5スレ>>939-1


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 ニビジムでの激闘を終えた後、オレたちは手持ちを回復させるためにポケモンセンターに戻ってきた。
 回復させるなりアサギは「なんでもっと早く回復させないのよ!」と噛みついてくる。
 なんというかこいつには信頼されてるんだか、されてないんだかいまいち分からん。

「あぁ、もう・・・。いくらバトルに集中してたからってあんな恥ずかしい・・・」
「ん? 何か言ったか?」
「う、うるさいっ! なんでもないわよ!」

 とまぁ、こんな感じである。ある意味いつもどおりでいいのかもしれないが。

「マスターとアサギちゃんは本当に仲がいいですよね」
「ケンカするほど仲がいいってことかな?」
「ちょ、ちょっと2人とも! な、なにバカなこと言ってるのよ!?」

 横でやりとりを見ていたマドカとルイザまで変なことを言い出す始末である。
 ・・・マドカ。
 もしかしたらオレはアサギ以上にこいつのことを分かっていないのかもしれない。
 会ってたった二日のオレをどうしてあそこまで信頼してくれているのか。
 今になって思えばあのジム戦での不甲斐なさだ。
 愛想を尽かされていてもおかしくないはず。

「マスター、どうかしましたか?」
「あ、いや、別に・・・」

 リザードに進化して少し大人びた笑顔に少なからず動揺してしまう。
 そういえば昨日道すがら、タチの悪いトレーナーの話をしてたっけか。
 もしかしたら昔そういうトレーナーの下にいたのかもしれないな。
 で、そのトレーナーに捨てられたのをオーキド博士に保護されたとか・・・。
 その反動でオレのことを世界一優しいとでも思い込んでしまっているのだろうか?
 そう考えると妙にバトル慣れしてるのも辻褄が合う。
 何にせよ、万が一そんな過去を持ってるとしらそれを聞くわけにもいかんし・・・。
 とりあえずはおいおい知っていくしかないかな。

「それでお兄ちゃん、この後はどうするの?」

 タケシとのバトルもずいぶん長いこと続いた気がするが、時計を見てみればまだ12時を回ったばかりというところだ。
 この時間なら今日のうちにオツキミ山も越えられるかもしれないな。

「とりあえずは昼飯にするか。その後はハナダシティを目指してオツキミ山を越えていく」
「ご飯!? ならとっとと行くわよ!」

 食いしん坊バンザイ。
 ・・・? ふと気づけばマドカがこっちをチラチラ見ながらもじもじしている。
 おい、まさかお前まで・・・?

「マドカ?」
「は、ははは、はいっ!」

 ものすごいどもった。何をそこまで緊張してるのやら。

「別に腹が減るくらいかまわないだろ。ただでさえバトルの後なんだし」
「・・・え? えっと・・・。は、はい、そうですね! あはは・・・」

 ん、違ったのか?
 キョトンとした顔をしたかと思えば笑顔になり、そして落ち込んだような顔。
 何かまずいこと言ったか、オレ?

「サイカ、マドカ! さっさと来なさいよ! ご飯は待っちゃくれないのよ!」

 いや、待ってくれるだろ。どんだけ飢えてるんだよ、お前は。

「ホラ、行くぞ、マドカ」

 そう言って手を差し出す。
 自分でもなんでそんなことをしたんだかよく分からないが、今までは背格好の関係で子どもの手を引く父親みたいだったからなぁ。
 マドカが進化したことで不自然さがなくなったから、自然と手を差し出したのかもしれない。
 その手に数瞬何が起こってるのか分からないという顔をしていたマドカだったが、

「・・・はいっ!」

 直後これ以上ないくらい嬉しそうな顔でオレの手を掴んでくる。
 わずか数秒の内に百面相をしてみせたマドカ。
 んー、なんだろうな。やっぱりこいつのことはよく分からん。


『第六話 オツキミ山で一騒動』


 昼食後、オレたちはセンターを後にし3番道路を歩いていた。
 それにしてもアサギの食う量が半端じゃなかった。
 確かにバトル後で腹が減ってたのかもしれないが、見てるこっちが・・・いや、やめよう。思い出さない方がいい。
 それにいくら安いっていってもこっちの財布も少しは気にしてくれ・・・。

