5スレ>>937-1


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 辛くもイシツブテを倒したものの、アサギ自身のダメージも大きく、次に出したマドカを迎え撃つのはイワーク。
 そのでか・・・いや、やや大きめな体や好戦的な態度から、サイズで劣るマドカには厳しい戦いになると思っていたんだが、

「遅いです!」
「この・・・ちょこまかとうっとうしいねぇ!」

 意外にも主導権を握っていたのはマドカの方だった。
 持ち前の機動力を活かし、イワークの攻撃を絶妙のタイミングでかわし、返す刀で着実にダメージを与えていく。
 そう、ダメージが通っているのだ。
 指示を与えるまでもなく、マドカはアサギに与えた指示を真似してみせた。

「こっちです!」
「くっ・・・つぁっ!」

 しかもアサギのように岩に隠れて奇襲するわけではない。
 絶妙のタイミングで攻撃をかわす、それはつまり最小限の隙で攻撃をかわすということ。
 相対的に向こうの隙は大きくなる。その隙に死角から攻撃する。
 これを指示無しで、だ。つくづくこいつのバトルセンスには脱帽させられる。
 ・・・このまま勝ちゃしないだろうな? それはそれで寂しいものがある。

「ちぃっ! そらぁっ!!」

 苛立たしげに大量の岩を放るイワーク。

「当たりませんよ!」

 しかし、マドカはそれをものともせず、すいすいとかわしていく。
 が、

「かかったね!」

 マドカが上空の岩に気を取られた一瞬の隙にイワークが距離を詰めていた!
 速い・・・! 鈍重そうな見た目とは裏腹にほんの僅かな隙でマドカの目前にまで迫っていた。
 その体の大きさから考えて、イシツブテの時のような策は使ってこないと思っていたが、まさかこんな形で使ってくるとは。

「吹き飛びなぁ!」
「マドカ!」

 オレの声が早いか否か、イワークが激突するまさにその瞬間、マドカの体がふわりと宙に舞う。
 まるで重力すら感じさせないような軽やかな動きでイワークの頭上をとり、

「えぇいっ!」
「なっ!? ぐぁっ!!」

 渾身の力を込めた「ひっかく」が炸裂した。
 自身の体当たりの勢いまで利用される形になったイワークは派手に吹き飛び壁に激突する。
 しかもいまだ上空から降り注いでいた岩が・・・。


『第五話 彼女の想い、その願い』


 ズドォオン・・・。

 ・・・死んでないだろうな?
 それにしてもなんつー反応の早さだ。
 一瞬の隙をつかれて、敵が目前に迫る。
 普通そんな状況になったら驚いて何もできないか、やむなく防御をするしかない。
 それを瞬時の判断で跳んでかわすとは。
 それもただ跳べばいいってもんじゃない。
 もしこっちが跳んだところで相手にも跳びつかれたらどうする。
 空中では身動きが取れない上に向こうの勢いは変わらない。
 下手をすれば地上で喰らうときよりもひどい結果になっていたかもしれない。
 つまるところギリギリまで引きつけてから跳ぶ必要があるわけだ。
 これもマドカのバトルセンスのなせる技なのか、はたまた偶然の産物か。
 まぁ、なんにせよ今の攻撃はさすがにかなり効いたんじゃないか?
 ほとんど自分の攻撃を自分で受けたようなもんだったが・・・。

「マドカ、よくやったな」

 たった今、渾身の攻撃をみまったとも思えない軽やかな着地を決めるマドカ。

「はい、マスター、ありがとうございます!」

 オレの方を振り返り、にこやかに微笑む。
 ・・・あらためて人は見かけじゃわからんもんだな。いや、人じゃないが。

「けど・・・」

 オレの言葉に嬉しそうに返答してくれたマドカだったが イワークが激突した壁の方へ向き直り再び真剣な顔つきになる。
 その声はまだ緊張感を宿したままだった。

「まだ終わってません・・・!」

 なんだって?
 あれだけの攻撃を受けてまだ・・・。

「当たり前だ」

 今まで静かだったタケシが不意に口を開く。
 イシツブテの時といい、こいつがしゃべると嫌な予感しかしないんだが。

「最初にも言っただろう。オレのモットーは『何事にも耐え抜く固い岩のような信念』だと。
 あの程度の攻撃であいつが倒れると思ったら大間違いだ」
「その通りさ」

 タケシの言葉を次ぐようにイワークの声が響く。
 その言葉に壁の方を見れば、いまだもうもうと土煙をあげる中で岩がガタガタと動き始め、

「はぁぁぁっ!!」

 気合いの声とともに岩が四方八方に吹き飛ぶ。

「うわっ!」
「きゃっ!」

 吹き飛ばされた岩がトレーナー席の足下にまで飛んできて地面をえぐり、ルイザ共々慌てて飛び退く。
 とんでもねぇな・・・。

「大将の言うとおり、アタシがあの程度でやられるわけないだろう?」

 土煙の中から現れたイワークには傷一つ付いていなかった。

「まさか、ダメージがないってのか・・・?」
「おいおい、さすがにそこまで化け物じゃないさ。けっこう痛かったよ」

 の割にはそんな素振りさえ見えないわけだが。それどころかその表情には余裕の笑みさえ見て取れる。
 ダメージがあったのは事実だとしても、それは大勢を決するほどじゃないってことか。

