃れるための、甘い隠れ家……」
 
【カイナ】
「辛い……現実……?」
 
一瞬、頭の中に景色が流れ込んでくる
ノイズと共に写った景色は俺の……『あの家』……
 
【カイナ】
「……魔女ってのは人の家の事情にも
平気で入り込んでくるのかよ。悪趣味だな……」
 
【魔女】
「あら……気に障ったみたいね。ごめんなさい」
 
【魔女】
「でもね……貴方の事情を知らなかったら
この世界に連れてこようなんてしなかったわ」
 
皮肉を込めた言葉で魔女と名乗る少女の声に反発するが、
魔女は言葉を詰まらせることもない。
恐らくは俺の性格もある程度は把握しているんだろう。
 
【カイナ】
「なるほど、俺をここに連れてきたのは
現実からの逃避の手助けってわけか……」
 
【魔女】
「まぁ……そんなところね。
助かるわ。貴方は混乱も少なくて理解も割りと早いから
説明の手間も随分省けた……」
 
【カイナ】
「勝手に連れてこられたっていうのは頂けないけど
気遣いには結構感謝しているんだよ」
 
【カイナ】
「でも、聞いておきたいことがある」
 
曲がりなりにも魔女は
俺が元の世界で満たされていないと感じて
この処置をしたんだろう。
 
けど、あまりに唐突過ぎる出来事だから
今から聞く事柄は、必ず必要になる。
 
【魔女】
「聞いておきたいこと……何かしらね?」
 
【カイナ】
「俺はちゃんと元の世界に帰れるようになるんだよな?
こっちの世界が少し気に入ってるっていうのはあるけど、
それだけで割り切れる問題じゃないだろ?」
 
声の主に二度と会えないなら、この世界での永住も考えた。
 
けれど、元の世界の事柄、
学校やアルバイト、交友関係など社会的な繋がりをそのままにして
腰を置くことなど出来ないと思った。
 
【魔女】
「今すぐに、というのは無理ね」
 
【魔女】
「帰ることはもちろん可能。
こちら側に来てから、元の世界に戻る道が整うのは
ランダムだから何時とは言えないけどね……」
 
【カイナ】
「……分かった。帰る保障が少しでもあるんなら
これ以上は何も言わない。受け入れるさ」
 
【魔女】
「そう……後は、その体を馴染ませれば、
貴方は一応は萌えもん世界で生きていくことが出来るわ」
 
【カイナ】
「体を馴染ませる?」
 
【魔女】
「えぇ、貴方をこちら側に連れてきた時、
体を人間から萌えもんへと変えたわ。
必要最低限の機能と一緒にね……」
 
【カイナ】
「機能……?
この、耳とか服とか髪の毛の他にも何かしたのか?」
 
【魔女】
「各種感覚機能の向上よ。
聴覚、嗅覚においてグラエナ種は
人間のそれを遥かに上回る」
 
【カイナ】
「聴覚……?」

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【カイナ】
「水の音……?」
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【カイナ】
「じゃぁあの時、音が聞こえたのは……」
 