「あ、おーい! サイカくーん!」

 と、突然名前を呼ばれ声のした方を見れば、明らかに場に不似合いな白衣の男が走り寄ってきた。
 ん? あれ、この人確か…。

「いやー、何とか会えてよかったぁ」
「確か、オーキド博士のところの…」
「あぁ、覚えてくれてたんだ。そう、オーキド博士の助手だよ。
 君に渡すように頼まれていたものがあってね。届けに来たんだ」

 渡す…? また図鑑作れみたいな面倒事じゃないだろうな。
 助手さんから渡されたのは小さめの箱。
 蓋を開けてみればその中には、

「これは…ランニングシューズ?」

 真新しいランニングシューズが入っていた。

「マスター、手紙がついてるみたいですよ」

 マドカが目ざとく同封された手紙に気づく。
 手に取って見てみれば「サイカへ」という文字が。
 この字、お袋か?
 手紙には、オレが旅立つのが急になったので十分な用意がしてやれなかったことへの詫び、そのためオーキド博士に頼んでシューズを届けてもらうこと、そしてオレの身を案じる言葉が書かれていた。
 ったく、いいかげんガキじゃないんだからよ。
 ・・・サンキュ、な。お袋。

「お兄ちゃん、よかったね!」
「へー、いいお母さんじゃない」

 こりゃ帰ったらマジで親孝行の一つでもしてやらないとな。

「うん、ポケモンたちもずいぶん懐いてるみたいだね。さすがサイカくん」

 助手さんはそう言って一人うんうん頷いている。
 何がどうなって「さすが」なのかはよく分からんが、懐いて見えるのだったら嬉しいことだ。

「それで、君らはこれからどうするんだい?」
「今からオツキミ山を越えてハナダシティに向かう予定です」
「オツキミ山かぁ。あそこは頂上付近に温泉があってね。トレーナーの間では隠れた名湯扱いになってるみたいだよ。
 まぁ、野生のポケモンも出るし、トレーナーくらいしか使わないみたいだけどね。
 ただ山の中の洞窟はけっこう入り組んでて迷いやすいらしいから気をつけてね」

 へぇ、温泉ねぇ。そりゃ初耳だ。たまにはいいかもな。
 にしても迷いやすい、か・・・。不安しかねぇ。

「それじゃ、僕はここいらで失礼するよ。道中気をつけてね」
「えぇ、どうも。あ、それはそうと・・・」

 親しみやすい笑顔を見せて去ろうとする助手さんに一つ気になっていた事を聞いてみる。

「もしかしてオレが来るまで、ここでずっと待ってたんですか?」

 こんな炎天下に。しかもそんなめちゃくちゃ目立つ格好で。

「よくぞ聞いてくれた! まったくオーキド博士は人使いが荒くてさぁ」

 あ、やばい。地雷踏んだかも。
 それからしばらくの間、助手さんの愚痴を聞く羽目になった。
 まぁ、こんな暑い中オレのためにわざわざ待っててくれたんだ。これくらいは我慢するか。

