5スレ>>944


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 枯れない花は、この世に存在しません。

種として母に抱かれ、新芽を輝かせる"わたし"は、
祝福を受けて生まれた喜びに感激し身体を震わせます。

蕾となり糧を蓄え、力を得た"わたし"は傘を開いて花となり
幸せの絶頂を噛み締めます。


しかし"わたし"が生まれてきた意味は、その刹那にも似たほんの僅かな時間だけです。


"わたし"の一生のうち、あまりにも短いその瞬間を迎えた後は
ただ枯れていくだけの静かな余生。

意味を失った"わたし"が過ごすには鬱屈すぎる長い長い時の中で
育てていただいた母なる大地へ還るための準備期間。

そして、"わたし"と同じ運命を辿る"わたし"を祝福することで
"わたし"の物語は漸く終わりを告げます。


 それが、花という、いのち。


ゆえに"わたし"は、逸ることなく滞ることのない"時"を、愛し、そして憎みます。



                  
 それが、花々の摂理だと云うのなら、造られた"わたし"は、何のために生きているのでしょうか。



…幼かったわたしはいつの日か、その疑問を打ち明けたことがあります。



―――君"達"が生きている理由なんて簡単だよ。

     『人に笑顔を与えるために』生まれてきたんだ―――



それはそれは完璧に暗記した九九を唱えるかのように、容易く答えを示してくれた方がいます。
それがわたしの『ご主人様』です。


 わたしにとってはご主人様…こと"彼"こそが、大地そのものでした。
同時に、彼の言葉は、水そのものでした。
そんな大地の元で、水を与えられて育ったわたしは根付き、萌芽し、そして花開いた―――



―――恋の花。


トマトのような、リボンのような、赤い色の花。
         
真っ赤な真っ赤な、警告を示す色。


その意味に気づいた時には……そうです。咲いた後では『もう遅い』のです。


この『恋』は開花してしまった―――
この『夢』は覚めてしまった―――
この『愛』は枯れてしまった―――


だからわたしは、抗ってしまった。



この花を、氷に漬けることで・・・・・・・・・






―――恋はきっと、花に似ている―――






……憎む代わりに、呪い続けた長い時間が過ぎてゆきました。



 そして今日は、ご主人様の結婚式です。




勿論、隣を歩くのはわたしではありません。
ご主人様の隣を歩く花嫁の姿を見て、ひびの入った氷の花が僅かな痛みを訴えます。
でも―――


わたしがこの手でブーケを手渡した時に、"彼女"がぱあっと咲かせた笑顔を思い出すと、
信じられないくらい凪いだ心が涙となって溢れてゆきます。
そして誓いのキスが交わされたその瞬間に、わたしは氷花に静かな火をくべました。



―――恋の花。



それはゆらめく炎のような、赤い色。


呪いを祝福にかえす、優しい色。


「ご主人様、おめでとうございます。お二人とも、お幸せに―――」


自然と口をついて出た、言葉に乗せて。わたしの物語は、潔く結末を迎えました。
"恋するわたし"を祝福しながら―――




 それが、"ふしぎばな"という、こころ。







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【あとがき】

久々に書いてみたら、なんかポエムみたいなものができあがってしまいました。
そんなことより3月14日はホワイトデーっていう古の記念日があるとかどうとか。
タイムリーだしきっと誰かが題材にのっかって書いてくれるんだろうなー楽しみだなー(チラッ




3.9 ぺる
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