5スレ>>900-2


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  夜空を見上げて

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「――様? ご主人様ー!」

 ふと、見上げた空に広がる光景に夢中になっていて、ハクリューに呼ばれているのに気付かなかった。

「あ、何してるんですかもう」
「ん、ほら」

 やっと見つけたと言いたげな呆れ顔で近づいて来た彼女に、空を指差して上を見るよう促す。
 彼女は示されるがままに空を見上げて、

「わあ……!」

 感嘆の声を漏らした。

「今日はよく出てるんですね、星」
「こんなに綺麗なのは久しぶりだなー」
「あれ、ご主人様ってそんな天体とか好きでしたっけ」
「それほど詳しくはないけどな」

 ほら、と俺はハクリューの左手を取ってそれを空に掲げてやって、

「あれがデネブ、アルタイル、ベガ。夏の大三角」

 掲げた彼女の左手を星々と重ねて、ずらしては重ねて、その持つ名を声に出す。

「アルタイルとベガ。これは有名だけど、彦星と織姫のことだな。
 アルタイルはわし座、ベガはこと座の1等星でな。
 わし座はあそこらへんにあって、こと座ってのはあそこらへん。平行四辺形っぽく結べる所だ。
 ちなみにデネブってのははくちょう座で、あそこ、十字架っぽいだろ?」

 とてもとても詳しいとは言えない漠然な形を示しながら、また左手を導く。

「彦星と織姫ってのはもともと働き者の二人でな、織姫は天帝の娘でもあったんだけど――」

 なんて、調子に乗って語り始めてしまったけれど、
 我ながらなんとも長ったらしいと思う説明を続ける中でふと隣を見れば、
 熱心に空を見上げて興味深そうに眺めている彼女の横顔が、やたらと可愛くて。

「……俺な、」

 こういう昔の話をするのも、まあ悪くはないだろう。
 少し、恥ずかしいけどな。

「昔の話だけどさ、こうやって誰かと、例えば恋人や、家族を持つ日がきたら妻や子供と星を眺めて、
 アレは何々だよ、由来はこうなんだよって、話をしてやれたらなあとか思ってさ、
 それから毎日星が出てたら見上げるようになって、もう癖になっちまった」

 思いの外恥ずかし過ぎて、ちょっと早口になってしまったけれど、

「……ふふ」
「なんだよ」
「いえ。願いは、叶いましたか?」

 それを冷やかさずに聞いてくれていた彼女は、抱きしめたくなるような笑みで、とても愛おしい事を言ってくれる。

「……ああ」

 彼女は、俺を家族だと思ってくれているのか。
 俺の家族――、あるいは、
 恋人でいたいと――、思ってくれているのか。

 それを改めて感じて、俺は思わず口に出していた。

「ありがとうな、ハクリュー」

 それは、こんな夜に付き合ってくれたことに対するお礼。
 のように見せかけて、もちろんその意味も込めたのだけれど、

 ありがとう――。
 俺のもえもんでいてくれて――。
 俺の傍にいてくれて――。
 俺の、家族になってくれて――。

 そんな。
 密かに、そんな想いも込めた愛の表れだ。

「いえいえ」

 でも、まあ。それは全然隠せてなくて、
 そんなことは全部、彼女にはお見通しだったのだけれど。

「私こそ。こんな私を家族にしていただけて、本当に感謝しているんですよ?」

 えへへっ。と、相変わらず可愛らしい照れ笑いと共に、彼女はそんなことを言った。
 しかも、俺には恥ずかし過ぎて声にすることが出来なかった言葉を、ちゃんと声にまで出して言いやがったのだ。

「……ハッ」

 対して、俺は思わず鼻で笑うことしか出来ず。
 その反応にハクリューが少し頬を膨らますのはいつもの光景なのである。
 照れ隠し照れ隠し。なんてことは隠すまでもなくバレているのだろうけれど、向こうも向こうなのでおあいこだ。
 
「ふふ、」
「はは、」

 そしてお互い気まずく笑うのみ。
 しかし不思議と居心地が良いものである。
 このまま二人、自然と顔を近づけあって――、なんて展開になる程ロマンチックではないけれど、
 このままずっと、このままの距離で離れたくない程には、彼女のことが愛おしく、この時間が何より楽しく。

「私は」

 そして、いつもの様に。
 我ながら毎度情けないとは思うのだけれど、
 そんな気分を更に盛り上げてくれるのは彼女だった。

「私は貴方のもえもんです」
「うん」

 彼女はすごく嬉しそうに。

「私は貴方の、家族です」
「ああ」

 ちょっと躊躇いがちに。

「私は貴方の……奥さん、です」
「お、おお」

 顔まで真っ赤に染めて。
 ちなみに俺もまっかっか。こんなことを言われてまともでいられるわけがない。

「なので、ご主人様?」
「は、はい」

 それでも彼女は、心底楽しげな笑顔で。

「浮気したら、“げきりん”ですからね?」
「……おう」

 なんて、冗談で締め括った。
 それはあくまでも冗談であったけれど、
 俺はちゃんと、しっかりと、

 しないよ。するもんか――、

 心から、本気で答えて、
 その唇に、自分の唇を、重ねたのであった。





~~~

 ……その笑顔の裏には、とてもとても冗談とは思えぬ本気を含んでいたけれど。

 …………。

 ……胆に、命じておきます……。



 あれがデネブ、アルタイル、ベガ。君は指差す夏の大三角。
 なんて、零です。
 星空のはくりぅさん。夜にふらっと星を見上げるのもいいものですよ。夏の大三角は見つけやすいです。
 ちょっとやってみたいことを優先させすぎてあやふやなんですけれどね。
 長々星座云々は語らせるつもりが結局適当にしちゃったり、あやふや。
 そんなちぐはぐ感ですが、やはりはくりぅさんは可愛いですね。うふふ。ちょっと反省してるけれど。
 連投で嫁イチャラブをお届けしましたが、はくりぅが可愛いので仕方がありません。
 そんな感じで、こんな拙作を読んでくださった方に感謝をしつつ、このあたりでー。
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