「いやぁ、悪いね、話し込んじゃって。それじゃ今度こそ僕は失礼するよ」

 助手さんはそう言って手を振りながら走り去っていく。
 ・・・なんつーかバイタリティ溢れる人だったな。

「・・・そんじゃ行くか」

 あー・・・我慢なんてするんじゃなかった。くそ暑い。


「・・・行ったかな」

 サイカたちの姿が見えなくなった後、木の陰に隠れていた助手が顔を出す。

「どうやら旅は順調なようだね、サイカくん。やっぱり「さすが」ってことかな」

 そう言いながら懐から携帯電話を取りだし、電話をかける。

『おぉ、君か。彼の様子はどうだね?』

 数度の呼び出し音の後、男性の声が聞こえてきた。

「特に変わった様子はないですね。ポケモンにも懐かれてるみたいでしたよ」
『・・・そうか』

 しばらくの沈黙。

「本当にこれで、いいんでしょうかね」

 沈黙を破ったのは助手の方だった。
 サイカたちの行った方角を見、問いかける。

『・・・ワシにも分からんよ』
「・・・ですよね」

 再びの沈黙。

「それではまた連絡しますよ、オーキド博士」
『うむ・・・頼む』

 しばしの沈黙の後そう切り出して電話を切る。

「ふぅ・・・」

 溜息をつき、空を見上げる。
 彼の憂鬱な心とは裏腹に、空は皮肉にも青々と晴れ渡っていた。
 

「それじゃマスター、行ってきます」
「ボク、買い物なんて初めてだよ!」
「あたしたちがいないからってサボるんじゃないわよ」

 お前は買い食いすんなよ。
 オツキミ山麓のポケモンセンターに着いたオレは、ひとまず手持ちたちに買い物に行かせることにした。
 念のためオツキミ山でキャンプをすることも考えて、そのための食材やら何やらの買い出しってわけだ。
 あくまで念のためであり、決して迷うこと前提ではない。ないったらない。
 それに今後、手持ちに買い物に行ってもらう機会もあるかもしれないし、そのための訓練という意味合いもある。
 おそらく野生生活が長かったであろうアサギとルイザは特にな。
 さて、そんなわけで待つ身のオレとしてはこれといってすることもないんだが、そんなに時間もかからないだろうし適当に時間をつぶすか。

「ん・・・?」

 ふと机の上に広げられた新聞に目が止まる。
 新聞には『ハナダシティの民家襲われる。またもロケット団の仕業か?』と書かれていた。
 ・・・ロケット団? ずいぶんとチープなネーミングだな、おい。
 記事によると、このロケット団とやらはポケモンを使って悪事を働く連中らしい。ろくでもねぇ。
 見たところ頻度も相当な件数に上るようだし、やっかいな奴らがいたもんだ。

「マスター、戻りました」

 新聞を読んでる間にマドカたちが戻ってきた。予想以上に早かったな。

「あぁ、お疲れ。ずいぶん早かったな」
「マドカちゃん、すごいんだよ! レジなんかもすいすい進んじゃうんだもん!」

 ルイザがマドカに羨望の眼差しを向けている。
 そりゃルイザにとっちゃ「はじめてのお使い」だったろうし、それをすいすいこなすマドカに憧れるのも分からなくはない。
 しかし「すいすいこなす」か。おおかたオーキド博士のところで社会勉強でもさせられたんだろう。
 まぁ、人間生活に慣れてるんならそれに越したことはない。

「そうか、ありがとな、マドカ」
「そ、それほどのことは・・・」

 頭を撫でてやると顔を赤くして照れる。
 こういうとこはヒトカゲのときと変わんないな。

「そしてアサギ」
「なっ! ななな、何!?」

 さっきからそっぽを向いているアサギに声をかければ、思いっきりビックリしたような声をあげる。

「・・・この大量の菓子はなんだ」

 指を指したのは買い物袋の中に埋もれるお菓子群。
 当然、こんなもんを頼んだ覚えはない。

「ほ、ほら、腹が減っては戦ができないって言うじゃない!」

 お前、年中腹ぺこなんじゃないのか?
 ったく、マドカもルイザもいっしょにいたんなら止めてく・・・。
 二人の方を見れば目をキラキラさせてこっちを見ていた。
 ・・・あぁ、もう分かったよ。

「・・・今回だけな」
「やったぁ! あんたも話が分かるじゃない!」
「お兄ちゃん、太っ腹♪」
「あ、あの、マスター、すいません・・・」

 申し訳なさそうに謝るマドカですら、頬が緩んでやがる。
 はぁ、オレもまだまだ甘いな・・・。


 支度を終えたオレたちは、オツキミ山に足を向けていた。
 オツキミ山麓には洞窟の入り口がぽっかりと口を開けている。

「しかし、中はけっこう暗そうだな」
「迷わないようにしないといけませんね」
「「そうね・そうだね」」

 ・・・言い返せないのがつらいとこだな。
 正直な話、トキワの森はまだよかったが、こんだけ暗い上に洞窟の中を進むことになるんだ。
 助手さんの話だと相当入り組んでるみたいだし、迷ったらマジでしゃれにならんな。

「マドカ、頼む」
「はい。えいっ!」

 マドカに「ひのこ」を吐いてもらい、事前に用意していた枯れ枝に火をつけ即席の松明を作る。
 これでこの暗さも少しはマシになるだろ。
 あたりを見渡すため、枝をかかげる。
 入り口周辺はだだっ広い空間が広がってるからけっこう見通しはいいけど、奥は相当深そうだな。

「あら、あなたたちも化石を探しに来たの?」

 入り口周辺にいた女性トレーナーがこっちに気づき声をかけてくる。
 カセキってあの化石か? こんなところに?