【魔女】
「ご明察ね。この力によって貴方は
危険を察知したり、周囲の音や香りによる
微細な変化にいち早く対応することが出来るわ」
 
【カイナ】
「………………」
 
思わず絶句してしまう。
 
いくら魔女と称していても、
人体の機能をそこまで緻密に変えてしまえるとは……
 
【魔女】
「でも、これだけの変換では
貴方はこの世界で生活するに足る力は得ていない。
自分を守るにしても、誰かの手助けをするにしても……」
 
【魔女】
「今から、グラエナという種の特別な秘術を
貴方に呼び起こす『覚醒』を行うわ。
馴染むまで拒絶反応があるけど、我慢して……」
 
【カイナ】
「ごあぁっ!?」
 
頭に妙な圧迫感が走る。
 
グネグネと指で頭の中を歪められている様な感覚。
痛みは無いけど吐き気にも似た感覚が襲い掛かる。
 
【カイナ】
「う、うえぇぇっ……! ご……が………げ……!」
 
全身に鳥肌が立つような悪寒。
感電したかのように肌を這い回る衝撃。
悪寒の無い顔には焼けるような熱さが込み上げ、
痛みよりも苦しく感じる。
 
【カイナ】
「も……もう………やめっ………!」
 
【魔女】
「……今、貴方には何が見えているの?
頭の中に浮かぶものだけに集中して、
それが何かを応えなさい。それが見えれば……」
 
【カイナ】
「あ、頭の中に……浮かぶ……もの……?」
 
そんなことを言われても、頭の中には
寒い、痺れる、熱い、苦しいという現在の状況しか
浮かんでこない。
 
それを言葉に出せばいいのだろうか。
 
【カイナ】
「い、いや……その中心に何かがある……!」
 
【カイナ】
「これは……牙……?」
 
先の尖った犬歯のような牙が見える。
 
それが見えた途端
全身に押し寄せていた苦しみが嘘のように引いていき、
自分の歯に全て収束していき、そして消えてしまう。
 
【カイナ】
「……一体……今のは………」
 
【魔女】
「見えたのね。これで『覚醒』は完了したわ」
 
【魔女】
「貴方が見たものは、貴方を……
そしてあの娘達を護る力となる」
 
暗闇に光が少しずつ差し込んでいく。
 
宙を浮いていた体に『椅子に座ってる』感覚が戻る。
これは……俺が萌えもん世界へ迷い込んだときの
感触と酷似している。
 
これは……
そう、魔女の声が消えた直後に起こった……
 
【カイナ】
「………!! い、行くな! 待ってくれ!!
まだまだ聞いていないことがあるんだ!!」
 
【カイナ】
「俺という者の『隠れ家』は分かった!
でもアルティナやゴル姉にとって、
何でここは『隠れ家』になるんだ! 応えてくれ!」
 
【魔女】
「……それは私の口から話せる事じゃない、
聞きたかったら、貴方の口で、彼女達から
答えを得なさい」



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【ゴル姉】
「カイナ……おーいカイナー?
聞こえとるんかー?」
 
白い靄のような光景は次第に薄れて、
ゴル姉達の居る部屋へと景色が戻った。
 
ポカンとしてる俺の表情を見て
ゴル姉は怪訝そうに手を振ってくる。
 
【カイナ】
「あれ……? 俺……今………」
 
【ゴル姉】
「あー……夕食できたからスープ用の皿を渡してーって
声を掛けてたんやけど、ボーっとして反応ないから
心配したで? もしかして眠いんか?」
 
【カイナ】
「え……いや……そういうわけじゃないんだけど……
俺、ここにいた?」
 
【アルティナ】
「何言ってるのよ……私が飲み物取ってきた後、
おとなしく座っていたじゃない……」
 
【カイナ】
「あ……そっか、悪い悪い」
 
不審に思われるのを避けるために
適当に相槌を打ったけど
まさか……さっきの出来事は俺の意識の中でしか
行われていない、一瞬の出来事だったのか……?
 
【ゴル姉】
「ま、えぇか……それじゃウチが皿にスープよそるから
カイナはそこの蝋燭置かれてる棚から
籠に入ったパンを取り出してくれるか?」
 
【カイナ】
「ん、了解」
 
皿を渡し終えた後、俺は薄明かりを放つ蝋燭に
注意しながら棚の引き戸を引く。
 
中に入っている籠をとりだし、
小さなロールパンを小皿に置きながら考える。

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【ゴル姉】
「……心配せんでえぇよ、その人かて、
もしかしたら元の世界に戻れたのかもしれへんし、
そうやって考えれば、少しは救いあるやろ?」
 
【ゴル姉】
「せや、悪い方にばっかり考えたら息詰まるで?
何か起きたら、その時何をすればいいか考えたらえぇ」
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【カイナ】
(魔女の言っていたゴル姉にとっての『隠れ家』は気になる)
 
【カイナ】
(でも、気にしだしたらキリがないし、それに今すぐじゃなくて
ゴル姉自身の口から何かを知ったほうがいい気がする……)
 
こうして、俺の人生の中で色濃く起きた数々の波乱の一日を
現実味の薄い萌えもんの住まう世界で、
食事を楽しみながら終える。
 
僅かに、けれど確かに『魔女』という影を残しながら……



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TO BE CONTINUED
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