「けど、アタシをここまで虚仮にしたんだ」

 イワークの纏う雰囲気が変わる。
 今まではどちらかといえば楽しんでいる風だった。

「それ相応の代償は払ってもらうよ!」

 それが100%バトルに集中した表情へと変わっていく。

「・・・っ!」

 その気迫に気圧されるようにマドカが後ずさる。
 そりゃそうだ、実際に相対してるわけではないオレですら冷や汗が流れてくる。
 そんな相手を目の前にしているマドカの心境はどれほどのものか。

「マドカ! 大丈夫か!」

  なのに、こいつは。

「大丈夫です! 絶対に負けませんっ!」

 そういって笑顔を返してくれる。
 ・・・強いな、ほんとお前は。
 しかしどうするかな。あれだけの攻撃を受けてまだ余裕がありそうな相手だ。
 なんとか勝たせてやりたい、が正直いい手が浮かばない。

「さぁ、いくよぉっ!!」

 考えあぐねているうちにイワークが攻撃を開始する。

「何ボサッとしてんだい!」

 なっ!? 速っ・・・!
 さっきまでのスピードが手を抜いていたくらいに見える程のスピードで迫るイワーク。
 その勢いのまま拳を振りかぶり・・・

「くっ!」

 慌ててマドカが跳び退いた地面に振り下ろす!

 ズガァァァァン!

 ・・・冗談だろ?
 地面には小さなクレーターができていた。
 あんなもの喰らったらただじゃすまない。

「はっ、甘いっ!」

 が、イワークは攻撃の手を休めない。
 たった今抉った地面の破片を散弾銃のように飛ばしてくる。
 そしてそれは空中で動きのとれないマドカに向けて一直線に襲いかかる!

「よけれるもんならよけてみなぁっ!」

 数が少ないならまだしも破片の数は多く、しかもそれが広範囲に放たれる。
 とてもじゃないがかわしきれる量じゃない。
 マドカもそれを理解しているのか、下手に体を動かしたりせず、体を丸めて被害を最小限に防ごうとする。

「っ! 痛ぅ・・・!」

 それでも少なくない破片が体に当たり、服はあちこちが破れ血がにじんでいる。

「マドカっ!!」
「マドカちゃん!」

 思わず身を乗り出しルイザと一緒に、マドカの名を呼ぶ。

「だい・・・っじょうぶです。これくらいなんとも・・・ありません」

 そうは言うが、その顔には苦痛の色がありありと浮かんでいる。
 くそっ、こんなときにオレは何もしてやれないのか!?
 何かいい手は・・・!

「マドカ! あまり大きくよけるな! 破片の飛んでくる方向を見極めろ!」
「はいっ! 分かりました!」

 しかし、これも単なる時間稼ぎにしかならないだろう。
 あの散弾銃じみた技だ、たとえ方向を見極めたとしてもすべてをかわすのは困難だ。
 だがそれでも多少の時間は稼げる。その間に次の手を・・・。

「ふむ、まぁ悪い判断ではないな。だがその程度ではまだまだ二流だ。
 イワーク、『あれ』を使え」

 褒めるかけなすかどっちかにしろよ。いや、けなしてるんだろうけど。
 それより『あれ』・・・? いったい何を使ってくる気だ?

「・・・大将、マジで言ってんの? さすがに『あれ』は・・・」
「そんなことを言っていると足下をすくわれるぞ」
「あぁもう、分かったよ。けど、どうなっても知らないからね」

 タケシの言葉にしぶしぶといった感じで従うイワーク。
 イワーク本人ですらためらうほどの技。いよいよもってまずいかもな・・・。

「つーわけだ、あたしもホントはここまでしたかないけど。恨むんなら大将を恨みなよ!」

 気合いの入った声とともに固く握った拳を振りかぶり、地面に振り下ろす。
 また、さっきの散弾銃を使うつもりか? いや、それはない。
 さっきのやりとりからいって、おそらくはそれ以上の技。
 マドカもそれは分かっているようで、しっかりと身構え相手の技を見極めようとしている。
 さっき以上の技を使ってくるなら、隙もまたそれ以上に大きくなるはず。
 そこを見極めて、その隙を突ければあるいは・・・。
 だが、

「それが命取りだよっ!」

 地面に拳を打ち付けるイワーク。放たれたその技にオレの期待はかき消されることになる。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!

 静かな地響きが徐々に大きくなる。
 まさか、これは・・・!

「じしん!?」

 バトルフィールド全体にすさまじい揺れと衝撃が襲いかかる!