「いや、別にそういうわけじゃないんだが、こんなところに化石があるのか?」
「そうよ、すごい化石があるって聞いて友達と来たんだけどはぐれちゃったのよ。
 あなたたち、奥に行くんでしょ? もし私の友達にあったら入り口で待ってるって伝えてくれない?」
「まぁ、別にそれくらいなら構わんが」
「お願いね。怪しいやつらがうろついてるって話もあるからちょっと心配なのよ」
「あぁ、分かった。見つけたら伝えておくよ」

 トレーナーと別れたオレたちはさらに奥へと進んでいく。
 奥へ進むほどに洞窟は入り組み、光も届かないほど深くなっていく。
 ・・・まだ迷ってはいないよな、うん。

「けど怪しい人たちってどんな人たちなんでしょうね?」

 洞窟の中ということもあって話し声が反響し、えらく大きな声に聞こえる。

「さぁな、けど物によっては化石も高値で売れるらしいから、そういった売人じゃないのか」

 案外さっきセンターの新聞で見たロケット団とやらだったりしてな。

「ふーん、あんな骨がねぇ。そんなにいいものなのかしら」
「あ、でも博物館なんかは欲しがるんじゃないかな?」

 オレも詳しいわけじゃないからなぁ。相場でもあるのか?
 っと・・・。

「また分かれ道みたいですね」
「・・・だな」

 目の前には二つに分かれた道。
 ここまでもいくつかの分かれ道を通ってきたが、これで7つ、いや8つめか。
 一応ここまでの分岐は覚えるようにしてるんだが・・・。
 あーっと、5つめの分岐は右、いや左だったか? 既に自信がねぇ。

「こっちは・・・?」

 右側の道に松明をかざして奥の様子を窺う。

「こっちはけっこう深そうですね」

 右側の道は奥まで見通せないほど深い道になってるようだ。
 分岐のたびにこうして両方の道を確かめ、ある程度奥が見える道や進みやすそうな道を選んで進んでるわけだ。
 こうやって選んでいけば多少の分岐があっても迷うことはないと思うんだけどなぁ。

「みたいだな。こっちは・・・」

 続いて逆側、左側の道に松明を向ける。

「・・・・・・っ!」
「ひゃっ!」

 アサギとルイザが短い悲鳴をあげる。
 オレたちの目に飛び込んできたのは無数の光。
 その光がキィキィ、バサバサと音を立てる。

「ま、マスター・・・」

 マドカが服の裾をクイクイと引く。
 ・・・あぁ、もうなんだってこうなるんだか。

 バサバサバサバサッ!!

 オレたちを敵と見なしたのか、群れをなして襲いかかってくる。
 おそらくここを根城にしているであろうズバット達の群れであった。

「逃げるぞっ!」
「は、はいっ!」
「もう、サイカのバカッ!」
「お、お兄ちゃん、待ってー!」

 あー、くっそ絶対道忘れた・・・。


「ぜっ・・・はっ・・・みんな、いるか・・・?」

 ズバットの群れからなんとか逃げおおせ、手持ちが全員いるかを確認する。

「は、はい・・・なんとか」
「もう・・・なんだってのよ、ほんと・・・」
「あ、あはは・・・けほっ」

 よかった、いるな・・・。
 しかし追われてるうちにめちゃくちゃな道通ったおかげで完全に道がわからなくなっちまったな。
 つーかトキワの森でも似たような感じじゃなかったか、おい。
 さて、こっからどうしたもんか。

「・・・ん?」

 不意にアサギが怪訝そうな声をあげる。

「どうしたアサ・・・」
「しっ! 静かに・・・」

 オレの問いかけを遮り、一本指を口元に立てる。
 どうやら何かの音を聞いているようだが、聞こえているのはアサギだけのようで、マドカもルイザも目をぱちくりさせている。

「間違いない・・・これは、悲鳴!」
「なんだって? まさかどっかで生き埋めにでも」
「違う、これは誰かと争って・・・」

『誰か! 助けてっ!』

 小さくではあったが、今度ははっきりと聞こえた。
 そうとう切羽詰まった声だな。こりゃ悠長に構えてる場合じゃない。
 怪しいやつらがうろついてるって言ってたし、もしかしたらそいつらかもしれん。

「行くぞっ!」

 一声かけ、声のした方へ駆け出す。
 面倒事はごめんだが聞こえた以上はしょうがない。間に合えよ!
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