「きゃああぁぁぁぁぁっ!!」

 その衝撃はマドカの小さな体を翻弄し、悲鳴を上げさせる。

「マドカぁっ!!」

 いまだ鳴り続ける地響きがオレの声すらかき消す。
 まさかこんな大技を隠し持っていたとは・・・。
 その衝撃はトレーナー席すら揺らし、オレとルイザも手すりにしがみつき、揺れが収まるのを待つ。

 ズズズズ・・・。

「収まった・・・マドカちゃんは!」

 ややあって地震は収まり、顔を伏せて揺れに耐えていたルイザがフィールドに目を向ける。
 遅れてオレも顔を上げ、土煙の立つフィールドを見渡す。
 マドカは・・・無事か!?

「ホント、あんたおもしろいわ。あれを受けてまさか立ってるなんてね」

 土煙の中からイワークの声が聞こえ、徐々に視界が晴れていく。

「マドカ・・・」

 その視界の中にマドカは立っていた。
 荒い息を吐きながらもその足はしっかりと地面を踏みしめて立っていた。
 あの揺れを、耐えきったっていうのか・・・?

「けど、もう限界だろ? どうだい、ここらで止めにしないか?
 あたしもさすがに弱い者いじめしてるみたいでいい気はしないんだよ」

 イワークからのサレンダーの提案。
 正直な話、これはありがたい申し出だった。
 今の攻撃で彼我の戦力差がいかに大きいかが分かった。
 オレとしても無闇に手持ちたちを傷つけたいわけじゃない。
 向こうの戦力や戦法も分かったことだし、ここはいったん引いて対策を立てるのが・・・。

「いやです」

 マドカの静かな、それでいてはっきりとした声は拒絶を示した。

「わたしは絶対に負けない、負けられないんです!」

 苦痛に顔を歪めながら強く言い放つ。

 ドクン!

 ・・・なんだ? また、この感じ・・・。
 マドカの悲痛な声に胸がざわめく。
 何でこれほどまでに胸が締め付けられる・・・?

「それに、わたしもマスターも『弱い者』なんかじゃないですよ」

 悪戯をした子どものように舌を見せて笑う。
 あぁ、まったく、考えるのは後だ、後。
 なんとか、勝たせてやりたい。
 余計な事を考えてる暇があったら集中しろ!

「ったく、あたしの善意の提案を断るなんざ、いい度胸してるねぇ」

 イワークが再びその目に鋭い光を宿す。
 しかし、どうしたものか。気が急くばかりでいい手が浮かんでこない。
 まさか「じしん」まで用意してるとは思いもしなかった。
 あの攻撃の前じゃ、どんな防御も回避も通用しない。
 なら、どうする・・・?
 いや、待てよ、フィールド全体を覆うあの衝撃。
 だとしたらなんでイワークはダメージを受けてないんだ?
 もしかしたらあの攻撃は・・・。
 だとしても今のマドカの技で通用しそうなのは・・・。
 ・・・そうだ、『あれ』なら!

「マドカ、ちょっといいか」

 マドカを手招き、呼び寄せる。

「はいっ!」

 元気のいい声とともに駆け寄ってくるマドカだが、その足取りはおぼつかない。
 やはりさっきの「じしん」のダメージか。これ以上のダメージを受けるわけにはいかない。
 一か八かだが、この策にかけるしかないか。

「いいか、マドカ。
 ・・・たら・・・んで・・・ーを・・・」
「なるほど、分かりました!」

 指示を伝えるとすぐにフィールドに戻っていく。
 と、途中で振り向き、

「マスター、わたし、負けませんから!」

 笑顔で告げる。
 その笑顔に少し胸が痛んだ。
 痛みや辛さを隠してるようなその笑顔に。

「あぁ、頼むぞ」

 そういってオレも笑顔を返す。
 せめてこいつが安心して戦えるように。

「さぁ、いきますよ!」
「ははっ、『あつい』ねぇ。いろんな意味で。
 それじゃ、そろそろ終わりにしようか!」

 叫ぶやいなやイワークは拳を振りかぶる。
 と、同時に。

「・・・っ!」

 マドカがイワークに向けて猛然と走り出す。

「攻撃に移る前に仕掛ける気か!? だが遅いっ! イワーク!」

 タケシの声が早いか遅いか、イワークは拳を振り下ろし地面に打ち付ける!

 ゴゴゴ・・・。

「くっ・・・!」

 再度の揺れがフィールドを襲い、その余波がトレーナー席にまで達する。
 その揺れの中、

「やっぱり・・・」

 マドカがいたのは、

「中心には揺れがないんですね」

 イワークの懐だった。

「まさか、あんた最初からこれを・・・!」

 イワークが「じしん」のダメージを受けない理由。
 それは中心であるイワークの周辺に揺れがないから。
 マドカを走らせたのは「じしん」を止めるためじゃない。
 「じしん」の発生前に懐に飛び込ませるためだった。

「終わりですっ!」
「しまっ・・・!」

 その爪は鋼鉄の爪。

「メタルクロー!!」

 ズギャアァン!

 岩すら切り裂く鋼鉄の爪が炸裂した。

「やったぁ、マドカちゃん!」

 傍らのルイザが喜びの声を上げる。
 メタルクローはタイプ的に相性のいいはがね系の技。
 どうだ・・・これなら!
ツールボックス

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